山根敏史が描く SAVE THE DUCK のプレミアムライン Pro-Tech シリーズのビジョン | Interviews

“世界で最もサステナブルなアウターウェア”を作るブランドに〈F/CE.®〉のデザイナー 山根氏が携わる理由

ファッション 

「100% Animal Free」というスローガンのもと、動物由来素材を一切使用しない製品作りで知られるイタリア発のヴィーガン・アウターウェアブランド〈SAVE THE DUCK(セーブ・ザ・ダック)〉。世界中で羽毛を搾取され続けているダックたちを守るため、リアルダウンの代わりに独自開発した高性能素材 PLUMTECH®(プラムテック®)を中綿として使用したアウターウェアが、今注目を集めている。その理由は、イタリアで最も「B Corporation(環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる国際認証制度)」から高い評価を得ているアパレル企業であるからだ。さらに、アウターウェア部門ではEUのみならず全世界における第1位のブランド(*2023年7月12日時点)でもある。そのハイエンドライン “Pro-Tech(プロテック)”シリーズを〈F/CE.®(エフシーイー)〉のデザイナー、山根敏史が手掛けている。通算6シーズン目となる2024年秋冬コレクションは、クラシックなモノトーンカラーを基調としながら、リサイクル素材を採用し、高性能アウトドアウェアの新たなベンチマークを打ち立てた。今回『Hypebeast』では、現在2025年秋冬コレクションを準備中の山根氏にインタビューを敢行。このコラボレーションの背景、そして単なる“アーバンアウトドア”という言葉にカテゴライズされない、サステナブルな都市生活者のための機能服とは何か?


Hypebeast:山根さんがSAVE THE DUCKに携わるようになったきっかけを教えてください。

3〜4年くらい前に、当時SAVE THE DUCKのサプライヤーとして関わっていた担当者の方から、SAVE THE DUCKがハイスペックラインのデザイナーを探しているという相談を受けました。F/CE.®では8〜9割が化繊生地を使っているので、もともとリサイクル繊維のことや繊維産業が環境問題に与える影響については興味がありましたし、うちがパートナーとしてショップを運営しているNordisk(ノルディスク)の生まれたデンマークなんかは、ものすごくサステナブルへの意識が高い。そういうビジネスに携わりながら、自分たち自身がモノ作りを変えていかなきゃいけないと考えていた時期で、SAVE THE DUCKが「100% Animal Free」や循環型社会へのコミットメントを掲げているという部分に、すごく興味が湧きました。同時に、もともとのブランドがいるチャネルや価格帯などにハードルの高さを感じてもいたのですが、プレミアムラインとして、基本的には好きなことをやっていいと。その自由度の高さにも面白さを感じました。あとは、それまで僕も見たことがなかったリサイクルファブリックのGORE-TEX®︎(ゴアテックス)を使って何かできるという事だったので面白そうだなと思い、最初のコレクションは全てのアイテムにリサイクルGORE-TEX®︎を採用しました。

山根さんが手掛けられているPro-Techシリーズについて教えてください。

もともとのコンセプトは毎シーズン、ゲストデザイナーを迎えるというコンセプトで、最初のシーズンはSKYSCRAPER(摩天楼の意味)というシリーズ名だったんです。その名の通り、高層ビルの立ち並ぶ街から森へ駆け回るみたいなイメージで、都会的な機能服のカプセルコレクションを発表しました。プライスポイントはSAVE THE DUCKの約1.3倍。ファッションアカウントに向けたポジショニングで、ハイエンドな品質と最先端技術を融合させたSAVE THE DUCKのプレミアムラインとしてデザインしています。当初は1シーズンだけ僕がデザインする予定でしたが、ありがたいことに評価していただき、この秋冬コレクションで通算6シーズン目になります。

Pro-Techシリーズの今季(2024年秋冬)のコレクションについて教えてください。

シーズンテーマの名称は具体的に設けていませんが、インスピレーション源は森や自然です。例えば、流木や蓮の葉、霧がかった森、等高線のモダンなライン、動物の骨などがデザインソースになっています。一方でカラーのイメージは、湖の側にある近代的な建物やリサイクルしたコンクリートなど、自然と相反するもの。ブラックとアイボリーを基調とすることで、店頭に並んだときに無駄なくシンプルに見えるように、カラーを集約しています。全体のシルエットやフィッティングはレギュレーションがあるので、デザインの共通性を持たせるように意識しました。現地のミラノでは40〜50代の方が着てくれることも多いんですよ。大人が着られるということも念頭において、付属品のカラーマッチングまでこだわりました。

テックウェアをデザインする際に、最も重要視していることはなんですか?

テックウェアって、実験的なディテールがたくさんあるんです。だからその情報にいち早くたどり着いて、その利便性を自分の中で理解しながらデザインに落とし込むことですね。あとは例えば、ジッパーの付け方一つをとっても、生地の性能を理解していないといけないので、加工や縫製についてもデザインの段階でやっていきます。自分がデザインしたものを自分で着て、このディテールはアップデートした方がいいなとか、逆に省いてもいいかなとか、フィードバックしていきます。自分で作ったものを着て、初めて気付くことも多いですね。

SAVE THE DUCKと数シーズン協働した今の率直な感想を教えてください。

英語でのやりとりなので、正直めちゃくちゃ大変です(笑)。CEOのニコラス・バルジ(Nicolas Bargi)と話すところから始まって、彼の考えやインラインのテーマを共有してもらってから、お互い理解したらムードボードを作ってキックオフしています。彼の考えや彼のやりたいことを理解した上で、僕はプロとしてリクエストに答えていきたい。デザインからパターン、テックパック、ルックブックのモデルの選定まで、やることは多いし大変だけど、自分の手掛けたアイテムがロングセラーになったりするとすごく嬉しいですね。同じことをやり続ける難しさも感じますが、最近は自分の中のスケジューリングもコントロールできるようになってきました。今後はチャンスがあれば、プロフェッショナル向けのスーツとかにもチャレンジしてみたいです。

山根さんが今個人的に注目しているモノやコトがあれば教えてください。

家族がロンドンに移住して、ロンドンオフィスを開業したんです。子どもたちと離れて暮らすのは辛い決断だったんですが、海外ビジネスももっと身近になるし、日本を客観的に見られる側面もあります。今はそのためのフレームワークを作っているんですが、新しい世界を築いていくことにすごく興味がある。クリエイティブな面も含めて、自分たちが日本とロンドンの架け橋になれるような仕組みを作れたらと思っています。


〈SAVE THE DUCK〉は、2012年に「動物・環境・人に配慮した製品を作る」という理念のもと、イタリア・ミラノで誕生した。山根氏を迎えた“Pro-Tech”シリーズもその理念に基づきデザインされている。“Pro-Tech”は今シーズン、取り外し可能な中綿を採用した革新的な2-in-1機能や、耐水性ジッパーや完全密封縫い目といった実用的な要素を備えたウェアで、身体を守る最適なプロテクションを提供。“Pro-Tech”をはじめとする〈SAVE THE DUCK〉の新着入荷情報などは、公式サイトをチェックしよう。

Pro-Tech取扱店舗一覧
伊勢丹新宿店
阪急うめだ本店
新宿タカシマヤ
大阪タカシマヤ(ウィメンズのみ)
大丸東京店
大丸心斎橋店
大丸神戸店
SAVE THE DUCK 公式オンラインストア

【お客様お問い合わせ先】
SAVE THE DUCK(セーブ・ザ・ダック)
TEL:03-6822-7062

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