東京デザイナーに訊く10の質問 ── yoshiokubo 編
「Rakuten Fashion Week TOKYO 2027 S/S」期間中の短期連載企画。今回は〈yoshiokubo〉デザイナーの久保嘉男をフィーチャー
東京デザイナーに訊く10の質問 ── yoshiokubo 編
「Rakuten Fashion Week TOKYO 2027 S/S」期間中の短期連載企画。今回は〈yoshiokubo〉デザイナーの久保嘉男をフィーチャー
東京のファッションシーンにとって、いまや年に2度訪れる風物詩となった「Rakuten Fashion Week TOKYO(楽天ファッション・ウィーク東京)」。ストリートとハイエンド、伝統と革新が交錯するこの舞台は、単なるコレクション発表の場ではなく、次世代の価値観や美学がリアルタイムで更新される現場だ。今季も、国内外から注目を集める全27ブランドが参加し、東京ならではの熱気を放っている。そんな中、『Hypebeast』では独自の視点でフィーチャーすべきブランドをセレクト。単なるルックの紹介やトレンドの分析にとどまらず、デザイナー自身の言葉からそのクリエイションの核に迫る短期連載企画を敢行する。題して“東京デザイナーに訊く10の質問”。創作の源泉から日常のインスピレーション、そして未来のビジョンに至るまで、彼らのパーソナリティを掘り下げることで、ランウェイの向こう側にあるストーリーを明らかにしていく。
2004年にスタートした〈yoshiokubo(ヨシオクボ)〉は、デザイナー 久保嘉男が手掛けるファッションブランドだ。“今まで見たことのないパターンやディテールを追求したい”という久保自身の探究心を軸に、クチュール時代に培った高度な技術を自身のコレクションへと落とし込んできた。独創的なデザインでありながらも、決して独りよがりな表現に留まらず、着る人に服のデザインやディテールについて改めて考えてもらうことを目指している。
そのクリエイションを支えるのは、上質なパターンメイキングときめ細かな縫製技術、そして衣服としての機能性を重視する姿勢。日常着としての着心地を追求しながら、既存の概念にとらわれない新たな衣服のあり方を提示してきた。フィラデルフィア大学のファッションデザイン学科を卒業後、ニューヨークへ渡り、オートクチュールデザイナーのロバート・デインズ(Robert Danes)のもとで4年間にわたりクチュールの制作に携わった久保。帰国後の2004年に〈yoshiokubo〉を設立し、翌2005年春夏シーズンよりコレクションを発表している。現在に至るまで、クラフツマンシップと革新的なアイデアを融合させながら、東京を拠点に独自の存在感を放ち続けている。
Q1.2027年春夏のコレクションを通して、現在のyoshiokuboを一言で表すとしたら、どのようなシーズンになりますか?
今季は“Natural Born Nomad”をテーマに掲げました。遊牧民(ノマド)のように、場所にとらわれず自由な佇まいでいられること、そしてどこにいてもそのまま走り出せるような軽やかさと機動力。そうした感覚を一言で表すシーズンになったと思います。
Q2.yoshiokuboでは、独創的なパターンやディテールを追求する一方で、着心地や機能性といった「衣服としての実用性」も大切にされています。この2つを両立する上で、デザインの際に意識していることはありますか?
今回目指したのは、いわば“トランスフォーム・クロージング”です。ロボットが変身するように、洋服そのものが姿を変えていく様子を表現しました。例えば、ファスナーを開けるとポケットが現れたり、パーツを取り外すと単体としても機能したり。独創的なディテールでありながら、着る人にとっての利便性や機能性へと着地させる。その両立を大切にしています。
Q3.久保さんはニューヨークで4年間、オートクチュールデザイナーのロバート・デインズ氏のもとで経験を積まれています。当時のクチュールでの経験は、現在のyoshiokuboの服づくりにどのように生きていますか?
