HB20:HUF キース・“スウィーツ”・マレーが語る原点と現在
グラフィックTシャツという共通言語が繋ぐ〈HUF〉と『Hypebeast』
HB20:HUF キース・“スウィーツ”・マレーが語る原点と現在
グラフィックTシャツという共通言語が繋ぐ〈HUF〉と『Hypebeast』
『Hypebeast』は創設20周年を記念し、特別展「Hypebeast Twenty Exhibition」を2026年1月17日(土)から2月2日(月)まで、『渋谷PARCO』にて開催する。これにあわせ、長年の友人でありクリエイティブパートナー、そしてストリートウェアシーンを代表する影響力あるデザイナーやキーパーソンたちと共に、限定Tシャツコレクションを制作した。
アメリカ発のスケート・ストリートウェアブランド〈HUF(ハフ)〉は、故プロスケートボーダー キース・ハフナゲル(Keith Hufnagel)によって設立。サンフランシスコの小さなブティックからスタートし、いまやスケートカルチャーの精神を体現する世界的ブランドへと成長を遂げた。時代に左右されないクリーンなデザインとDIY精神を軸に、スケートボードに必要な機能性と、日常に溶け込むスタイルを両立したアパレルやフットウェアを展開している。創業当初から掲げてきた「ストリートウェア、スケートボード、スニーカーカルチャーを融合させる」という理念は、現在の〈HUF〉にも色濃く息づいている。ブランドを象徴するリーフロゴや大胆なグラフィックは、単なるデザインアイコンにとどまらず、ハフナゲルが築き上げたカルチャーとコミュニティへの敬意を体現する存在へと進化した。〈HUF〉のレガシーは、妥協のないクオリティへのこだわり、そしてスケートコミュニティの力を信じ続けてきた姿勢の上に築かれている。流行や市場の変化が激しいストリートシーンにおいても、〈HUF〉が長年にわたり確かな影響力を保ち続けている理由は、その揺るぎないスタンスにある。
今回、そんな〈HUF〉のキース・“スウィーツ”・マレー(Keith “Sweets” Murray)にインタビューを実施。ブランド創設者 キース・ハフナゲルのスピリットがどのように現在の〈HUF〉へと受け継がれているのか、そしてスケートカルチャーと共に歩み続けるブランドの現在地について、彼自身の言葉から紐解いていく。
しっかりとした基盤と明確な価値観があれば、時代がどの方向に進もうとも、新しいアプローチで流れに乗ることができる
Hypebeast:デザインを始めてからどれくらいになりますか? また、HUFで働き始めてからの期間についても教えてください。
キース・“スウィーツ”・マレー:2004年7月からHUFに在籍しており、気づけば20年以上になります。ただ、最初からデザインに携わっていたわけではなく、私のスタート地点はリテールでした。サンフランシスコのサッターストリートにあった1号店の創業クルーの一員として携わり、当初はショップの運営を担当していました。その後、スニーカーとアパレルの店舗に隣接するスケートショップの立ち上げと運営にも関わるようになります。またブランドが成長するにつれ、HUFはグローバルな卸売事業へと拡大し、フットウェアやアパレルの本格展開をスタートしました。その過程で、私はグローバルセールスを率い、リテール部門を統括する立場へと移行していきました。現在は、COOとしてブランド全体の運営に携わっています。振り返ると、私自身もHUFと共に成長してきたと言えると思います。
『Hypebeast』が初めてHUFを取り上げたのは、2005年8月の「Diamond Supply Co. x HUF SF」でした。当時、『Hypebeast』を初めて目にしたときの印象を覚えていらっしゃいますか?
当時のHUFは、いまのようなグローバルブランドというより、専門性の高いブティックのひとつでした。さまざまな同業ブランドをキュレーションし、とくにフットウェアに強いこだわりを持っていました。そんななかで、『Hypebeast』は私たちにとって、ローカルなシーンを越えて世界と繋がるための新しい窓口のような存在でした。HUFのストーリーやスタンスを、グローバルなオーディエンスに届けてくれるメディアだと感じていたんです。私は物心ついた頃からスケートボードに親しみ、同時にスニーカーヘッズとしても育ちました。だからこそ、『Hypebeast』が発信するコンテンツには強く共感できました。スケートやスニーカーを軸にしたライフスタイル、そしてカルチャーに根ざした視点は、私たちHUFが目指していた方向性と自然に重なっていたと思います。
HUFは長きにわたりに『Hypebeast』に登場し続け、読者からの共感を集めてきました。ブランドとしての一貫性と時代の変化にどのように対応してきましたか?
