Banksy の2005年の作品が本人に無許可で NFT としてオークションに出品される
新興オンラインプラットフォーム『Valuart』主催のオークション第1弾として予告されるも物議を醸す事態に

オンラインプラットフォーム『Valuart』がアーティスト Banksy(バンクシー)の2005年の作品 “SPIKE”をGG化し、“NFT(Non-Fungible Token)”として販売するオークションの開催を予告したが、これが物議を醸す事態となっている。
『Valuart』はアートの価値を高め、アーティストをサポートするための新たな“NFTエコシステム”を謳い、今年6月にローンチしたばかりの新興オンラインプラットフォーム。詳細は現時点では明かされていないものの、共同設立者に世界的に有名なイタリア人テノール歌手 Vittorio Grigolo(ヴィットリオ・グリゴーロ)が名を連ねている。公式SNSやサイトの開設とともに、今年7月22日(現地時間)よりNFTオークション第1弾を開催する旨を予告していたが、先日その内容が明らかになった。
記念すべきオークション第1弾で出品されるのは、先述の通りBanksyの作品 “SPIKE”をGG化したデジタルアート作品。“SPIKE”は、Banksyが2000年に訪れたヨルダン川西岸地区の分離壁の一部を持ち帰って文字を描き足したもの。テロリスト侵入阻止の目的でイスラエル国家によって2002年に建設された分離壁は、実際にはパレスチナの人々の生活を分断するものとして、国際的に問題視されている。このようなさまざまな意味を含んだ“SPIKE”は、2005年の発表当時大きな話題となった。“SPIKE”の所有者であるGrigoloは、この歴史的な作品をGG化し、彼自身の歌うアリアと組み合わせたNFT作品を製作し、オークションで販売する旨を発表した。
しかしこの発表後、本作品はBanksyの許可を得ずに製作されたことが発覚。さらに、過去にアーティストや企業の知的財産権に関する問題を数多く扱ってきた弁護士 Jeff Gluck(ジェフ・グラック)は、この問題についての自身の見解をメディアを通して明かした。「Banksy本人の承諾を得ていないのであれば、この作品は無許可で違法なものと思われかねません。アーティストの作品のNFTを作成する権利は、その作品の所有者ではなく、作者本人が有しています。例えばあなたがBanksyの絵画を購入して自宅の壁に飾っていたとしても、それをNFTとして販売する権利は持っていません。また、Banksyの名前がこのオークションの宣伝に大々的に使用されていることにも疑問を感じます」
この報道を受けて、SNS上では『Valuart』への批判が殺到。本稿執筆時点ではオークションは予定通り開催されるようだが、場合によっては中止になる可能性も。Banksy本人がこのことをどう思っているが気になるが、ひとまず『Valuart』の公式サイトで詳細を確認しておこう。