WORKSOUT AOYAMA ── アンドレア・カプートが語る「抵抗」としての建築 | Interviews
東京・青山エリアに誕生したミニマルな建築に隠されたラディカルな意志
WORKSOUT AOYAMA ── アンドレア・カプートが語る「抵抗」としての建築 | Interviews
東京・青山エリアに誕生したミニマルな建築に隠されたラディカルな意志
イタリア・ミラノを拠点に、建築実務と徹底したリサーチを並走させる建築家 アンドレア・カプート(Andrea Caputo)。グラフィティ文化の変遷を網羅した著作『All City Writers: The Graffiti Diaspora』(Critique Livre/2009年)や、構築の細部に焦点を当てた『U-Joints: A Taxonomy of Connections』(*アニーナ・コイヴ(Anniina Koivu)との共著:SYNC-SYNC EDITIONS/2022年)で見せた彼の鋭い洞察は、都市のあり方を根本から問い直す巨大プロジェクト『Dropcity(ドロップシティ)』へと結実しようとしている。
そんな彼がこの春、韓国・ソウルを代表するセレクトショップ『WORKSOUT(ワークスアウト)』の日本初店舗である『WORKSOUT AOYAMA(ワークスアウト アオヤマ))のオープンにあたり、その空間設計を担った。同ショップが位置するのは、世界中のラグジュアリーメゾンの旗艦店が立ち並ぶ東京・青山エリア。あらゆる建築家が「完成された美」を競い合うエリアに誕生した『WORKSOUT AOYAMA』は、リテールデザインにおける既存のロジック(高級素材による装飾)を用いず、あえて「工事中(過渡期)」のようなディテールを取り入れ、異質の存在感を放つ。しかし、そのミニマルな佇まいの裏側には「抵抗の建築」とも呼ぶべき、利潤優先の都市開発に対抗する極めてラディカルな意志が隠されている。
『Hypebeast』は『WORKSOUT AOYAMA』のオープニングのために来日したアンドレア・カプートへインタビューを敢行。『WORKSOUT AOYAMA』のデザインコンセプト、そして数々のプロジェクトを通じて彼が思い描く、理想の都市像とは。
現代の都市開発には“抵抗(レジスタンス)”が必要
Hypebeast:アンドレアさんは建築実務と並行して、出版やリサーチ(『All City Writers』 や『U-Joints』など)に精力的に取り組まれています。あなたにとって「本を作る(アーカイブする)こと」と「空間を設計すること」は、どのような相互作用を持っていますか?
Andrea Caputo(以下、A):私にとって、出版とデザインの関係性は、その根底にある「リサーチ」によって結ばれています。エディトリアル・プロジェクトとは本質的に、我々のスタジオが15年以上にわたって積み上げてきた継続的な探究プロセスの結実に他なりません。こうした探究の多くは、建築やデザインにおける素材、あるいは構造的要素に対する深い好奇心から生まれます。例えば『U-Joints』は、その特定の分野に焦点を当て、何年もかけて行ったリサーチの結果として形になったものです。
私は建築やデザインの実務において、こうしたリサーチを育むことは極めて重要だと確信しています。なぜなら、リサーチこそが、我々が周囲の世界に対して好奇心を持ち続けることを可能にするからです。さもなければ、今日の、主に依頼主の意向や商業的需要に支配されたシステムの中に制限され、あるいは閉じ込められてしまうでしょう。リサーチは、スタジオという環境に「酸素」を送り込んでくれる存在なのです。それは思考の射程を広げ、目の前の急務を超えた問いを投げかけることで、チームを刺激します。多くの意味で『Dropcity』プロジェクトも、この「より遠くを見据え、既存の枠組みを越えていきたい」という衝動から生まれたものです。
あなたは10年以上にわたりアジアの主要都市(ソウル、上海、東京)で数々のプロジェクトを手掛けてきました。アジアはヨーロッパより規制が緩やかで、実験的な試みに対してオープンな環境だとお聞きしています。そんなあなたから見て、現在の東京の都市開発はどのように感じていますか?
