気鋭ブランド CORTLANE ── カルチャーとクラフトが交差する“ストリート”ウェア | Interviews
〈Nike〉Waffle Racerのカスタムから岡山のものづくりまで ── “リミックス”という思想で紐解く
気鋭ブランド CORTLANE ── カルチャーとクラフトが交差する“ストリート”ウェア | Interviews
〈Nike〉Waffle Racerのカスタムから岡山のものづくりまで ── “リミックス”という思想で紐解く
2027年春夏シーズンよりスタートする気鋭ブランド〈CORTLANE(コートレーン)〉。ローンチ間もないブランドながら、そのシーズンビジュアルはひときわ強い印象を残す。なかでも目を引くのは、ルックに登場するモデル全員が〈Nike(ナイキ)〉のシューズを着用していることだ。
ブランドの世界観を構築するうえで、足元まで自社で統一するケースは少なくない。そのなかで、あえて〈Nike〉を選択した理由とは何なのか。それは単なるスタイリングの選択なのか、それともブランドの思想やカルチャーと結びついた意図的な表現なのか。シーズンビジュアルには、〈CORTLANE〉というブランドを理解するためのヒントが散りばめられているように映る。
デザイナーのSumiya Shunは、ブランドと並行して古着ショップ『summer of love(サマーオブラブ)』も運営。同ショップは、以前『Hypebeast Japan』でインタビュー(内容はこちら)を行ったHatsukiが手がける『blue room』と同じテナントに店を構えており、その背景には古着やストリートカルチャーとの深い接点があることもうかがえる。
では、Sumiya Shunはなぜ今、新たなブランドを立ち上げたのか。そして、生産背景を積極的に発信する理由や、ものづくりに込めた思想とは何か。本稿では〈CORTLANE〉の展示会を訪れ、そのプロダクトとカルチャーの両面から、新たなブランドの輪郭を紐解いていく。
ブランドだけではなく、ものづくりの現場や地域そのものにも価値が還元されるような活動を続けていきたい
Hypebeast:CORTLANEというブランドを立ち上げようと思った最初のきっかけを教えてください。
Sumiya Shun:東京のストリートカルチャーの歴史をベースに、ファッションそのものだけでなく、その背景にあるコミュニティや時代ごとの価値観まで表現できるブランドを作りたいと思ったことが、〈CORTLANE〉を立ち上げたきっかけです。僕は現在、『blue room』と『summer of love』という2つのショップを運営しています。『blue room』では1990-2000年代初頭を中心としたストリートブランドを、『summer of love』では〈COMME des GARÇONS〉や〈Yohji Yamamoto〉、〈Maison Margiela〉、〈Stone Island〉といったデザイナーズブランドや、それらの文脈を持つ古着を扱っています。
9年間ショップを運営するなかで一貫して提案してきたのが、ストリートブランドとデザイナーズブランド、あるいはラグジュアリーブランドをミックスするスタイルでした。例えば〈Hermès〉のコートに〈Stüssy〉のデニムを合わせるような、一見異なるカルチャーや価値観が交差する着こなしです。そうしたミックス感こそが東京らしいスタイルのひとつだと考えています。〈CORTLANE〉は、その延長線上にあるブランドです。東京の街を見ても、デザイナーズブランドに〈Nike〉を合わせたり、ストリートブランドにラグジュアリーアイテムを組み合わせたりするスタイルは、ごく自然なものとして根付いています。そうした既存のカテゴリーに収まらない東京独自の感覚を、自分たちなりの視点で形にしたいと思いました。
また、流行の消費だけで終わらず、長く価値が残る服を作りたいという思いもあります。これまでショップを通じて見てきたカルチャーや洋服の歴史、そして東京のストリートシーンの空気感を背景に、新しい提案として〈CORTLANE〉をスタートさせました。
ブランド名であるCORTLANEにはどのような意味が込められていますか?
雑誌を眺めていたときに、ジャズミュージシャンのジョンコルトレーン(John Coltrane)の名前が目に留まって、“R”と“L”を入れ替えたら耳馴染みのいい響きになるんじゃないかと思ったのがきっかけです。“Coltrane(コルトレーン)”よりも“CORTLANE(コートレーン)”の方が自然に口に出しやすく、新しい言葉として成立する感覚がありました。また、CORTLANEで検索しても当時は何も出てこなくて、それも魅力でした。ブランドが成長していくことで、CORTLANEという言葉自体に新しい意味を与えられたらいいなという思いも込めています。あともともと僕自身、車に乗ると最初に流すプレイリストはいつもジョンコルトレーン(John Coltrane)から始まるくらい好きなミュージシャンなので。そうした個人的な愛着と、新しい言葉を生み出したいという思いが重なって、〈CORTLANE〉というブランド名が生まれました。
CORTLANEの『Instagram』では工場や職人の姿をかなり前面に出されています。なぜあえて生産背景まで公開しようと思ったのでしょうか?
