ジェイデン・スミスが示す新生 Christian Louboutin の戦術的フォーマリズム | Interviews
〈Christian Louboutin〉の新メンズ・クリエイティブ・ディレクターに就任したジェイデン・スミス。彼が手がける初の本格展開となる2026年秋冬メンズコレクションが、ついにそのベールを脱ぐ。メゾンのヘリテージに90年代ヒップホップのエッセンス、そして機能性を融合させた新時代のドレスコードについて、パリにいる本人へと迫った。
ジェイデン・スミスが示す新生 Christian Louboutin の戦術的フォーマリズム | Interviews
〈Christian Louboutin〉の新メンズ・クリエイティブ・ディレクターに就任したジェイデン・スミス。彼が手がける初の本格展開となる2026年秋冬メンズコレクションが、ついにそのベールを脱ぐ。メゾンのヘリテージに90年代ヒップホップのエッセンス、そして機能性を融合させた新時代のドレスコードについて、パリにいる本人へと迫った。
1991年の設立以来、官能的かつ洗練されたサルトリアルの美学で世界を魅了し続けてきた〈Christian Louboutin(クリスチャン ルブタン)〉。レッドソールで知られる同メゾンが、そのメンズ部門にクリエイティブ・ディレクターとしてマルチクリエイターのジェイデン・スミス(Jaden Smith)を迎え入れたニュースは、世界中に大きな衝撃を与えた。
2026年1月に発表されたカプセルコレクション「Avant-Première(アヴァン・プルミエール)」に続き、6月3日(水)、ジェイデン・スミス就任後初、本格展開となる2026年秋冬メンズコレクションがリリースされた。それは、メゾンが誇るクチュールの精神に、ストリートウェアのコードやインダストリアルな機能美を大胆に衝突させた、躍動感あふれるシューズ&バッグたち。
ジェイデンが、今季の着想源としたのは、歴史を創造してきた「働く男たち(Working Men)」の姿と「現代のルネサンス・マン」。コレクションでは、〈Christian Louboutin〉の持つサルトリアルなエレガンスをベースに、1990年代ヒップホップカルチャーやゴープコア、さらにはジェイデン自身のシュルレアリスティックな感性を融合。グロッシーな塗料が溶け出したような表情を持つ“MOLTON TRAPMAN”(スライド1枚目/37万7300円)、友人のモイセス・アリアスが撮影したパリの写真をレザーに直に施したブーツ“TRAPMAN TCT”(スライド2枚目真ん中/28万2700円)、実験的かつ彫刻的なフットウェアが彩る。
また、バッグやアクセサリーにおいても、“タクティカル・フォーマル”という独自の思想を展開。シューズコレクションと調和するカタチで、各面に複数ポケットを備えた多機能デザインバッグ“NOSTALGIC MULTI-POCKET ALT BUMBAG L”(スライド3枚目/56万6500円)をはじめ、実用性とラグジュアリーを横断するアイテムが揃う。
パリでの次なる仕掛けに向けて動き出しているジェイデンに、今回、そのクリエイティブの核心に迫る10の質問を、『Hypebeast Japan』はオンラインインタビューで投げかけた。
“マルチ・ジェネレーション(多世代)にわたるデザイン哲学です。Christian Louboutinというメゾンは、言わば「空に浮かぶ赤いお城」のようなもの
Hypebeast:ご自身のキャリアのこのタイミングで、Christian Louboutinのメンズ クリエイティブ・ディレクターを引き受けた理由は何だったのでしょうか?