A:私の経験上、東京の都市開発と、欧米の都市、あるいは上海やソウルのような他のアジアの巨大都市との間に大きな違いはないと感じています。これらのメガシティはいずれも、不動産開発が何よりも利益を優先するという同じ経済論理によって形作られています。その結果、公共圏(パブリック・レルム)の役割は縮小し、社会的な価値を核心に据えた取り組みやプログラムも減少する傾向にあります。これは、2020年の東京オリンピックに向けた開発プロセスにおいて特に顕著で、ミラノで見られた動きと非常に似ていました。
オリンピックや万博のような大規模な都市イベントは、常に巨大な不動産ビジネスと密接に結びついています。こうした状況下では、「抵抗(レジスタンス)」が極めて重要になります。私たちは独自のダイナミズムを育み、何よりもオルタナティブな経済モデル、つまり「ボトムアップ」で生まれるモデルを模索しなければなりません。今、都市を形成しているトップダウンの力に抗い、大手不動産資本からではなく、個人やコミュニティから生まれる、潜在的かつ確かなエネルギーを引き出すことが求められています。東京におけるその意義深い例の一つが、亀有の『SKWAT』(*『SKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)』)という取り組みです。彼らは経済的な理由から都心からは外れた場所で活動していますが、まさにこの「抵抗」と「ボトムアップによる文化生産」という原則を体現しています。
あなたの著作『All City Writers』は、1970年代にニューヨークで生まれたグラフィティ文化がヨーロッパ、そして世界中へと拡散し、各地の都市環境に適応していったのかを網羅的に記録したものです。世界のストリートシーンについては現在もリサーチを続けていると思いますが、いまのアジア、東京のストリートシーンをどのように捉えていますか?
A:『All City Writers』、特に最新版(『All City Writers – Edition X』2024年)において最も興味深い点の一つは、グラフィティ文化の進化を世界規模で比較できる「層」が加わったことにあると考えています。1980年代半ばにこの文化がニューヨークからヨーロッパへと渡った時点で、我々はすでにパラダイムの大きな転換を目の当たりにしました。特に「スタイル」、より具体的に言えば「ハンドライティング(筆跡)」における変化です。ヨーロッパのライターたちが発展させたタグや美的装置は、ニューヨーク・モデルの直接的な進化形と捉えることができます。このプロセスは世界中に広がり、各地で非常に個性的かつ鋭敏なムーブメントを生み出しました。例えばメキシコのモンテレイや、ブラジルの「ピシャソン(pixação)」などは、グラフィティという表現がいかに急進的に異なり得るかを示す好例です。
アジアにおいても同様に、ライティング文化の独自でローカライズされた解釈が反映されています。私はこれを北京、そして東京で観察してきました。特に東京は非常に強力なグラフィック・視覚文化を持っており、アメリカのグラフィティの基本原則を独自に再解釈してきました。南米の文脈ほどドラスティックではないかもしれませんが、そこには独自の感性が宿っています。1990年代の時点では、私は日本のグラフィティが全く異なるものに進化すると想像していました。しかし後に訪れてみると、それはかなり忠実にアメリカのルーツ、つまりニューヨークのマトリックス(母体)に沿ったものであることに気づきました。とはいえ、ここからさらに自律的で独自のものへと進化していく可能性は、まだ十分にあると考えています。
既存の素材を“再文脈化(リコンテクチュアライズ)”することで革新が生まれる
『WORKSOUT』はソウルのストリートシーンを象徴する存在です。あなたは『WORKSOUT』のソウル店も設計されていますが、今回、東京・⻘山エリアに彼らが進出するにあたり、建築家としてどのようなコンセプトを考えましたか? ソウル店との違いも踏まえて教えてください。
