Bottega Veneta マチュー・ブレイジーの初来日を記念した特別インタビュー

〈Bottega Veneta〉のクリエイティブ・ディレクター就任後、初めて日本の地を踏んだマチュー・ブレイジーのビジョンを紐解く

ファッション 
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去る3月某日、〈Bottega Veneta(ボッテガ・ヴェネタ)〉を率いるMatthieu Blazy(マチュー・ブレイジー)が、クリエイティブ・ディレクター就任後、初めて日本の地を踏んだ。

Matthieuが〈Bottega Veneta〉復権の立役者 Daniel Lee(ダニエル・リー)からバトンを引き継いだのは2021年。翌2022年2月に開催されたミラノ・ファッションウィークでの2022 ウィンターコレクションにて初陣を飾り、これまでに合計3コレクションを発表している。メゾンの人気が本格的に再燃し、最もHYPEなブランドの1つに君臨し始めた真っ只中での交代劇であったため、通常であれば、その重圧は相当のものとなりそうだが、Matthieuは〈Bottega Veneta〉内部からの抜擢ということもあり、Daniel Leeの生み出した熱を冷ますことなく、自然かつ理想的なシフトとなった。現にMatthieuのデビューコレクションに対する顧客の反応は良く、2022年Q3の売上は前年同期比で20%増加している。とりわけ西ヨーロッパと日本での好調ぶりが顕著だったという。彼の作り出すデニムやフランネルを転写プリントしたレザーピースは、脈々と受け継がれる卓越した職人技とテクノロジーを融合させた、ファッションの次代を切り開くアプローチと言える。

ここで改めて、Matthieu Blazyの経歴をおさらいしてみよう。ベルギー・ブリュッセルのラ・カンブルを卒業後、Nicolas Ghesquière(ニコラ・ジェスキエール)期の〈Balenciaga(バレンシアガ)〉と〈John Galliano(ジョン・ガリアーノ)〉でのインターンシップを経て、〈Raf Simons(ラフ シモンズ)〉メンズコレクションのデザイナーとしてキャリアをスタート。その後〈Maison Margiela(メゾン マルジェラ)〉のArtisanal(アーティザナル)ラインとウィメンズのデザインに携わっている。ちなみにKanye West(カニエ・ウェスト)が“Yeezus(イーザス)”ツアーで着用した〈Maison Margiela〉のクリスタルマスクは、Matthieu Blazy在任中に製作されたものだ。2014年にはPhoebe Philo(フィービー・ファイロ)期の〈CELINE(セリーヌ)〉のシニア・デザイナーに就任し、2016年から2019年までは、Rafと再びチームアップする形で〈Calvin Klein(カルバン クライン)〉に在籍。そして、2020年から〈Bottega Veneta〉のデザイン・ディレクターとして手腕を発揮していた。

今回の来日では、東京・白金台に位置する創業80周年を迎えた日本庭園『八芳園』にてMatthieu Blazy主催によるプライベートディナーも開催。ゲストは桜を鑑賞しながらのカクテルを経て、作家・上田勇児による陶芸作品が彩る会場でのディナーを満喫した。来場者には菊地凛子、忽那汐里、ミッチェル和馬、大沢伸一、菊乃らの姿も。

本稿では、来日したMatthieu Blazyに特別に時間をもらい〈Bottega Veneta〉における自身のビジョンや日本についての想いを伺った。

Hypebeast:クリエイティブ・ディレクター就任からこれまでに3回コレクションを発表していますが、ご自身の所感や周囲の反響はどのようなものですか?

今のところ、素晴らしいアドベンチャーですね。私たちの取り組みに対して業界の皆さんも歓迎してくれてると感じています。また、実際に服やバッグを使用している顧客を見るのはとても嬉しいですね。チームで取り組めたのは素晴らしいことでしたし、オフィスだけでなく、スタジオで実際にプロダクトを作ってくれているメンバーと時間を共にできて、とても嬉しいです。

デザイン・ディレクターからのポジション変更ということで、トランジションなどはスムーズなものでしたか?

はい、スムーズでした。私はCalvin Kleinのデザイン・ディレクターを経て、Bottega Venetaのデザイン・ディレクター、そして現在のポジションに就きました。そういった流れだったので、私はBottega Venetaの従業員はもちろん、実際にバッグを作っている職人の方々も知っていますし、あちらも私を理解しています。私たちの間にはヒエラルキーがなく、コミュニケーションはとても円滑ですね。仕事をしながら、新しい発見や学ぶことは日々ありますし、毎日が冒険です。周りのみんなが助けてくれるので、大変やりやすかったです。

チーム全体での仕事のプロセスにおいて、就任から大きく変更したことなどありますか?

常に新しいプロセスを試みています。例えば、バッグや服にしても、新しい製造方法やテクノロジーを導入したり、毎日がチャレンジです。プロダクト面では変化を取り入れていますが、チーム全体の仕事の仕方はあまり変えていません。デザイン・ディレクター時代から、決まったシステムで動いていて、みんなそれが気に入っているのは分かっていましたから。チーム内でのコミュニケーションがオープンでスムーズである限り、変える必要はないと思っています。

これまでも多くのメゾンで経歴がありますが、それらと比較して、Bottga Venataはどのような環境ですか?

