ARC’TERYX が考える“循環する未来” ── 写真家 石塚元太良と紐解く、自然と道具のこれから
「長く使う」を再定義する、ARC’TERYXのSystem 0™
ARC’TERYX が考える“循環する未来” ── 写真家 石塚元太良と紐解く、自然と道具のこれから
「長く使う」を再定義する、ARC’TERYXのSystem 0™
カナダ・ノースバンクーバー発のアウトドアブランド〈ARC’TERYX(アークテリクス)〉が、サーキュラーエコノミーへの挑戦を掲げる発表会「The Revolution is Circular」をメディア向けに開催した。近年の環境変化を背景に、事業や製品開発のあり方そのものを見直し、循環する未来に向けた新たな取り組みを発表。会場では、リサイクル可能な再生糸を採用したGORE-TEXジャケットをはじめ、製品を長く使い続けるためのリペアサービス ReBIRD™の実演などが行われた。
今回の発表会では、〈ARC’TERYX〉ブランドマネージャーの林克洋と写真家 石塚元太良が登壇。20年にわたり氷河を追い続ける石塚の活動を通して、変化する自然環境と、過酷なフィールドで道具を使い続けることの意味についてトークを展開した。本稿では、その内容をリポートしていく。
“循環”は、製品が壊れてから始まるものではない
今回の「The Revolution is Circular」で〈ARC’TERYX〉が発表したのが、製品のあり方を見直す新たなフレームワーク System 0™だ。これまで同ブランドが培ってきた、製品を長く使うためのものづくりや修理・ケアの知見をさらに発展させ、製品を「作って終わり」とするのではなく、使用から修理、そして役目を終えた後までをひとつの循環として捉えている。
その思想を初めてプロダクトとして形にしたのがSperro SV Jacket。マルチスポーツに対応するマウンテン・グレードのハードシェルで、高い耐久性や機能性を備えながら、修理のしやすさや、将来的な素材の分解・再利用までを考慮して設計されている。GORE-TEX PROのePEメンブレンを採用し、表地と裏地には再生ナイロンを使用。単に環境負荷の低い素材を選ぶだけではなく、再生可能な素材を選び、製品をできるだけ長く使い、壊れた際には修理し、そして最終的には素材そのものを再び循環させる。 その一連のライフサイクルまでを見据えたプロダクトとなっている。
ここで重要なのは、「環境に配慮した素材を使ったジャケット」という一面的な話ではないことだ。〈ARC’TERYX〉が目指したのは、製品を最初から最後までどう循環させるかという、より大きな設計思想。そのため、製品を作って終わりにするのではなく、その後のライフサイクルまでを製品設計の一部として捉えている。高い耐久性によってできるだけ長く使える製品を目指すだけでなく、破損した際には修理によって使い続けられるよう、10年保証やReBIRD™による修理サービスも展開。そして、製品としての役割を終えた後には、素材を再び資源として循環させることまでを視野に入れている。
ReBIRD™の知見を、次の製品づくりへ
これまでの背景にあるのが、〈ARC’TERYX〉が長年取り組んできたReBIRD™だ。発表会の会場では職人によるクイックリペアの実演も行われた。ReBIRD™は、製品のケアや修理を通じて、長く使い続けるための仕組みを支えてきた。今回のSystem 0™では、そこで蓄積された「どこが壊れやすいのか」「どこに負荷がかかるのか」「どうすれば修理しやすいのか」といった知見を、製品設計そのものへとフィードバックしている。
Sperro SVでは、ブランド初となる交換可能なジッパースライダーを採用。スライダーを交換しやすくすることで、ジッパー全体を交換することなく修理できるようにしている。Sperro SVは、「長く使えるように作ったジャケット」であると同時に、使われ、修理され、そのデータが次のプロダクトへ還元されるためのジャケットでもある。
最も難しい「ハードシェル」から始める
System 0™の最初のプロダクトとして、なぜハードシェルが選ばれたのか。その答えは、ハードシェルが〈ARC’TERYX〉にとって最も複雑なプロダクトのひとつだからだ。防水性、透湿性、耐久性、軽量性といった相反する性能を高いレベルで成立させながら、さらに修理性や分解性まで考える必要がある。だからこそ、あえて難しいところから始める。
Sperro SVは、GORE-TEX PROとePEメンブレンによる防水・防風・透湿性能を維持しながら、ナイロン素材の再生利用や製品の分解までを視野に入れて設計された。〈ARC’TERYX〉はGORE-TEXブランドやAquafilなどのパートナーと協力しながら、技術性能とサーキュラリティを両立する方法を模索してきたという。
写真家 石塚元太良が語る、自然と道具との向き合い方
発表会のトークセッションには、写真家の石塚元太良が登壇。〈ARC’TERYX〉から約2年間にわたりプロダクトのサポートを受けながら、20年にわたって氷河を追い続けてきた自身の活動について語った。現在取り組んでいる「グレイシャーダイアリー(氷河日記)」では、後退する海岸氷河を人力と潮の満ち引きだけを頼りに追跡。2026年にはアラスカのネリーベイを訪れ、シーカヤックで約25日間、無補給の環境に身を置きながら撮影を行ったという。
その際に使用するのが、あえて大判のフィルムカメラ。シンプルな構造ゆえに自然の中でも修理が可能で、長く使い続けることで「道具が自分の身体の延長線上になっていく」と石塚は話す。また、9年ぶりに訪れた氷河で岩肌が露出しているなど、長年フィールドに通うからこそ感じる自然環境の変化にも言及。「海岸氷河自体が激減している」と語り、変わりゆく自然を記録することの意味と、自身の被写体そのものが失われていく危機感を明かした。
こうした石塚の活動は、製品を長く使い、修理し、最終的には素材として循環させることを目指す〈ARC’TERYX〉のSystem 0™の思想とも重なる。発表会では、自然と向き合うための道具と、それを長く使い続けることの価値について、両者の共通する姿勢が浮かび上がった。
〈ARC’TERYX〉が掲げる新たなものづくりの思想を体現したSperro SV Jacket。高いパフォーマンスを追求するだけでなく、長く使い、修理し、そしてその先まで見据えた設計は、これからのアウトドアプロダクトに求められる新たな基準を提示する。そんな〈ARC’TERYX〉の次なる一歩を、ぜひ実際のプロダクトを通して体感してほしい。Sperro SV Jacketは、9月11日(金)より、全国の〈ARC’TERYX〉ブランドストアおよび公式オンラインストアにて販売を開始する。



















