Tinker Hatfield: とにもかくにも経験から
いかなるジャンル、職種でも多くのメンターが経験こそが成長の鍵と伝え、それは超一流ブランドのデザイナーとて例外ではない。今ではデザイナーとして名を馳せる「Tinker
いかなるジャンル、職種でも多くのメンターが経験こそが成長の鍵と伝え、それは超一流ブランドのデザイナーとて例外ではない。今ではデザイナーとして名を馳せる「Tinker Hatfield(ティンカー・ハットフィールド)」にとっても、それは日々生きるエートスであった。1981年より〈Nike〉ファミリーとして、ハットフィールドは10年以上にわたり『Air Jordan』をはじめ、『Nike Air Trainer』、『Nike Air Max 1』、『Nike Air Flight Huarache』などの革新的なスニーカーのデザインを手がけてきた。 現在では新製品開発のためのシンクタンクである「Innovation Kitchen(イノベーション・キッチン)」を率いており、デザイン及び特別事業におけるバイスプレジデントを務めている。これらはハットフィールドの成果のほんの一部に過ぎない。すべては自信、熟練した技術、ユニークな展望、そして彼を今日に至らしめたキャリアの上に成り立っている。

“私にはこういう哲学がある。いつも何かを描いたり、座って取り組もうとしたり、デザインを考えたり、自分の行動は何でも、これまで自分が見たり、したり、経験してきたことすべての頂にあるものなんだ。”
親友として、同僚としてバスケットボールの神「マイケル・ジョーダン」の隣に座る彼とのミーティングは実に興味深いものだった。何が彼を素晴らしいデザイナーとならしめているのかを探求していく中で、社交的でオープンマインドな性格の持ち主であることにすぐさま気づいた。“私にはこういう哲学がある。いつも何かを描いたり、座って取り組もうとしたり、デザインを考えたり、自分の行動は何でも、これまで自分が見たり、したり、経験してきたことすべての頂にあるものなんだ。”そこで気になるのは、彼がどのように経験をものづくりに活かしているのか、ということ。そこで僕らはハットフィールドの思考に迫るべく、どのように一日をスタートさせるのかを聞いてみた。「私はそんなに早起きじゃないが、起きたらまず、スケートボードに乗るんだ。それで、お気に入りのカフェまで行く。一日をフィジカルなことから始めるというのは、目を覚ますのによい方法だよ。それでカプチーノをゲットして戻ってきたら、さあ、とりかかろう、っていう感じかな。」
みんながみんな毎朝仕事前に優雅にスケートができるような環境にないかもしれない。しかし決して楽な学科ではない建築を学んでいたハットフィールドにとっても、必ずしもいつも気楽なライドばかりではなかった。日々勉学に勤しみ、独自のスタイルを確立し、自分のスケジュールで仕事ができる今のポジションになるまで登りつめた。“自分にはほとんどボスがいないから、ほぼ自分でスケジュールを決めることができるんだ。もちろん出席すべきミーティングはたくさんあるけれど、多くの場合、私はそのミーティングをデザインのクリエイティブな側面とのバランスが取れるように努めているんだよ。”
彼がクリエイティビティにどのようにアプローチしているのかをよりよく理解するために、白いキャンバスを前にして、どんなステップを踏んでいるのか、僕らはたずねた。もし僕らがわずかにでもティンカー・ハットフィールドのようにデザインをしようとするなら、どんなツールで始めればいいのだろうか。結局は同じ答えに戻ってくる。それは経験ということだ。では、いったいどんな経験というのだろうか。 過去の作品を研究すること?体験談などのリサーチから?あるいは仲間との仕事を通して? ハットフィールドにとっては上述のすべてであり、ケースにあわせてそのプロセスは異なる。“私が描いたり、デザインをするときは、マイケル・ジョーダンとの交流や、彼のプレーを観戦したことだったり、自分が経験したことを本当にたぐり寄せるんだ。こういったことはすべて覚えているけど、最近も彼と話していて、例えばAir Jordanの新作をデザインしているときに、これらのすべてが作用してくるんだ。同じことが他のシューズやデザインの企画にも当てはまるよ。私は建築も行なっていて、自分にとってはすべて同じプロセスなんだ。あらゆること、あらゆるところから引き寄せてくるということなんだ。”
