XG プロデューサー SIMON とワールドツアーのアートディレクターを務める YOSHIROTTEN による特別対談
各地で反響を呼ぶXG初のワールドツアー “The first HOWL”のアートディレクションに迫る
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5月の日本公演を皮切りにスタートしたXG(エックスジー)の初となるワールドツアー “The first HOWL”。以前に『Hypebae』でも大々的に特集したが、XGとは、JURIN、CHISA、HINATA、HARVEY、JURIA、MAYA、COCONAの7人組で、全メンバーが日本人で構成される世界的ヒップホップ / R&Bグループだ。2022年3月のデビュー以降、2023年7月には“GRL GVNG”が、全米ビルボードチャート “Hot Trending Songs Powered by Twitter”で1位を獲得し、さらには同年10月に米『Billboard』誌の表紙を飾っている(いずれも日本人アーティストとしては初)。まさに従来の日本人ミュージシャンの枠には一切収まらない規格外の存在と言えるだろう。そんな彼女たちを導くのは、「XGALX」のCEOであり、エグゼクティブプロデューサー JAKOPS(SIMON)だ。先日のパリ・ファッションウィークで開催された〈ANREALAGE(アンリアレイジ)〉2025年春夏コレクションのサウンドディレクションを手掛けたことも記憶に新しいSIMONは、1986年生まれのアメリカ・シアトル出身。日本と韓国のミックスであり、米日韓の3つの国にアイデンティティを持つ。DMTN(DALMATIAN)のメンバーとしての活動やさまざまな楽曲のプロデュース経歴を持つなど、20年近くにわたるグローバル市場での音楽キャリアと、そこから培ったノウハウやネットワークなどを生かし、2017年に「XGALX」を立ち上げる。メンバーの発掘・育成から、楽曲、映像やビジュアルなどのクリエイティブ全体の制作、マネージメントまで、全分野における指揮をとる。本稿執筆時点でヨーロッパを行脚中のXGクルー。各地で反響を呼ぶ本ワールドツアーには、『Hypebeast』ではお馴染みすぎるYOSHIROTTEN(ヨシロットン)が、アートディレクターとして参加している。本稿では、ツアー中のSIMONと大規模個展開催前のYOSHIROTTENという多忙を極める両者が、東京滞在時に「YAR」のギャラリーで実施した貴重な対談をお届け。世界を魅了し続ける圧巻の演出がいかにして生まれたかを紐解いた。
Hypebeast:まず最初にツアーのコンセプトなどを教えていただけますか。
S:自分の口でツアーについて説明するのは初めてだと思います。今まで我々が築いてきたカルチャーを、いよいよ世界に直接のメッセージをショーで共有できる場で、共感してもらえるものを、YOSHIROTTENさんに協力いただきつつ、いろいろと話し合って作り上げました。話出せば切りがないのですが、たくさんの地域にいるファンの皆さんだったり、お越しいただく方たちに、自分たちの文化をどうやって見せていけたらベストなのかを、タイトなスケジュールではありましたが、ひたすら作り込みました。
YOSHIROTTENさんが参加された経緯は?
Y:XGALXスタッフでもある先輩が、SIMONさんに僕のことを紹介いただいたのがきっかけですね。ワールドツアーのロゴデザインやキービジュアル制作から曲ごとの映像にどういったクリエイターをアサインするかなど、そういったところから自分の役割はスタートしています。
S:ツアーのクリエイティブに関して、誰と一緒にやっていくかっていうのはとても興味がありましたし、YOSHIROTTENさんの作家性を尊敬しています。「今XGがやってることに1番ふさわしい方です」という紹介された時の言葉を今思い出しました。
YOSHIROTTENサイドの動き方をもう少し教えてくれますか。
Y:今回は僕がアートディレクターとして任命を受け、映像演出にYARの笠井裕輔 、プロデューサーにY__Dの湯川正人を呼んで企画を進めていきました。そして国内外からたくさんのCGクリエーターを招集しました。まさに戦士を集めるように若手は20代のRyusei Takahashi、Yusaku Kamata、AsahiNa、Takuma Takei、もともとクラブ仲間のKota Nakazono、Ko Kudo、弊社YARからYuki Watanabe、Tatsunori Kasai、Mirai Shikiyama、現在ロンドンで活躍中のMasako Hirano、そしてなんとコンピューターグラフィックスのパイオニアでもある河口洋一郎大先生まで、幅広いアーティストに各楽曲の世界観を伝え、制作してもらっています。新しい表現をやりながら作れたんで、それがすごい僕は楽しかったです。20曲くらいありましたが、その他にも笠井監督と共にVCRと言われるオープニングから、曲の合間に流れる映像もつくりました。制作チームにNaoki Ono、Kota Watanabe、韓国の技術スタッフも加え、本人たち(XG)を撮影しに韓国にも行き、グリーンバックで撮った素材を日本でCGで合成してっていうのを同時に進めながらも、僕がベースで作ったグラフィックを各クリエイターに渡して、それを各楽曲の映像にしてくれたりとか。チーム体制がすごく良かったです。
全体のコンセプトはSIMONさんが作ってくれていました。宇宙から地球にやってくる、その狼の遠吠えからライブが始まるのですが、地球に降り立った時の、未来の都市の風景はこうなっているのではないか?というテーマでオープニング(※下記参照)を作らせてもらいました。そこから、いろいろな楽曲のところに、映像と共に飛んでいくっていうようなストーリー。そういったコンセプトは、ツアーやライブをやる前から決まってたのですか?