私たちが大切にしているのは、スケートボードというルーツに忠実であり続けることです。その一方で、成長や進化を恐れず常に受け入れてきました。そのバランスこそが、一貫性を保つうえで最も重要だと考えています。創業当初から、グラフィックやクオリティ、そしてストーリーテリングに至るまで、すべてのプロダクトに明確な意図を込めてきました。単にモノを作るのではなく、カルチャーそのものを大切にする姿勢を貫いてきたんです。また、私たちのコラボレーションは、マーケティング目的のものではありません。そこには、長年築いてきたリアルな関係性や共通する情熱があります。そうした誠実さと力強いストーリー、そしてコミュニティとの深い繋がりが、HUFらしさを失うことなく前進し続ける原動力になっていると思います。
あなた自身の仕事、そしてHUFというブランドは、今後どのように進化していくと考えていますか?
これからは、これまで以上に深いストーリーを語り、より意識的にアクションを起こしていくことが重要になってくると思います。HUFは今後もグローバルな展開を続けていきますが、その一方で、私たちを形作ってきたカルチャーに根ざし続けることを忘れることはありません。これまで、数多くの著名なアーティストとコラボレーションを行ってきましたが、同時に次の世代を担う存在を育てていくことにも強い情熱を持っています。アーティストやミュージシャン、写真家など、さまざまなクリエイターをサポートし、彼らが活躍できる場を生み出し続けることは、私たちにとって非常に重要な役割です。そうしたクリエイティブコミュニティとの関係性こそが、HUFの大きな特徴であり、ブランドを前に進める原動力でもあります。このエネルギーを絶やすことなく、これからも進化を続けていきたいですね。
『Hypebeast』では20周年を記念して、20型のコラボTシャツをリリースします。グラフィックTシャツは長年ストリートウェアの中核を担ってきましたが、なぜこれほどまでに文化的な意味を持つ存在なのでしょうか? また、その役割はどのように変化してきたと感じていますか?
グラフィックTシャツは、カルチャーにおける“白紙のキャンバス”のような存在だと思います。アイデアを伝え、アイデンティティを表現し、ストーリーを語る。そのすべてを、最もダイレクトなかたちで実現できる手段のひとつです。時代とともに、Tシャツは単なる日常着から、コレクターズアイテムへと進化してきました。いまでも“着るもの”であることに変わりはありませんが、その一枚一枚には、歴史やノスタルジア、そして意味が何層にも重なっています。グラフィックTシャツの役割自体は、昔から大きく変わっていません。ただ、その奥行きが、より深くなった。それこそが、今もなおこのアイテムがカルチャーの中心にあり続ける理由だと思います。
長年にわたりブランドを運営してきたなかで、特に大きな学びだと感じていることは何でしょうか?
大切なのは、基盤に忠実であり続けながら、創造性とビジネスの両面で進化し続けることです。業界は常に、そして驚くほど速いスピードで変化しています。その流れに適応できなければ、すぐに取り残されてしまうでしょう。ただし、しっかりとした基盤と明確な価値観があれば、時代がどの方向に進もうとも、新しいアプローチで流れに乗ることができる。HUFがこれまで歩んできた道のりは、そのことを教えてくれました。
次世代のクリエイターや新規ブランドに向けて何かアドバイスをするとしたら、どんなことを伝えたいでしょうか?
まずは忍耐強く、自分たちのビジョンを信じることです。本物を作り、時間をかけて正しい形で積み重ねていく。その姿勢が何よりも大切だと思います。そして、コミュニティとの繋がりを常に大切にし、「なぜ自分たちはこれをやっているのか」という問いを見失わないでほしい。歴史を先人たちから学びながら、明確な目的を持ってクリエイションしていくことが重要です。本当に長く続くブランドには、必ず揺るぎない“声”があります。どんなトレンドが訪れようとも、その声に忠実であり続けること。それこそが、ブランドを永続させる鍵だと思います。
Hypebeast Twenty Exhibition
会場:PARCO MUSEUM TOKYO(渋谷PARCO 4F)
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1
会期:2026年1月17日(土)〜2月2日(月)
時間:11:00-21:00
※入場は閉場の30分前まで
※最終日は18時閉場
※営業日時は変更となる場合がございます。渋谷PARCOの営業日時をご確認ください。
















