永島健志によるガストロノミー『81』が白金で再始動 ── 食とアートが交差する新章へ
東京・白金にて、永島健志によるガストロノミー『81』が再始動。食とアートの境界を横断する体験型空間が、新たなフェーズへと移行した。
永島健志によるガストロノミー『81』が白金で再始動 ── 食とアートが交差する新章へ
東京・白金にて、永島健志によるガストロノミー『81』が再始動。食とアートの境界を横断する体験型空間が、新たなフェーズへと移行した。
白金の閑静な住宅街にひっそりと佇む『81(エイティーワン)』は、レストランという形式を取りながらも、その実態は“食”と“アート”の融合を試みる文化的な実験場だ。コンセプトに“More than a restaurant”を掲げ、ガストロノミーとアートの関係性を問い続けてきた同店が、東京で再始動を果たした。
オーナーシェフである永島健志は、スペインの伝説的三つ星レストラン『El Bulli(エルブリ)』で研鑽を積み、2012年に池袋・要町を初代『81』をオープン。翌年ミシュラン1つ星を獲得し、2015年には西麻布へと移転。2022年に店を閉めた後はニセコの『Acorn』や『81 Diner & Grocery』『81 Lab』を立ち上げ、ドンペリニョンや国際的フェスティバルとのコラボレーションを重ねながら、伝統と革新を融合する唯一無二のガストロノミーを確立してきた、料理界の異端児だ。
そして2025年11月、3年の時を経て復活した『81』は、3階建ての建物すべてを用いた空間体験へと進化。1階には12席のシェフズテーブル、2階にはレセプションを兼ねたアートギャラリー、3階にはプライベートラウンジを用意。ゲストはまず、季節ごとに展示が入れ替わる2階のギャラリースペースへと案内され、その後、1階フロアのシェフズテーブルへと進む。舞台のように展開するこの構成は上下階を行き来する“垂直の旅”として設計され、体験全体をひとつの連続する流れへと結びつけていく。
『81』の世界観を形成するのは、世界各地のミシュラン星付きレストランや革新的なガストロノミーの現場で経験を積んだ精鋭チーム。エグゼクティブシェフを務めるパコ・ラ・モニカ(Paco La Monica)はコペンハーゲンの『NOMA(ノーマ)』、バンコクの『Gaggan(ガガン)』、フェロー諸島の『KOKS(コックス)』といった世界を代表するレストランで腕を磨いた料理人。イタリア料理の伝統から日本の懐石まで、幅広い文化を横断する彼と、永島の感性によって創造された料理が『81』における食体験の核となる。
ブランド・エンゲージメントを務めるアレッシオ・ゴルニ(Alessio Gorni)は美術、イベント制作、ホスピタリティなど多領域にわたる経験を持ち、ヨーロッパやオーストラリア、日本でキャリアを積み上げてきた。彼はパートナーやクライアントとの橋渡し役として、ブランドの背景にあるストーリーを伝える役割を担う。
東京でアート、プロダクション、オペレーションを横断するキャリアを築き、ギャラリーや非日常的な空間でのイベント制作にも携わってきたソイ・ルーイ(Soy Louie)は、全体のクリエイティブディレクションとオペレーションを統括し、ギャラリーのシーズナルアートプログラムやキュレーション、空間演出を主導。季節ごとのコンセプトを具体的な形へと落とし込み、『81』のアーティスティックなビジョンを実現していく。
新生『81』におけるファースト・エキシビジョンとして開催されたのが、“Ouroboros(ウロボロス)”。「同時対話の中の過去と未来」という副題が付けられた本展は、時間や素材、再生といったテーマに向き合うアーティストたちの実践を通じて、“これまで”と“これから”が交差する場を立ち上げるもの。参加アーティストは、ストリートカルチャーの精神を受け継ぐ書道家・万美(MAMIMOZI)、視覚芸術とサウンド・アートの境界を行き来するナタリー・ツゥー(Natalie TSYU)、種村太樹と尾崎紅によるアートユニット O’Tru no Trus(オートゥルノトゥルス)、日本の伝統的な染織や民具を用いた作品で知られる奥野瑠一の4組。展示を通して、変容の循環が世界の受け取り方や感覚のあり方をどのように揺らし、読み替えるのかを探り、アートと食の儀礼とのあいだに潜む微かなつながりを静かに浮かび上がらせる。“Ouroboros”はゲストへ新たな視点を提示するインスタレーションに留まらず、『81』の過去と未来をつなぐメディウムとしての役割も果たす。
