XLIM ── “見慣れたもの”を再構築する、ソウル発のクリエイション|Interviews
“INFINITE(無限)”を掲げる〈XLIM〉創設者 Dohee Kimに訊く、ブランドの哲学とものづくり、ソウルから日本へ
XLIM ── “見慣れたもの”を再構築する、ソウル発のクリエイション|Interviews
“INFINITE(無限)”を掲げる〈XLIM〉創設者 Dohee Kimに訊く、ブランドの哲学とものづくり、ソウルから日本へ
2021年に韓国・ソウルでスタートした〈XLIM(エックスリム)〉。スタイリストとして活動してきたDohee Kim(ドヒ・キム)が率いる同ブランドは、ファッションを軸にしながらも、音楽、建築、アート、空間など、さまざまな領域へと活動の幅を広げている。その根底にあるのは、“INFINITE”という言葉に象徴される、表現の可能性に限界を設けない姿勢だ。
〈XLIM〉が大切にするのは、「見慣れないものを身近に、見慣れたものを新鮮に見せる」こと。既存の素材やシルエット、機能を独自の視点で組み合わせ、見慣れたものに新たなバランスを与えていく。その考え方は、コレクションを一つの連続した物語として捉える“EPISODE”のという形式や、“Nature”、“Recombination”、“Color”というクリエイションのキーワードにも通じている。
先日、日本で初となるポップアップを開催した〈XLIM〉。韓国の国花であるムクゲを日本の桜へと置き換えた日本限定アイテムには、異なる文化が交わる場所で既存のものを再解釈するという、ブランドらしいアプローチが込められている。
ソウルという都市で培われた感覚、スタイリストとしての経験、そしてジャンルを越えて広がり続ける〈XLIM〉の現在地。Dohee Kimに、そのクリエイションとブランドの未来について訊いた。
好きな人たちと、自分たちが得意なことを長く続けていけるチームをつくりたい。それがXLIMの始まりでした
Hypebeast:まず、XLIMがどのようなブランドなのか教えて下さい。
Dohee Kim:XLIMは、僕たちが見て、感じて、経験してきたものを、自分たちなりの方法で再解釈し、表現するブランドであり、チームでもあります。僕たちが大切にしているのは、「見慣れないものを身近に、見慣れたものを新鮮に見せる」ということです。素材やシルエット、機能など、すでに存在する要素をXLIMの視点で組み直すことで、新しいバランスをつくり出しています。
ブランドコンセプトである“INFINITE”には、どのような意味が込められているのでしょうか?
“INFINITE”には、XLIMの可能性に限界を設けないという意味を込めています。ファッションからスタートしましたが、ファッションというひとつの領域だけに留まりたいとは考えていません。音楽、空間、家具、建築、アートなど、僕たちが興味を持つあらゆるものがXLIMの言語になり得ると考えています。
2021年にXLIMをスタートした背景には、どのような思いがあったのでしょうか?
20代はスタイリストとして活動しながら、自分の好きな服やイメージを通して、自分の考えを表現してきました。30代を目前にして、一人で何かを上手くやることよりも、似た考えを持つ人たちが集まり、ひとつの目標に向かって、自分たちの好きなものを一緒につくっていきたいという気持ちが強くなっていきました。最初から大きなブランドをつくろうと考えていたわけではありません。好きな人たちと、自分たちが得意なことを長く続けていけるチームをつくりたい。それがXLIMの始まりでした。
映画を学び、スタイリストとして活動してきた経験は、現在のXLIMにどのようにつながっていますか?
映画を学ぶ中で、ひとつのシーンをつくるためには、イメージ、音楽、空間、人物など、さまざまな要素が同時に作用していることを学びました。また、スタイリストとして活動する中では、服によって人のイメージや雰囲気がどのように変化するのかを数多く経験してきました。
現在のXLIMでも、1着の服だけを見るというより、コレクション全体のイメージや空間、音楽、スタイリングまでをひとつのシーンのように捉えています。“EPISODE”や“SYNOPSIS”という名称を使っていることも、そうした経験から自然につながっているのだと思います。
XLIMはファッションだけでなく、建築やアートなど、さまざまな分野のクリエイターと協働しています。その理由を教えてください。
異なる分野の人たちが出会うことで生まれる、予想していなかった結果に惹かれます。XLIMのチーム内にもそれぞれ異なるバックグラウンドを持つメンバーがいますし、外部のクリエイターと仕事をするときも、それぞれの視点が混ざり合うことで、僕たちだけでは生み出せなかったものが生まれると感じています。そうしたプロセス自体が、XLIMの掲げるINFINITEにもつながっています。
XLIMではコレクションを“EPISODE”という形式で展開しています。この方法を選んだ理由は何でしょうか?
XLIMのコレクションを、それぞれ独立したシーズンとしてではなく、ひとつの連続した物語として捉えているからです。ひとつの“EPISODE”が終わると、その過程からまた新しい考えや問いが生まれ、それが次のEPISODEへとつながっていきます。XLIMという長い物語の中に、それぞれのシーンが少しずつ積み重なっていくようなイメージです。
一つ一つの“EPISODE”は、どのようなアイデアやプロセスを経てコレクションへと発展していくのでしょうか?