“若い人たちの多くが外に出かけて、いろんなことをしたり、いろんな場所を見る必要があると思うんだ。ただ自分の見知っている人たちとだけではなく、世界中から来ている人たちと話したら、自分のデザインがずっと豊かで、ずっと面白いものになっていくからね。”
ジョーダンと会話を交わし、プレー中の彼を観ることができるのは非常に刺激を与えられる機会であるが、ハットフィールドは実際どのようにしてAir Jordanのようなスポーツ文化的に価値の高い仕事をできるように自分を高めていったのだろうか。“自分を支えてくれたもの、それは想像するに、いくらかの才能も必要だろうし、それから少しの運も。だけど、なによりもたくさんの経験がともかく必要なんだ。若い人たちの多くが外に出かけて、いろんなことをしたり、いろんな場所を見る必要があると思うんだ。ただ自分の見知っている人たちとだけではなく、世界中から来ている人たちと話したら、自分のデザインがずっと豊かで、ずっと面白いものになっていくからね。私はそういった経験に恵まれてきたと思うんだ。”
経験は通常、成功と失敗からの学びを伴っている。そして、そこから来る自信が 仕事の際に重要な役割を、あるいは害を及ぼすような役割として作用する。Nikeという重みの中で、どのようにして勢いを損なうことなく、チャレンジに取り組むのだろうか。“それはケースバイケースなんだけど、基本的に私には自信がたっぷりあるんだ。ポジティブな経験と過去の成功に根ざしている、私自身の相対的な見方は良いものだという自信がね。” 意思決定し、プロジェクトに対して責任を持つという能力こそがハットフィールドをレジェンドたちと仕事をするポジションに押し上げているのは言うまでもない。 “ほとんどの場合、自分がプロジェクトリーダーになることが多い。大企業ではたくさんの人間が意思決定をしたいと思い、クリエイティブな側面をディレクションしたいと思う。マイケル(・ジョーダン)とは、彼の好みを尊重しながら最終的なジャッジを下してきた。これは意思決定をより早くできる方法だけど、これができるようになるには、明らかに経験と自信が必要だよね。私はこの方法でものごとにアプローチしようと努めているし、ものごとを不当な取扱いはしないんだ。”
“なりたい誰かになれるだろうけど、もしキャリアで前進したいのであれば、熟練した技術を持って仕事をする必要があると思うよ。スキルを向上させて、それで仕事をして、くり返しくり返し技術を磨く必要がある。”
プロフェッショナルとしても、個人的な面でも達成と失敗の先に成長があるのは明らだが、ハットフィールドはそれを当たり前のものとはしない。経験をごまかしの効かないものであるという教訓とし、日々向き合っている。“自信を偽ることはできないだろうし、それはリアルなものでないといけないと思うんだ。僕らのこれまでのプロジェクトや世界中を旅して得られた見たこともない経験、たくさんの面白い人々との仕事といったものに基づいた土台について、私には非常に良い感触がある。これらのすべてが自信をもたらしてくれるんだ。”
僕らがティンカー・ハットフィールドに、彼のレベルを目指す者たちへ彼が伝えたい教訓とは何かについてたずねると詳しく語ってくれた。“なりたい誰かになれるだろうけど、もしキャリアで前進したいのであれば、熟練した技術を持って仕事をする必要があると思うよ。スキルを向上させて、それで仕事をして、くり返しくり返し技術を磨く必要がある。もしアスリートだとしても、同じことが言えるはず。間違いを犯すことを恐れなくてもいいんだ。なぜならきっと、それらの間違いから学ぶことがあるだろうし、そうやって何かを得ることができるだろうからね。”
この記事は現在発売中の『HYPEBEAST Magazine Issue 8: The Perspective Issue』に掲載されています。






















