Alpine が水素で走るコンセプトカーをパリ・モーターショーで公開
ティアドロップ型のコックピットの左右には2つの水素タンクが配置される
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フランスの自動車メーカー「Renault(ルノー)」のディーラーを経営し、自らレーシングドライバーでもあったJean Rédélé(ジャン・レデレ)が1955年に設立し、後にフランスを代表するスポーツカーメーカーとなった「Alpine(アルピーヌ)」は、水素エンジンを搭載するコンセプトモデル、Alpenglow(アルペングロー)を「2022 Paris Motor Show(パリ・モーターショー)」で公開した。
現在は「Reault」グループにおけるレーシング及びスポーツ・モデルの開発を担当する部門となっている「Alpine」は、「F1(フォーミュラ1)」や「WEC(世界耐久選手権)」など、トップクラスのモータースポーツに携わってきた。今回発表されたAlpenglowは「Alpine」の歴史の延長線上にあるもので、将来のデザイン、テクノロジー、ブレークスルーのすべての出発点だという。
特に注目すべきは水素燃焼技術による内燃機関を採用したことで、公道でもサーキットでも「Alpine」を運転する本物の感動を味わうことが出来る、とされている。その技術的な詳細や、量産化につながるものかどうかは明らかにされていないが、ハイブリッド水素内燃エンジンは環境に優しく、圧倒的なパワーや魅惑的なサウンドなど、他にはない運転の楽しさを備えているという。また、水素エンジンについて、実質的に蒸気しか排出しないとされ、スポーツカーで今後も内燃機関を使い続けながら、カーボン・ニュートラルを実現できるとしている。
開発においては「Alpine」の“レーシング・スピリッツ”を体現するために、サーキット走行に焦点が当てられた。「未来のモータースポーツはこうあるべき」として、奇抜なフォルムだけでなく、パワートレイン技術も先進的なものとなっている。公開されたコンセプトカーは、まさに夢のクルマと呼ぶにふさわしいプロポーションで、その彫刻的なフォルムは未来の「Alpine」のデザインコードを表現しており、非常に機敏なオブジェとなっている。1960年代後半に「Alpine」が開発し、「24 Hours of Le Mans(ル・マン24時間レース)」に代表される耐久レースで活躍したレーシングカー “A220”を意識し、レース用に設計されたコンセプトカーは、非常に長いテーパー状のリアウイングを採用し、究極のエアロダイナミクスをさらに最適化している。
「Alpine」のLaurent Rossi(ローラン・ロッシ)CEOは「複数のソリューションを同時に検討するのは当然のことで、「Alpine」はEV化と両立する別の選択肢を模索していきます。自動車産業におけるEV化は、ユーザーの好みにかかわらず、将来的に自動車全体の60~70%に普及すると見込まれています。残りの30%〜40%は用途や特性、また求められる機能によって異なり、例えば荷物をんで日々走行し続ける小型の商用車では、違うソリューションを導入する余地があると考え、水素も選択肢の1つになりうるとの結論に至りました。水素は燃料としてだけでなく、電気を発生させるための燃料電池としても使うことができ、水素内燃機関の産業化は電動化と互換性があるので、ひとつの道になると考えています」と説明している。
以前にLaurent氏は、その水素燃焼技術のビジョンをサーキット走行に特化したプロトタイプで披露すると示唆していたのだが、それがAlpenglowとして公開されたわけで、未来の自動車文化に向けての新たな方向性を示したと言えるだろう。「Alpine」が送り出すこのコンセプトモデルの映像も公開されているので、近い将来の自動車の行方に思いを馳せてみよう。