Aston Martin 新型ヴァンテージは新感覚のドリフトが楽しめる

スペイン・セビリア地方のオンロードとサーキットで新型ヴァンテージの試乗会が行われた。モータージャーナリストの大谷達也がリポートする

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Aston Martin(アストンマーティン)」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、映画『007』シリーズに登場するボンドカーのことだろう。1964年公開の『007/ゴールドフィンガー』でショーン・コネリー(Sean Connery)が操った往年の名作DB5を皮切りに、これまで数々のアストンマーティン製ボンドカーがスクリーンを彩ってきたが、その多くは、前述したDB5に代表されるDBシリーズがベースだった。いっぽう、リアシートを備えた2+2シーターのDBシリーズとは別に、2シーター(ふたり乗り)のヴァンテージもアストンマーティンの代表作として知られている。2台の立ち位置は、室内が広くて乗り心地も快適なDBシリーズに対して、ヴァンテージはよりコンパクトで軽快なハンドリングが売り物という具合に異なっている。

そんなヴァンテージがフルモデルチェンジを果たした。もしかすると、写真を見て「あれ、デザインは従来型と同じ?」なんて思われる人がいるかもしれないが、全体的に丸みを帯びていた従来型に対して、シャープなエッジが効いた新型はより「シャキッ」として見える。その違いは、洗いざらしのTシャツと、アイロンがよく効いたドレスシャツくらいの差があるように思う。

でも、本当の違いは、ボディパネルの内側に隠されている。新型はボディの骨格を大幅に強化。この結果、足回りの動き方はより精度が高いものに生まれ変わったという。これはアスリートが体幹を鍛えるのとよく似ている。激しい運動をしても身体の芯がぶれなければ、手足をより素早く、そして正確に動かせることはスポーツ界の常識。それと同じ考え方が、新型ヴァンテージにも採り入れられたのである。

エンジンも大幅にパワーアップした。メルセデスAMG製の4.0リッターV8ツインターボがベースであることは変わりないけれど、アストンマーティンの技術者たちが徹底的な改良を施した結果、最高出力は従来型の510psから665psへとジャンプアップ。これにより、静止状態から100km/hに到達するまでわずか3.5秒しか必要としない加速力と、325km/hというとてつもない最高速度を達成した。そんなモンスター級のパワーを手に入れたからといって、ヴァンテージが扱いづらいクルマになっていなかったのは嬉しい驚きだった。スペイン・セビリア地方の一般道を走っていても、恐るべきポテンシャルを備えたエンジンの反応は従順で、ドライバーの意に反して急加速を始めたり、逆に思ったほどスピードが伸びなかったということは皆無。乗り心地にしても、前述した「強固な体幹」のおかげで、荒れた印象は一切抱かなかった。

ただし、モンテブランコ・サーキットで思いっきりムチを入れてみたところ、ヴァンテージは文字どおりのモンスターに豹変した。665psをフルに発揮させたとき、そのパワーを2本のリアタイヤだけで受けとめられるスポーツカーは決して多くない。そこで、溢れ出るパワーによってタイヤが空転し続けるのを防ぐため、ハイパフォーマンスカーにはトラクションコントロールというシステムが装備されている。これは、駆動輪が空転し始めたとき、エンジンの出力を絞って空転を抑え、安全に、かつ効率的にクルマを加速させるための電子デバイス。ただし、トラクションコントロールが作動するとエンジン出力も抑えられてしまうので、本来の性能を発揮しにくくなる。なんともいえないジレンマだ。

ところが、新型ヴァンテージはトラクションコントロールの効き方を8段階で調整できるアジャスタブル・トラクションコントロールを装備。これまでは難しかった「タイヤをちょっとだけ空転させてクルマをドリフトさせる」ことが可能になったのだ。このシステムを試してみたが、コーナリング中にアクセルペダルを踏み足すとリアタイヤがアウト側にスライドし始める感覚を味わうことができた。しかも、トラクションコントロールが完全にオフになっているわけではないので、いざとなればシステムが救ってくれるという安心感もある。そうした使い方をするなら、トラクションコントロールの効き方をほんの少しだけ弱めたポジションのTC3がお勧め。ちなみに、TC1を選ぶとトラクションコントロールはほぼ完全に動作していて、TC8では逆に完全にオフになるという。それにしても、イギリスの名門アストンマーティンでドリフトの練習をするなんて、かなりゼイタクな遊び方であることは間違いないだろう。

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