エディソン・チャンが語る CLOT の20年間とこれからについて

今話題の〈CLOT〉x〈Nike〉によるCLOTEZのインスピレーション源についても深堀り

ファッション 
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中国の伝統的なパターンをあしらったストリートギアなどで人気を博す、“(洋の)東西の架け橋”的ブランド〈CLOT(クロット)〉。2003年、俳優/ミュージシャンのEdison Chen(エディソン・チャン)らによって香港で創設された本ブランドが、今年で20周年を迎える。そんなアニバーサリーイヤーを祝して、2023年の幕開けから〈Levi’s®(リーバイス®)〉〈Nike(ナイキ)〉〈THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)〉『McDonald’s(マクドナルド)』など、名だたるブランドやメーカーとのコラボレーションを次々と発表。中国のカルチャー的エッセンスを落とし込んだ秀逸なコラボアイテムに、〈CLOT〉ファンのみならず、これまでブランドにあまり馴染みのなかった層も唸らせたことだろう。

Edison Chenは、藤原ヒロシの手掛ける〈fragment design(フラグメント デザイン)〉をはじめ、〈visvim(ビズビム)〉〈sacai(サカイ)〉といった、日本のファッションシーンの核となるブランドともチームアップを果たしている。そして、去る3月25日(土)には、東京発のブランド『MFC STORE(エムエフシーストア)』とのコラボアイテムを発売し、中目黒の店舗では〈CLOT〉のアーカイブなども展示するポップアップを開催。4月4日(火)は、Edisonを招いたミート&グリートが実施され、多くのファンが詰めかけた。今回『Hypebeast』では、イベント前のEdisonに時間をもらい、〈CLOT〉のレンズを通して彼が見てきた20年間や、今話題の〈Nike〉CLOTEZのインスピレーションソース、そして今後の展望などについて、じっくりと語ってもらった。

エディソンチャンが語るクロットの20年間とこれからについて clot edison chen 20th anniversary interview

Hypebeast : 今年、CLOTは設立20周年を迎えますが、振り返ってみていかがですか?

成功した部分もあれば、もちろん失敗した部分もある。思ったより長い旅でした。しかし、自分が何をしたいのかというのをよく考えて、それを試していたら、気が付いたら20年経っていた。そういう意味で言えば、短かったかもしれない。今年は20周年で、仕事においてもコラボレーションが多かった。例えばMcDonald’sや、THE NORTH FACETimberlandともタッグを組むことができて、いい節目になっているんじゃないかと思います。一応、20周年ではあるけど、ここを1つのチャプターの区切りとして、卒業という風に考えれば、次のチャプターは、また新しいことを作っていけるんじゃないかと思います。

この20年間、さまざまなことがあったかと思いますが、その中でも、ブランドにとってキーとなった瞬間があれば教えてください。

20年前、CLOTのオープニングパーティをしたんですが、それがすごく印象に残っています。スポンサーだったVeuve Clicquot(ヴーヴ・クリコ)のシャンパンを2,000本くらい開けました。香港の有名な俳優 Andy Lau(アンディ・ロー)とか、マガジンの編集者とか、色んな友人が来てくれて、すごく楽しく盛り上がったんです。その時、何が1番自分の中で楽しかったかっていうと、パーティそのものより、自分のブランドを支えてくれる人たちが楽しんでいる様子を見るのが楽しかった。なぜなら、自分が立ち上げたブランドで、今後どうなるかわからないし、全てがギャンブルだった。自分はファッションスクールを出たわけでもなく、立ち上げ当初はTシャツの作り方すらもわからなかったし、全部パッションでやってきた。だからこそ、20年経ってみると、そのオープニングパーティはすごく印象に残っています。あとは、CLOTで初めてNikeとコラボした時もすごく印象に残っているし、中国のブランドの代表としてニューヨークのショーに出た時は、モデルも自分で手配して、友人も招待できて、すごく楽しかった。自分の中で1番大切にしているのは、常に楽しむことですね。
エディソンチャンが語るクロットの20年間とこれからについて clot edison chen 20th anniversary interview
Nikeとはブランドの黎明期からという長いパートナーシップになりましたが、彼らとのコラボレーションはブランドやご自身にとって、どのような意味合いを持ちますか?

