KREVA x ALOMOSTBLACK 中嶋峻太──言葉と服が交差する“共鳴”のコレクション | Interviews
キャリアの転換点で響き合う、2人の創造性が織りなす新たなファッションプロダクト
10年と20年。これは異なるフィールドで、それぞれが“本物”を追求してきた時間だ。音楽とファッション、決して交わらないはずの道が、一つの形を成す。KREVAと中嶋峻太のふたりにとって節目となる2025年。ただの記念や偶然では語りきれないコラボレーションが生まれた。
2004年、ソロアーティストとしてのキャリアをスタートさせたKREVAは、ラッパー、プロデューサー、作詞作曲家として日本の音楽シーンを牽引し続けてきた存在だ。技巧的なライミングと研ぎ澄まされた言葉選びで、“HIP HOPをポップフィールドに引き上げた男”として、その足跡は常に先駆的であり続けた。一方、〈ALMOSTBLACK(オールモストブラック)〉デザイナーの中嶋峻太は、〈Raf Simons(ラフシモンズ)〉、〈N.HOOLYWOOD(エヌハリウッド)〉などの名門で経験を積み、2015などの名門で経験を積み、2015年に自身のブランド〈ALMOSTBLACK〉を立ち上げる。アートや工芸、ミリタリーやドレスの要素に重ね合わせたスタイルは、時代に流されない強さを持ち、10年という月日を経て独自の立ち位置を築いてきた。
2025年、それぞれのキャリアにおける節目、KREVAのソロ活動20周年、そして〈ALMOSTBLACK〉の設立10周年。音楽とファッション、異なる表現の領域で“本物”を追求し続けてきた二人が、互いの哲学に共鳴し、コラボレーションというかたちで交わる。それが、6月18日(水)にリリースされるアパレルカプセルコレクションだ。この日は偶然にも、KREVAと中嶋の誕生日。単なるコラボにとどまらず、過去と現在、偶然と必然が交錯する象徴的なプロジェクトとなっている。
彼らがどのように出会い、何に共鳴し、どのような思いでこのコレクションを作り上げたのか、その物語と背景に『Hypebeast』が迫る。
元々は俺がただALMOSTBLACKの服を自分で買って着てたんですよ
Hypebeast:お二人が今回コラボレーションをすることになったきっかけを改めて教えてください
KREVA(以下、K):きっかけは、元々は俺がただALMOSTBLACKの服を自分で買って着てたんですよ。で、買う時にお店の人に「これ日本人が作ってるんですよ、しかもラフ・シモンズにいた人なんです」って言われて、「ラフ・シモンズに日本人いたの!?」っていうのがまず衝撃でした。実際着てみたらめちゃくちゃクオリティも高くて。それを現場に着て行ってたらスタイリストが「それどうしたんですか?」って聞いてきて、「俺買ったんだよ、最近気に入って着ててさ……」と話していたら、「これ!」ってその日の衣装にALMOSTBLACKの服をたまたま持ってきてくれてたんです。それで「あれ!」ってなって、そしたらそのスタイリストが(中嶋と)仲良いこともあって、色々話が繋がっていって衣装を早めに貸してくれたりとか、いろいろなところでALMOSTBLACKを着るようになったりして。
そこから俺が独自の道を歩み続けている人、作り出している人、例えば相撲の土俵に使う砂とか土とか作っている人とか、硯だけ作っている人とか、そういう人をゲストに呼ぶっていうラジオ番組をはじめるってことになった時に、第1回目はメディアとかにあまり出たことが無い面白いもの作っている人ってことで「中嶋くんいいんじゃないか」ってことになり声をかけさせてもらったんです。そしたら出演してくれて(そのラジオ番組にまで)来てくれてそこで誕生日が一緒だって分かったんだよね。その後俺が『ラッパーと紙とペン』っていう原書展示販売会(2025年1月)を『渋谷PARCO』で開くときに、グッズを「ALMOSTBLACK でやってくれないか」という話の流れから、今のここ(関係性)にたどり着いたっていう感じですね。
今回のコレクションで特に気に入っているアイテムはありますか?