1階のシェフズテーブルは、池袋・要町時代の初代『81』を想起させる内装となっており、料理と向き合うための純度を極限まで高めた場として機能する。洞窟のような空間の中で一皿一皿に対峙することで、より身体的に“食べる”という行為へと没入していく。各料理について永島がその背景を解説し、一皿ごとに選曲を変えるなど、『81』独自の「劇場」のような演出も健在。また、ひとつのテーブルで食事を共にすることで、同席したゲスト同士に不思議な一体感が生まれ、自然と対話が始まる。このように思いがけない“ハプニング”が起こるのも、同店の魅力のひとつだ。
提供される“AnExperience”は、季節の旬の食材を用いた9〜10品のおまかせコース(6〜7杯のドリンクペアリング付き)。12月〜2月まで展開された冬のコースでは、容器を覆うラップを破って桜チップの燻香と共に味わう“いかパスタ”から始まり、ふんわりと軽い生地の中にイクラと発酵クリームが包まれた“揚げブリオッシュ”、野沢温泉でのパコと永島の最初の出会いをオマージュしたという“トロぶり”、福島県産のシャモ(軍鶏)を用いた漢方風の“お椀”、『81』を象徴する一皿として知られる“カルボナーラの再構築”、メインディッシュは千葉県産の“ホンシュウジカ”、締めに伊勢海老が添えられた“オリジナルカレー”、そしてデザートには“みかんのエスプーマ”+新潟県長岡産の牛乳で作られた“ジェラート”+レモンの皮とフェンネルシードをマンダリンのゼリーで包んだ“ラビオリ”と、厳選された食材を活かした料理を提供。香りや温度、テクスチャーといった要素が緻密に組み上げられ、食体験そのものが立体的に設計されている。
一般的に「無国籍」と称される『81』の料理だが、実際は「和食」という調和の哲学を基盤に据える。その根幹には、国やジャンルの境界を越え、物語を新たに紡ぎ、時と場所を自由に行き来する料理を目指すという永島の理念がある。また、新生『81』について、永島は日本発のカルチャーを紹介するプラットフォームにしたいと語る。「レストランというより文化拠点かな、『81』は。今は世界が日本に注目してるし、自分の周りにも素晴らしいアーティストたちがたくさんいる。だからそろそろ、日本/アジア発のカルチャーをもっと世界に発信していきたい。この場所で出会った人たちと、新しいムーブメントを作っていければ面白いよね」
現在『81』では、次なる章として春のプログラム “再生(Saisei) / Unseen Reanimation”がスタートしている。このシーズンでは、“目に見えない変化”をテーマに、冬から春へと移行する過程における生命の再生や循環にフォーカス。エキシビジョンの参加アーティストは、韓国・ソウルを拠点にガラスを用いた作品を手がけるヘイン・パク(Hayne Park)、自ら調査したランドスケープをもとに、色彩による浮遊感のある抽象絵画を制作する奥山帆夏、人物や山をモチーフに木版技法をルーツとした表現を行う北村早紀、写真家・画家・美術家として多岐にわたる表現活動を行うSAKI OTSUKA、「光を反射する水面」を主題とした作品を生み出す森島善則。多様な素材・色彩・形態の作品群を通じて、生命が動き出す“春”のエネルギーを可視化する。食の体験を文化的な出会いとして再定義するカルチャープラットフォームとして生まれ変わった『81』。食とアートが対話する空間で、季節ごとに更新される一期一会のプログラムをぜひ体験してほしい。
81(エイティワン)
住所:東京都港区白金6-16-24 シャレイ白金
営業時間:18:00-、21:00-
定休日:日曜
TEL:03-6427-7145
公式サイト





















