WRITTEN BY SHIHO WATANABE
LEX は迷いながら人間らしさを体現する次世代ロックスター
PHOTOGRAPHED BY RYUNOSUKE KANAYA
等身大の弱さや葛藤をさらけ出しながら、同世代のリスナーらの心を掴んできたLEX。ロック・ミュージックへの目覚めやさらなる成長の場となる単独アリーナ公演について、そして、自身が大切にする「人間らしさ」についてを語ってくれた
16歳の頃にはiPadでビートを作り、夜を徹してフリースタイルを録音していた少年は、今や日本の若者を代弁するロックスターになった。
2019年にリリースされた初めての正規配信音源『LEX DAY GAMES 4』から7年。ヒップホップを軸にしながら歌とラップを自在に往来し、時に自らの弱さや葛藤さえ曝け出してきたLEXの音楽は、同世代のリスナーの人生と並走しながら、そのスケールを広げ続けている。
自身の弱さや脆さ、暗い過去や葛藤までも音楽に刻み、時には音楽への情熱を見失った瞬間さえ隠すことなく、彼は自分自身を曝け出しながらアーティストとして歩み続けてきた。そんなLEXの言葉と音楽は、同じように歳を重ねてきたリスナーたちの人生にも寄り添い、時に彼らの指針となり、答えとなっていった。
自分のことを“超直感型”と評するLEX。彼が追求するのは、AIには作り出せない“人間らしさ”だ。ZEPPツアーや日本最大級のヒップホップ・フェス「POP YOURS」のヘッドライナーとしての経験を重ねた今、彼は自身最大規模となる『TOYOTA ARENA TOKYO』での単独公演を目前に控える。ステージで全身を使って感情を爆発させ、ファッションや佇まいまで含めて強烈な像を残す姿は、さながら現代のロックスター。
実際に取材日当日、LEXはアコースティックギターを片手に我々の前に姿を現した。音楽の旅路を歩みながら研鑽を重ねるLEXは、今年で24歳を迎える。LEXとしてのライフスタイルを生きながら年齢を重ねていくこと、そしてこれからの未来へ馳せる思いなどを交えて話を聞いた。
Hypebeast:さっき楽屋を覗いたら、アコースティックギターを手にしていてちょっと驚きました。
LEX:はい。アコギとエレキ、どっちも買って。買ってからまだ1カ月経ってないんですけど。最近、70年代のUKロックとかファンク・ロックにめっちゃハマっちゃって。セックス・ピストルズとかラモーンズとかを聴いて、そっから「やりてえ」って。
LEXさんの世代がそうした世代のロックに惹かれるのは、トータルで見た彼らの美意識とか、そういうところも理由にあるんですかね?
めっちゃあると思います。その時代にはファッション・アイコン的なミュージシャンも結構いたと思うし。シド・ヴィシャスとか、存在しているだけでかっこいい。
じゃあ、アーティスト LEXとして新しい扉が開きそうな予感も。
そうですね。これでちょっと開いたら嬉しいな、という気持ちはあります。実際に、そっちの音楽にめっちゃ詳しいバンドの友達と遊ぶこともめっちゃ増えました。レコーディングの仕方も全然変わりましたし。使っているマイクも、みんなで一斉に弾きながら録れるようにコンデンサーマイクからダイナミックマイクに変えました。ギターも打ち込みじゃなくて、アンプから出る音を拾って録音しています。
これまではDTMをフィーチャーした楽曲が多かったと思います。ドラスティックな変化ですね。
ペダルも色々買ったりして。今、USの音楽チャートを見ていても、カントリーが再燃しているし、ここ数年のヒップホップの熱が下火になっている気がして。そうした動きが2年遅れくらいで日本にも来ると思っているんです。今、日本でもヒップホップがめっちゃ流行ってると思うんですけど、その数が多すぎて、みんな誰を聴いたらいいかわからないし、毎週のように誰かが曲をリリースしているような状況だから、自分も新しいやり方を見つけなきゃいけないと思っていて。
最近、ジャスティン・ビーバー『Daisies』のギターリフを弾いているMk.geeとかがロックの熱を押し上げている感じがしているんです。例えば、韓国のKESHIとかも、Mk.geeのサウンドをお手本にしていると思う。はち切れるような、ディストーションが掛かったギターのサウンドに変わっているんですよね。僕もこの間、渋谷のイシバシ楽器にギターを買いに行ったんですよ。「Mk.geeみたいなサウンドを作りたいんですけど、そういうペダルありますか?」って聞いたら、店員の方が「みんな今、それを求めてるんです」って言っていて。品薄だったやつを買わせてもらいました。
“やっぱり一番は、お母さんが曲を聴いてくれてリアクションをくれた時ですかね。それが原点にして頂点というか”
アーティスト活動を始めた初期はSound Cloudを中心に音源をアップロードして、じわじわと同世代の人気を集めていった。そこから、正式に配信を開始したプロジェクトである『LEX DAY GAMES 4』がリリースされたのが2019年。そこから7年という長い年月を経て、今こそアーティスト性が大きく進化するタイミングなのでしょうか?
