JAH JAH ダキシリン・ゴメス ── 自由と自立から生まれるクリエイティブの根源 | Interviews
レゲエの精神と自身のルーツを礎に、食、ファッション、音楽を横断するJAH JAHのクリエイティブの源泉を、共同設立者 ダキシリン・ゴメスに訊いた
JAH JAH ダキシリン・ゴメス ── 自由と自立から生まれるクリエイティブの根源 | Interviews
レゲエの精神と自身のルーツを礎に、食、ファッション、音楽を横断するJAH JAHのクリエイティブの源泉を、共同設立者 ダキシリン・ゴメスに訊いた
ルーツ、ラスタ。アフリカン・ディアスポラの歴史と精神性を背景に、自由や自立、心の平穏を希求してきたレゲエ。その思想は音楽の枠を超え、ファッションや食、コミュニティといったさまざまな表現へと広がり続けている。
そんなレゲエの精神が深く根付くフランス・パリで、ひとつのヴィーガンレストランから始まった『JAH JAH(ジャー・ジャー)』。2015年にダキシリン・ゴメス(Daquisiline Gomis)とコラリー・ジュイエ(Coralie Jouhier)がフードバイク Le Tricycleとして活動を始め、2017年にはアフロ・カリブ文化とヴィーガンフードを融合したレストランをパリ10区にオープンした。
西アフリカにルーツを持つダキシリンと、カリブおよびアフリカにルーツを持つコラリー。異なるバックグラウンドを持つ2人のクリエイティビティが交差することで生まれた『JAH JAH』は、食を起点に音楽、ファッション、デザイン、コミュニティへと活動の領域を拡張してきた。コラリーがシェフとしてガストロノミーを担う一方、ダキシリンはファッション、音楽、デザインを横断しながら、『JAH JAH』という存在の世界観を形作っている。
その根底にあるのは、既存の枠組みに自らを当てはめるのではなく、自らのルーツと価値観に忠実に生きるという姿勢だ。レゲエが掲げてきた自由、解放、愛、平和、そして団結の精神は、『JAH JAH』のクリエイションにも深く息づいている。
近年は日本でも活動を広げ、〈adidas Originals(アディダス オリジナルス)〉とのコラボレーションや、神南のヴィンテージショップ『I&I』でのリリースイベントなどを通じて、国内のコミュニティとも接点を築いてきた。さらに〈Comme des Garçons(コム デ ギャルソン)〉との協業など、その活動は食というひとつのジャンルを越え、国境やカテゴリーを横断しながら広がり続けている。
今回、『JAH JAH』の共同設立者であるダキシリン・ゴメスに話を訊いた。自身の西アフリカのルーツとレゲエから受け継いだ精神性、食やファッション、音楽を横断するクリエイティビティ、そして既存の価値観から距離を置き、自らの道を切り拓くこと。『JAH JAH』という唯一無二の存在を形作る、その思想の源を辿る。
既存の枠組みに縛られることなく、自立し、自由でありたい
Hypebeast:JAH JAHはレストランから始まり、今ではファッションや音楽、ハイキングなど様々な活動へ広がっています。改めて、JAH JAHとはどんな存在なのでしょうか?
ダキシリン・ゴメス:JAH JAHは、私にとって創造の原点です。すべてのアイデアはそこから生まれ、私の仕事には常にその存在があります。だからJAH JAHはブランドというより、一つの哲学であり、日々のクリエイションを支える精神的な拠り所なんです。
JAH JAHを立ち上げた当時は、どのようなビジョンを描いていましたか?
JAH JAHを立ち上げたのは、自分たちの手で道を切り拓きたいという思いからでした。既存の枠組みに縛られることなく、自立し、自由でありたい。その想いが、JAH JAHを始める原動力になりました。
今回来日のきっかけともなったadidas Originalsとのコラボの経緯について教えて下さい。
adidas Originalsとのコラボレーションは、ごく自然な形で始まりました。私たちのビジョンを自由に表現できる場を与えてくれたことが何より大きかったです。そうしたサポートこそが、私にとって最も重要なことでした。
前回来日された際はMegaride S2のリリースに合わせて『I & I』でリスニングパーティーを行いました。この実現に至った経緯についても改めて教えて下さい。
私たちにとって、あのイベントはコミュニティとつながり、交流するための場でした。人々と直接会い、時間や価値観を共有することは、JAH JAHが何より大切にしていることです。
一方でCOMME des GARÇONSともこれまでコラボを行ってきましたが、こちらはどういった経緯で実現したのでしょうか?