K:今回のコラボの中で特に気に入ってるのがコーチジャケット。このコーチジャケットは、まず見えたっていうか。もっと言うと今回出したもの全身(スタイリング)がまじで一瞬で見えたんすよ。サンダルにくるぶし丈(8部丈)のパンツ、ソックス、ドッグタグ、パーカー……そしてこのコーチジャケット。こういうスタイリングはありそうでなかった。これが見えたんですよね。なので、このスタイリングのキモであるコーチジャケットは結構お気に入りですね。
中嶋峻太(以下、N):僕は逆にこの8部丈のパンツとか、Tシャツとかパーカーは過去に作っていたんですけど、コーチジャケットは今までトライしたことがなくて。で、KREVAさんに「これいいんじゃない?」って言われた時に、自分も見えて。スタイルも「パーカーで8部丈でサンダルでやれたらいいじゃない?」ってなった時に僕自身も「それめちゃめちゃ欲しいです」って即答でした。
ライブ衣装でもALMOSTBLACKを着用されていますが、その魅力とは?
K:この丈感かな。大きくいうと形ってことになってしまうのかもしれないけど、「他のブランドとは丈のバランスが一味違うな」ってよく感じていて。そこが一番好きなところですかね。シャツもそうだったし、上品さのある大きさというか。特にコーチジャケットの時はその話をしたよね。
N:そうですね、レイヤーでパーカーとかTシャツがちょっと見えるような丈感をすごい研究して、「もうちょっと短く、そこだ!」みたいなのを着ていただいた時にチェックして、それが今回目指したとこですね。
K:意外とコーチジャケットって、安く買おうと思えば例えば大きいイベントのスタッフさん達が着ているようなもののボディとかって数1000円とかで買えるのかもしれない。それが良いって思ってた時もあったんだけど、丈が長くなったりサイズ感がちょっとね……。
N:そうですね、袖が細かったり。
K:あと襟も異常に大きかったり(笑)。コーチジャケットというものは好きだけど、こうだったらいいのになぁって思いをここに詰め込んだ感じかな。
発売日が6月18日というのも意味深いですよね。
N:そうですね、僕がラジオに出させていただいた時にまず言ったことが「誕生日同じですね(笑)」っていう。なかなか同じ誕生日の人はいないんで。自分も思い入れがある日で、当然KREVAさんもあると思うんで、やっぱそこでどうにか発売したいというのが一番最初だったというか。内側に入っているプリントにも(6月18日を)入れているんですけど、そこが一番分かりやすいところだったと思います。
K:あと、俺が20周年でALMOSTBLACKが10周年で、そのタイミングっていうのだったね。
N:そうですね、それがちょうどいいタイミングだったっていうか。
K:しかも誕生日っていう。
中嶋さんがKREVAさんの“言葉”に共感していると聞きましたが、具体的には?
N:KREVAさんがデビューされた2004年の『音色』から聴いているんですけど、基本的にポジティブというか。すごく(言葉が)入ってくる、他のアーティストにはない強さがあって。僕がアーティストの方とコラボレーションするときも、“何を言っていたか”みたいなのを結構重要視していて。そういう時もKREVAさんの言葉は、強いんですけど心地よさを感じたので。モノを作るときでも、KREVAさんの言葉はパワーがあるんですけど、同時に心地よさもあって。そこに共感しました。
今回は、音楽とファッションが交わったコレクションだったと思われますが、制作を通してお互いが刺激を受けた点はありますか?
K:中嶋くんのデザインがそうなんですけど、周りの人を動かす力がすごい強いなと思いました。自分は本当に1人で作っちゃうタイプなんだけど、パタンナーさんとかPRの方とか、中嶋くんに関わる人、周りの人をすごく上手く動かしたり、巻き込んだりしながらものを作っていくっていうのがすごいと思いました。そこは刺激を受けました。
N:そもそも、KREVAさんは、僕がずっと見てきた方なんで。お話しすることも無いと思っていた方と会ってお話できたっていうことが自分の中では結構印象強いです。また僕が「出していいのかな?」と思っていたグラフィックも、「それ、めちゃいいじゃん」って言ってもらえたから形になったものが多くて。Krevaさんのタイミングの判断力って、すごく信頼できると思います。
今回衣装はシルバーですが、その「色違い」である黒を一般発売する意図は?
K:そこも今思い出したんだけど、結構中嶋くんがねじ込んできたというか(笑)。「衣装も作らせてもらいたい」みたいな。「なるほど」ってなって。で自分はライブスタッフと「驚きのある衣装を作りたい」っていう話をしていたんですよ。でも中嶋くんとは俺結構普段着みたいなのを作っちゃったので、そこからじゃあちょっと色違いで、振り切ったやつを作っていこうって言って作り出した感じです。でもそこで得たものは、この先々のものに落とし込めるのかなと思います。
ありがとうございます。KREVAさんの中で、音楽とファッションがリンクすることはありますか?
