サミュエル・ロスと HUBLOT が出したクロノグラフという答え | Interviews
第4弾となる“ビッグ・バン ウニコ SR_A”の発表に際し、『Hypebeast』はオンラインインタビューを行った
サミュエル・ロスと HUBLOT が出したクロノグラフという答え | Interviews
第4弾となる“ビッグ・バン ウニコ SR_A”の発表に際し、『Hypebeast』はオンラインインタビューを行った
異素材の融合で時計表現を拡張してきたスイスの高級ウォッチメーカー〈HUBLOT(ウブロ)〉と、イギリス出身のデザイナー/クリエイティブディレクター サミュエル・ロス(Samuel Ross)による4度目のコラボレーションが発表された。これまでの3作は、いずれもトゥールビヨンを核に据えた、極めて彫刻的かつコンセプチュアルなアートピースだったが、最新作となる“ビッグ・バン ウニコ SR_A”(402万6,000円)は、その流れを一歩先へと進める実用性を備えたクロノグラフモデルとして登場する。
本作の名称に冠された「SR_A」とは、サミュエル・ロス自身が築き上げてきたデザイン言語と思想を示すシグネチャーであり、構造や機能、素材の関係性を可視化する彼のインダストリアルなアプローチそのものを指す。今回、そのSR_Aのコードが、〈HUBLOT〉を象徴する自社開発・製造のクロノグラフムーブメント「ウニコ」と初めて融合した。
42mmのブラックセラミックケースに収められた“ビッグ・バン ウニコ SR_A”は、オールブラックのミニマルな外観を基調としながら、スケルトンダイアル越しにクロノグラフ機構やその中核を担うコラムホイールの動きが視覚的に楽しめる。約72時間のパワーリザーブを誇るフライバッククロノグラフを備え、世界限定200本での展開となる本作は、これまでのSR_Aトゥールビヨンよりも広い文脈で“身につける機械”としての可能性を提示している。
今回『Hypebeast』は、この新章とも言えるコラボレーションについて、サミュエル・ロス本人にインタビューを敢行した。画面越しに現れた彼がいたのは、ロンドン郊外に佇む16世紀建築のマナーハウス。暖炉の火を背に、ロスは素材、構造、実用性、そしてカルチャーとの関係について、静かに、しかし確かな言葉で語り始めた。
エンジニアリングやデザインがどれほど重要で、そしてどれほど長く私たちの文化を支え、前進させてきたのかを、改めて理解し続ける必要があるはず
Hypebeast:数多くの時計ブランドがあるなかで、デザイナーとして見たときのHUBLOTのイメージが知りたいです。
Samuel Ross:まず第一に、HUBLOTは常に“素材の革新”を体現してきたブランドだと思っています。私がHUBLOTと初めて仕事をすることになったのは2019年で、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーで開催された「ウブロ デザイン プライズ」を受賞したことがきっかけでした。そのとき、すべてがとても腑に落ちたんです。
というのも、私のバックグラウンドは主にインダストリアルデザインやプロダクトデザインにありますし、その視点で見れば、HUBLOTを選ぶことは非常に論理的でした。HUBLOTというブランドを考えると、まずひとつは、歴史ある時計業界のなかでは比較的“若い”ブランドであること。そしてもうひとつは、素材への強いフォーカスです。その点が他ブランドとは明確に異なり、とても際立っていますね。
2022年、2023年、2024年の超スペシャルなSR_Aトゥールビヨンシリーズを経て、今回初めて、HUBLOTの自社製クロノグラフムーブメント「ウニコ」と融合しました。HUBLOTとのコラボレーションは、次の章に進みました?
はい。これまで発表してきたトゥールビヨン3モデルが、いずれも12万〜15万ドルという価格帯で非常に高い評価と成功を収めたことが、大きな転機でした。その成功によって、このデザイン言語や、パートナーシップとしてのコンセプトを、より実用的なクロノグラフムーブメントへと落とし込めると確信したのです。
今回の「ウニコ」との融合によって、これまで以上に日常使いに適した、そして耐久性にも優れた時計を生み出すことが可能になり、まさにこのタイミングで“次の章へ進んだ”と感じていますね。
これまでの彫刻的なトゥールビヨンと違い、今回はより実用的な時計。アートピースから、日常に着用されるプロダクトへ移行することに、どんな意味を見出していますか?
そもそもアートピースの役割というのは、あるアイデアや視点、コンセプトを提示し、可視化することにあると考えています。それはハイデザインであっても、ギャラリーの文脈であっても同じです。そして、そうした表現が多くの人に受け入れられ、共感を得られたことで、より日常の中で使われるプロダクトへと展開していくための土台が生まれました。
今回のクロノグラフにおいては、日々身に着けるたびに“啓示”や“崇高さ”を求めるものではありません。求めたのは、実用的で機能的なツールでありながら、キャラクターやマテリアリティを強く感じさせる存在であることです。同時に、特別な場面だけでなく、生活の中に自然に組み込まれていく道具であることも重要でした。クロノグラフにフォーカスした最大の理由は、まさにそこにあります。このモデルは、実用性が高く、愛着を持って使える機能的なツールでありながら、アートピースが持つ価値や思想をしっかりと内包しています。一方で、アートにありがちな“繊細さ”によって使いづらくなることはないはず。
サミュエル・ロスのデザインは常に「構造」や「機能」が可視化されていますが、クロノグラフという機構は、SR_Aのインダストリアルなコードとどのように共鳴したのでしょうか?
