大英博物館の元職員が1,500点以上の所蔵品を盗み eBay で転売
貴重な所蔵品を実際の価値より遥かに安い価格で転売するという“美術史上最悪の事件”が発生
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英ロンドンの『大英博物館(British Museum)』は8月16日(現地時間)、2023年初めに大量の収蔵品が「紛失、盗難、または損傷」されたことが発覚し、その犯人と思われる同館の職員1人を解雇して、本件について警察が捜査を進めているとの公式声明を発表。被害に遭った所蔵品は、紀元前15世紀から19世紀にかけてつくられた貴重な金の宝飾品や半貴石、ガラスなどの小品1,500点以上で、主に学術研究目的で収蔵庫に保管されていたものだという。この公式声明では該当の職員の名前は明かされていなかったものの、複数のメディアに報道から、犯人はピーター・ヒッグス(Peter Higgs)という人物であることが明らかになった。
ピーター・ヒッグスは、『大英博物館』のギリシャ古美術品キュレーターを務めていた人物で、今年初めに解雇されるまで30年以上博物館に勤務していたベテラン職員。彼は盗んだ所蔵品をオンラインマーケットプレイス『eBay(イーベイ)』に出品し、実際の価値よりも遥かに安い値段で転売していたようだ。例えば、2,000年以上前につくられたローマ時代の骨董品のひとつは、本来の価値は最大64,000ドルであるものの、わずか51ドルという価格で販売されたという。こうした所蔵品の一部は少なくとも2016年ごろから『eBay』での出品が確認されており、関係者によると『大英博物館』は3年ほど前からスタッフの一人が保管庫にある所蔵品を盗んでいる疑いを抱いていたとのこと。違法な古物売買を研究してきた法医学考古学者 クリストス・ツィロギアニス(Christos Tsirogiannis)は、この事件を「おそらく“美術史上最悪の事件”」であると評しており、盗まれたすべての美術品の価値は、数千万ドルにもおよぶと見積もられている。