テクノシーンのホープ ENSITE が考える新たなパーティの形 | ON THE RISE

6月に『WOMB』でのパーティを控える、新世代テクノコレクティブの素顔に迫る

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次世代を担うデザイナーやアーティスト、ミュージシャンといった若きクリエイターたちにスポットライトを当てる連載企画 “On The Rise”。第15回目となる今回は、東京で最も勢いのある新世代テクノコレクティブのひとつ ENSITE(エンサイト)に焦点を当てる。

2022年11月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの緩和とともに始動したENSITEは、東京拠点のAI、Kotaro、tnseei、Yui、現在フランス・パリに在住するIsshin、ドイツ・ベルリン在住のLyntaの6人からなるテクノコレクティブ。立ち上がり当初、同コレクティブのメンバー全員がテクノDJ初心者であったが、わずか1年余りで会場を埋め尽くすほど話題のパーティへと成長。今年3月には、メンバーのうち3人が、ベルリン拠点のライブストリーミングサービス『HÖR』に出演するなど、国境を越えた活動にも敢然と挑み、海外のテクノシーンからも熱い視線が注がれている。


来たる6月、第1回目からの会場である東京・渋谷の『CIRCUS Tokyo』を飛び出し、国内外から高い評価を受ける『WOMB』にてパーティを控える彼ら。そんなテクノシーンのホープたちの原点『CIRCUS Tokyo』にてラフな雰囲気で行われたインタビューでは、悠々としつつも、ブレない芯を持つ彼らの素顔が垣間見えた。

自分のDJのスキル、DJのセットに満足したら終わりだと思っているんです。だから、これまで一度も満足したことはないですね
Hypebeast : DJコレクティブはどのように立ち上がったのでしょうか?

Yui : 僕が中学生の頃から趣味でDJをやっていて、中高とイベントも打っていたのですが、コロナのパンデミックによって活動ができなくなってしまって。大学2年生くらいの頃に、ふともう一度パーティをやりたいと思い、今フランス・パリにいるIsshinに相談したんです。それを計画しているなかで、またコロナがぶり返してきて開催が難しくなってしまったのですが、それから1年後、コロナがある程度落ち着いた時に「今やるしかないじゃん」という思いが芽生えて。遊び仲間であったメンバーを誘い、ENSITEとしての活動を始めました。第1回目のパーティが運良く成功したので、そのまま続けているという感じですね。

tnseei : 学校やサークル、よく行くバーで、メンバーそれぞれが繋がって、音楽が好きという共通点を通して仲良くなったんです。それからよくクラブに遊びに行くようになり、自分たちでもパーティをやってみようという話になりましたね。

メンバーそれぞれが、もともとテクノミュージックをお好きだったんでしょうか?

Kotaro : それぞれダンスミュージックが好きではありましたね。僕は、ポーランド・ワルシャワの大学に留学していた時、テクノのパーティに足を運んだことをきっかけに、パーティやテクノカルチャーが好きになりました。AI、tnseeiはUKのダンスミュージックがもともと好きだったんだよね?

AI:そうだね。親の影響で幼い頃からダンスミュージックは身近にあったけど、UKのダンスミュージックを聴き始めたのは高校生くらいから。そこから、テクノのDJを始めるまではUKのダンスミュージックにいろいろと影響を受けていましたね。

tnseei : 僕も、母親が自宅で1970年代のディスコミュージックをよく流していたので、ダンスミュージックには馴染みがありました。AIと同じく、高校くらいからUKのダンスミュージックを聴き始めたのですが、その他にも割とさまざまなジャンルの音楽を聴いていましたね。みんなと出会ったことで音楽にもっといろんなカテゴリがあるということを知った、という感じです。

Yuiさんは中学生の頃からDJをやられていたとのことですが、初っ端からテクノをやられていたのでしょうか?

Yui : もともとはEDMのDJをやっていたんです。とは言え、EDMもダンスミュージックなので、テクノというジャンルを身近に感じていたというか。それこそ、パンデミックの時に家でBOILER ROOM(ボイラー・ルーム)を観ていて、モール・グラブ(Mall Grab)というDJを見つけたことをきっかけに、テクノに目覚めました。そこから他の動画もディグり始めて、テクノにどっぷりハマったという感じですね。だから実質、テクノのDJのキャリアは1年くらいしかないんです。

ENSITEを立ち上げた時からDJを始めたかたも多いのでしょうか?