A:『WORKSOUT』のための東京のプロジェクトは、2015年に最初の店舗を手掛け、その約4年後に2号店を展開したソウルでのプロジェクトと比較して、大きな「時間の隔たり」を象徴しています。今回の東京店は、我々の設計手法が進化し、特定の研究テーマが成熟したタイミングで実現しました。具体的には、素材の「オーセンティシティ(真正性)」について、そして「市場で手に入る既存の要素をそのまま使う」というアイデアです。こうした理由から、東京店のファサードには日本の「足場システム」をそのまま採用しました。これらは建設現場で一般的に使われている既製品のアルミニウムやポリカーボネートのパーツです。
私たちの基本的な原則は「本質的に新しく発明すべきものなど何もない」ということであり、革新(イノベーション)とはしばしば既存の素材を「再文脈化(リコンテクチュアライズ)」することから生まれます。 これは利便性やオポチュニズム(日和見主義的な合理性)の追求でもあります。私たちは、過度に洗練された素材や、作為的・人工的な「ラグジュアリー」の概念に縛られた素材は使いません。むしろ、足場のように誰が見てもすぐにそれと分かる要素をあえて使います。それらを異なる方法で再配置することで、より洗練された「建築的なもの」へと昇華させ、人々の認識を変えることができるのです。
あなたが現在ミラノで進めている『Dropcity』は、建築やデザインの新しいプラットフォームとして注目されています。このプロジェクトで試みている「都市の再生」のアイデアは、今回の『WORKSOUT AOYAMA』のような商業施設の設計にも何らかの形でリンクしているのでしょうか?
A:はい、そのアイデアはまさに『Dropcity』の精神に深く根ざしています。我々の野心は、プロジェクトをひとつの「拡張されたプラットフォーム」として思考することにあります。それは特定のクライアントを過度に称揚するものでも、我々自身の声やブランドの個性が支配するような、過剰に作家主義的なものでもありません。このアプローチは『Dropcity』だけでなく、私たちの多くの仕事の根底にあります。今回の『WORKSOUT AOYAMA』においても、地域のデザイナーたちが幅広く関与できるような場を構想した点にそれが反映されています。この「開かれた性質」が、空間そのものや、そこでの振る舞い、そしてプロセス全体を規定しているのです。こうした取り組みを発展させる上で、現代においてこうしたプロジェクトを進める上で不可欠なのは、閉ざすのではなく「開く」ことであり、各プロジェクトを画一的なものではなく、プラットフォームとして機能させることです。
それは、ふらりと立ち寄る人だけでなく、何度も戻ってきたくなる場所、つまり都市の「アンカーポイント(錨を下ろす場所)」となるプラットフォームです。これはある意味、1990年代のいくつかのショップを彷彿とさせます。当時、ヨーロッパやアメリカ、そしてアジア ── とりわけ日本において、それらは真のカルチャー・ハングアウト(文化的な溜まり場)として機能していました。例えば、かつてのスケートショップなどは、人々が出会い、経験を共有し、コミュニティを築くための場所でした。このような直接的な「共有体験」こそが、今日の都市モデルや商業モデルを形成する上で、再び極めて重要な鍵になると信じています。
『WORKSOUT AOYAMA』の内装にはローカルのデザイナーが参加しているとおっしゃいましたが、どのように選定したのでしょうか?
A:何人かは知人のキュレーターを介して紹介してもらいました。また、東京の大学で建築やインテリアデザインを教えている多くの教師や、熊野亘のような著名なデザイナーたちとも知り合いでした。これらはこの10年間で私が築いてきたつながりです。今回は基本的に彼ら一人ひとりに声をかけて、「青山の中心でクールなプロジェクトをやるんだけど、参加しない?」と伝えました。すると皆「ぜひ参加したい」と快諾してくれたんです。
今日、この精神を若い世代に注ぎ込むことが本当に重要だと思っています。なぜなら、彼ら自身が積極的に関わらなければならないからです。ただの小売りのプロジェクトでは、とても退屈な結果になってしまうでしょう。このようなプロジェクトはもはや単なるパラレルな存在ではなく、コミュニティや若い世代を巻き込むことが重要なんです。そうした環境を作り出し、健全な空間をデザインするという考え方が必要だと思っています。
木のフレームをガラスで覆った什器、無機質なパイプの棚など、インテリアのデザインについて解説してください。また、照明や空調などのインフラ設備をすべて隠すように設計したのはなぜでしょうか?
