なぜ Vans の Authentic は60年間支持され続けてきたのか?ブランドヒストリアンが語る“型破り”の原点|Interviews
ブランドアーカイブ担当兼ヒストリアンのキャサリン・アコスタに聞く、Authenticの普遍性と日本との知られざるつながり
なぜ Vans の Authentic は60年間支持され続けてきたのか?ブランドヒストリアンが語る“型破り”の原点|Interviews
ブランドアーカイブ担当兼ヒストリアンのキャサリン・アコスタに聞く、Authenticの普遍性と日本との知られざるつながり
〈Vans(ヴァンズ)〉が、一夜限りのイベント “Vans Presents: The Authentic Night”を、7月21日(火)に東京・原宿の『The Hall & The Tunnel』で開催した。1966年の創業から60周年という節目と、同年に誕生したブランドの原点であるAuthentic(オーセンティック)を祝うもので、Authenticにスポットライトを当てたブランドキャンペーン “Off The Wall”の集大成となる。
会場では、ケージで囲まれたクォーターパイプを舞台にしたスケートジャムセッション “Skate in a Cage”や、DJイベント、シューズおよびTシャツのカスタムワークショップなどを実施。さらに、1960年代の写真や歴代の広告、シューズを通して、Authenticとその派生モデルで〈Vans〉初のスケートシューズでもあるEra(エラ)の歩みをたどる“Authentic Heritage Wall”も展開された。
今回、その展示のために米国本社から来日したのが、〈Vans〉のブランドアーカイブ担当兼ヒストリアンを務めるキャサリン・アコスタ(Catherine Acosta)だ。アーカイブから選び抜いた貴重なピースとともに、ブランドの60年にわたる歴史を東京へと運んできた彼女に、Authenticが長く支持されてきた理由やアーカイブを構築する仕事、そして〈Vans〉と日本の知られざる関係について話を聞いた。
Hypebeast:Authenticが60年間にわたって支持され続けてきた理由を、どのように考えていますか?
キャサリン・アコスタ:Authenticが60年間にわたって支持され続けてきたのは、タイムレスで、非常にシンプルかつモダンなデザインだからだと思います。〈Vans〉がこの形のシューズ自体を発明したわけではありません。ただ、創業初期からクラフツマンシップに関わる細かなディテールを追求し、そのスタイルを完成させていきました。もうひとつ重要なのは、Authenticがもともと機能的なボートシューズとしてデザインされ、その後、1970年代にスケートボーダーたちによって取り入れられたことです。それによって、シューズに新たな文化的意味が加わりました。本来はスケートボードのために作られたものではないのに、スケーターたちが自分たちのためのシューズとして使い始めた。それは、パンク・ムーブメントに見られるのと同じDIY 精神を反映した “Subversive(反抗的、既成概念を覆す)” 行為だったと思います。Authenticは、後に生まれる〈Vans〉の“Off The Wall”なスケートシューズの原型にもなりました。シンプルだからこそ、履く人が新しい意味やスタイルを与えられる。そのことも、長く支持されている大きな理由だと思います。
そうした歴史を発掘し、保存するのがキャサリンさんの役割ですね。改めて、ブランドアーカイブ担当兼ヒストリアンとは、どのような仕事なのでしょうか?
毎日違う仕事をしています。整理され、適切に選定されたアーカイブコレクションを構築するには、非常に多くの作業と組織的なサポートが必要です。単に物を集めて保管するだけではありません。それぞれのピースについて調査し、コレクションの中でどのような意味を持つのか、なぜ重要なのかを理解することにも時間をかけています。日々の業務では、マーケティングやプロダクトのチームをサポートすることもあれば、新しく入社したスタッフにブランドの歴史を伝えることもあります。アーカイブは、さまざまな部門と関わりを持っているんです。
アーカイブピースは、どのように集めているのですか?
社内のデザインチームと連携しながら、サンプルを収集しています。彼らにとって何が重要なのかを理解すると同時に、市場で何が重要視されているのかも観察しています。eBayなどのオンラインマーケットで購入することもあれば、コレクターから直接買い取ることもあります。時にはフリーマーケットで見つかることもありますね。今回展示した1992年〜1993年頃のSonic Youth(ソニック・ユース)のカスタムシューズも、もともとはハリウッドのサンセット・ブルヴァードにあった「Tower Records(タワーレコード)」で働いていた女性がeBayに出品していたものです。調べていくと、彼女が私と同じオフィスで働く〈Vans〉の社員と知り合いだったことが分かり、直接やりとりすることになりました。彼女はSonic Youthの大ファンで、レコード会社の担当者からそのシューズを贈られたそうです。アーカイブには、シューズと一緒に贈られた当時の手紙も保管しています。現役の社員や元社員、コレクターをはじめとする人々のネットワークも、我々のコレクションを構築するうえで非常に重要です。
日本のコレクターからピースを集めることもありますか?