K:僕が思うのは、1990年代ごろの出来事。ウォークマンで使い古したヘッドホンをして、カセットテープにダビングした音だから良いサウンドなわけないんだけど、とはいえそれでHip Hopを聞いて街を歩いていたら最強な気分になれたんですよ。原宿や渋谷とか、すごいおしゃれな人がいっぱいいるけど、「誰も聞いてねえだろ、こんないいHipHop」っていう気持ちで最強な自分になれた気がした。それが音楽の力だなって思ってて。例えば、「明日から全く黒を着ないで赤だけでいこう」ってなったら人も変わってくると思うし、そういう力をくれるパワーが音楽とかファッションはものすごく強いと思っています。
ブランド設立10周年とアーティスト活動20周年という節目にあたって、それぞれが今改めて感じていることはありますか?
K:ここ数週間、色々と考えたり中嶋くんと話したりしていますが、改めて意識しているのは「新しいことをやりたいと思った時に、持っているもので挑戦する」ということです。さっきもAIアートの雑誌を一緒に見たりしていましたが、機材やソフトが毎週のように新しく進化していて、すごく魅力的に感じます。でも、「それ、もう俺の中にあるんじゃないか?」とも思うんです。たとえば、ドラムのスネアだけでも 2 万種類くらい持っているはずなので、まずはそれをディグってみたり、昔買った高価なハイファッションのTシャツも2周してまたカッコ良いんじゃないか、とか。その時々の音や服があると思うんです。でも、新しいものを買って解決するだけではなく、今持っているものでどうにか新しい表現にたどり着けないかをまずは追求しています。もちろん、本当に必要だと思えば買いますが、これがここ最近で感じていることです。
N:僕は職業柄すごい量の洋服を持っていて、譲ったりとか売ったりみたいなこともしていたんですけど、引っ越しとかのタイミングで、1個1個見直していった時に、新たな発見もあって。過去のものとか見ながら、こうやって洋服を作っているんだって再認識します。10年の間に色々あったけど、こうやってこの場にいる事のは積み上げてきたものがあるからからこそだなって。本当に周りの方々がいるから僕はやってこれたと思っています。今後はAIやChatGPTみたいなテクノロジーも融合させつつ、自分にしかできない表現も探していきたいです
今後の展望について、お2人の構想はありますか?
K:この一式作ったあとにもこういうの欲しいなって何個かリクエストはしているので、今回が良ければまた作ってくれるんじゃないかなとは思います。
N:そうですね、できれば来年の6月18日に何かできるように、自分もそれまで頑張ったりとか。KREVAさんともお話しして、「それいいね」みたいなのがやっぱパッて話すと出てくるのがすごい多いので、そこはすごく現場感というか。LINEとかメールとか電話ではなくて、直接会ってお話しすることが大きかったなと、感じています。
K:それを続けていけたらいいですね。
KREVA
日本のヒップホップシーンを代表するラッパー/プロデューサー。1997年にHIPHOPグループ KICK THE CAN CREWのメンバーとしてデビューし、2004年からソロ活動を本格化。リリックの巧みさ、音楽性の高さ、セルフプロデュース力で広く評価されており、J-POPとヒップホップの橋渡し的存在としてもその認知度は高い。『音色』『イッサイガッサイ』『基準』『トランキライザー』などのヒット曲に加え、ライブパフォーマンスの評価も高く、常にシーンの最前線を走り続けている。音楽だけでなく、舞台やCM、書籍など多方面でも活動中。2025年には活動20周年を迎え、独自の進化を続けている。
ALMOSTBLACK
東京を拠点に展開するファッションブランド〈ALMOSTBLACK〉。“黒に限りなく近い色”という名の通り、ミニマリズムと深みのあるトーンで構築された洗練のルックを提案する。素材、縫製、シルエット、全てにおいて徹底したディテールへのこだわりが光るコレクションは、独自のパターンメイキングによって、着る者の個性を際立たせる構造美を実現。トレンドを取り入れながらも、一過性にとどまらない普遍性を兼ね備えている。また〈ALMOSTBLACK〉は、単なる服作りにとどまらず、静かで力強いライフスタイルの哲学を体現するブランドとして、多くのファッション感度の高い層から支持を集めている




