7年って長いですかね? ヒップホップの大御所には、20年とか30年も活動されている方も多いじゃないですか。だからその中で、”7年”という自分の活動期間が長いというのは「どうなんだろう?」という気持ちもあるんですけど。でも、やっぱりいざ振り返ってみたら確かに色々あったし、そういう意味では長いのかな、とも思います。
最初に音楽を作り出す喜びを覚えたのはいつ、どんなタイミングだったか覚えていますか?
16歳の頃に、iPadバージョンのMPCで、KID FRESINOさんとC.O.S.A.さんの『Love』っていう曲のイントロとアウトロを勝手に引っこ抜いたものをサンプルとして突っ込んで、そこにキックとスネアだけ自分で打って、自分でトラックを再現したことが最初の喜びだった気がします。
ビートをどのように扱えばいいのか、その時すでに習得していた?
Febbさんがインタビューに答えている映像を見たんです。「僕たちはこうやって(ビートを)チョップしています」みたいな動画を見て、見よう見まねで「こういう感じかな?」って。
最初に挑戦したのがサンプリング・ビートだったんですね。
めちゃめちゃ嬉しかったですね。楽しかったですし。ビートと歌の制作では、やっぱり違う楽しさを感じました。そこから「ラップもしてみよう」って興味が移っていくんですけど、当時はすでにタイプビートも流通していたし、それを何個も聴いて、ボイスメモに自分のラップを録音していきました。午後3時から次の日の朝7時くらいまで、ひたすらフリースタイルをやっていた時もあります。その辺りが、自分のファースト・パッションだと思います。
自分が作った曲がインターネットや地元の小さなコミュニティを通して他の人に届く、という点はどうでしたか?自作の曲が他者に受け止められる喜び、というか。
そうだな……最初はゼロ人の会場から始まったんですよね。やっぱり一番は、お母さんが曲を聴いてくれてリアクションをくれた時ですかね。それが原点にして頂点というか。本当にクソみたいな曲だったんですけど、それでも何かしら「ん?この子、何か掴んだな」みたいなリアクションをしてくれたんです。それがすごく嬉しかったですね。
それが、今年はTOYOTA ARENAを埋めるライブを。「自分のメッセージがこんなに多くの人に伝わっているんだ」と実感することはありますか?
やっぱりツアーをやると実感しますね。逆に、それ以外ではあんまり実感はしてないんですけど。お客さんが今の自分をどう捉えてるか、とかはあんまり予測できなくなってるというか。街を歩いていても「いつも助けられています」とか声を掛けてくれることがあるんですけど、逆に僕の方が「それってヤバいな」っていうか。「本当ですか!?」って聞き返しちゃう。
デビューからの7年間、リスナーそれぞれの人生の中にもずっとLEXさんの曲や言葉があったわけじゃないですか。それが何千、何万人という人の支えになっていると思うと、すごく感慨深いなと思って。LEXさん自身は、そのことをどう感じていますか?
そうですよね。感慨深いです。ただ同時に、「本当に今、何万人もの人に届いてるのかな?」っていう疑問も湧いてくるんですよね。今、実際に何人に響いてるんだろうって。レジェンドの人たちに比べたらまだ短い期間ですけど、この7年間でもファンは何度か入れ替わってきたので。
入れ替わっている、と感じますか?
はい。こういう風に感じることが3、4周期あったんです。だから、自分の音楽をどれくらいの人が聴いてくれているんだろう、というのが掴めないですね。それと、自分が伝えたいことが変わっていくと、やっぱりファン層が変わってきますよね。
キャリアの中で、転機になった出会いはありましたか?
それは絶対に、(JP THE)WAVYくんとの出会いですね。その頃、自分は恵比寿の『BATICA』でライブさせてもらってたんですけど「LEXって名前に火がつきそうだ」みたいにバズが起き始めていたんですよ。確かライブ映像が旧Twitterでバズったか何かで。その時に、WAVYくんがDMで「今度、うちに遊びにおいでよ」って誘ってくれて。その時の自分が持っていたラッパーへのイメージって、酒とかチェーン、ダイヤ、みたいな感じだった。なので、差し入れにお酒をめっちゃ持って行ってWAVYくんの家に行ったら「俺、そんなの飲まねえよ」って言われて。それも結構勉強になりましたね(笑)。その時に、洋服やチェーンをもらったりして。
実際にJP THE WAVYさんと一緒に過ごす中で、どんなことを学びましたか?