現在は、日本で積極的に探しているわけではありませんが、今後はぜひ日本のコレクターともつながりたいと考えています。以前、日本のブログで、ごく初期のMOONEYES(ムーンアイズ)と〈Vans〉のコラボレーションシューズを見たことがあります。米国側の視点からは確認できていないピースでした。日本の個人コレクターのもとには、まだ多くの素晴らしいアイテムが眠っているはずです。
今回、日本に持参したピースは、どのような基準で選びましたか?
〈Vans〉が持つユニークな歴史とカスタマイゼーションの関係、そして、それが異なる時代のカルチャーやファッションとどのように交差してきたのかを伝えられるものを選びました。例えば、Sonic Youthのシューズは、アルバム『Dirty』のプロモーション用として少数のみ製作されたもので、アメリカ人アーティスト、マイク・ケリー(Mike Kelley)の作品 “Dirty Bunny”が使われています。その一方で、ファッションとの関わりを物語るのが、2018年の〈Vivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウエストウッド)〉とのコラボレーションです。さらに、今年の春に発表された〈Supreme(シュプリーム)〉とのコラボレーションにも再びマイク・ケリーの作品が使われており、Sonic Youthのシューズと並べることで、アートとの関係が現在まで続いていることを表現しました。加えて、初期のAuthenticとEraも持参しています。2つのシューズの進化と関係性を見せることで、〈Vans〉の歴史を立体的に伝えたいと考えました。
“Authentic Heritage Wall”で、特に見てほしかった部分を教えてください。
まずは、写真に写っている細かなディテールに注目してほしいです。例えば、古いシューズボックスや、アナハイムにあった最初の店舗兼工場の写真には、〈Vans〉の最初期のロゴである“House of Vans”のオーバル型ロゴが写っています。大きな出来事だけでなく、そうした小さな変化を追うことでも、ブランドの歴史を知ることができます。実物のシューズについても同様です。ヒールタブの表記やインソールのデザインなど、時代ごとに少しずつ異なります。最初期には“House of Vans”と記されたヒールタブがあり、その後、“Van”、そして“Van Doren”へと変化していきました。シルエットだけを見れば大きく変わっていないように感じるかもしれませんが、細部を見ると、それぞれの時代が表れているんです。
Vansの歴史において、日本はどのような存在なのでしょうか?
日本市場における〈Vans〉の歴史を考えると、1990年代から本格的に市場をスタートさせましたが、それ以前に1970年代にEraが登場した頃、〈Vans〉は『Skateboarder』や『Skateboard World』といったスケートボード専門誌に広告を掲載していました。それらの雑誌は日本を含む海外にも流通していて、広告を見た読者は郵便を使って〈Vans〉のシューズを注文することができたんです。アーカイブには、当時、日本のような遠い場所からもメールオーダーが届いていたことを示す資料が残されています。確定的な記録ではありませんが、1970年代に日本でスケートをしていた人々が、Eraを郵便で取り寄せていたと考えることができます。また、現代的なスケートボードの誕生においても、日本とのつながりがあります。カリフォルニア州ベニスやサンタモニカを拠点に活動したZ-Boysには、日系アメリカ人のペギー・オキ(Peggy Oki)とショーゴ・クボ(Shogo Kubo)が所属していました。彼らはAuthenticを履き、後にはEraを履いていました。日本と〈Vans〉の関係は、日本国内で商品が販売されるようになってから始まっただけではありません。スケートボードカルチャーが形作られた最初期の段階から、すでに存在していたと言えると思います。
ブランドキャンペーンの第一章、第二章の詳細は、リンクからチェックしよう。
キャサリン・アコスタ(Catherine Acosta)
〈Vans〉ブランドアーカイブ担当兼ヒストリアン。ブランドが60年にわたり蓄積してきたシューズや広告、写真、資料などのアーカイブの収集・調査・保存を担い、その歴史や背景を次世代へと伝える役割を務める。社内外のコレクターや元社員、デザインチームなどとのネットワークを通じて、ブランドの歴史における重要なピースを発掘。〈Vans〉とスケートボード、音楽、アート、ファッションとの関係性を紐解きながら、アーカイブを通してブランドの文化的背景を伝えている。
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