クロノグラフへと踏み出すにあたって、まず頭に浮かんだのは、クロノグラフという機構が持つ歴史的な文脈でした。ここ25年、30年、40年と時代を遡って見ても、クロノグラフは常に高密度で、道具としての強さを感じさせる存在であり、耐久性やパフォーマンスを象徴するものだったと思います。
ただしその表現は、とても触覚的で、どこか無骨(プリミティブ)なものでもありました。その“触れる感覚”を伴うクロノグラフの特性と、私自身のシグネチャーであるインダストリアルなデザイン言語を組み合わせることは、非常に自然でシームレスな移行だったと感じていますし、個人的にもとてもエンパワーされる体験でした。
今回、あえてオールブラックのセラミックに回帰した理由を教えてください。それは美学的な判断なのか、それとも現代のライフスタイルに対するメッセージなのでしょうか?
その答えは、美学とメッセージ、その両方が重なり合ったものです。まず前提として、セラミック、ラバーという異なる素材を組み合わせることに強くフォーカスしました。これは、HUBLOTが独自技術によって培ってきたマテリアリティへの深い理解があってこそ実現できたアプローチです。
今回のオールブラックは、単なる色や見た目の選択ではなく、異なる素材同士を対峙させることで生まれる“緊張感”を、マテリアリティそのものによって引き出すことも意図しています。
この時計を「ステルス、強靭さ、スピード」と表現されていますね。
はい。それらはどちらかというと、エンジニアリングにおける原則(美徳)に近いものだと思っています。
映画を思い浮かべてもいいですし、エクストリームスポーツ、あるいはレジャーや冒険といった概念を考えてみても、その世界観は、もともとステルス、強靭さ、スピードといった価値観の上に成り立ってきました。だからこそ、そうした価値が成立する“余白”を見極め、クロノグラフという存在が本質的に何を意味するのかを明確に定義することは、とても決断力が求められる行為でありましたが、この3つの要素(ステルス、強靭さ、スピード)は、私自身が市場に提示できる価値を端的に表したキーワードなんです。
今回のプロジェクトは、ロンドンとジュネーブを跨ぐデザイン対話だと語っています。その2つの都市の価値観は、どの部分に最も色濃く反映されていますか?
イギリス、そしてロンドンという都市は、抽象的なアイデアを、具体的な体験やオブジェクトへと落とし込むことに非常に長けていると思います。長年にわたって培われてきたエンジニアリングやデザインの歴史、そこから生まれた数々のアイコン、あるいはジョナサン・アイブやマーク・ニューソンのような存在、さらにはアートスクールやランウェイカルチャーに至るまで、イギリスは常に“概念を形にする力”を発揮してきました。
一方で、時計製造という産業的な文脈においては、スイス、とりわけジュネーブはまったく別次元の存在です。その分野における正統性や技術力は、言うまでもありません。
今回私たちができたのは、ロンドン的な抽象性や感情的な思考、エンジニアリングへのアプローチと、ジュネーブおよびスイスの職人たちが持つ高度な技術と精緻なクラフツマンシップを結びつけることでした。そうすることで、ある種の“詩的なコンセプト”を、実際に触れることのできる、愛着の持てるプロダクトへと昇華させることができたと思っています。それこそが、時計製造という分野全体が持つクラフツマンシップの本質でもあります。
スマホなど、時計以外で気軽に時刻のわかる時代になっていますが、いま、時計という存在はカルチャーの中でどんな役割を果たすべきだと考えていますか?
私にとって時計製造は、自動車と同じく、ハイデザインの領域に属する存在だと考えています。どちらも、人間のエンジニアリングの結晶であり、素材をどう形づくり、引き出し、そして制御するかという探究の表現です。
おっしゃる通り、いまは時間を知るための手段自体は他にも数多く存在しています。しかしその一方で、私たちはそうした“モノ”との近さや、そこに宿る価値への意識を失いつつあるとも感じています。だからこそ、エンジニアリングやデザインがどれほど重要で、そしてどれほど長く私たちの文化を支え、前進させてきたのかを、改めて理解し続ける必要があるはずです。
時計とは、まさに人間のエンジニアリングと創造性が手を取り合った象徴(エフィジー)のような存在?
はい。それは単なる機能を超えたものであり、人類が何を成し得るのか、そして私たちを人間たらしめているものは何なのかを体現する表現だと思っています。
ありがとうございます。インタビューの終わりの時間が来てしまいました。が、最後に、この時計をひと言で表すとしたら?
機能美、ですかね。
HUBLOT “ビッグ・バン ウニコ SR_A”
限定数:200本
ケース径:42mm
ケース厚:14.50mm
防水性能:10気圧(100 m)
ケース:サテン仕上げのブラックセラミック
ケースパック:サテン仕上げのブラックセラミックと反射防止加工を施したサファイアクリスタル
ベゼル:サテン&ポリッシュ仕上げのブラックセラミック
ダイアル:マットブラックスケルトン
ストラップ:ブラック ストラクチャード ハニカム ラバー
バックル:ブラックセラミックとブラックプレートのチタニウム製
ムーブメント:HUB 1280 UNICO マニュファクチュール、自動巻きクロノグラフ
パワーリザーブ:約72時間
価格:402万6000円(税込)
問い合わせ:HUBLOT

