まずは類似点から説明しましょうか。例えるなら、Maison Margiela(メゾン マルジェラ)と似ていると思っていて、皆で作り上げる“コレクティブ”な意識が重要視されていると感じます。私がMaison Margielaでアーティザナルだった時は、物作りがプロセスの核となっていました。私がBottega Venetaを好きな理由の1つに、それに似たシステムで進行する点が挙げられます。誰も間に入ることなく、実際に職人と直接やり取りして、一緒に作り上げる。素晴らしい洋服やバッグを生み出すという目的はいつも同じです。常にファッションに挑戦し、素晴らしい服を作り、その服を人々に着てもらうという目的と意思はMargielaと通ずると感じています。しかし、Bottega Venetaが、この業界で一際ユニークなのは、クラフトマンシップを極限まで追求し、卓越性を求めている点ですね。デニムのような一般的な服を作りながらも、物作りを限界まで突き詰め、新しい物を生み出すことができる環境があり、そういった職人技とテクノロジーを活用できるブランド/会社なのです。

コレクションに取り組む上でのインスピレーション源は?

Bottega Veneta = 特定の何かに絞ることは考えていませんでした。Bottega Venetaを身に付ける人は世界中にいるわけですから。であれば、多様性を打ち出そうと考えました。特定の誰か・何かではなく、多種多様なアイデンティティを想定して提案することを軸とすれば、私の中にあるさまざまなアイデアを投影させながら、1つのストーリーを構築できる。私がデザインに取り組むときは、優劣を設けないようにしています。レザーデニムであろうが、シルクのスーツであろうが、エレガントなドレスであろうが、そこに上下はなく、並列で見た時に、ポジティブさを感じれるか、エネルギーが生まれるかが重要です。インスピレーション源はあらゆるところにあって、それは美術館かもしれないし、アートかもしれないし、街で見かけた人かもしれないし、美しい画像かもしれないし、頭の中で思い描いた空想かもしれません。私は複数のデザイナーと一緒に仕事をしていますので、決して自分自分にならないようにしています。なぜなら、私より優れたアイデアを持っている人もいるかもしれないし、それを受け入れることは大切だと思います。デザインは全て何か意図があるものではありません。例えば、何かを見て、それが引っ掛かる。なぜ自分がそれに引っ掛かるのだろう?と思考を紐解いていくことで新しい物が生まれることもあります。これも、クリエイティブ面のプロセスの一貫ですね。

Bottega VenetaはInstagramなどソーシャルメディアから距離を置いていることで知られていますが、これによって得られる利点はなんでしょうか?

2つあると思います。断っておきますが、私自身はInstagramが大好きです(笑)。今の時代においては、非常にポップで良い情報の配信方法だと思います。Bottega VenetaがInstagramをやっていない理由の1つとして、Bottega Venetaは“瞬間”だけのものではないという点が挙げられます。もちろん瞬間瞬間も重要ですが、“タイムレス”という概念もあります。Bottega Venetaのアプローチとして、店舗に足を運び、実際にプロダクトを触ってほしい、感じてほしいという想いがあるので、SNSと距離を置いてるのだと思います。また、コミュニケーションチームの考え方として、私たちばかりが自分たちのことを発信するのではなく、さまざまな人が自発的にBottega Venetaについて話題にする方が面白いでしょう。私はこの距離感が好きです。自分たちの考えを押し付けるのではなく、自然に会話が生まれるのが理想ですね。

東京はよく来ていましたか?今回は久しぶりですか?

実は2011年以来なんです。最初に来日した時は、Raf Simons(ラフ シモンズ)と一緒でした。当時は若かったので、日本で体験する全てが魔法のように感じたことを覚えています。幼い時から日本の漫画などを読んでいて、日本の文化が大好きだったので。そこから10年以上経っているので、街が変化したのは分かりますが、いまだに驚くことばかりです。昨日も1日中散策していたのですが、たくさんのエネルギーを感じますし、インスパイアされることが多いです。そういった経験をスーツケースに詰めて持って帰りたいと思います。東京も変わりましたが、世界中で同じ現象が起きていて、ある意味、世界が1つになってきたと感じています。東京には世界各国で見るようなお店もありますが、同時に日本にしかない素晴らしいお店もたくさんあります。これはニューヨークなどでも同じことが言えますが、画一化されつつも、違いが生まれる。非常に素晴らしいことだと思います。

日本のファッションシーンについてどう思われますか?インスパイアされることはありますか?

素晴らしいに尽きますね。私にとってのアイドル的なデザイナーがたくさんいます。デザインの世界もそうですが、街で見かける人たちのファッションもとても魅力的ですね。チームのみんなとよく話すのは、日本では、ただ流行に流されるのではなく、独自のスタイルや強い個性を持っている人を見かけることが多いです。

昨日は私がずっと尊敬しているUNDERCOVER(アンダーカバー)の高橋盾さんに会ったんです。日本に来て最初に行くお店は、COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)と決めているのですが、このブランドは日本文化を見事に表現していると思います。国際的に見ても、彼らの存在はとても重要です。加えて、若いデザイナーの波が生まれている点も非常に関心がありますね。

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インタビュアー
Yuki Abe / Hypebeast
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