MSCHF はインテリで超ピュアな悪戯っ子集団だった | Interviews

覆面アーティスト……じゃなかった!

アート 
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ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するクリエイティブ集団「MSCHF(ミスチーフ)」が、東京・渋谷の『NANZUKA UNDERGROUND』で個展“Material Values”を開催するために来日。

「MSCHF」といえば、鉄腕ア○ムの足元のような巨大な赤いブーツや超極小サイズのルイ・ヴィ○ン風バッグなど、毎回センセーショナルな作品で世間を騒がせる集団。しかし、その実態は謎に包まれ、公式サイトにも詳細な情報は一切なし。ゆえに“インターネット界のバンクシー”と称されることも。

そこで『Hypebeast』は、今回の来日を機に、「MSCHF」の謎を解き明かすべくインタビューを敢行! メンバーのケヴィン・ワイスナー(Kevin Wisner)とルーカス・ベンテル(Lukas Bentel)が顔出しで答えてくれた。

実際に『NANZUKA UNDERGROUND』で会った彼らは、知的でありながら、まるで子供のような純粋な悪戯心を持つクリエイター集団だった。その活動の全貌、社会に対するスタンス、大胆不敵なインスピレーションの源とは?


コツはSNSでバズることを目的にはしないこと
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Hypebeast:「MSCHF」という名前は“mischief(いたずら)”からきている?

MSCHF(Kevin&Lukas):その通り! 名前を深く考えず、シンプルに大文字表記にしただけ。ファンシーな名前にする必要もなかったしね。

“いたずら”にはポジティブな力がある?

100%ポジティブとは限らない。僕らは、今の時代に少しのスパイスを加えるような視点を大事にしている。社会に余白を作るために、あえてリディキュラス(過激)な立ち位置をとることもある。

はじめは5人程度で活動していたと思いますが、現在の「MSCHF」のメンバー数と役割は?

25人! 世界中にいるけど、日本にはいないかな。肩書きはなく、全員でアイデアを出し合うスタイル。ただ、それぞれプログラム、制作、コーディネートなどの得意分野はある。

なぜブルックリンを拠点に?

ほとんどのメンバーがニューヨーク出身なんだ。でもマンハッタンで活動するアーティストっている?(笑) ブルックリンなら広いスペースを確保できるし、散らかしても問題なし。

『Instagram』のプロフィールに「DO NOT FOLLOW US」とある理由は?

もともと『Venmo』という送金アプリでフォロワーに1セント払ってもらってフォローさせるという企画をやっていた。でもBANされてしまって、仕方なくInstagramを始めたんだ。とはいえInstagramは規制が多くて自由度が低いじゃない? 画質から画角、動画の尺までやりたいようにできない。だからここ(Instagram内)ではあまり面白くないってことで「フォローするな」って書いた(笑)。
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作品のアイデアはどう生まれる?

まるで学校の時間割みたいに、定期的にアイデアを出し合う時間を設けている。すべてリスト化し、優先順位を決め、みんながやりたいって情熱が高いものを最終的に決定して実行しているかな。コツはSNSでバズることを目的にはしないこと。どちらかというとSNSとは距離を置きながら、しっかり時間をかけて作る。吟味して作る。

ときにコントロバーシャル(議論を巻き起こす)作品も多いですが、社会に対する問題意識とアートへの反映は?

MSCHFの活動は、色んな方向性の作品がある。そのなかのひとつでいうと、例えば今回の個展“Material Value Sculptures”は、モノの価値とアートの本質的な価値を問い直す作品。どんな作品にも遊び心を取り入れ、固定観念を覆すことを意識している。ひとつの思想に偏ったりすることのないように、これはこうじゃなきゃいえないって決めつけにとらわれたりしないように。

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これまで行ってきたプロジェクトでとく印象的な作品、またはターニングポイントになった作品は?

NikeのAir Max 97にヨルダン川の聖水を入れた『ジーザスシューズ』かな。確か7作目のプロダクト。Nikeの許可はとらずにゲリラマーケティングをしたこと、宗教も絡んでいたりしたこともあり、かなり議論を巻き起こした作品だったけど、MSCHFにとっては、恐れずに進むことを決意できたプロジェクトになった。あとひとつあげるとしたら、クライスラーのPTクルーザーをシェアする『キーフォーオール』もカオスで面白かった。鍵をネットで売って、その1台がどこにあるかを鍵を買った人がGPSで追いかけて、自由に乗る。落書きとか改造とか、めちゃくちゃにされまくった(笑)。

クロックスとのコラボではパリス・ヒルトン、ブーツのキャンペーンではスパイク・リーを起用しましたが、セレブリティとの交流はどのように実現しているのでしょうか?

パリス・ヒルトンにはInstagramでDMを送ったんだ(笑)。それでキャスティングができた。スパイク・リーは息子がMSCHFの大ファンだったことがきっかけで実現した感じ。

 

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「MSCHF」の活動資金っていったい? 商品の売り上げ以外の収益源はある?

収益はプロダクトやアートの販売のみ。MSCHFの名前を使わない裏ビジネスは一切なし。クリエイティブのアイデアいっぱいあっても、それをMSCHFの名前使わずに単体で売るっていうことはしていません。常に自分たちのアーティストネームのみでやっている。

アートと商業のバランスをどう考えていますか?

アメリカには“フェアユース”の文化があり、引用や盗用がアートの一部だった。しかし最近は著作権ビジネスが強くなりすぎ、その余白が失われつつある。僕らはその境界、緩衝地帯にいるつもりで、どちらかというとその視点は、アート側の価値観。引用は正義と思っている。それはある種のパロディであって、面白がってやっていい領域はあるはず。その権利があると思っているけど、ときどき企業は訴えてきてやっつけに来ることもある。それが、全部ビジネスになって取って代わっているという状況はちょっと違う気もしている。

これから挑戦してみたいジャンルや、具体的に実現したいプロジェクトはありますか?

いままでやっていないことにはなんでも興味がある。テレビ番組とかも作ってみたいな。あとはホテル……かな。空間全体を使ったプロジェクトは未経験だから、いつかやってみたい。

最後に日本についてどう思いますか?

日本は街が綺麗で、仕事もきっちりしている。日本のファッションも好き。でも、一番のお気に入りの場所は……ファミリーマート!(笑)

個展『Material Values』

場所:NANZUKA UNDERGROUND
住所:東京都渋谷区神宮前3-30-10
会期:2月1日(土)〜3月22日(土)
時間:11:00-19:00
*日曜、月曜休業

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