クチュールの現場では、細かな手作業の積み重ねによって1着を作り上げていきます。その工程で培った感覚は、今のものづくりにも確かに生きています。中でも大きいのは、本来であれば日常着には使われないようなクチュール素材を、どう普段着として成立させるかという視点です。特別な素材や技術を、日常の中で着られる服へと落とし込む面白さは、あの頃の経験があってこそだと感じています。
Q4.2004年のブランド設立から20年以上が経ちました。振り返ったとき、yoshiokuboのクリエイションにおいて、創設当初から変わらないものは何でしょうか? また、逆に大きく変化したものはありますか?
設立当初から変わらないのは、流線型のカッティングと、スポーツミックスとモードを掛け合わせるという姿勢です。そこは一貫して続けてきました。一方で大きく変わったのは、コレクション全体の完成度です。以前よりもテーマ性をしっかりと持たせ、リアリティのある、実際に着られる服を作るようになったと感じています。
Q5.「着た人に、服のデザインやディテールをもう一度考えてもらいたい」という考えを掲げていますが、久保さん自身は、着る人にどのような発見や感覚を持ってもらえたら嬉しいですか?
取って代わられることのない、簡単には手放せない服。そんな1着として受け取ってもらえたら嬉しいです。長く、大切に着続けたいと思ってもらえること。その気持ちこそが、着る人に持ってもらいたい感覚です。
Q6.yoshiokuboの服には、パターンや立体的な構造、異素材の組み合わせなど、一見すると複雑に見えるディテールが多くあります。デザインを考える際、まず「形」から考えるのか、それとも素材や着用時の動きから考えるのでしょうか?
まず新しいディテールの発想から始まり、それを“形”へと展開し、最後に素材へ落とし込んでいく、という順序で考えることが多いです。素材や着用時の動きよりも先に、まだ見たことのないディテールをどう成立させるか、というところから発想しています。
Q7.長年東京を拠点にコレクションを発表されてきた中で、久保さんにとって“東京”という都市は、現在のクリエイションにどのような影響を与えていますか?
海外にいると、ファッションのスタイルの選択肢が意外と少ないと感じることがあります。その点、東京ないし日本では男女を問わず、日常的に着飾っておしゃれを楽しめる。これは東京ならではの感覚だと思います。さまざまな表現が共存する、いわば服のるつぼのような場所です。洋服はもともとヨーロッパのものですが、日本ではカリフォルニアロールのように、その先の独自の進化を続けている。東京という都市のそうした環境は、私のクリエイションに少なからず影響を与えていると思います。
Q8.Rakuten Fashion Week TOKYOという舞台でコレクションを発表することには、どのような意義を感じていますか? また、今回の発表を通して国内外の人々に何を伝えたいですか?
SNSの時代だからこそ、「日本にもこんなに面白いデザイナーやブランドがあるんだ」と知ってもらうきっかけになれば嬉しいです。「Rakuten Fashion Week TOKYO」という舞台で発表することには、そうした発見を国内外の人々に届けられる意義を感じています。
Q9.20年以上にわたりブランドを続ける中で、ファッションを取り巻く環境や、服に求められる価値も変化してきたと思います。そうした時代の変化に対して、yoshiokuboはどのように向き合っていきたいですか?
ファッション業界全体、そして消費者のリテラシーが、これからもっと高まっていってほしいと思っています。近年は、知名度や発信力を起点に、比較的手軽に服が生み出されていく流れもあります。誰かに共感して物を買うこと自体は、決して悪いことではありません。ただ、その1着がどれだけの知見や手間をかけて作られたものなのか、そうした背景にも少し目を向けてもらえたら、選び方はより豊かになるのではないかと感じています。私自身は、自分に正直に、デザインのクオリティとクリエイションを追求し続けていきたいです。
Q10.これまで培ってきた技術や哲学を踏まえた上で、これからyoshiokuboとして新たに挑戦してみたいこと、あるいはまだ実現できていないことはありますか?
これまでとは違う、新たなジャンルのデザインに挑戦してみたいですね。例えば、学校や企業のユニフォームのような、機能的で長い期間着続けられる服。そうしたファンクショナルなデザインは、これまで培ってきた技術や哲学を生かしながら、まだ実現できていない領域として、ぜひ手がけてみたい分野です。




















