AI の生成したドレイクとザ・ウィークエンドの楽曲は結局グラミー賞の対象外に
当初は「完全に受賞資格がある」としていたものの「レコーディング・アカデミー」CEOが前言を撤回

“世界で最も知名度の高い音楽賞”と称されるグラミー賞を主催する「レコーディング・アカデミー(Recording Academy)」のCEOを務めるハーヴェイ・メイソン・ジュニア(Harvey Mason Jr.)が、ドレイク(Drake)とザ・ウィークエンド(The Weeknd)を模倣したAI(人工知能)生成の楽曲 “Heart on My Sleeve”は受賞対象外であると発表し、以前の見解を覆したことで物議を醸している。
今年初頭、二人の声を模倣したAI(人工知能)生成の楽曲 “Heart on My Sleeve”が、ゴーストライターと名乗る匿名アーティストによって発表された。この曲は公開直後からSNS上で大きな話題となり、『TikTok』や『YouTube』『Spotify』などで何百万回も再生されることに。しかし、同楽曲はレコード会社によってすぐに削除されたため、人気は一時的なものに留まった。その後、両アーティストの所属する「Universal Music Group(ユニバーサル・ミュージック・グループ)」は、該当の楽曲は知的財産権の侵害にあたるとして提携関係にあるストリーミング会社各社に警告まで発している。
この事例が示すように、近年のAI技術の高まりを受け、「レコーディング・アカデミー」は「グラミー賞の選考やノミネート、受賞の対象となるのは“人間のクリエイター(創作者)”のみである」という新ルールを今年6月に発表した。このルールに従えばAIによる“Heart on My Sleeve”は当然受賞の対象外であるはずだが、先日『The New York Times』に掲載されたインタビューにおいて、ハーヴェイは「クリエイティブな面に関しては、人間によって書かれたものであるため、完全に受賞資格がある」と断言していた。
ハーヴェイの発言は当然賛否両論を巻き起こしたが、彼はその後自身の『Instagram』に1本の動画をアップし、「ドレイクとザ・ウィークエンドのように聞こえるAI音声モデリングを使用した“Heart on My Sleeve”のバージョンは、グラミー賞の選考対象にはならない」と前言を撤回。その理由として「(該当の楽曲は)人間のクリエイターによって書かれたとしても、ボーカルは合法的に入手されたものではなく、レーベルやアーティストの許可も得ておらず、商業的に入手可能なものでもないため、対象外です」と説明。さらに、「どうか混乱しないでほしい。(レコーディング・)アカデミーは人間のアーティスト、そして人間のクリエイターを支援し、擁護し、保護し、彼らを代表するために存在するのです」と付け加えた。
「レコーディング・アカデミー」およびハーヴェイの一貫しない姿勢にSNS上ではさまざまな批判が飛び交っているが、これからまた彼らの考えが変わることはあるのだろうか……。今後の動向を注視しておこう。