ロサンゼルス発 Flamingo Estate の“ホスピタリティ”に満ちたクラフトマンシップ | Interviews
注目セルフケアブランドの日本上陸にあわせて来日した共同創設者 ハービーにインタビューを実施
ロサンゼルス・ハイランドパークの丘の上、生い茂る緑のなかに佇む淡いピンク色の邸宅。1940年代に建てられたこの美しいスパニッシュ・リバイバル様式の家『Flamingo Estate(フラミンゴ・エステート)』こそが、各界のセレブリティからラブコールを受けるライフスタイルブランドの実験室であり、すべての始まりの場所だ。
創業者のリチャード・クリスチャンセン(Richard Christiansen)とアーロン・ハービー(Aaron Harvey)が目指したのは、無骨になりがちな園芸の世界に“デザインと文化”を融合させること。すべては、自宅の排水が庭のバラを枯らしてしまったという、ある日の小さな事件から始まった。「自身の肌につけたくないものを、なぜ使い続けるのだろう?」。この問いをきっかけに誕生したブランドは、コロナ禍に地元の困窮した農家を救う野菜ボックスの考案を経て、注目の一大セルフケアブランドへと急成長を遂げた。
彼らのものづくりは今、ハワイ、ブータン、メキシコなど、世界中のあらゆる“シティ”とのコラボレーションまで幅を広げている。ヘリコプターでしか行けないニュージーランドの活火山で採れる医療級のマヌカハニーや、メキシコで“1年に1日だけ咲く花”から紡がれるバニラオリーブオイル。失われゆく自然の美しさを、〈Flamingo Estate〉というブランドを通して、日々の暮らし豊かにする“道具”へと昇華させていく。
去る3月某日、ブランドの待望の日本上陸にあわせて揃って来日したリチャードとハービー。東京・銀座『和光』での関係者を招いたトークイベントも大きな反響を呼ぶなかで、共同創業者であるハービーが『Hypebeast Japan』のインタビューに応じてくれた。彼らの内に秘められたものづくりへの圧倒的な情熱や、そのクリエイティビティへの美学、そして満を辞して上陸した日本への愛までを存分に語ってもらった。
Hypebeast:まずは、Flamingo Estateがどのようなブランドか、簡単にご紹介いただけますか?
アーロン・ハービー:Flamingo Estateは、私たちが実際に暮らしている“家”であり、すべてのプロダクトが生まれた場所でもあります。ロサンゼルスに深く根ざし、この街のスピリットから多くのインスピレーションを受けているブランドですが、何より私たちはここを“ホスピタリティブランド”だと定義しています。
ここでいうホスピタリティとは、他者だけでなく“自分自身をもてなすこと”です。キッチンのオリーブオイルや洗面所のハンドソープなどを通して、家を訪れる人に心地よい時間を提供すること。同時に、日々の暮らしの中で自分自身をいたわるための、小さな儀式や時間をつくり出すことを大切にしています。
“Flamingo Estate”という印象的な名前には、どのような意味が込められているのでしょうか?