A:インテリアデザインの核心は、内部空間を徹底的に解放し、新しいフレキシブルなプログラムが入り込む余白(インターセクション)を生み出すことにあります。そのために、主に3つのアプローチを取りました。第一に、建物のインフラと機能的なシステムをすべて中央の「コア」に集約したことです。金属製の足場構造で作られたこのコアは、プロジェクトの実用的な側面をすべて引き受けています。空調、配管、電気といった設備系に加え、防災やセキュリティデバイス、アラームシステムまでもがこの中に収められています。同時に、音響システム、フィッティングルーム、レジ、DJブース、ストレージ、バックオフィスといった主要な運営機能もここに含まれます。この戦略により、フロア面積だけでなく天井も完全に解放することができました。剥き出しのコンクリートの壁や梁といった、建物の力強い構造美を強調するため、コアにすべてのテクニカルな要素を吸収させ、構造体に一切手を加えないようにしたのです。天井には照明器具一つ見当たりませんが、これはリテール環境としては極めて異例なことです。全3フロアにおいてこの条件を貫くことで、建築の構造そのものが空間を定義する主役として浮かび上がるようにしました。
第二の手法は、外壁構造(換気ファサード)の断片として構想された一連のパーティション(仕切り)です。これらの要素は、外装材、断熱材、構造フレームといった異なる技術層が重なり合う構造をあえて露わにしています。片面ではこうした構築的論理を表現しつつ、もう片面ではリテール機能へと完全に統合させています。これにより、ギャラリースペースと販売エリアを効果的に切り分けています。
第三の要素は、アパレルやフットウェアのディスプレイシステムです。各階の壁面に沿って連続する金属製のハードウェアを設置しました。機械的、あるいはテクノロジー的な語彙を引用したこのシステムは、空間全体に展開しながら、クライアントが求める膨大な商品数(SKU)を収容可能な、明快かつ効率的な陳列のフレームワークを提供しています。
通常、商業施設では売り場面積の最大化が優先されますが、今回は面積の半分をギャラリー空間に割り当てています。この設計判断は極めて大胆だと思いますが、このようにした意図を教えてください。
A:先ほどもお伝えした「空間を解放する」というアイデアこそが、この提案の根幹となる原則でした。すべての機能的なシステムを中央のコアに集約することで、各フロアの約50%を商業利用ではなく、展示や文化的コンテンツのためのスペースに充てるよう、クライアントを説得することができたのです。この合意に至るまでは決して容易ではありませんでしたが、平面計画から障害物を排除しさえすれば、店舗の半分の面積でもクライアントが求める商品数を十分に収容できることを証明しました。その意味で、このプロジェクトは「機能的プログラムの徹底的な圧縮」という原則に基づいています。このアプローチによって、空間全体のポテンシャルを増幅させることができました。東京でも極めて中心的な、人通りの多いエリアに位置しながら、この場所は今後、伝統的なリテールの枠組みを超えた幅広い取り組み(エキシビジョン、インスタレーション、パフォーマンスなど)を受け入れることができます。今日のリテールは、その中身(コンテンツ)を根本から見直すべき時期に来ていると考えています。しかし、その転換を実現するためには、適切な空間的条件を整えなければなりません。そしてそれこそが、建築家が挑むべき課題なのです。
夜間のライトアップを杉本博司氏の作品(『ドライブイン・シアター』)になぞらえているのが非常に印象的です(正面に設置されたテキスタイルをスクリーンに見立てていると察します)。この演出について説明していただけますか? また、建築を「時間を圧縮した単一のフレーム」として捉えるとき、『WORKSOUT』というショップの中で流れる時間をどのようにコントロールしようと試みたのでしょうか?