生産背景を公開すること自体が、ブランドとしての立ち位置や価値観を伝える方法のひとつだと考えています。僕にとって工場や職人もブランドを構成するコミュニティの一員なので、そのプロセスも含めてオープンに共有することで、お客様にもものづくりに参加しているような感覚を持っていただけたら嬉しいです。その結果として、1着をより長く愛用してもらえたらと思っています。
クラフトマンシップを発信するブランドは増えていますが、僕が一番大切にしているのは「どうやって服が作られているのか」をできるだけわかりやすく伝えることです。生産背景を知ることで、「この服はこういう場所で、こういう人たちが、こういう道具を使って作っているんだ」と想像できるようになる。それは服への愛着だけでなく、ものづくりそのものへの興味にもつながると思っています。
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将来的には、日本のストリートブランドやものづくりの文化を次の世代へつないでいくことも目標のひとつです。だからこそ、生産背景を隠すのではなく積極的に見せることで、若い世代にも「こういう仕事があるんだ」と知ってもらうきっかけになればと考えています。
その考え方を象徴するプロダクトのひとつが、今回のコレクションで展開するオリジナル生地のスウェットです。このスウェットは和歌山県の工場で製作しています。生地にはアメリカ産コットンと日本製の糸を使用し、希少なアズマ編み機でゆっくりと編み立てました。アズマ編み機ならではの、空気を含んだような柔らかな風合いを生かしながら、表糸には空紡糸を採用することで、着込むほどに表情が深まる質感を目指しています。また、生地の厚みや軽さ、保温性のバランスも何度も試作を重ねながら調整しました。派手なデザインではなく、素材や編み方、仕立てといった目に見えにくい部分にこそ、このブランドらしさが宿ると考えています。
完成した服だけでなく、その1着が生まれるまでの工程や、携わる職人たちの仕事まで含めて届けたい。それが、〈CORTLANE〉のものづくりです。
クラフトマンシップを見せること自体が目的なのではなく、ご飯を食べたり歯を磨いたりするように、「糸はこうやって作られている」「服はこういう工程で生まれる」ということを当たり前に伝えていく。その考え方が、とても印象的でした。
僕がやりたいのも、まさにそこで。例えば最近は岡山の工場によく足を運んでいるんですが、世界的なラグジュアリーブランドの製品を手掛けるほど高い技術を持つ工場がたくさんあります。それなのに、岡山という街自体はファッションの文脈でそこまで注目されているわけではない。その状況には以前から違和感がありました。もちろん工場は海外ブランドからの仕事も多く、仕事に困っているわけではありません。ただ、僕たちが岡山で受注会を開催したり、ブランドを通じて人が街に足を運ぶきっかけをつくることで、生産地や職人にも自然と目が向くような流れを生み出せたらと思っています。
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その取り組みの一つとして、岡山の店『Poppinsch(ポッピンシュ)』で受注会を開催します。今後も毎シーズン継続しながら、ブランドだけではなく、ものづくりの現場や地域そのものにも価値が還元されるような活動を続けていきたいですね。
今シーズン特に印象的だったのがルックです。モデル全員がNikeのシューズを着用していましたが、これはブランドとして意図した演出なのでしょうか?
このファーストシーズンでは、〈Nike〉のWaffle Racerをベースに、Nike Tokyoの協力のもと、スタッフ用のルームシューズと〈CORTLANE〉でカスタムを施したモデルをルックで使用しました。単なるスタイリングではなく、ブランドとしての提案のひとつとして取り入れています。毎シーズン、その時々のテーマに合わせて新しい見せ方や提案を発信していきたいと考えています。
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Waffle Racerについても詳しく教えていただけないでしょうか?