LEX やっぱりラッパーとしての在り方とか、ブランディングやプロモーションについて。私生活に対する向き合い方とかも教えてくれました。今も本当に変わらず関係性は続いているし、プライベートでご飯に行くこともあります。
他に、印象的だった瞬間はありますか?
なんだろう……。妹のLANAと作った“明るい部屋”に関しては、「あの曲がなかったら今、どうしていただろう」と思います。アーティスト活動の中でも、めちゃくちゃ調子がいい時とちょっと下がっている時が交差していくのことがあると思ううんですけど、自分が下火になっている時があって。なんかどうでも良くなっていたんですよ。音楽に対することとかも。しかも、音楽じゃないことで自分がトピックになることも増えて。
“自分自身でも、お客さんとしてLEXのライブを観てみたいんですよ。それくらい、エネルギッシュにやっているんじゃないかと思いますね”
SNSでの言動に注目が集まってしまうことも度々あったと思います。
アーティストとしてはよくないプロモーションになってしまったし、ネタみたいに扱われることもあった。そんな時に、妹から「いや、それ違うでしょ。何してるの?」と助言をもらって。「音楽やろうよ」って言われたんですよね。それで出来たのが“明るい部屋”でした。
「昔は何にもなくて酷かった暮らし、今ではマイクを握り客は総立ち。あの日 暗い部屋で一緒に歌い、月日が流れ 今は明るい部屋に」という歌い出しのリリックも強烈です。実際に困難を共に乗り越えてきた兄妹だからこそ、真に迫るものがある。
トラックは用意してもらっていたんですけど、一旦、自分でイチから作ってみますって話をして。確か楽曲の下地部分は自分と妹で作って、フックの部分は妹にやってもらって、ラップの部分を僕がやったら綺麗にハマるんじゃないかみたいな話をして。三回くらいそういうやり取りのラリーを経て完成しました。
“明るい部屋”はヒップホップ・フェス「POP YOURS」をきっかけに作られた曲でもあります。その時、LEXさんはフェスのヘッドライナーとして参加していて。ステージからはどんな景色が見えましたか?
最初に「ヘッドライナーをやってくれないですか?」って言われた時には「もちろん」と、めちゃ嬉しかったし、「是非是非」という気持ちだった。でも、その裏では「俺で締まるのかな?」と葛藤もあって。結局、自分の出番の終盤に妹と“明るい部屋”を歌うという演出になった。綺麗な閉じ方になったなと思っています。
その年はDAY1のヘッドライナーがLEXさん、続くDAY2のヘッドライナーがTohjiさんでした。
Tohjiくんは、僕がこの業界に入ってからずっと追いかけてた人。Mall Boyz「Higher」の頃から見ていたし、実は僕もそのMVにちゃっかり映ってたりして。まだ僕が何者でもなかった頃、Tohjiくんの家で一緒にお弁当を食べたり、昔はWWWでやっていたイベントに呼んでもらったりもしてたんです。なので、そこからお互いPOP YOURSのヘッドライナーをやるようになったっていうのは、すごいですよね。
そうした経験もあり、いよいよ『TOYOTA ARENA TOKYO』での単独公演も間近に迫っています。ソロのライブとしては史上最大規模ですよね。
もう大体、内容も決まってきたし準備万端って感じでですね。あとは考えすぎるのも良くないんで、ストレスフリーでいることを心がけています。運動したりとか。アリーナのライブでは、できないことにトライしようとしているので。
他に、特別に準備していることはありますか?
尊敬しているアーティストや、まだ勉強が足りていないアーティストまでのライブ映像を観て、「こういう動きを取り入れた方がいいんじゃないか」とか、そういうことを研究しています。自分のチームのみんなからも「この人のライブがいいから観た方がいいよ」と勧めてもらうこともありますし。あと、お姉ちゃんのLiLiはダンスの先生なので、「こういうターンをしたいんだけど、ちょっとレッスンしてくれない?」と連絡することもあって。「スタジオはこっちで取っておくから」とみっちり練習させてくれるんですよね。
LEXさんのステージを観ていると、回を重ねるごとにステージから発せられるパワーが大きくなっているというか、オーディエンスとの絆もより深まっているように感じます。ライブ・パフォーマンスを行う中で、自分の中での変化はありましたか?