本当にシンプルな始まりでした。エイドリアン・ジョフィー(Adrian Joffe)から、「DOVER STREET MARKETのオープニングに向けたTシャツを作らないか」と声をかけてもらったんです。僕がデザインを担当したのですが、完成したTシャツがCOMME des GARÇONSのものだと知って、本当に驚きました。まさかそんな形で実現するとは思っていなかったので、エイドリアンにはこの機会を与えてくれたことに心から感謝しています。
とりわけCOMME des GARÇONSは、長年カルチャーやアートを大切にしてきたブランドと言えます。彼らの姿勢に、自分たちと重なる部分はありましたか?
共通しているのは、自由であることだと思います。既存のシステムや枠組みにとらわれず、その外側から物事を見る。僕自身も、クリエイティブであること、自由であることを大切にしています。そして、自分たちにとって本当に意味のあることについて、プロジェクトを通して発信していく。その姿勢に、COMME des GARÇONSとの共通点を感じました。
JAH JAHと言えば切っても切り離せないのはレゲエカルチャーです。レゲエの精神は、JAH JAHのクリエイションにどう息づいていますか?
レゲエは、僕にとって大きなインスピレーションです。主権、解放、自由、愛、平和、そして団結。そうしたメッセージは、僕のクリエイションに大きな影響を与えています。そして、レゲエに宿るスピリチュアリティも重要です。僕にとってレゲエは単なる音楽ではなく、その精神性そのものが、JAH JAHの活動の大きなインスピレーションになっています。
その意味で、あなたにとってレゲエは「音楽」というよりも、ひとつの哲学に近いものなのでしょうか?
レゲエは、真実を伝える音楽です。僕はそこにある哲学に強く惹かれています。だから僕にとってレゲエは、単なる音楽ではありません。一つの哲学であり、人々や社会に対するビジョンでもあるんです。
日本のレゲエシーンには、音楽だけでなく、ファッションやコミュニティを含めた独自のカルチャーが存在します。そうした日本のシーンに触れるなかで、あなた自身のクリエイティブに影響を与えたものはありますか?
日本のレゲエアーティストやセレクターからは、たくさんのインスピレーションを受けています。日本には素晴らしいアーティストやセレクターが数多くいて、彼らの活動から学ぶことも多いです。
ご自身のルーツとなったレゲエアーティストを挙げると?
ジョー山中です。特に、ザ・ウェイラーズ(The Wailers)と共演した『Reggae Vibration』というアルバムからは大きなインスピレーションを受けています。カリブの音楽への深い愛情が感じられる作品で、僕にとってとても特別なアルバムです。
活動の拠点はパリとのことですが、パリの街はJAH JAHにどんな影響を与えていますか?
パリはとても活気があり、常に変化し続けている街です。だからこそ僕たちは、オアシスのように心安らげる場所、家にいるような感覚で過ごしながら、100%アフロ・ヴィーガンの自然な食材を使った料理を楽しめる空間を必要としていました。人生のパートナーであり、仕事のパートナーでもあるコラリー・ジュイエ(Coralie Jouhier)は、シェフとして素晴らしい仕事をしてくれています。
一方で日本のカルチャーに共感するところがあれば教えて下さい。
日本には、あらゆるものに対する細やかなこだわりがあると感じています。テクノロジーやものづくりにおける精密さだけでなく、人や物に対するリスペクトにも惹かれています。そうした姿勢こそが、僕が日本や日本の人々に魅力を感じる理由です。
今回の来日含め、次にJAH JAHが挑戦したいことは何ですか?
まずは日本での活動をさらに深めていきたいです。そして、その先にはアフリカへ行くことも考えています。
ダキシリン・ゴメスさん個人としての今後の目標について教えて下さい。
具体的な目標を決めているわけではありません。ただ自由にクリエイションを続け、自分の精神やインスピレーションに従って生きていきたいと思っています。僕にとって最大のインスピレーションはJAH JAHです。そして、そのさらに根底にあるのは神やスピリチュアリティ。これからも、自分の信じるものに導かれながら、自由に創造し続けていきたいです。
ダキシリン・ゴメス(Daquisiline Gomis)
パリを拠点に活動するクリエイター。2015年にコラリー・ジュイエとともにフードバイク Le Tricycleを立ち上げ、2017年にはアフロ・カリブ文化とヴィーガンフードを融合した『JAH JAH by Le Tricycle』をオープン。現在は、食を起点に音楽、ファッション、コミュニティへと活動の領域を広げている。Comme des Garçonsやadidas Originalsとの協業でも知られ、レゲエの精神性を背景に、ジャンルを横断したクリエイションを続けている。




