Waffle Racerは、〈Nike〉のランニングカテゴリーのモデルです。僕にとっては昔から思い入れのある1足で、特に印象に残っているのが、2002年頃に〈Junya Watanabe〉が手がけたコラボレーションでした。その後も〈UNDERCOVER〉や〈Off-White™️〉など、ストリートカルチャーを象徴するブランドとの協業が続いていて、自分の中では“ストリートとファッションをつなぐ存在”というイメージが強くあります。
今回このモデルを選んだのは、ちょうど一般市場ではあまり注目されていないタイミングだったことも理由のひとつです。実際、探し回った末にようやく見つけて購入し、〈CORTLANE〉でカスタムを施しました。
またルックでは、撮影に参加したスタッフや友人全員にこのシューズを履いてもらいました。18歳の頃からの友人やスタイリスト、ショップの仲間、そして〈Nike〉のスタッフまで、ブランドに関わるコミュニティが一堂に会した1枚になっています。イメージしたのは、『CUTiE』の“STUSSY TRIVE”のような、時間が経つほど価値を持つ集合写真です。10年後に振り返ったとき、このブランドの原点として残るようなルックにしたいという思いがありました。
また先ほども話したように、ファーストシーズンではNike Tokyoからシューズのサポートも受けています。海外では、〈Nike〉が若手ブランドにシューズを提供し、それぞれのブランドが独自にカスタムしてルックで発表する取り組みが以前から行われています。その後、正式なコラボレーションへ発展するケースも少なくありません。日本ではまだそうした動きは多くありませんが、海外で築かれているカルチャーを日本でも広げていきたいという思いがありました。今回のWaffle Racerも、その挑戦の第一歩として取り組んだプロジェクトです。
Nikeというブランドのどんな思想に共感していますか?
僕にとって〈Nike〉は、単にシューズを作っているブランドではありません。ストリートという言葉を聞いたとき、多くの人が最初に思い浮かべるブランドのひとつだと思います。それは優れたプロダクトを作り続けてきたからというだけではなく、長い時間をかけてカルチャーやコミュニティを築いてきたからこそだと感じています。そこには強いリスペクトがあります。僕自身も、いつか「東京のストリートブランドといえば?」と聞かれたときに、真っ先に〈CORTLANE〉の名前が挙がるようなブランドを目指しています。
だからこそ、プロダクトづくりでも間口の広さを大切にしています。誰もが手に取りやすい価格帯のアイテムがありながら、ブランドとしてのデザイン性もしっかりと感じられること。そのバランスを意識しながら、ファーストシーズンでは全33型を展開しました。多くの人に開かれたブランドでありながら、〈CORTLANE〉らしさを感じてもらえるコレクションを目指しています。
今回の展示会場では、ベンチも非常に印象的なインスタレーションの一部だと思います。このベンチについても教えてください。
今回のベンチは、〈CORTLANE〉の世界観を表現するインスタレーションとして制作しました。脚部には焼き加工を施した欅材を使用し、その上から樹脂でコーティングすることで奥行きのある質感を表現しています。天板には石材のタイルを採用し、それぞれ異なる素材の表情が引き立つようにデザインしました。
着想源になったのは、ショップメンバーであるHatsukiが普段履いている〈Nike〉Air Max 95のデザインです。ただ、それ以上に僕の中で大きかったのは、ベンチという存在そのものでした。僕にとってベンチは、人が自然と集まり、会話が生まれる場所です。普段から店の前のベンチに座ってデザインを考えたり、アイデアを整理したりすることも多くて、〈CORTLANE〉のインスピレーションも、そうした何気ない時間の中から生まれています。だからこそ、ブランドを表現するなら、まずベンチを作ることから始めたいと思いました。
制作は、ショップ『pressure』の内装なども手掛ける松岡さんに協力していただきました。僕たちが普段から関わっている人たちと一緒に形にすることも、このブランドにとって大切なことだと思っています。展示会のためだけの什器ではなく、会期後はショップの前に設置し、これからも人が集まり、コミュニケーションが生まれる場所として使い続けていく予定です。
改めて見ると迫力ありますね。
ありがとうございます。フラッグに目がいきがちなんですが、実は一番見てほしいのはベンチの脚部なんです。細部まで丁寧に仕上げてもらっていて、本当に気に入っています。制作の過程も印象的でした。最初は「こんな雰囲気にしたい」というイメージをAIでビジュアル化して、それをベースに打ち合わせを進めたんです。ブロックの素材を選んだり、「ここは欅でいこう」と相談しながら形にしていきました。
完成後に聞いた話なんですが、制作を担当してくださった方は、最初に渡したイメージがAIで作ったものだとは思わず、「実際に誰かが制作した写真」だと受け取っていたそうなんです。構造的にはそのまま再現するのが難しいデザインだったらしくて。最終的には、イメージをそのままなぞるのではなく、構造や強度まで考えながら、より完成度の高い形へと落とし込んでいただきました。結果的に、AIが描いたイメージを職人の技術が超えてくれた感覚があって、それもすごく印象に残っています。
『summer of love』も運営されていますが、そのキュレーションとCORTLANEにはどのようなつながりがありますか?
