ストリートブランドの新たな在り方を築き上げる NOAH の求心力に迫る
ブレンドン・バベンジンのインタビューを交え、デザインとアイディアの両方を改善しながら革新を続けるブランドの哲学を紐解く
年間約100万トンもの衣料品が処分され、温室効果ガスや水質汚染など、環境に対する様々な課題が山積みになっているファッション業界。そういった状況にいち早く警笛を鳴らし、サスティナブルな取り組みを率先して行ってきたのが、昨今のアメリカ・ニューヨークのスケーターやアーティストたちである。もちろんそれは決して堅苦しいものではなく、むしろそれぞれのライフスタイルに合ったクリエイティブなトレンドとして、ミレニアム世代を中心にクールなものとして取り入れられている。そして、このようなNYストリートシーンの変化を最前線でリードしてきたのが、2015年に本格的に立ち上げられた〈NOAH(ノア)〉だ。 先月の2月18日にローンチされた〈Barbour(バブアー)〉とのコラボコレクションをはじめ、サスティナブルなファブリックやアイディアを常にコレクションに落とし込み、チャリティーやキャンペーンといった独自の活動を展開する。例えば、エコナイルというリサイクルナイロンと中綿にキャッシュボールと呼ばれるリサイクルカシミヤを使用したブランドオリジナルのパフジャケットの開発、リサイクルキャンバスを使用したワークパンツやリサイクルコットン100%のTシャツの発売、その他にも公式サイト『Noah NYC』で積極的に環境問題を取り上げるなど、エシカル=社会貢献的な視点で様々な発信をし続けているブランドだ。
こういった〈NOAH〉にしかないスタイルやアプローチはいつどのように形成され、今後どうなっていくのか。それらを探るべく、ブランドのファウンダー Brendon Babenzien(ブレンドン・バベンジン)に、まずは〈NOAH〉のスタイルがどのように生まれたかを聞いた。
「NOAHのスタイルは自然に生まれました。なぜなら、音楽やスケート、サーフィンなど、私がこれまでに興味を持ってきたカルチャーがベースになっているからです。もちろんビジネスなので、金銭的に成功させることは大事ですが、環境や社会問題解決にも目を背けてはいけないと思っています。なので、ハイクオリティな製品を作りながら、楽しくて面白いビジネスを目指し、同時に世界に良いことをするという考えに基づいてブランドを設立しました」
Brendon自身の哲学が反映され、自然と生まれた〈NOAH〉のスタイル。そして今ではそのスタイルが、ストリートカルチャーの進化の一端を担っていると言う。
「これらの哲学は、創業当初からビジネスDNAに組み込まれていますし、今ではストリートカルチャーの進化の一端を担っていますね。少し前までは、ストリートがひとつの流行として扱われてきましたが、今では私たちを始めとする多くのブランドがスタイルとして本当の意味での裏付けが必要だと考えています。ただ良いものを作っているだけではダメなんです。目的を持って、何が正しいのか考えられるブランドでなければなりません。こういった哲学が、コレクションや独自の活動を通じて、ミレニアム世代の若者に響いたのではないでしょうか。 なぜなら世界のリーダーや大企業が、自らの未来しか気にせず、地球環境を破壊し続けていることに彼らは気づいているからです。トレンドのファッションと同じように、サスティナブルな未来にも興味を持っているんだと思います。なので、私たちは今後も大きな影響力を持ち、ストリートシーンをリードして格好良く行動することへの手助けになっていきたいですね」
このように現在のニューヨークでは、若い世代を中心にサスティナブルな考え方が広く浸透しており、クリエイティブな視点でそれぞれが行動を起こし始めている。そんななかで、ストリートシーンをリードする〈NOAH〉が目指す次の目標とはどういったものなのか。
「目標は必ずしも設定しているわけではありません。何故かと言うと、活動の大部分はプロセスが重要だと思っているからです。 とは言え、やはりビジネスなので自分たちとスタッフの生活を支えるためにお金を稼ぐなど、非常に現実的なタスクがたくさんあります。しかし、素晴らしいアイテムを作り続け、責任ある行動をすれば、財政的な部分は後からついて来るという信念を持っています。なので本当の意味での目標は、デザインとアイディアの両方を改善しながら革新を続けることですね」
世界中の多くのストリートブランドがやっているような、トレンドをただ追いかけて拡大させるといったことはせず、デザインとアイディアの両方を改善しながら革新を続ける。そういったなかでローンチされた2021年春夏コレクションでは、時代を超越したトラディショナルかつサスティナブルなアイテムが数多くラインアップされた。
「私たちが今回の2021年春夏コレクションで表現したかったことは、カッコ良くて時代を超越した廃れることのないトラディショナルなアイテムを作りたいという、これまでと変わらないテーマです。買ってくれる人たちがファッションやトレンドの犠牲にならず、自分自身をリアルに表現できるような提案を毎回しています。そして、“Be yourself(自分自身であれ)” とは 私たちが好きなメッセージなのですが、私たちがしていることを自分のものにしてほしいという願いも込められています」
Brendonやその仲間たちが培ってきたあらゆる経験や考えが、哲学としてコレクションに反映され、これまでにない独自のスタイルやアプローチでストリートシーンを牽引してきた〈NOAH〉。今後も変わらず、世界中の人々や環境に配慮したインディペンデントな活動を続けていくことだろう。
最新の2021年春夏コレクションやその他のアイテムは直営店および公式オンラインストアにて販売中。また、公式『Instagram(インスタグラム)』にて最新の情報も公開。Brendonの哲学が少しでも気になった方々は、ぜひこの機会にチェックしてみてはいかがだろうか。
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