東京デザイナーに訊く10の質問 ── ORIMI 編
「Rakuten Fashion Week TOKYO 2027 S/S」期間中の短期連載企画。今回は〈ORIMI〉デザイナーの折見健太をフィーチャー
東京デザイナーに訊く10の質問 ── ORIMI 編
「Rakuten Fashion Week TOKYO 2027 S/S」期間中の短期連載企画。今回は〈ORIMI〉デザイナーの折見健太をフィーチャー
東京のファッションシーンにとって、いまや年に2度訪れる風物詩となった「Rakuten Fashion Week TOKYO(楽天ファッション・ウィーク東京)」。ストリートとハイエンド、伝統と革新が交錯するこの舞台は、単なるコレクション発表の場ではなく、次世代の価値観や美学がリアルタイムで更新される現場だ。今季も、国内外から注目を集める全27ブランドが参加し、東京ならではの熱気を放っている。そんな中、『Hypebeast』では独自の視点でフィーチャーすべきブランドをセレクト。単なるルックの紹介やトレンドの分析にとどまらず、デザイナー自身の言葉からそのクリエイションの核に迫る短期連載企画を敢行する。題して“東京デザイナーに訊く10の質問”。創作の源泉から日常のインスピレーション、そして未来のビジョンに至るまで、彼らのパーソナリティを掘り下げることで、ランウェイの向こう側にあるストーリーを明らかにしていく。
今回は〈ORIMI〉デザイナーの折見健太。18歳でヴィンテージバイヤーとしてキャリアを歩み始め、アパレルストアの立ち上げや商品企画・買い付けを経て、2019年にセレクトショップ『THE ELEPHANT』をオープン。その翌年、自身のクリエイションを具現化する場として〈ORIMI〉を始動。2024年には、同ブランド初となる2025年春夏コレクションランウェイショーを開催した。ブランドのコンセプトは、“Superfine garment for all the outsiders(異端者のための最高級の服)”。ラグジュアリーなベーシックウェアを基軸に、既存の構造や意味を一度解体し、新たな身体性とバランスを再構築することで、現代における衣服の在り方を問い直す。折見の約10年にわたる経験から培われた視点は、パターンや縫製に潜む“当たり前”への違和感を、ズレや歪みとして意識的に掬い上げる。それらを美しさやユーモアへと昇華し、感情と理性のあいだに存在する服を提案している。
Q1.今季のコレクションテーマについて教えてください。
今季のテーマは、“Properly Dressed”です。直訳すると「きちんとした服装」という意味ですが、今回のコレクションでは、一般的に考えられている“正しい服装”をそのまま肯定しているわけではありません。むしろ、ORIMIなりの正当性とは何かを考え、その基準をあえて“Properly Dressed”と掲げています。ORIMIにとっての“Proper”とは、既存のルールに従うことではなく、自分たちなりの正当性を持つことだと考えています。
Q2.前シーズンの“ELSEWHERE”から、今季はどのような変化や新しい試みを加えましたか?
“ELSEWHERE”では、日常に少しズレを加えることで、いつもの景色が違って見える感覚を表現しました。今季はその視点をもう少し社会的な方向へ進めています。シャツやジャケット、トラウザーズなど、社会の中で“きちんとした服”とされているものを出発点にして、そのルールの中でどこまで自由になれるかを考えました。以前よりも一見すると正統的ですが、近くで見るとどこかがおかしい。今季はその距離感を意識しています。
Q3.前回のインタビューでは、既存の服を「解体・再構築」することについてお話しいただきました。今季はそのアプローチにおいて、新たに試みたことや変化した部分はありますか?
以前は構造を大きく変えることで、解体や再構築を比較的分かりやすく見せることも多かったと思います。今季は、壊したこと自体を見せるのではなく、一度きれいな服として成立させた上で、その内部に少しずつパターンで違和感を残すことを意識しました。
Q4.今季のコレクションの中で、特にORIMIらしさが表れているアイテムやディテールがあれば教えてください。
今季は、KIDS LOVE GAITEとCA4LA、2つのブランドのコラボレーションが象徴的だと思います。CA4LAと制作したハットは、本来リボンが付く部分を靴紐に置き換えています。クラシックな帽子のフォーマットを保ちながら、異なる用途のパーツを持ち込むことで、少しだけ意味や見え方をずらしています。どちらも今季の“Properly Dressed”というテーマを、ハットと革靴という別の角度から補強しているアイテムでもあります。
Q5.前シーズンでは、日常的な衣服に「ズレ」や「違和感」を加えることで、身近なものを少し異なる景色へ変化させていました。今季は、そうしたORIMIらしい感覚をどのように発展させていますか?
以前はプロポーションや身体との関係を造形的に大きく変えることで違和感を作ることもありましたが、今回は社会的で日常的な服のコードそのものに、小さな誤差を入れています。正しい形式を保ったまま、その内側に小さな綻びを残すような感覚です。
Q6.前シーズンと比べて、シルエットや素材、アイテム構成などに変化を感じる部分はありますか?
全体として、前シーズンよりも端正で、少し禁欲的な印象になっていると思います。テーラードジャケットやシャツ、トラウザーズ、ジャンプスーツ、ダービーシューズなど、日常の中で見慣れたアイテムを多く使っています。
Q7.今季のコレクションを制作する中で、これまでのORIMIにはなかった新しい発見や、自分たちのクリエイションに対する気づきはありましたか?
ORIMIにはもともとPUNK的な感覚がありますが、今はそれを表面的な反抗として見せるより、社会のルールを理解した上で、それでも自分の判断を手放さないことの方に感じています。
Q8.今回、東京ファッションウィークでコレクションを発表するにあたり、前回のショーから変わった意識や、新たに見せたいと考えている部分はありますか?
前回よりも、服と人間の関係を見せたいという意識が強くなっています。今回考えているのは、夜が終わって朝5時くらいになり、人が少し乱れた服を整えながら、もう一度社会に戻っていくような時間のような、きちんとした状態に戻ろうとしているけれど、身体や服にはまだ夜の痕跡が残っているようなイメージの人間像です。
Q9.前回のコレクションから今回にかけて、ORIMI自身のものづくりやブランドに対する考え方で、変わったこと/変わらなかったことを教えてください。
ものづくりの根本にある考え方は大きく変わっていませんが、以前よりも幅広いお客様に届けたいという意識は強くなっています。これまでは、ORIMIらしい違和感や強さをどう表現するかに意識が向いていましたが、ブランドとしては今はその感覚を残したまま、リアルクローズとしてどう成立させるかを考えるフェーズなのかな、と考えています。
Q10.今回のコレクションを経て、次のORIMIではどのような景色を見せたいと考えていますか?
これまでは東京という場所でORIMIの世界を作り、それを外に向けて発信してきましたが、これからは実際にもっと外の世界に出ていきたいと思っています。海外で服を見てもらったり、異なる文化や人と関わることで、ORIMIがどう変化するのか自分自身もまだ分かりません。ただ、ブランドを始めた時から、まだ見たことのない景色を見たいという気持ちはずっと変わっていません。東京で作ってきたものを持って次の場所へ行く。2027年春夏コレクションは、その境目にあるコレクションだと思っています。



