一同 : Yui以外は全員そうですね。

みなさんそれぞれのDJのキャリアは1年程度とのことですが、具体的にはどのようにしてDJプレイを習得していったのでしょうか?

tnseei : みんな独学でやり始めましたね。

Kotaro : Yuiの家の地下にスタジオがあるので、練習環境は整っていたんです。タダで使えますし。でもYuiは、Isshinにファーストステップを教えていたよね。それから僕はIsshinにちょっと教わったり。あとは、それぞれがやりながらわからないことを質問し合ったり、話し合ったりして習得していきました。

Yui : それに、DJはいまだに勉強中です。僕は、自分のDJのスキル、DJのセットに満足したら終わりだと思っているんです。だから、これまで一度も満足したことはないですね。もちろんその日によって、満足に近い日もある。でも、完璧に満足することはないかな。

どういった形でご自身の課題点を見つけるのでしょうか?

tnseei : 自分で実際にギグしている時と、パーティ後の雰囲気ですかね。あとは、CIRCUS Tokyoサイドに毎回MIXを録ってもらっているので、終わった後に聴いて反省したりしています。

Kotaro : 結局、DJはパーティと紐づいているから、自分にとってどれだけいいプレイができたとしても、パーティの雰囲気とマッチしていなきゃ意味がないんです。逆に、自分がプレイにあまり納得していなくても、会場が盛り上がることもある。僕は、それはそれでOKという考えも持っているので、楽しくプレイできたら良いかなとも思っていますね。

Yui : いいプレイングの基準は難しいですね。

AI : スキルも選曲も大事なのですが、ちゃんとオーディエンスを見ながら、彼らのリアクションを汲み取ってプレイすることも重要だと思います。

Yui : 僕は、DJはパフォーマーじゃないと思っているので、目立つ必要は全くないと思うんです。極端なことを言えば、CIRCUS TokyoのDJブースはステージの上にあるけど、トイレまで持って行ってプレイしたっていい。楽しむ気持ちよりも、やっぱり音楽に忠実にいることが大事なことのような気がしています。

Kotaro : まぁでも、トイレは……。

一同:(笑)。

1年という短い期間で、ENSITEのパーティが急成長を遂げた理由はなんだと思いますか?

Kotaro:僕らは、ディープなテクノのパーティと比較して、音楽も演出もキャッチーなものを意識していたんです。だから、他のイベントよりも人の目に留まる頻度が高かったのかなと。

AI:メンバーそれぞれがちゃんと音楽を聴いているし、ちゃんとパーティをわかっているから、今もなおオーガナイズできている。みんなそれぞれ音楽が好きだからこそ、キャッチーなものにできるんだと思いますね。

Yui : それに、(テクノシーンの)本場にメンバーが住んでいるから、今のトレンドを気軽に聞けますし、僕らのパーティにも新鮮味を出せる。日本っぽいパーティにならないように常にアンテナを張ることができるんです。

演出に関しても皆さんで話し合って決めているんでしょうか?

Yui : そうですね。タイムテーブルは、もちろん呼ぶゲストによってメンバーで話し合って変えています。演出に関しては、より楽しい空間を演出するために、ある程度(照明の)明るさを意識しています。あとは、いつもPAをやってくれているCIRCUS Tokyoのスタッフである、浜田さんにお任せしている感じですね(笑)。

tnseei : CIRCUS TokyoでDJブースをフロアの真ん中に置いてやり出したのも僕たちが最初なんです。当初、(DJブースを真ん中に置くことが)難しいというお話もあったのですが、そこを押し通してやったのが功を奏したかなとも思っています。

会場に足を運んでみて、海外のオーディエンスがかなり多いように感じました。そのような客層が集まった理由はなんだと思いますか?

Kotaro : 僕たちがパーティをやり出した時期と、(コロナ明けで)海外の人が日本に訪れるようになった時期が完全に重なっていたということが理由のひとつでもあるのかなと思いますね。

AI : それに、海外ではレイヴやダンスミュージックのカルチャーがより浸透しているので、その層を中心に集客できるよう、僕たちも意識しています。

Yui : 彼らは、身体を使って踊ってくれるので、動画を撮っても見栄えがいいんですよ。そういう動画を見て、最近ではテクノにあまり興味のなかった日本人の子たちも来てくれるようになりました。

過去にはエステラ・ボーアスマ(Estella Boersma)やJKSなどベルリンを拠点としたDJをゲストDJとして招いていらっしゃいますが、どのようなつながりでオファーできたのでしょうか?