S:最初に自分で決めていますが、今回は初のコラボだったので、方向性は私が決めながら、YOSHIROTTENさんのクリエイティブの領域をオープンにした上で、自分の意見を足していくようなスタイルでした。自分たちの目指す音楽の方向性など、YOSHIROTTENさん側で研究されたという温度感が伝わったので、最初のキックオフの会議からとてもスムーズでした。ツアーを回る中で、会場によってはモニターの設備上うまくいかないこともあって。観客は気にならないかもしれませんが、YOSHIROTTENさんと自分たちはこだわりたい部分が共通していて、毎回ライブが終わると反省会をして改善をしています。そういうところも含めて、一緒に作品作りができたと思っています。YOSHIROTTENさん含め、良い形で連携を取りながら作れたので、このチームはもっと進化できると思います。
Y:日本だけステージのLEDが動く演出(※下記参照)だったんですよ。稼働するLED演出は、僕もやったことなかったので、とても面白かったです。
S:“WOKE UP”のMVが出たあたりに開催された大阪公演では最後に思いっきりサプライズを入れました。ライブが終わったと思ったらまた始まるんですよ。
Y:僕は結構お客さんの後ろで見るのが好きなのですが、みんな終わったと思って帰り始めた瞬間に“WOKE UP”のイントロが鳴り出して、会場全体が「え!」って(笑)。あれはお客さん的に嬉しかったでしょうね。
S:その時がもう懐かしいって思うぐらい、公演を重ねました。それを通して、とにかくツアーが大好きになりました。自分もメンバーも成長するし、作ったものがショーとしてお披露目ができるのは、想像してたよりものすごいことだというのを実感しました。あとは、海外のファンの方たちと、直接触れ合えたのも良い経験となりました。今回のツアーは、日本でも追加公演があります。来年2月末から3月にかけて、東京、名古屋、 大阪、福岡の4都市です。さらに海外の追加公演も検討しています。日本のお客さんに成長した姿をお見せできるのを楽しみにしています。
今おっしゃってたように、ツアーって結構積み重ねだと思うので、最初の頃と直近だと全然仕上がりとかも違いそうですね。
S:まさにそうですね。一緒に目指した完成形に向かってる感じがします。現在、初のグローバルツアーの途中までを終え感じた感覚として、ツアーは“生きてる”っていう表現がしっくりきています。場所による課題やチームの課題などをクリアするべく考え動き、進化しています。最初の景色とは違うものが見えています。
映像もちょっとアジャストしたりしてます?
Y:会場によってモニターのサイズが変わるので、その調整はしてるのと、ツアー中に新曲も出るから、その映像作りだったり、セットリストも変わるからね。現在も3曲を追加でやっています。
S:公演ごとに環境がちょっとずつ違っていて、現地の方たちと協力をしなきゃいけなかったりするので、映像以外にも、音響、照明、ステージなどの調整も重ね、徐々に良くなっていると思います。アーティストのパフォーマンスもライブを重ねるごとにより良くなっていて、自分もセレクターとして演出をしていますが、その国や地域のDNAに合わせた選曲をしている中で、ライブ毎にその国や地域の文化に共感・共鳴し、進化を感じています。
YOSHIROTTENさんは、これまでに多くのアーティストと協業されてきましたが、XGとの仕事を通して学んだこととか、今までと違うことなどありましたか?
