ブロンディが明かす THAMES MMXX. の再出発と創作への向き合い方

アーティスト、スケートボーダー、デザイナーとさまざまな領域で活動するブロンディに、ブランドの歴史から今後の動向までを訊く

ファッション 
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先日、東京・六本木の『RESTIR(リステア)』にて開催されたブロンディ(Blondey)手掛ける〈THAMES MMXX.(テムズ MMXX.)〉のポップアップイベント。4月5日から4月18日の期間で行われたが、キックオフのタイミングでブロンディ本人も久方ぶりに来日を果たした。

後述のインタビューで詳しく語られているが、ブロンディが前身ブランドとなる〈THAMES〉のアイテムが発表され始めたのは2013年頃。15歳の時に学業の一環として制作したステッカーのアート作品が始まりだという。その後、〈PALACE SKATEBOARDS(パレス スケートボード)〉とのパートナーシップにより、定期的にプロダクトやコラボレーションを発売してきたが、2019年2月にブランドに幕を下ろす(ほぼ同タイミングでブロンディ自身もPALACEから離れることに)。そして、同年12月に現体制での〈THAMES MMXX.〉として再始動。今回のポップアップでは、オックスフォードシャツやラグビートップなどのシグネチャーアイテム、ストライプデニムのセットアップ、実在した女性海賊をプリントしたヴィスコースのシャツ、三角帽子を現代にアップデートしたハットといったアイテムから成る2024年春夏コレクションが一足早く揃えられた。また、2019年以来となるブロンディによる163cm×111cmのアート作品 “GLADIATORS”も展示。

以下では、アーティスト、スケートボーダー、デザイナーとさまざまな領域で活動するブロンディのインタビューをお届け。ブランドの歴史から今後の動向まで詳しく説明してくれた。


Hypebeast : 最後に日本に来たのはいつですか?

2018年だったかな。その時はFred Perryとのコラボレーションのローンチで。その後、THAMESは新体制になって、再出発してるんだ。最初に日本に来た時は、Supreme(シュプリーム)の撮影で、まだ15歳だったけど、時が経つのは早いね。日本に来るのはいつでも楽しいし、今回は新しいチームで来れてよかった。オファーしてもらえて本当に嬉しいよ。今まで日本ではアートを展示したことがないんだ。しかも今回の作品は、初めて手作業で作ったもので、時間も結構かかったよ。

なぜ今回ポップアップをやることに?

今年の1月に、僕の彼女が働いてる会社のパリのショールームで(RESTIRメンズバイヤーの)ヤスに会ったんだ。僕はただ彼女に会いに来ただけだったんだけど、その時にヤスはTHAMES MMXX.のファンだって言ってくれて。しかも、僕らがかなり昔に作った30〜50着しかないピースを着ていたんだよね。僕ですら持ってないような(笑)。その時に、RESTIRのことを教えてくれて、何か一緒にできないか?という話になったんだ。彼らとの関係性はとても有難いことだね。

ブランドの歴史について教えてもらえますか?

とても幼い頃に始めたんだ。キッズはみんなクリエティブだけど、やめる子もいれば、続ける子もいる。僕は後者だった。子供の頃はコミックスに影響を受けて、その後にスケートボードやステッカー、Tシャツなどに描かれているアートに夢中になった。なので、それらにインスパイアされたアートを描き始めて、それを元にしたステッカーやTシャツを作った。自分ではブランドを始めたって意識はなかったんだけどね。イギリスにはGCSEプロジェクトというのものがあって、15歳か16歳のときに行われる学校の試験なんだけど、そこでTHAMESを発表したんだ。それからビジネスパートナーができて、いつの間にやら会社になっていた。その後、数年間はいわゆる普通のアパレル会社として、当時のビジネスパートナーはさまざまプランや卸しなどを導入したんだ。素晴らしいものもあれば、全く面白味のないものもあったね。続けていくうちに、THAMESが“ビジネス”になってしまったことに対して、大きなフラストレーションを感じるようになって。熟慮に熟慮を重ねた結果、2019年頭にブランドを終了させた。再ローンチする予定はなかったんだけど、数カ月経って、自分はブランドを止めたかったのではなく、やり方が(自分に)合ってなかっただけと気が付いたんだ。洋服を作るのは本当に大好きだし、本当に恋しかった。再開することにどんな意味があるのか、本当に意味があるのかを、一生懸命考えた。世の中にはたくさんのことがあるし、自分にとって違うこと、真実でない限り、何かをする価値はないと思ったんだ。他のことは他の人に任せればいい。これは自分の哲学のようなものなんだ。とにかく、自分たちにはそれ(意味のあること)ができると思ってた。それで、2019年12月にまったく新しい形でブランドを再スタートさせたんだ。