Yui : エステラは、去年の3月、僕らの知り合いのアーティストと一緒に日本に遊びにきていた時に出会いました。そこで仲良くなって、去年僕らがベルリンに行った時にも現地で会ったり。だから、通常のゲストDJとしての関係性とはまたちょっと違うのですが、その他に関しては、俺らが呼びたいと思ったDJや、ベルリンのエージェントから呼ばないかと提案されたDJにお願いしていますね。

Kotaro : テクノシーンで人気の高いDJは、ほぼベルリンを拠点としているから、DJを呼ぶとなると基本的にベルリンから、という形にはなるんです。あとはフランスとか。

ライブストリーミングサービス HÖRへの出演は、どのようにして決定したのでしょうか?

Yui : それも、エステラのおかげなんです。僕たちもHÖRの存在そのものは知っていたんですけど、どうやって出れるのかはわからなかった。そんななかで、彼女がアプライする方法を教えてくれて、トライしまくったんです。でも、運営側からなかなか連絡が返ってこなくて、半分諦めながらベルリンに向かって……。現地に着いてすぐに、出演決定の連絡が来ましたね。いいタイミングで枠をゲットできて、本当にラッキーでした。

6月に控えるWOMBでのイベントは、どのような経緯で行うこととなったのでしょうか?

Yui : 今年の1月、WOMBで始まったTOHO -東方良音-というテクノパーティの第1回目に僕がDJで呼んでいただいたのですが、そのパーティとのコラボレーションによって開催することになりました。この間、僕たちがベルリンに遊びに行った際に、TOHO -東方良音-のオーガナイザーのかたと現地でお会いして、WOMBでENSITEのパーティをやろうよ、とお話をいただいたんです。メンバーのみんなもそうだと思うのですが、僕からしたらWOMBなんて、EDMのDJをやっていた頃から知っている、特に思い入れのある会場で。新木場のageHa(アゲハ)がなき今、東京ではトップレベルで大きなハコだし、サウンドシステムもいい。それに、多くのレジェンドがDJプレイしている場所だから、僕にとってもWOMBでパーティをオーガナイズするということがひとつの目標だったんです。だからこそ、相当気合が入っていますね。本当に運よく開催が決まった、という感じです。

AI : 経歴や実力を考えると全部がそうとは言えないのですが、現状、日本のダンスミュージックシーンでは若いDJがあまりプッシュされていないと感じています。レジェンドや上の年代のDJが多くプレイしているWOMBという場所だからこそ、なおさら気合が入っていますね。


Yui : 演出に関しても、ほとんどもう決まっています。ゲストは、みんなで案を出して話し合って、ブランカ(BLANKA)にオファーをしました。彼女は、ベルリンだけでなく、ヨーロッパ圏のアンダーグラウンドのテクノシーンで今最も活躍しているDJなんです。

Kotaro : ブランカ自身もディープなシーンにはいるのですが、そのなかでも踊りやすいDJプレイをするんですよ。そこも、ENSITEに合っているのかなと思っています。

ENSITEとして、これからの展望を教えてください。

Yui : 僕は、海外のクールなクルーと一緒にコラボイベントを開催してみたいですね。日本でやるのもいいのですが、いずれはベルリン、アムステルダムとか、海外でもパーティをやれたらいいなと思っています。

AI : クラブじゃないところでもやりたいね。海外では、ウェアハウスやオープンエアーをはじめ、クラブではない場所を会場とするパーティがいっぱいあるんですよ。

Kotaro : ついでに、日本にもアフターパーティカルチャーが欲しいですね。海外では、土曜の夜のオールナイトパーティが終わった後に、アフターパーティがやっているのですが、日本では全くやっていないので。月曜の朝に起きた時の“昨日まで何をやっていたんだろう”という絶望感を、日本でも味わえたらなと思ったりもします。

tnseei : あと、メンバーそれぞれが個人でも挑戦を始めているので、そちらもチェックしていただきたいですね。ENSITEとしては、今後もこれまでにない新しい試みをしていきたいと考えているので、6月に開催されるWOMBでのパーティをはじめ、僕たちがオーガナイズするパーティにぜひ足を運んでいただけると嬉しいです。

TOHO – 東方良音- x ENSITE AT WOMB TOKYO
会場:WOMB
住所:東京都渋谷区円山町2-16
日程:6月28日(金)
開場:23:00〜
チケット料金:前売り 2,500円/当日 3,500円
※U-23 0:00前入場 3,000円
チケット購入はこちらから

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テキスト
フォトグラファー
Hayato Niiya
インタビュアー
Satomi Kanno
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