A:「時間の流れ」は、我々が現代都市をどのように知覚するかを考える上で、きわめて根本的なテーマです。私は、都市生活の中に「発見のダイナミズム」を再導入することが不可欠だと考えています。現代において、都市を彷徨い、あえて迷い込む「フラヌール(遊歩者)」のような存在は、かつてないほど必要とされています。私たちが失いつつあるのは、まさにこの「意図的な方向感覚の喪失」であり、都市環境の再発見へと導く「好奇心」そのものです。この文脈において、あえて情報を削ぎ落とし、発光する輝き(ルミナス・グロウ)へと還元されたニュートラルなファサード ── 意図的に「反・コミュニケーション的」に設計されたもの ── は、都市体験を再定義するための手段となります。
ご指摘の通り、このアプローチは、光そのものを物語の装置として扱う日本の映画や写真の伝統的なイメージからインスピレーションを得ています。この表現を通じて、我々は都市との新たな遭遇の仕方を促したいと考えました。都市という織物(アーバン・ファブリック)の中に、直感的なひらめきを与える特異な、あるいは多層的な地点が存在し得ると想像させること。それは即座にすべてを露わにするのではなく、時間をかけてその正体を明かしていくような場所です。こうした体験は、今日ではほとんど失われてしまったものかもしれません。しかし、建築こそがそれを取り戻す手助けができるはずです。
都市空間を“パブリック・スペース”から“パブリック・ドメイン”へ
あなたはこのプロジェクトを「文化的生産とリテール体験を分離された領域としてではなく、現代都市における相互生成的条件として捉える新しいマルチブランドモデル」と称しています。ショッピングという行為がオンラインに移行する中で、アンドレアさんが考える実店舗が果たすべき役割とは何でしょうか? 『WORKSOUT AOYAMA』では、訪れる人にどのような体験を提供したいと思っていますか?
A:今という時代はリテール、とりわけセレクトショップ(マルチブランド・ストア)の役割を再定義する絶好の機会であると確信しています。約20年前、パリの『Colette(コレット)』や、ロンドン/日本から世界に広がった『DOVER STREET MARKRT(ドーバー ストリート マーケット)』など、革新的なプロジェクトが相次ぎました。しかし、以降はそのような勢いは停滞してしまったように見えます。これら数少ない例を除いて、リテール体験を真に再定義するようなプロジェクトは、これまでほとんど現れませんでした。
今日、そのことを再考するチャンスが巡ってきています。ただし、建築やデザインだけで解決しようとするのではなく、「プログラム」から始める必要があります。重要なのはアクティベーション(活性化)の戦略です。単なる商業活動や販売を超えたイベントや企画の年間カレンダーを構築し、リテールを現代都市のエネルギーに適応可能な、柔軟な「都市のインフラ」として位置づけることです。これを実現するためには、広大なスペースが不可欠です。ショップ主導によるものだけでなく、ローカル、あるいはグローバルのステークホルダーたちが一時的にそこへ滞在し、空間を変容させていく。そうした取り組みを育む「インキュベーター(孵化器)」として機能する場所が必要です。こうした空間は、必ずしも都市の中心部にある必要はありません。商業的に戦略的な中心地から離れた、予測不可能な場所にこそ、最も興味深い発見や活性化の機会が潜んでいます。オルタナティブな都市の在り方を模索することも、同様に重要です。実際、発見やアクティベーションの最も興味深い機会というものは、伝統的な都心部や既成の繁華街から離れた場所からこそ生まれてくるものなのです。
最後の質問です。『All City Writers』での都市の観察から、『WORKSOUT』の空間設計、そしてミラノの『Dropcity』のプロジェクトまで、あなたの活動は「都市の中にいかにして新しい文化の種を植えるか」という試みに見えます。あなたにとって、理想の都市の姿とはどのようなものでしょうか?