Jaden Smith:ある日突然、思いがけない電話がかかってきたんです。クリスチャン・ルブタンが僕に会いたがっているという伝言でした。その瞬間は本当に意外というか、彼が僕に会いたがってくれていることにものすごく驚きました。数年前に一度お会いしたことがあったので、光栄に思いました。
実は、僕は長い間、Christian Louboutinのファンでもありました。昔はよく母のクローゼットに入っては、そこにChristian Louboutinのシューズがあるのを見ていましたし、姉たちも長いこと愛用していましたから。それに、僕の親友のモイセス・アリアス(Moises Arias)もいつもメンズシューズを履いていました。彼とは一緒に『Misfits(ミスフィッツ)』というブランドを14年間共同で運営しているのですが、いつも身近にChristian Louboutinの存在があったんです。当時はボストンでNew Blanceと一緒にシューズのデザインをしていて、すごくエキサイティングな活動をしていた最中で、そこに突然この話が来ました。その後、実際にロンドンでクリスチャンに会ってミーティングをしたのですが、僕たちは本当に似た者同士で、すごく意気投合しました。
ジェイデンさんにとって、初の本格コレクションとなる今季(2026年秋冬コレクション)は、「働く男たちの歴史」からインスピレーションを得ていると聞きました。このアイデアはどこから生まれたのでしょうか?
僕のデザインのすべては「学び(研究)」から始まるんです。何か新しいことを学び、研究し、それがデザインの基盤になります。今回のアプローチを始めた時、僕は働く男たちの歴史に目を向け始めました。(Christian Louboutinのもともとの)コレクションの中にある“Corteo(コルテオ)”のようなドレスシューズやペニーローファーを見て、こうした靴の歴史について考えたんです。
靴を通じて、時代を超えた「働く男たち」に思いを馳せ、石工、写字生、医師、作家、詩人、そして歴史上の偉大な思想家たちからインスピレーションを受けました。このコレクションは、そうした職業の歴史を表現すると同時に、次世代の男性たちをも表現しています。言わば、豊富なテクノロジーにアクセスでき、世界の中で自分が進みたい道を選択できる「現代のルネサンス・マン(万能人)」のような存在です。それこそが、このコレクションの背景にある本当のインスピレーションですね。
今回のコレクションには、フォトグラフィやシネマ(映画)的なアプローチが強く感じられます。ご自身のクリエイティブな背景が、どのようにこのアプローチに影響を与えたのでしょう?
クリエイティブ・ディレクターであるということは、ただデザインをするだけのことではないと思っています。キャンペーンの方向性を決めたり、ビジュアルスタイルを持ったり、継続し進化していく「デザイン言語」を持つということ。そして、コミュニティを築くということでもあります。
映画製作の側面について言えば、当然ながら僕は映画を作る家系の出身ですし、映画の撮影現場で育ちました。だから監督たちともすごく親しいですし、カメラがとにかく大好きなんです。僕の親友もフォトグラファーであり俳優なのですが、お互いに映画に囲まれて育ちました。彼は写真を撮るのが大好きで、僕はミュージックビデオを撮るのが大好きです。そんな風にカメラを通じて、彼からカメラやフィルムについて多くのことを教えてもらいました。ですから、それが僕のやりたいことの核心にあります。僕は映画を作ることが本当に大好きで、とにかくカメラを愛しています。それはクリエイティブ・ディレクターとしての、僕の表現や言語の一部になっています。
シューズデザインの中で、最も「象徴的(代表的)」だと思うモデルはどれですか?
コレクションの中で一番気に入っているのは“TCT 1(下スライド1枚目)”ですね。すごく個性的ですし、このコレクションにおいて僕のデザイン言語が本格的に現れ始めた1足なので、大好きなシューズです。あと“TRAPMAN TCT 2(下スライド2枚目)”も同じくらい気に入っています。
でも、もし僕がビーチにいて、Christian Louboutinらしい最高の夏を過ごしているとしたら、SUMMER FLAT(サンダル)もすごく好きです。たくさんの靴を挙げちゃっていますけれど(お気に入りをいくつか絞るなら、)これらを挙げさせていただきます。
ヒップホップカルチャーとフォーマルの融合には、どのようにバランスを取ってアプローチしたのでしょうか?
