トラヴィス・スコットが GR8 で購入した PROLETA RE ART の真相
デザイナーの PROT に直接取材
11月某日、ライブのため来日していたトラヴィス・スコット(Travis Scott)が、原宿の名店『GR8』を訪れていた。店内では短い滞在時間ながら、彼の感性を強く刺激した作品がふたつあったようだ。それが、いまトレンドを超越し、ファッション感度の高い層から熱い視線を集める日本発の再構築ブランド〈PROLETA RE ART(プロレタリアート)〉の作品である(〈PROLETA RE ART〉ではアイテムと呼ばず作品と呼ぶ)。
まず1点目は、『GR8』のウェブサイトでも確認できる黒レザーのフレアパンツ ALL-LEATHER HEAVY-DISTRESSED CUSTOM FLARE JEANS “PSYCHEDELIC GARDEN”(440万円)だ。レザーを染め、溶かし、擦り、削り、解体しては縫い直す……という〈PROLETA RE ART〉特有の“狂気的な再構築”が注ぎ込まれ、重厚さと退廃美が同居した1本。既存の“ヴィンテージ加工”という概念を越え、身にまとうアートピースと呼んでもいいぐらいの存在感を放つ。
2点目はロング丈のダウンジャケット STUDS LONG NUPTSE DOWN JACKET(60万5000円)。〈THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)〉ヴィンテージのヌプシ型を再解釈し、スタッズワークやレザーパーツを大胆に組み合わせた作品だ。ダウンという、加工が難しいアイテムをハッキングするように仕上げた新感覚のバランスは、まさに〈PROLETA RE ART〉らしい“視点”の結晶と言えるだろう。
今回の出来事について、編集部はデザイナーのProtに直接取材を行った。すると彼は、驚くほど丁寧に、そして深い熱量でその背景を語ってくれた。
20年ほどかけて培ってきた技術を全部注ぎ込んだアイテム
Protによれば、トラヴィスとの最初の接点は、〈PROLETA RE ART〉を立ち上げて間もない2021年。彼のスタイリストから「私の友人のスタイリストからあなたの存在を教えてもらった。あなたの作品はきっとトラヴィスが大好きだから、彼のためにスペシャルなジーンズを作ってほしい」という依頼が届いたことが始まりだった。トラヴィスのイメージカラーを落とし込んだそのジーンズは、〈Jordan Brand(ジョーダン ブランド)〉のイベント時に実際に着用され話題となった。
同スタイリストとProtはそれ以来友好関係を築き、彼女はカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)やクロエ・カーダシアン(Khloé Kardashian)の仕事もしており、彼女たちの子ども用の作品制作の依頼が続いていたという。すでに今までに6点の作品を納品しており、次回作も進行中とのことだ。
そして、今回の来店につながった“導線”をつくったのは、『GR8』のオーナーである久保光博の存在だ。Protと久保は2年前、〈Chrome Hearts(クロムハーツ)〉のパーティで出会い、その後LAで再会し、数日に渡り行動を共にしたことを機に一気に親しくなり、『GR8』での〈PROLETA RE ART〉の取り扱いが始まったそうだ。
そんな中、トラヴィスチームから『GR8』へパーソナルショッピングのアポイントが入った。久保は「トラヴィスは古着やヴィンテージ感のあるものが好きだから、PROLETA RE ARTを提案したい」とProtに事前相談。店頭には〈PROLETA RE ART〉の作品がわずかに残っていたものの、「せっかくならスペシャルなものを」と、Protが直前に仕上げていた“実験的なレザーフレアパンツ”を新たに持ち込むことになった。〈PROLETA RE ART〉と言えば、これまではデニムとコットンをメインに再構築してきたが、初めてレザーに挑戦したパンツがちょうど仕上がっていたのだ。偶然にもサイズがトラヴィスに合いそうだった。
実は、もうひとつの購入“作品”であるスタッズ入りダウンジャケットも、Protが自分用に実験的につくった一点物だった。オフロードバイクに乗る彼が、「スタッズが打たれた革ジャンはハーレーのようなアメリカンバイクに1番マッチする。オフロードバイクにはアウトドア用のダウンがマッチすると思うけど、普通のダウンは自分らしくないな……」と考え、ヴィンテージのダウンにスタッズを打ち込んだ作品。それを着ている姿を見た久保が気に入り、『GR8』でも扱っていた。
来店当日、ソファに並べられた数々の作品を前に、トラヴィスは、レザーパンツ初期作とダウンジャケット初期作の2点をとくに気に入ったという。Protが本人に直接「これは自分が実験的につくった一点物で……」と説明すると、トラヴィスは「めちゃくちゃクールだね」と言葉を返し、その場で購入を決めたそうだ。
「まさか本人に直接お渡しできると思っていなかったので本当に光栄です。20年ほどかけて培ってきた技術を全部注ぎ込んだ思い入れのある作品なので、胸が熱くなります」とProtは語る。普段は自身のお店を持たず、ごくまれに彼のアトリエにクライアントが訪れ対話をすることがあるが、フィジカルでクライアントに接する機会がほとんどない彼にとって、今回の“本人へ直接手渡し”は特別な体験だったようだ。
「トラヴィスはスーパースターですが、すごくジェントルで謙虚な方でした。本当に素晴らしい時間でした」と締めくくった。
トラヴィス・スコットのお買い物は、〈PROLETA RE ART〉のクラフトと個性が、国境を越え、世界的に評価される証拠と言える。既製品では決して再現できない“魂のこもった一点物”が、またひとつ新たな物語を刻んだ瞬間であった。




