A:私の理想とする都市のビジョンは、根本的に「予測不可能(アンプレディクタブル)」な場所であるという考えに基づいています。今日、ほとんどの都市中心部は均一な開発原理によって形作られています。そのため、どのエリアが活発で、どのエリアが受動的であるかを判別したり、文化的なプログラムや公的な取り組みがどのように展開されるかを予測したりすることは比較的容易になってしまいました。すべてが画一的な論理に従い、その大部分は民営化された経済開発モデルに突き動かされています。その結果、真に新しく、驚きに満ち、心からの感嘆を呼び起こすようなものは、ほとんど存在しなくなっています。都市はしばしば「あらかじめ条件付けられた場所」に見え、定義済みの枠組みの中では新しいアイデアが芽生えることさえ困難になっています。
だからこそ、私たちは利益への固執を捨て、新しいコンテンツの開発や、新しい「アクティベーション(活性化)」のあり方に焦点を当てた軌道へと舵を切るべきだと信じています。これはすぐに成し遂げられるものではありません。時間が必要です。人々の意識、そして公的資源の管理あり方から立ち上がる、緩やかなプロセスなのです。
最終的には、都市空間の概念を「パブリック・スペース」から「パブリック・ドメイン」へと移行させるための再考が求められます。今日、パブリック・スペースとは、単に「アクセス可能な場所」として理解されています。しかし、アクセスのしやすさだけでは活力を保証することはできません。多くの公共空間は不活性で、時には抑鬱的(デプレッシブ)な印象さえ与えます。例えば、現代の広場のいくつかはショッピングモールのそれと区別がつきません。アイデンティティが欠如しているわけではないにせよ、そこには真の意味でのエンゲージメント(関わり)や帰属意識が生まれる余地がないのです。決定的な違いは、コミュニティがその空間にアイデンティティを見出し、自らのものとして認識して享受(アプロプリエーション)し始めた時に現れます。これこそが、パブリック・スペースをパブリック・ドメインへと変容させる鍵なのです。
とりわけ強力な例は、バルセロナの『MACBA(Museu d’Art Contemporani de Barcelona:バルセロナ現代美術館)』前のスケート広場です。何十年もの間、スケーターのコミュニティがこの広場を占拠し、信じられないほど強く、ポジティブな影響を生み出してきました。これこそが利用と集団的な愛着を通じて、空間が真のパブリック・ドメインとなった明快な事例です。こうした事例は世界中にあり、都市を計画し管理する人々にとって重要な指針となるはずです。空間が、単なる形式的な公共エリアとして規定されるのではなく、人々がそこを占有し、自分たちのものにすることを促すように設計されたとき、それは社会を活性化する強力なエンジンとなり得ます。それこそが、私たちが再び立ち返るべき出発点だと信じています。
アンドレア・カプート(Andrea Caputo)
ミラノを拠点とする建築家・研究者。建築および都市計画に関する継続的なリサーチと、実務とを横断しながら活動。2011年には自身の名を冠したスタジオ「Andrea Caputo Studio」を設立。ミラノにおける建築とデザインの拠点『Dropcity』の創設者。都市文化の美学的・社会的側面に関する最初の探究である著書『All City Writers: The Graffiti Diaspora』(Critique Livre/2009年)は、広く引用される重要なリファレンスとなる。2018年からは、建築誌『Domus』において現代建築の実践を紹介する連載『Studio Visit』のキュレーションを担当。2022年にはアニーナ・コイヴとの共著『U-Joints, A Taxonomy of Connections』を出版。また、ヴァストゥシルパ財団と共同で制作し、2023年に刊行されたバルクリシュナ・ドーシ(2018年プリツカー賞受賞)の建築に関する包括的な調査書も手がける。2026年のミラノデザインウィークにて『Dropcity』の全容を公開。
公式サイト
WORKSOUT AOYAMA
住所:東京都港区南青山3-17-6
営業時間:
12:00-20:00(平日)
11:00-20:00(土日祝)
TEL:03-6434-9455
Instagram:@worksout.jp_official






















