西山徹が語る新Tシャツブランド Buffer ──“余白”からカルチャーを繋ぐ、新しいTシャツのかたち | Interviews

〈WTAPS〉や〈DESCENDANT〉を手がけてきた西山徹が、新たに始動した〈Buffer〉。それは単なるブランドではなく、80〜90年代のユースカルチャーを次世代へと橋渡しする“緩衝材”のような存在を目指す。その想いはどのようにプロダクトへ落とし込まれているのか。本人の言葉から、その本質に迫る。

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1989年。中学2年生、14歳だった西山徹は、東京・南平台周辺でスケートボードに明け暮れていた。そんなある日、藤原ヒロシとSKATE THINGに会い、自分から声をかけたという。「スケボーをしよう」と。それをきっかけに彼らと行動を共にするようになり、藤原ヒロシの家に入り浸ったり、原宿の名店『A Store Robot』に通ったりしながら、NIGO®️や高橋盾といった、のちに裏原カルチャーを形づくる面々と出会っていく。

あるとき、その仲間たちと藤原ヒロシの実家を訪れる機会があった。カブトムシを捕りに行くチームと、行かないチーム。NIGO®️と西山は、後者だった。年齢的にも最年少だった西山にとって、NIGO®️は自然と話しかけやすい存在だったという。そこで深まった関係は、30年以上経った今も続いている。

その延長線上に、2026年春ローンチの〈Buffer(バッファ)〉がある。NIGO®️のオファーを受けるかたちで、西山は新たなブランドをスタートさせた。

そこにあるのは、かつて自分が体験してきた、アフタースクールのような時間だ。先輩と後輩が自然に集まり、カルチャーがゆっくりと受け継がれていく感覚。80〜90年代のUSカルチャーのヒストリーやコンテクストを、次の世代へと手渡していくための装置として〈Buffer〉は設計されている。当時のプライス感を再現しながら“本物”を届けることで、誰もがカルチャーの入り口に立つことができる。

その背景にある想いについて、西山徹に話を聞いた。


“個人的に好きだった音楽とか映画に救われてきた感覚もあって。そういうカルチャーって、嫌なことから自分を守ってくれる存在でもあると思うんです

Hypebeast:なぜ今、新ブランド Bufferを立ち上げたのでしょうか?

西山徹:正直に言うと、“なぜ今これをやろうと思ったか”っていうよりは、NIGO®️さんが構想を持っていて、それを一緒にできないかっていう話をもらった形です。それで、自分がどう関われるかを考えた感じですね。結果的に、それが自分のこれまでの経験やカルチャー観とすごく相性が良かったので、やる意味があるなと感じてスタートしました。

これまでのWTAPSやDESCENDANTとの違いは?

WTAPSは、自分が90年代から2000年代に影響を受けてきたものを、ある種アーカイブ的に洋服として具現化してきたブランドなんです。そして、DESCENDANTはもう少し今の自分、家族ができてからのライフスタイルとか、今の時間軸に近いものをベースにしている。それに対してBufferは、どちらとも違っていて、自分が一番影響を受けた80年代から90年代後半くらいのユースカルチャーにフォーカスしています。映画だったり音楽だったり、いわゆるサブカルチャーと言われるものですね。なので、自分の中では“また別のジャンル”として存在している感覚があります。

Bufferという名前に込めた意味は?

“緩衝材”っていう意味がまずありますよね。あと、昔のインターネットってすごく遅くて、“バッファ中”って表示されて待たされる時間があったじゃないですか。あの“待つ時間”とか“余裕”みたいな感覚もすごく好きで。今って全部が速すぎるので、あえてそういう余白を持つことの価値みたいなものも含めています。

あとは、個人的に好きだった音楽とか映画に救われてきた感覚もあって。そういうカルチャーって、嫌なことから自分を守ってくれる存在でもあると思うんですよね。そういう意味で、“守ってくれるもの”としてのニュアンスも込めています。

リリースに「世代やカルチャーを繋ぐ」とはありましたが、具体的にはどのようなことでしょうか?

僕と、Bufferのグラフィックを担当しているアートディレクターの上山(悠二)くんって、10歳くらい年が離れているんです。でも、すごく普通に会話ができるんですよね。その中で、“知らなかったことを教え合う”みたいな関係性があって、それがすごく面白いなと思っていて。先輩・後輩っていう上下関係というよりは、フラットに情報を交換していく。その感じをそのままブランドに落とし込めたらいいなと思っています。

もちろん、僕と上山くんの関係だけに限らず、さらに若い世代にも開いていきたい。なのでTシャツのプライスも6,600円。世代や価値観のあいだにある距離やズレもポジティブに捉えながら、自分たちが経験してきたカルチャーをグラフィックに落とし込んで、ゆっくりと、でも確実に伝えていけたらいいなと思っています。

そのグラフィックの代表的存在、アイコンのピンクラビット Buffy(バッフィー)は重要な役割を持ちます?