スタート地点はさまざまです。ひとつの素材から始まることもあれば、映画のワンシーンや空間、自然の中で見つけた形や色から始まることもあります。最初から明確な答えを決めるのではなく、ひとつの興味や関心からスタートして、チームで話し合いながら素材やシルエットを実験し、少しずつ具体化していきます。デザインやパターン、サンプルを何度も修正していく中で、最初に考えていたものとはまったく違う結果にたどり着くこともありますが、そうしたプロセスそのものも大切にしています。
XLIMが掲げる“Nature”、“Recombination”、“Color”という3つのキーワードは、XLIMのクリエイションにおいてどのような意味を持っていますか?
“Nature”は最も根源的なインスピレーションであり、“Recombination”はXLIMがそれを捉える方法、そして“Color”はそれを表現するためのひとつの言語だと考えています。自然や日常の中で見つけた見慣れた要素をそのまま使うのではなく、一度分解し、再び組み合わせることで見慣れないものへと変えていく。そのプロセスは、XLIMのものづくりの方法ととてもよく似ています。
XLIMの服づくりにおいて、デザインや製作の面で最も大切にしていることは何でしょうか?
素材とシルエット、そして実際に着たときのバランスを最も大切にしています。実験的なデザインであっても、最終的には服なので、人が着たときに自然で魅力的に見えることが重要です。そのため、生地の開発や加工からパターン、サンプルまで自分たちで確認しながら、完成度を何度も調整していきます。
異なる要素を組み合わせる際、XLIMならではのバランスはどのように見つけていくのでしょうか?
決まった公式があるわけではありませんが、あまり多くのものを一度に見せすぎないことは大切にしています。見慣れない素材やディテールを使うのであれば、シルエットはあえて馴染みのあるものにすることもあります。逆に、馴染みのある素材であれば、フォルムを少し大胆にすることもあります。見慣れたものと見慣れないもの、その間にある適度な緊張感を探すことが、XLIMらしいバランスにつながっていると思います。
XLIMにとって、ソウルという都市はどのような存在ですか?
ソウルは僕が生まれ、ずっと暮らしてきた都市なので、意識しなくても自然とXLIMの中に入り込んでいると思います。非常に速いスピードで変化しながら、古いものと新しいものが同時に存在し、整ったものと整っていないものがすぐ隣り合わせにある街です。個人的には、そうしたコントラストにとても惹かれています。
ソウルや韓国のカルチャーは、現在のXLIMのクリエイションにどのような影響を与えていますか?
“韓国らしさ”を直接的に見せようとしているわけではなく、僕たちがソウルで暮らしてきた中で自然と形成された感覚そのものが、XLIMに反映されているのだと思います。街のスピード感や人々の服の着方、ストリートで目にする色や構造、古いものと新しいものが急速に混ざり合っていく様子などが、意識しなくてもデザインやイメージに影響を与えています。
今回、日本で初めてポップアップを開催することになった背景を教えてください。
XLIMをスタートして以来、日本では継続的に多くの方々に関心を持っていただいてきました。また、僕たちにとっても日本は以前から重要なマーケットであり、文化的にも強く関心を持ってきた場所です。オンラインやセレクトショップを通してだけではなく、日本のお客様にXLIMのプロダクトや空間を直接体験してもらえる機会をつくりたいと以前から考えていました。今がそれをお見せするのに良いタイミングだと感じ、今回のポップアップを開催することになりました。
現在の日本のファッションシーンをどのように見ていますか?
日本には以前から、それぞれの人が自分の好みやスタイルを深く掘り下げていく文化が根付いていると感じています。トレンドが速いスピードで変化する一方で、特定のブランドやスタイル、カルチャーについて長い時間をかけて深く追い続ける人が多いことも印象的です。そうした環境の中で、XLIMが日本のお客様にどのように受け入れられ、どのような形で成長していけるのか、僕たち自身も楽しみにしています。
最後に、今後XLIMをどのようなブランドへと発展させていきたいですか?
今よりも有名なブランドになること自体より、XLIM独自の基準やカルチャーを持ったチームとして、長く存在し続けたいと考えています。ファッションを軸にスタートしましたが、これからは家具やオブジェ、空間、音楽、アートなど、さまざまな領域へ自然に広げていきたいです。そして時間が経っても、何かを見たときに「これはXLIMらしい」と感じてもらえるような、僕たち独自の言語をつくり続けていくことが目標です。
XLIM(エックスリム)
2021年に韓国・ソウルでスタートしたファッションブランド。スタイリストとして活動してきたDohee Kimが率い、ファッションを軸に、音楽、建築、アートなど多様な領域を横断するクリエイションを展開する。“INFINITE”をコンセプトに掲げ、「見慣れないものを身近に、見慣れたものを新鮮に見せる」という独自の視点から、素材やシルエット、機能を再構築。コレクションを連続する物語として捉え、“EPISODE”という形式で発表している。