Nikeとのコラボレーションについては、嬉しい部分もありますが、正直、多くの責任を伴うっていうのを非常に痛感しています。中国を代表するブランドとして、コラボレーションとして世に出るものが、我々国民を代表するものでもあるわけだから、中国文化をどのように取り入れていくかに、一時期すごく苦しみました。なので、デザインに関しては、中国っぽすぎず、欧米っぽすぎずっていうのを意識しています。その上で、自分たちが何を作りたいかというクリエイティビティの部分は、すごく考えましたね。当時、Nikeとコラボレーションしているのは、日本には何十人もいたけれど、中国ではCLOTしかいなかった。そのプレッシャーが逆にいいコラボモデルを作るきっかけとなったと思います。自分自身が生み出してきたプロダクトで、周りの人たちがいいねと言ってくれても、プレッシャーがかかってない環境下で手掛けたものは気に入らないデザインも多々あった。だから、プレッシャーがないといいものが作れないと思っているんです。そして、これまでリリースしてきたモデルに関しては、Nikeのクリエイティビティに本当に感謝したい。これは、本当に言葉にできません。全てのプロジェクトに、Nike x CLOTの信念が詰まっています。

今話題を集めているNikeとのコラボフットウェア CLOTEZは、これまでのコラボレーションより中国文化を感じるデザインになっているように感じました。本モデルは、どういったインスピレーションで制作されたのでしょうか?

まず、何を目的として制作しようかと考えた際に、自分がアメリカに住んでいた時のことを思い出したんです。アジアでは、靴を脱ぐ文化がありますが、当時、友人を部屋に招待したら、土足で入ってきたことがあって、すごく戸惑ったんです。それを思い出して、ルームシューズと外履きを1足にまとめられたらいいんじゃないかなと思いました。そんなことをなんとなく考えていた折に、各国から代表して1名が選出されて、最終的に1人優勝者が選ばれるNikeのコンテストのことを思い出したんです。

香港代表として選出されたHarry Wong(ハリー・ウォン)というデザイナーが、このCortezに近いデザインを持っていました。自分は今は結構歳をとっているし、これから若い人たちにファッションシーンを受け継がせていかなきゃいけないと思った時に、この若い人のデザインを借りて、ブラッシュアップしてみるのは、もしかしていいことなのかもしれないと考えました。このデザインを使わしてもらえないかとHarryに連絡したところ、「もちろん使って欲しい」と言ってくれて。それから少し手を加えて、今回のCLOTEZを作りました。今回のモデルには、“陰陽”のものと、通称“フォレスト・ガンプ”、Bruce Lee(ブルース・リー)のトラックスーツのカラーと3色あるんです。そんな中、キーワードとしたのは、“In and Out(陰=In、陽=Out)”。それぞれ別で機能する、スリーブとインナーシューズを組み合わせることで、Cortezが誕生するということを意識しました。通常のCortezの場合、“フォレスト・ガンプ”はヒールタブがレッドなのですが、CLOTEZのインナーシューズのヒールタブは当初ブルーを採用していたんです。でも、それぞれのシューズを一体化させることで“フォレスト・ガンプ”が完成するという意味を持たせるため、(インナーシューズのヒールタブも)カラーをレッドに変えました。デザインとしても、インナーシューズはアッパーがすごくモダンだけど、ソールがクラシック。スリーブは、履き口がカンフーシューズだけど、ソールがモダンという、自分の中で出したいデザインが出せました。でも実は、これを最初作りたいと考えた時に、Nikeが作らせてくれるかすごく不安だったんです。例えば、インナーシューズのサイズは9だけど、スリーブは9.5になってしまう。サイズが変わってしまうので、この問題をどうするのかが課題でした。でも、最終的にNikeがこのように作らせてくれたことと、Harryがデザインをくれたことに対してとても感謝しています。そしてとりあえず、すごく楽しかった。
エディソンチャンが語るクロットの20年間とこれからについて clot edison chen 20th anniversary interview
スリーブのサイズ調節は付属のインソールで行うのですか?

サイズを調整するのもそうなんですが、インソールがない状態だと、かかとの部分が硬くて痛くなってしまうんです。僕のお気に入りの履き方は、スリーブにインソールをはめて、“ノーソックス”で着用するスタイルです。

ファッションブランドのみならず、さまざまなショップやメーカーともチームアップをされていますが、今後、どのような分野とコラボレーションしてみたいですか?

どちらかというと、ポップなコラボをしていきたい。McDonald’sがすごくいい例なんだけど、例えば、Pepsi(ペプシ)、STARBUCKS(スターバックス)、Skittles(スキットルズ)、M&M’S®︎(エムアンドエムズ)とか。CLOTは中国に20店舗だけど、McDonald’sは53,000店舗あるんです。もちろんCLOTを知ってくれている人はいると思うけど、商品を実際買いたいと思った時に、近くにCLOTがないっていうこともあるかもしれない。でも、McDonald’sは53,000店舗あるから、McDonald’sへ行けば、CLOTを感じられる。そういった意味で、全世界に伝えられるようなコラボがしたいと思っています。聞いたところによると、McDonald’sとのコラボミールの中身を全部捨てて、CLOTの包装紙を綺麗に洗って壁に貼っている人もいたらしい。食品を無駄にして欲しくはないけど、その気持ちはすごく嬉しかったりもするんです。もちろん、NIGO®︎、藤原ヒロシをはじめ、A BATHING APE®️(ア・ベイシング・エイプ)、READYMADE(レディメイド)も然り、中心核に刺さるようなコラボもしたい。でも、CLOTは、多くの人に知られてはいると思うけど、まだ知られていないところも多い。そういった部分で、みんなが知っているような、ポップなものとコラボして、色んな人にCLOTを知って欲しいと思っています。