もともとは、私たちの住む家そのものの名前に由来しています。丘の上に建つ淡いピンク色の邸宅なのですが、その色合いがまるでフラミンゴの羽の裏側のように見えたことから、そう呼ばれるようになりました。
ブランドもその家からスタートしたため、自然とその名前を受け継ぎました。もし最初からビジネスとしてブランド名だけを考えていたなら、別の名前になっていたかもしれません。けれど、すべてがそこから始まったからこそ、この名前を選ぶことが最も自然で、誠実な選択だったと感じています。
ライフスタイルという分野に着目し、このカテゴリーでブランドを立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。
大きなきっかけのひとつは、私たちの自宅にある2階建てのバスハウスでした。中央にバスタブがあり、使った排水を循環させて庭のバラの水やりに再利用する、環境に配慮した仕組みにしています。
当時、お気に入りだった市販のボディウォッシュを使っていたのですが、その排水を与え続けるうちにバラが枯れてしまったのです。そのとき、植物にも害のない、本物の自然由来成分で作られたソープの必要性に気づかされました。「自分の肌につけたくないもの、バラに与えたくないものを、なぜ今まで使っていたのだろう?」という問いが、すべての始まりです。
私たちは、Flamingo Estateを“よりよく生きるための道具”のような存在だと考えています。バスルームやキッチン、日々の習慣のためのアイテムを展開しているのも、自分たちが暮らしの中で「こういうものがあればいいのに」と感じたものを形にした結果。最初は自分たちのために作ったものを、今は世界中と共有している感覚ですね。
最初に手掛けたプロダクトと、その背景にあるストーリーを教えてください。
実を言うと、最初に作ったプロダクトは野菜ボックスでした。
コロナ禍の真っ只中、ある女性農家の方と出会ったんです。彼女は、レストランの営業停止によって出荷先を失い、とても困窮されていました。農業は利益率が低く、たった2週間注文が止まるだけでも致命的な打撃になります。私のパートナーであるリチャードはオーストラリアの農家育ちで、高校時代に家族の農場を失った経験があるため、彼女の話に強く心を動かされました。
私たちはこれまでに広告やグラフィックデザイン、アートディレクションのキャリアを積んできたので、そのスキルを活かして彼女をサポートすることにしました。野菜を私たちのオフィスの駐車場まで持ってきてもらい、美しいボックスに詰め、SNSで魅力を発信して販売したのです。
初週はごく少量の予定でしたが、想像以上の反響を呼び、翌週には倍、その次の週にはさらに倍へと拡大。最終的には、15台のトラックがロサンゼルス中を走り回って野菜ボックスを届ける一大プロジェクトになりました。
この経験が、もともと素晴らしい価値を持つ自然の恵みを、新しい形で世の中に届けるという大きなきっかけになったんです。私たちは“Mother Nature is the last great luxury house(自然こそが、最後の偉大なラグジュアリーハウスである)”と考えています。洗練されたパッケージやクリエイティブはファッションやビューティに向けられがちですが、野菜や農産物、自然素材にこそ、同じような美しさや品格を与えられるべきだと思ったんです。
そうした洗練されたクリエイティブのスキルは、以前どのようなお仕事を経験される中で培われたのでしょうか?
リチャードは、20年以上続くクリエイティブエージェンシー Chandelierの創業者です。これまでにHermèsやCartierといったラグジュアリーブランドから、GAP、Old Navyまで、数多くのブランドのクリエイティブを手掛けてきました。
一方、私も近い業界にいましたが、少し異なるアプローチの経験を持っています。Flamingo Estateに本格的に関わる前は、Off-Whiteのコンサルティングや、バーチャルインフルエンサーの先駆けであるリル・ミケーラを生み出したテクノロジー企業 Brudで仕事をしていました。
そこで培ったSNSやデジタルカルチャーへの深い理解と、リチャードのラグジュアリーにおける知見。このお互いの異なるバックグラウンドが重なり合ったことが、今のFlamingo Estateのユニークなアイデンティティに繋がっています。
プロダクト開発はどのようなプロセスで進められているのですか?
私たちのものづくりは、まず“素材”から始まります。
ある特定の季節や収穫期に、生産者の方々から「今、最も素晴らしい素材や香りがある」と提案をいただき、その素材を主役に据えて商品開発を逆算していくのです。常に素材がすべての中心にあります。
また、“香り”も非常に重要な要素です。バス/ボディ製品やキャンドルの多くは、香りからインスピレーションを得て発想します。私たちが目指しているのは、その素材や香りを通して、使う人をどこか遠くの庭や、ある特別な瞬間、あるいは愛おしい記憶へと連れていくこと。そうした情緒的な体験こそが、ものづくりの出発点になっています。
レブロン・ジェームズとのハニーのコラボレーションは、どのようなきっかけで始まったのでしょうか?
著名人とのコラボレーションの多くは、とても自然な形でスタートします。まずはその方自身がブランドの熱心なお客様であり、そこから「一緒に何か面白いことをやろう」という話に発展していくのです。
レブロン・ジェームズとのプロジェクトでは、彼の自宅に蜂の巣箱を設置し、その土地に咲く花々から蜂たちが蜜を集めました。1シーズンかけてじっくり採蜜し、完成したハチミツを瓶詰めして限定販売しました。そして、その売上の100%をLeBron James Family Foundationに寄付したんです。
こうしたプロジェクトを通じて、チャリティや社会貢献に還元することを私たちはとても大切にしています。また、ハチミツはワインと同じように、その土地のテロワールや季節をそのまま映し出します。例えば柑橘の花が多ければ、味わいにも柑橘のニュアンスが生まれる。つまり、そのハチミツを味わうことで、レブロンが見ている世界や空気感を間接的に体験してもらえるような、特別な試みでもありました。
ハービーさんが特にお気に入りのFlamingo Estateのプロダクトは?