結構、変化してきていると思いますね。こんなことを言っちゃいけないかもしれないですけど、ライブでここまで曝け出せるアーティストはいない。自分自身でも、お客さんとしてLEXのライブを観てみたいんですよ。それくらい、エネルギッシュにやっているんじゃないかと思いますね。
ライブに対する向き合い方が変わった瞬間はありましたか。
ありました。これは正直な話なんですけど、自分が、歌も歌うラッパーというところで、他とどう差別化を図れるかなって深く考えたんです。その時に、ライブ・パフォーマンスにおいてはもっとできることがあるな、と気づいて。そこから、自分自身の探究の旅が始まった気がします。
今回のアリーナの公演において、我々オーディエンスに対して「こういう風に感じてほしい」という気持ちはありますか?一体、どんなショーを期待できるのか。
やっぱり、LEXのライブの中で重要なのは、人間にしかできないし、人間にしか感じることのできない“本当の瞬間”があることだと思うんです。たぶんそれが病みつきになって、毎回来てくれるお客さんもいるんだと思う。正解のメロディーラインを使って、正解の曲を作ることって、ぶっちゃけ僕もやろうと思えばできる。でも、そこからあえて引き算したり、「え、今ここでそういう動きする?」とか、「ここで抜くんだ」みたいなことって、まだAIミュージックにはできないところだと思うんですよ。僕はそういうところに「本当の瞬間」があると思っていて。そういう瞬間がめちゃくちゃ詰まった、人間的なライブになってると思います。
“未来のLEX”についてはどう考えていますか?
なんだろう。もっともっと、音楽を研究したいですね。やっぱり、自分がやりたいことを追求しないと。そうじゃないと、ファンも退屈するだろうし。でも、ファンに合わせた音楽を作ることはもうやめたんですよ。リック・ルービンの本を読んで、そういう考えに至りました。
最新作の『SPEEDSTAR』も、そうしたマインドで作った作品ですか?
『SPEEDSTAR』は、そういう状況の中でも、やっぱりファンに届けなきゃいけないものがあるなと思って作ったんです。自分だけが突っ走りすぎると、ファンを置いていってしまうところもあるなって。最近の自分は、より本格的な音楽を追求する方向に進みつつあったけど、一方で完璧さとか商業的な部分も自分の中にはあったので、一度ちゃんと“ナウい”サウンドを届けたいという気持ちがありました。サウンド自体は一貫しています。
冒頭でも少し今のヒップホップ・シーンに触れていましたけど、現在、頭角を表してきている次世代のヒップホップ・アーティストたちのことはどのように観ていますか?
人数が多すぎて、ちょっと自分も追えていないですね。かっこいい人はたくさんいると思うし、その中でもやっぱりSieroはいいと思います。
“センス”で初コラボレーションを果たしたばかりの新鋭ラッパーですね。
「いいな」と思っても、実際に名前を覚えられるラッパーとそうじゃないラッパーがいるんですが、Sieroはなぜか印象が残っていて。
JP THE WAVYさんにしてもらったように、「次は自分が若手をフックアップしていくぞ」というような気概はありますか?
正直、そういう気持ちはなくて。自分は自分勝手に音楽やるんで、そういう役割はもうちょっとヒップホップ臭い人に任せてもいいんじゃないかな、とは思ってます。例えばHezronとかがやってくれるんじゃないかな(笑)。
キャリアも重ねていく中で、年齢も重ねていくわけじゃないですか。そこについてはどういう風に捉えていますか?
ここまでキャリアを積むことができたと言っても、本当の音楽の路線でいく、という目で見るとまだまだなので。自分の環境は恵まれているなとは思うし、昔の自分がやってきた努力に感謝したい。僕は、一歳一歳、年齢を重ねていくうちに、すごくいい感じになってきていると思います。結構ヘルシーになってきているとも思うし。
LEXさんは、直感的なタイプですか?
そうですね。そっちに全振りしちゃってる気がします。自分の直感を100%信じちゃうし、そこに100%ベットしちゃうので、もちろん失敗することもある。でも、成功することもあるんですよね。超直感型。でも、そういう自分の直感やセンスは、年齢を重ねてもすっと変わらないですね。
現在のLEXさんが自分の音楽を通して表現したい世界観について、はっきりしたビジョンはありますか?
やっぱり、何か大きな脅威に対して反骨する精神みたいなものは、これから表現していきたいです。それと、身の回りにあるもので「自分は幸せなんだ」って気づいてもらえるような、そういうメッセージのある曲も作れたらいいなと思う。もっと人間的な側面を伝えていきたい、というのはありますね。
LEX LIVE AT TOYOTA ARENA
会場: TOYOTA ARENA TOKYO
住所: 東京都江東区青海1-3-12
会期: 2026年10月30日(金)
時間: OPEN 18:00 / START 19:00
料金:
スタンディング Sエリア ¥13,000(税込)
スタンディング Aエリア ¥9,900(税込)
Aエリア 座席指定 ¥9,900(税込)
チケット:イープラス / チケットぴあ / ローソンチケット
モデル着用クレジット
シューズ「Tasman Guard GTX」35,200円、トップス「Tasman Hoodie」16,500円<ともにUGG®/Deckers Japan Tel 0120-710-844>、その他スタイリスト私物