adidas(アディダス)との初めてのコラボレーションが控えていたので、そのローンチに合わせたタイミングにしたんだけど、その後すぐにコロナで世の中が止まってしまっただろう。小さな会社を立ち上げるには、なかなか厳しい時期だった。子供も生まれたし、僕の人生には他にも多くの変化があって、2020年は変革の年だったね。でも、それからは波に乗っているよ。とてもエキサイティングで、現在進行形の実験なんだ。ただ闇雲にやってみただけだと思っていたことがうまくいったり、間違いないと思っていたことがうまくいかなかったりと、常に自分でも驚いている。そして今、それが創作活動の場となっている。自分のエネルギーのほとんど全てがこの会社に注がれているよ。服をデザインして、物撮りをして、広告のレイアウトをして、ニュースレターを書いて、商品説明を書いたりを自分でやっているよ。だからアートを作るのはちょっとお休みしているんだ。でも、ここ数年はこれまで以上にクリエイティブになってると思うよ。

最新コレクションについて教えてください。あなたのお気に入りは?

自分にとってデザインは、とても本能的なもので、今今はインスピレーションに事欠かないね。今季のテーマは“Gentleman Pirate(紳士的な海賊)”。全てコレクションに名前があるんだ。たとえそれが社内で使われるだけでもね。いつもフルコレクションとして発表されるわけではないので、公には使わないこともあって。で、僕のお気に入りか。難しいね、全部好きなんだよね。好きじゃなかったら、やらないし。でも特にこのボーディングシャツが気に入っている。これはレディ・バード(LadyBird)の本からの写真なんだけど、子供向けの英語の本シリーズで、短い教育的なものなんだ。ページをスキャンして拡大し、少し手を加えたんだ。メアリー・リードとアン・ボニーという2人の女海賊の話で、2人とも男装をして船に乗り込み、戦いで出会ったって話。

“GLADIATORS”について教えてください。

少し前に、ローマのコロッセオに2500年前から生息していた動植物についての記事を読んだんだ。イタリアや地中海沿岸に自生していたものだけど、その一部はアフリカ以外では見られなかった。当時の植物学者たちは、剣闘士と戦うために、娯楽目的で連れてこられたキリン、ゾウ、ライオンといった動物の前足や毛皮、腹の中に種子が紛れ、約1500年前に持ち込まれたという説を立てた。そして、それらの花は増え続け、ローマ文明が消滅しても、成長し、生き残り、さらには繁栄し続けたんだ。その記事にインスパイアされている。まるで自分たちの例えのように感じられたんだ。人間について、自分たちが思っている以上に耐え忍んで繁栄する力についてね。ヤスにアートワークがあってもいいんじゃないか?と言われた時、この題材を大きな絵にしたいと思って、日本の春や桜のことを考え始めたんだ。イギリスの桜はバラなんだけどね。それで、桜の写真を撮って、大きなサイズに拡大して、第二次世界大戦でナチスによって爆撃されたコベントリー大聖堂の写真の上に、色をつけて散りばめてみたんだ。大聖堂も同じことが言えるんだ。大聖堂は再建され、その上に翼全体が建てられた。今では宗教だけでなく、芸術の場としても本当に重要な場所になっているね。僕たちがそうであるように、より強く建て直されたんだ。

日本のファッションシーンについて、どう思いますか?