ファッションと音楽の間には、本当に長い間、ある種の統合やコラボレーションが行われてきたと感じています。お互いに深くインスピレーションを与え合っていると思うんです。そして、ヒップホップカルチャーは世界中の非常に多くのファッショントレンドのインスピレーションの普遍的な中心にあります。ヒップホップカルチャーが受け継いできた遺産は世界のどこにでも見られますし、まさに世界的な現象になっていますよね。
ですから、アフリカ系アメリカ人のデザイナーである僕が、この伝統あるパリのファッションハウスに加わるということは、アフリカ系アメリカ人の男性としての僕自身、僕の歴史、僕の文化の要素を持ち込むということだと信じています。ヒップホップは、僕の文化や僕のルーツの遺産に深く根ざしているものです。自分らしくあり、最高レベルの自分を表現することなしには、僕は何も作ることができません。
ヒップホップカルチャーとファッションが、フォーマルなドレススタイルという文脈で融合することは、とても力強いステートメント(主張)になります。それは時代の象徴であり、人類の進化の兆しでもあるんです。だから、ここにいられること、長年培われてきたクチュールの世界に僕のビジョンをこのような形で共有できることを、本当に誇りに思っています。
「未来の男性のフォーマルウェア」とは、あなたにとって具体的にどのようなものを指しますか?
僕にとって大切なのは、世界が変わり、物事がものすごいスピードで進化している中で、ファッションや人々のクリエイティブな精神も進化し続けられるようにすることです。ファッションとは、人間の内側にあるクリエイティブな精神の反映にすぎないと感じているからです。すべての創造性は、その精神の現れなんです。
ですから、僕のビジョンを通じてクリエイティブな精神を進化させ続けたいと考えています。かつて僕自身が過去にインスピレーションを受けて人生を生き、変化を起こそうと思ったように、人々をインスパイアしたいんです。そして、自分自身の最高のバージョンになりたいと思っています。
今回のデザインの中で、最も「自分らしい」と感じるピースはどれですか?
“THE ENNIO(上写真/52万9,100円)”ブーツですね 。カウボーイブーツを素晴らしい形で再解釈したもので、全面に写真がドレープのようにあしらわれています。これは僕が何者であるかを大きく表しているピースだと思います。誰もが知っているお馴染みのものをベースにして、原型が分からなくなるほど新しいものに変えてしまう。あのシューズは本当にお気に入りの一つで、僕をよく表しています。
もう一つ、僕をよく表しているのは“PADDLE”です。僕たちが持っている服装において、異なるドレスコードを実際に変えていくこと。僕にとって、今回の取り組みはそこが本質でもあります。世界の中に、新しいスタイルや新しいドレスコードを作り出すことなんです。
例えば、従来のフォーマルウェアがありますよね。そこに、僕が今回手がけた『TCT(タクティカル)』フォーマルという概念を持ち込むんです。このTCTコレクションには、新しいフォーマルウェアのあり方のアイデアが詰まっています 。タキシードやスーツに、こうしたベストやバッグ、個性的なシューズを合わせます。ダブルのスーツを着て、足元に“PADDLE”を合わせる。それは、他人のイベントや夜、昼の雰囲気をぶち壊して悪目立ちするような反抗的な態度ではなく、自分自身が何者であるかをエレガントに表現するステートメントになります。誰も不快にさせたいわけではなく、自分らしく自己表現をしたいんです。そこには「TCTフォーマル」があり、同時にどこかシュルレアリスム(超現実主義)的なフォーマルさもあります。この“PADDLE”は、僕のデザイン言語の中でも、そうした少しシュールな側面が表現されたお気に入りのピースです。
今回はバッグにも注力していると伺いましたが、バッグをデザインする際のアプローチは、シューズの場合とどのように異なりますか?