はい。結果的に、そういう役割になりました。Buffyは“案内人”みたいな存在ですね。もともと『不思議の国のアリス』の世界観がすごく好きで、その中のホワイトラビットって、アリスを別の世界に導く役割じゃないですか。それに近い存在として、カルチャーの入り口をつくるキャラクターにしたいなと思っています。昔で言うと、バイト先の先輩が「これいいよ」って教えてくれるような存在。そういう役割を象徴するメタファーとして、Buffyが機能していけばいいなと思っています。

Tシャツブランドと言い切っていい?

まあ、言い切っていいと思います。靴下とか小物もありますけど、基本はTシャツですね。ただ、Tシャツって簡単に見えるけど全然そんなことなくて、むしろすごく難しい。パターンがない分、全部がグラフィックにかかってくるので、そこにどれだけ文脈を乗せられるかが重要になります。

徹さんの“微に入り細に入り”的なこだわりが、BufferではTシャツのグラフィックのみで勝負している感じがします。

自分がTシャツを好きになるときって、やっぱり“背景”があるものなんですよね。そのグラフィックがどこから来ているのか、どういうカルチャーに紐づいているのか。そこがないと、なかなか好きになれない。ただ一方で、“可愛い”とか“なんか気になる”みたいな直感的な入り口もすごく大事だと思っていて。キャラクターも含めて、まずは感覚的に手に取ってもらって、そこから少しずつ、その背景にあるカルチャーを知っていく。そういう流れが生まれるといいなと思っています。その世界観については、原宿にあるインスタレーションスペース『Buffer_DELTA』でも、ムードボードのようなかたちで体感してもらえると思います。

Tシャツを既存のボディではなく、イチからオリジナルボディを制作した理由は?

既存のボディでも全然いいとは思ってるんですけど、どうしても制約があるんですよね。プリントの位置だったり、着ていくうちのヨレだったり。そういう部分をコントロールするには、自分で作った方がいいなと。あとはシルエットですね。80〜90年代のTシャツをベースにしながら、今っぽく感じるバランスに調整しています。

ネックの織りネームまでかなりこだわっていますよね。

ネームタグをめくると、“Pride & Joy”って刺繍してあるんです。これは、1983年の映画『キング・オブ・コメディ』から着想を得ています。

改めて、なぜ80〜90年代を参照しているのか教えてください。

単純に、自分が一番影響を受けた時期だからですね。その時期に服をたくさん触って、カルチャーも吸収しているので、自分の中で一番コアな部分なんです。あと、Tシャツってその時代である程度完成されていると思っていて、それ以降はその繰り返しというか、アップデートの連続かなと。

なるほど。ちなみに、今のファッションシーンについてどう捉えています?

正直、その中にいるとあまり全体は見えてないんですけど(笑)、やっぱり情報のスピードは昔と全然違いますよね。早すぎるがゆえに、好きになる前に次に行ってしまう感じはあると思う。自分はもっと掘り下げて好きになる世代だったので、その違いは感じます。

最後に教えてください。Bufferブランドというより“プロジェクト”に近い存在にも感じますが、そのあたりは?

ブランドではあるんですけど、それだけじゃなくて“仕組み”に近い存在かもしれないですね。Tシャツを売ることが目的というよりは、その裏にある考え方やカルチャーをどう伝えていくか。そのための装置として機能していればいいなと思っています。

貴重なお時間、ありがとうございました。

西山徹が語る新Tシャツブランド Buffer ──“余白”からカルチャーを繋ぐ、新しいTシャツのかたち | Interviews バッファー

西山徹(にしやま・てつ)/クリエイティブディレクター

1974年、東京・渋谷生まれ。1993年、シルクスクリーンを軸としたブランド〈FORTY PERCENT AGAINST RIGHTS〉を友人らとスタート。1996年には、本格的なアパレルブランド〈WTAPS〉を立ち上げ、以降、日本のストリートカルチャーを代表する存在として国内外で支持を集める。2014年にはライフスタイルをコンセプトとした〈DESCENDANT〉を始動。2024年には、次の時代へとカルチャーを紡ぐことを掲げたウェブメディア『Stump』をローンチした。2026年、Tシャツレーベル〈Buffer〉をスタート。

Buffer Store
住所:東京都渋谷区神南1-13-12 1F
時間:11:00〜19:00
定休日:不定休
Instagram:@buffer.jp

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