みんながみんな何を着ているのか気を使っているように見えるね。でも考え過ぎてない。毎朝、鏡の前で何時間も何を着るか迷っているのは馬鹿らしいと思うけど、そうじゃない。自分たちの外見にほんの少しだけプライドを持ってる感じ。

日本で好きなエリアは?

渋谷かな。そのエリアに泊まっているのもあるけど、ホテルの外にランプがあるから、滑った動画を投稿したよ。でも一番好きなのは、ディズニーランド(笑)。それはもちろん冗談だけど、本当に好きは好きなんだ。アイデアが成長するという素晴らしい例だと思う。ディズニーの描いたコミックは、とてもよく研究され、詳細に描かれている。それから、彼は自分の小さな世界全体を物理的なものにした。立体的にね。その中に入って迷い込んだり、乗り物に乗ったりすることができた。パイレーツのような乗り物の中には、映画にインスピレーションを与えたものすらあった!

アート、スケート、デザインなどたくさんのことに取り組んでいますが、どれが一番エンジョイできる?

好きなものすべてに対して同じようなアプローチをしているよ。スケートボードを通じて学んだことは、たいていのことには試行錯誤を繰り返すことだ。やれるというイメージを持って、実際にそれが楽にできるようになるまで、どんどん発展させていくんだ。共通していることは、あるレベルでの構造の中で即興的にやってみることだね。スケートボードは、精神的なものだけでなく、肉体的にもとても負荷がかかるものだけど、これら全てから同じような刺激を得ている。自分にとって意味のあることが好きなんだ。だから、もし僕が誰かにとって意味のあることをやって、それがその人たちに何か別のことをトライさせる刺激になったとして、創造的なインスピレーションのサイクルの一端を担えるなら、とても素晴らしいことだね。

今後の予定は?

ブランドに関しては、より面白く、より質の高いものを常に作っている。特にジュエリーはね。毎回、全てが少しずつ良くなっているんだ。細かいディテールだけど、ネックラベルやポケットとか、とにかく洗練させ続けることを意識している。僕らは2000年代のティーンエイジャー向けのTシャツブランドではないし、何年後かに見て、賞賛されるような精巧なピースを作っているよ。

THAMES MMXX.とは別に、大きな大きなプロジェクトがあるんだ。どれだけ大変かわかっていたら、始めなかっただろうね(笑)。それくらい大きなプロジェクトで、全6話の脚本を書いたんだ。コメディのようでもあり、ドラマでもあり、ドキュメンタリーでもある。2023年に撮影して、今編集中。夏の終わりには公開される予定だね。とても楽しみだよ。公に発表されずに、こんなに長い期間、1つのことに取り組んでいたことはないからね。

さっき言ったように、無知がそうさせたのだと思う。だって、僕はInstagram(インスタグラム)での30秒〜5分の動画を作ったことがあるぐらいだったから。複数の登場人物や場所などを使って3時間の素材を書き、撮影し、編集する。それは自分にとって大きな飛躍だった。一緒に作りたいという知人たちからのサポートはあったけど、だいぶ大きなジャンプだよね。会社を経営しながら、家族との時間を大事にしながら、その合間にできることだと思っていたんだけど、実際には時間なんてなかったよ。

まだどうやって発表するか決まってないけど、間違いなくTHAMES MMXX.のウェブサイトには載せるよ。THAMES MMXX.の話ではないけど、現実に根ざしたものだから、THAMES MMXX.の服やスタジオも出てくる。今はまだ詳しく話せる時期じゃないんだけど、リリースされた際は是非観てほしい。その題材や内容を見れば、“誰のものでもないことがとても重要”と僕が言ってる意味がわかるはずだ。これは完全にインディペンデントな芸術的試みなんだ。

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