それを選ぶのは本当に難しいですね。自分の子どもたちの中からお気に入りを選ぶようなものです(笑)。どのプロダクトも同じように特別な存在ですから。
でも、あえてひとつ挙げるならハンドソープです。毎日、何度も使うものだからこそ、手を洗うという何気ない行為が、小さくても大切な日々の“儀式”に変わります。素晴らしい香りと心地よいテクスチャーが、日常のふとした瞬間を少し特別な時間にしてくれる。最も頻繁に生活に寄り添ってくれる存在として、今の一番のお気に入りですね。
今回、日本での展開を決めた理由を教えてください。
理由はたくさんありますが、何よりリチャードも私も日本という国が大好きで、海外展開をするなら絶対に真っ先に来たい場所だったからです。
そして、日本のお客様や文化は、Flamingo Estateの哲学と非常に高い親和性があると感じていました。私たちのプロダクトは、単に見た目が美しいだけでなく、希少な原料の背景にあるストーリーや、緻密な調香のプロセス、そこにある職人たちの物語にこそ本当の価値があります。
そうしたディテールやストーリーを、熱量を持って受け取ってくださる場所として、日本はこれ以上ない理想的な市場でした。ここにはクラフツマンシップや物語への深い敬意があります。だからこそ、Flamingo Estateが根を張り、成長していくのにふさわしい場所だと確信しました。
実際に日本のどのようなところに魅力を感じていますか?
本当に、すべてです。食文化は素晴らしく、人々はとても親切で洗練されています。個人的には、日本の写真文化も大好きです。
日本には、美に対する卓越した審美眼だけでなく、それを完璧に形にする圧倒的な実行力があります。そしてなにより、細部への凄まじいこだわりが生きていますよね。私たちもものづくりにおいてディテールを最も大切にしているので、その精神には深く共感します。唯一無二のもの、小さな専門性を極めたもの、こだわり抜かれた文化が街の至る所に溢れていて、本当に魅力的だと思います。
来日イベントを開催されて、来場者の反響はいかがでしたか?
想像をはるかに超える素晴らしいリアクションをいただき、本当に感激しています。
Flamingo Estateがアメリカでここまで成長できた背景には、常に“コミュニティ”の存在がありました。今回の来日で日本の新しい方々と出会い、友人になれたことは、まさにそのコミュニティが日本でも始まりつつある兆しだと感じています。私たちにとって、人と直接会い、血の通った関係を築くことこそが、最も誠実なブランドの広がり方。今回の滞在は、その最高のスタートになりました。
最後に、今後の展望について教えてください。
これからのプロセスは、日本との実りある“対話”の始まりだと考えています。Flamingo Estateと日本との会話が、今ようやく始まったところです。
私たちは日本から多くのことを学び、謙虚に成長していきたいと思っています。単にビジネスとして規模を拡大するだけでなく、世界への理解をより深め、ブランドとしての表現を豊かなものにしていきたい。その第一歩が日本であり、将来的にはヨーロッパへの展開も視野に入れています。現在は新しいフレグランスのプロジェクトにも取り組んでおり、今後も皆さんに驚きを届けられるような、さまざまな展開を予定しています。どうぞ楽しみにしていてください。
なお、〈Flamingo Estate〉は現在『和光』にて先行ローンチイベントを開催中。定番のキャンドルやソープブリック、ハンドソープ、ローションのほか、和光限定商品も展開されているので、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
Flamingo Estate: Pleasure from the Garden
会期:5月21日(木)〜6月3日(水)
時間:11:00-19:00
会場:和光 本店地階 アーツアンドカルチャー
住所:〒104-8105 東京都中央区銀座4丁目5-11 地階






