『summer of love』は、〈CORTLANE〉の原点ともいえる存在です。これまで『blue room』とともに店舗を運営し、ストリートブランドとデザイナーズブランドを掛け合わせたスタイルを提案してきました。CORTLANEが目指しているのも、その延長線上にあります。ただ異なるジャンルを組み合わせるのではなく、東京という街で人々が日常的に実践している着こなしや感覚を再編集し、新しいスタイルとして提案したいと考えています。
海外から見ても、そうしたスタイルは東京ならではのカルチャーとして映るはずです。僕はそれを“リミックス”だと捉えています。さまざまなカルチャーやブランド、価値観を東京らしい感覚で組み合わせ、新しい文脈として発信していくこと。それこそが〈CORTLANE〉のものづくりの根底にある考え方です。
デザインを始める際、一番最初に考えるのは素材・シルエット・ストーリーのどれですか?
一番最初に考えるのは、ストーリーですね。例えば、今回のレザーのトートバッグは“MILK BAG”という名前を付けています。“MILK”は、18歳の頃から付き合いのある友人の名前です。僕が東京へ出てきた頃、彼がたくさんの友人を紹介してくれて、そのつながりが今でもコミュニティとして続いています。彼には昔からトートバッグを持っているイメージがあって、その姿を思い浮かべながらデザインを進めました。〈L.L.Bean〉の定番トートのような普遍性をベースに、ストラップの幅やレザーの質感、付属するポーチまで、“MILKらしさ”を追求していったんです。完成したバッグを本人に見せたところ気に入ってくれて、「MILK BAG」という名前も快く受け入れてくれました。
他にもボンバーブルゾンは、バイク乗りだった父が昔着ていたレザージャケットの記憶が出発点になっています。シルエットや素材感にも、そのイメージを重ねながらデザインしました。だから僕にとって服づくりは、素材やシルエットから始まるというよりも、人との思い出や日常の風景、記憶のようなストーリーから形になっていくことが多いですね。
そのような背景を踏まえた上で、CORTLANEらしさとはなんですか?
僕にとって〈CORTLANE〉らしさとは、自分自身がブランドの意思決定を続けることだと思っています。時代によって表現やアプローチは変わっていくかもしれません。でも、“ストリート”という言葉の本質から離れないことが、ブランドらしさを守ることにつながると考えています。
僕が思うストリートは、誰かから与えられるものではありません。仲間と一緒に「これが格好いいよね」と本気で思えるものを積み重ねていくカルチャーです。外部からの評価や支援を求める前に、まずは自分たちの価値観や感覚を信じること。その姿勢を大切にしたいと思っています。
もちろん、ブランドを続けていく中ではビジネスや環境など、さまざまな要素と向き合わなければなりません。それでも、原点は友人たちと「これ、格好いいよね」と語り合っていた時間にあります。その感覚を失わずにものづくりを続けること。それが、僕にとっての〈CORTLANE〉らしさだと思っています。
最後にCORTLANEとしての今後の展望について教えてください。
今回がファーストシーズンだったので、次の2027年秋冬シーズンではコレクションの型数をさらに増やす予定です。現在も新しいサンプルを作り続けながら、次のシーズンに向けた準備を進めています。国内で展示会を開催した後は、パリでショールームを開き、本格的に海外でのセールスにも挑戦したいと考えています。すでに海外のショップからいくつか声をいただいていますが、まずは以前からつながりのある小規模なショップとの取り組みから始めていきたいですね。パリへの挑戦は、僕の中ではブランドにとって本当のスタートラインです。すぐに結果が出るとは思っていませんが、これまでも海外へ足を運びながら経験を積んできたので、不安よりも楽しみの方が大きいです。
また、レディースラインの展開も視野に入れています。ただ、今は「やりたいこと」がたくさんある一方で、焦って広げるのではなく、ブランドとして何を優先すべきかを見極めながら進めていきたいと思っています。
まずは一歩ずつ挑戦を重ねながら、国内だけでなく海外にも〈CORTLANE〉の世界観を届けていきたいと思っています。
CORTLANE(コートレーン)
2027年春夏シーズンより始動した東京発のファッションブランド。ストリートウェアとデザイナーズファッションが交差する東京独自のカルチャーを“リミックス”という視点で再編集し、現代的なプロダクトへと昇華する。工場や職人を含めたコミュニティをブランドの一部と捉え、生産背景まで積極的に発信する姿勢も特徴。東京のストリートカルチャーを起点に、国内外へ新たな価値観を提案する。
Sumiya Shun
〈CORTLANE〉デザイナー。古着店『summer of love』を運営し、『blue room』や『pressure』といった東京のヴィンテージ/ストリートシーンと密接に関わりながら活動。ストリート、デザイナーズ、ラグジュアリーといった異なる文脈を横断する独自の審美眼を背景に、“東京ならではのリミックス”をテーマとしたものづくりを行う。コミュニティや生産背景、日常の記憶をデザインの起点とし、東京のストリートカルチャーを次世代へつなぐことを目指している。




