本ポップアップでは、さまざまなブランドとのコラボレーションアーカイブが展示されていますが、過去手掛けてきた中で、最も思い入れのあるアイテムを教えてください。

Levi’s®かな。CLOTが始まってから初めてに近いコラボレーションで、今までも15回ぐらいチームアップしていて。Nikeとコラボレーションした時は、自分がアイデアを言えば、それが形になって商品として出来上がるんですが、Levi’s®とのコラボレーションは、「ここのダメージどうする?」「ウォッシュどうする?」「プリントは?」って細かなところまで指示しなくてはならなかったんです。さっきも言ったように、最初は自分はTシャツの作り方さえも知らなかったので、どうすればいいか全くわからず、混乱していたんですが、その悩みが、結局自分がどういう服を作りたいのかっていう原点を追求するきっかけになりました。もともとCLOTはファッションブランドではあったんですが、マーケティングの仕方しかわからず、服の作り方はわからなかった。だから、Tシャツを作って、めちゃくちゃ売れても、その理由がわからなかったんです。デザインとか、生地がいいとかじゃなかったっていうのを後々知って、Levi’s®が、服を作るっていう大切さを教えてくれました。逆に、それを知らなかった自分が恥ずかしくもありましたが、Levi’s®が自分をすごく頑張らせてくれましたね。また、それまでは店舗しかなかったけど、Levi’s®とのコラボレーションを販売するべく、オンラインストアのJUICESTOREも開設して、1ブランドとしてすごく成長させてくれました。
エディソンチャンが語るクロットの20年間とこれからについて clot edison chen 20th anniversary interview

ブランドを始めた当時と現在で、アジアのファッションシーンはどのように変化したと感じますか?

面白い質問ですね。日本のファッションは、自分の原点に近いものがあって、ヒロシとかNIGO®︎とか、高橋盾とか、色んな人たちを見てきて、とても大好きな部分もある反面、自分のオリジナルは香港なので、中国を代表するファッションブランドが当時CLOTしかないと考えた時、これではいけないと思いました。世界を股にかける中国ブランドが、CLOTだけで終わって欲しくないと思っています。1番思っているのは、今いる中国の若者を引っ張って、どれだけ中国のファッションシーンを盛り上げることができるか。それを象徴することになったのが、今回のCLOTEZです。自分はデザイナーじゃなくて、クリエイティブディレクターだから、Harryのアイデアをもらって、若者のデザイナーをどんどん起用していくことの大切さを知りました。中国を代表する代わりの人が見つからないのはすごく嫌だと思っています。自分の代わりがすぐ見つかるくらい、中国のファッションを盛んにしたい。それを言うと、日本でも最近、「こういう新しいブランドができた」っていう話をあまり聞けなくなってしまったのが悲しい。アメリカに居れば、数週間の間で新しいブランドができたと噂になります。デザイナーも16歳とか、17歳とか、すごく若い人たち。色んなブランドを作っている反面、日本もそうなってほしいと思っています。
世界を股にかける中国ブランドが、CLOTだけで終わって欲しくないと思っています

30周年、40周年を迎えた時に、CLOTがどのようなブランドになっていてほしいですか?

40周年目には、中国国内で100店舗構えることを目指しています。McDonald’sは53,000店舗もあるんだから、俺たちも絶対にできる。CLOTは、独立している企業だけど、100店舗の開店を目指すにあたって、それを助けてくれる人たちが欲しいし、CLOTの存在をもっと全世界に広めたい。今そのために色んなプロジェクトを動かしています。ウィメンズや、キッズラインをまもなくローンチするんですが、それによってもっとCLOTの幅が広がっていくと思います。そういった意味では、今回のMcDonald’sのコラボレーションがすごくいい例で、40周年目の100店舗オープンまでのいい踏み台になっています。最初にも言いましたが、今回の20周年は、ママやパパからのヘルプもないし、僕自身がやっと大学を卒業する年。今からは100%仕事になる、ニューチャプターです。だからこそ、もっと楽しんでいきたいと思っています。

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テキスト
インタビュアー
Satomi Kanno/Hypebeast
翻訳
Fisse Ro
フォトグラファー
Denkicks_sota
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