僕は常に機能性を重視してデザインしているので、アプローチはかなり違いますね。シューズは地面と接するもの。足がその中に入り、一日中それを履いて歩き回り、フォーマルなイベントにも履いていきます。
バッグは違います。フォーマルな場に持っていけるバッグは限られていますが、僕たちは「タクティカル(機能的・戦術的)なフォーマルバッグ」を作りたいと考えました 。それがベストタイプのバッグ“TATCTICAL HARNESS I((上スライド2枚目/26万4,000円)”)”を作った理由です。“HARNESS BAG”のアイデアの根底にあるのは、スーツを着ている時に「ポケットに物を入れたくない」という問題です。ポケットに物を詰め込むと、形が崩れて台無しになってしまいますし、見た目も良くありません。スーツを着る時はポケットに物を入れるべきではないんです。
だからこのベストタイプの“HARNESS BAG”を身につけて、その中にすべてを収納できるようにしたいと考えました。そうすればスラックスのシルエットも綺麗に保てます。結婚式でスラックスのポケットに鍵や財布、スマホを詰め込んだら、スーツのシルエットが台無しになってしまいますからね。スラックスは完璧な状態で見せたいものです。結婚式で撮る写真は、誰かの家の壁に飾られる大切なものになりますから、完璧な姿でいたいですよね。“HARNESS BAG”があれば、すべての荷物を持ち歩きながら、スーツのラインやシルエットを崩すことなく、やりすぎない上品な形で自己表現ができます。それが“HARNESS BAG”に込めたアイデアです。
今回のコレクションは「チャプター1(第1章)」と表現されていますが、このプロジェクトの今後の展開について、どのようなビジョンをお持ちですか?
未来に何が起こるかを今から憶測したくはありませんが、このデザイン言語をさらに進化させ続け、コミュニティを築いていきたいと考えています。僕たちのデザインが目指すゴールについて世界的な認知を広げ、ファッション業界におけるクリエイティブな精神を進化させ続けたいと思っています。
最終的に、このコレクションを通じて一番伝えたかったメッセージは何でしょうか?
このコレクションを通じて伝えたい主要なメッセージの一つは、人々が「自分自身を表現する能力」そのものです。みんなに自分を表現してほしい。それを身につける前よりも、自分自身を強く、パワフルに感じられるようなものをまとってほしいんです。
僕がこれまでデザインされたものの中で一番大好きなのが「バットマンの衣装」なのですが、その理由は、誰であれあれを身につけると、自分が変わったように感じるからなんです。いつもと違う自分になり、行動まで変わる。それって、世界に変化を起こすということですよね。身につけた人の内面に変化を起こし、その人自身のために、より良い行動を起こさせるようなものをデザインしたい。自分のクリエイティブな精神を信じられるように、です。「ジェイデンがこんなことをやっている、ジェイデンがあんなものを創り出しているなら、僕にだって絶対にできるはずだ」と思ってもらえるように、世界にそういう効果をもたらしたいんです。それが1つ目、みんなが自分を表現できるようにすること。
2つ目、そして3つ目は、マルチ・ジェネレーション(多世代)にわたるデザイン哲学です。Christian Louboutinというメゾンは、言わば「空に浮かぶ赤いお城」のようなものです。その中には家長(家族の頭)がいて、父親がいて、長男がいて、そして末っ子がいます。いま僕が挙げたこれらの名前は、クリスチャン ルブタンというメゾンにおける、異なる表現のあり方を示しています 。服、そしてシューズやバッグを通じて、それぞれの靴に合わせて着こなしを変え、自己表現をしていく 。そして「あらゆる人々のためのものである」という視点から何かをデザインする。それこそが、このコレクションの核にある大きなインスピレーションです。
ありがとうございました!
Jaden Smith(ジェイデン・スミス)
俳優、ラッパー、シンガー、デザイナー、そして環境活動家としてマルチに活躍するアメリカのクリエイター。俳優のウィル・スミスを父に持ち、映画『幸せのちから』でデビュー。音楽シーンではオルタナティブなヒップホップを展開する傍ら、自身のブランド〈Misfits〉の運営や、過去に〈New Balance〉とのコラボシューズ制作など、ファッション界でも独自の存在感を放つ。ストリートとモードを自由に往来する感性が高く評価され、2026年には〈Christian Louboutin〉初のメンズ・クリエイティブ・ディレクターに就任。
ジェイデン・スミスによる〈Christian Louboutin〉2026年秋冬コレクションは、2026年6月3日(水)より、『クリスチャン ルブタン 銀座店』などの各店舗、および公式オンラインで発売開始。(本文中の価格は全て税込)






