Y:ライブの映像を頭から最後までフルで演出させてもらったのは初めてなんです。そっちの方が全体が1つとしてまとまるし、より強くなると思うので、部分的に関わるよりは、フルフルでやらしてもらいたい。ツアー中に追加の曲があっても、統一された世界観が大事なので、自分たちにやらせてほしいですし、チームでしっかりとコンセプトにもとづいて動いていきたいと思います。
ツアーのポスターの世界観を見て、お客さんが来るわけじゃないですか。会場に入ると、今回のワールドツアーの為に制作したXGロゴが大型LEDに大きく映し出されているんです。そのロゴは宇宙船と月をモチーフにしたのですが、宇宙船ロゴを浮遊させ、だんだん地球に近づいてる世界を映像化してあります。それなんかも、一連のストーリー化しているのです。(※下記参照)
S:実は5〜6年前から構想を練っていて、いざツアーをやる時には、こうやろうというのが鮮明にありました。イントロではこうやって、この曲でこうやろうっていうのを1人で部屋で照明を駆使して実験してみたり(笑)。その時の育成生のメンバーにもどう思うか聞いたりもしてました。YOSHIROTTENさんの言ってる、宇宙からこの会場に辿り着くっていうイメージがまさにそうですし、それが開演前の空気を作っています。
Y:その当時からこういう状況は想像されていたのですか?
S:自分は細部にわたって想像するのが好きなので、アーティストを発掘している時点から、ツアーのことを考えていました。まだまだこれからではありますが、過去の想像に少しづつ近づいているので、次の目標を設定し始めています。半分不安を抱えながら、次なるゴールを見定めるスタイルというか、常に油断できないですね。話は変わるのですが、YOSHIROTTENさんの最近の活動について教えてくれますか?
Y:10月から初めての美術館での個展が始まっています。場所が僕の地元、鹿児島県なんです。すごく美しい自然があって、そういう場所って日本にもっといっぱいあるのに、意外と知られてなかったりするんですよね。ここ数年、特にコロナ以降は、いろんな場所に行ってます。「自然こそめちゃめちゃ未来でかっこいいもんじゃん」みたいなメッセージを含めて、そういった作品をずっとずっと作り続けてきたんで、今回はそのお披露目の場。その中でかなり未来的な表現をしてるんですよ。5メートルの映像作品だったり、メンヒルって呼ばれる立体的な彫刻も作ったり。あと、実際太陽を計測して、可視光線、赤外線、紫外線の作品とか。
S:自分もいつか現代美術的なギャラリーでの展示を絶対したいなって思ってて、ツアーで海外に行かせてもらってるので、それぞれの国や地域では30分でも時間を作って、現代美術館に行くようにしてます。過去には未来がある。自然には未来があるとか、パンデミックでいろんなものに気がつきました。自分は今38歳ですが、人生でこのチャプターになってきて、もっと思慮深くなり、自然や健康などを考えるようになってきました。鹿児島にも行ってみたいです。
Y:お忙しいと思いますが是非。それを持ってまた東京でも海外でもいろんなとこに持っていきたいなっていうプレゼンテーションでもあるんですよ。
S:自分はアメリカ生まれで、暮らした時間だと韓国が1番長くて。今は日本人のアーティストと一緒に日本で制作して、宇宙1位を目指しているフェーズなのですが、日本のアートや文化っていうか、自分が生まれる前の作品とかも、親のおかげで触れ合ったりしてて、すぐに行けなかったからこそ、すごく興味があって。YOSHIROTTENさんや日本の方たちと芸術やクリエイティブをやれるのが面白いですし、自分には新鮮だし、とてもインスパイアされています。
Y:僕らも全く同じで、皆さんの楽曲から刺激を受けて映像で返す、バックトゥーバック的なセッションですね。
周囲の反応はいかがですか?
Y:まず言われるのが、行きたかったけどチケット取れなかったって(笑)。でも行った人たちからは凄かった!って言ってもらえますね。だから、日本でもっとやってほしいなって思っていたので、追加公演で最後にもう1回帰ってくるのは嬉しいですね。
S:自分も一緒で、行きたいけど行けなかったっていう話は本当によく聞くので、申し訳ない気持ちと、嬉しい気持ちが混在しています。本当に感謝です。
最後に、最新のミニアルバムについて教えてください。
S:11月にミニアルバムが発売されました。去年のNEW DNAがXGの遺伝子というか、新しい我々の文化を発信できるようなアルバムだったとしたら、今回は結構ガツンと、誰が聴いても刺さるようなX-POPがたくさん入っています。畏怖を意味する“awe”という単語で表現しているのですが、偉大で恐怖すら抱かせるというか、そういったテーマで制作しています。ツアーにも良いタイミングで新しい曲を入れていっています。常に良い音楽や作品、コンテンツを作っていきながら、XGが広がっていくように、多くの皆さんに強く共感し、共鳴してもらえるようにプロデュースを頑張っていきます。人生かけてます。ファンの声もたくさん聞いていますし、こうやって仲間というか家族みたいなかたたちも増えてきてるので、フィードバックをもらいながら前に進んでいきたく思います。
“The first HOWL”の追加日程として、2025年2月から名古屋、東京、福岡、大阪で計8公演が開催される。既にソールドアウトになっている日程もあるが、気になる方はこちらからご確認を。