Interviews: 料理業界のロックスター été 庄司夏子のブレない本気

村上隆やVERDYとのコラボも手伝い、急速にアート/ファッションシーンに食い込むスーパーシェフの実像に迫る

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庄司夏子ほど“飛ぶ鳥を落とす勢い”という形容詞がピッタリな人物はいない。東京のイノベーティブレストラン『été(エテ)』のオーナーシェフは、2020年に日本人女性初となる“アジアのベストペストリーシェフ賞”に輝き、翌2021年に次世代を担う世界の若手飲食関係者を対象にしたアワード “50Next”に選出。そして2022年は“アジアのベストレストラン 50”における“アジアの最優秀女性シェフ賞”を日本人として初めて受賞した。

着実に料理業界のスターダムを駆け上がるスーパーシェフであるが、その一方で、VERDY(ヴェルディ)の〈Girls Don’t Cry(ガールズ ドント クライ)〉とのプロジェクトをはじめとするアート/ファッション界隈とのコラボを次々と仕掛けるなど、カルチャー好きな『HYPEBEAST』読者にとっても、非常に気になる存在だろう。我々のような仕事をしていると、世界津々浦々のさまざまなシーンのトップランナーに直に話を伺う機会は少なくないが、夏子氏ほどパワフルで(良い意味で)ぶっ飛んでいる人はそうそうお目にかかれない。ポッドキャスト『HYPEBEAST RADIO JAPAN』に彼女が出演した際、MCの渡辺真史が“ロックスター”と形容していたが、その表現が実に的を得ており、仕事においても遊びにおいても器が違う。実は夏子氏と筆者は飲み仲間であり、この1年半ぐらいは、ラッキーなことに近くでその活躍ぶりを見たり聞いたりしているが、いまだにその熱量や信念には驚かされてばかり。昨今は多くのメディア露出がある彼女であるが、仲間内からすると、まだまだ本当の魅力が深掘りされていない印象もあって、今回は『HYPEBEAST』的な切り口で、庄司夏子という唯一無二な逸材の頭の中を是非ご紹介したいというのが、この取材の目的だ。余談にはなるが『été』の開店前にダラダラと喋りすぎてしまい、音声の録音時間は2時間半を超えていていたが、半分ぐらいは雑談 or 書きたいけど書けない内容だった……。

過去にコラボレーションしたボックス/グッズを揃えた様子は貴重

HYPEBEAST:今これまでのコラボをまとめて見せてもらったけど、最初はどれですか?

lucien pellat-finet(ルシアン ペラフィネ)が最初ですね。それが2018年。

アーティストでいうと、誰が一番最初ですか?

村上隆さんですね。それが2019年。

そもそも村上さんにはどうやって知り合ったの?

中学生ぐらいの時に、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)とのコラボがあって、ずっと好きだったんです。当時は高いからもちろん買えないじゃないですか。それでいつか一緒にお仕事したいと思ってたんですが、正面突破しても村上さんには絶対会えないじゃないですか。だから村上さんがどこの会社とお仕事してるのか調べたんです。その中の1つにTRANSIT(トランジット)があって、TRANSITの社長の中村さんはご自分で『ミーハー仕事術』っていう本を書かれてるぐらいなので、私のお店が流行れば来てくれるかなって思って。そしたら本当に人づてで予約を入れて、お店に食べに来てくれたんです。TRANSITはbills(ビルズ)とかを持ってきた会社でもあったので、その場では「村上さんに会わせて欲しい」と言わず「今度一緒に何かお仕事できたら嬉しいです」ってお伝えしました。TRANSITは、GINZA SIXのVIP用のイベントを定期的にやってて、そこで抽選で当たった何十人か向けに、ケーキの試食と私がケーキを作っている様子を直近で見れるっていうイベントをやらせてもらったんですね。その中で、来てたお客さんが私に質問するコーナーがあって、今後の目標を聞かれた際に、そもそも今回のお仕事を引き受けた理由があって、TRANSITの方に村上さんを紹介していただきたいからって言ったんですよ。それで村上さんと一緒に作品を作りたいって。TRANSITの方も「えっ」ってなったんですが「至急紹介してほしい!」と。結局、まだ村上さんには辿り着けなかったんですが、Kaikai Kiki Gallery(カイカイキキギャラリー)の笠原さんにお会いすることはできたんですよ。ケーキをお持ちして、「村上さんに是非レストランに来ていただきたい」とお伝えしました。ちょうどその時に村上さんの中で食べ歩きがブームだったみたいで、興味を持ってくれて、食べに来てくれる日が決まったんです。その日までに自分がコラボしたいって思ってる商品を勝手に作ろうと思ったんですよ。

すごい行動力ですね!

それでさっき見せたケーキのボックスは村上さんと会う前から勝手に作ってたんです。付属の飴細工も全部事前に作ってて、もうあとは、村上さんのOKさえもらえれば販売できる状態。それでお食事に来た時に、そのケーキをお見せしたら、すごい喜んでくれたんです。物作りのコストや大変さをご存知なので、感動してくれて。一緒に来た笠原さんに「この人変だから一緒にやろう」って(笑)。1発OKというか。

用意周到すぎる、とんでもないエピソード……。えっじゃあそれで全く変更なく販売したんですか?

そう。そのまま何も変更なく売りました。

でも、お花のデータはどうしたの?

お花データは最初に笠原さんにお会いした時に「悪用しないから貸してください」とお願いしました……。

そういう経緯だったんですね。

長かったですね〜。

長いのかな?でもそれを全部1年以内でやってるってことでしょ。長くないと思いますよ。

そうですね、確かに。それがきっかけで他のコラボも始まったというか。村上さんが周りの方たちに庄司夏子はやばい奴って触れ回ってくれてたり、良い意味で。悪い意味もあるかな(笑)。

そうか、村上さんが入り口なんですね。これまでコラボしてきた方達も錚々たる面子じゃないですか。どういう流れでコラボ相手が決まっていくのかな?

村上さんの次はTOMO KOIZUMI(トモ コイズミ)くんです。SNSで彼の作品を見て一目惚れして。TOMOくんがInstagram(インスタグラム)でQ&Aやってて、その時にDMしたんですよ。「私は料理をするときにファッションからインスピレーションを受けるのですが、洋服を作るときに料理から影響されることってありますか?」って。そしたら返事くれて、それがきっかけで「私のケーキを是非食べて欲しい」と彼のアトリエに届けに行ったんですよ。ちょうど村上さんとコラボした後だったんで、しっかりした人という風には見てもらえて。その後、何度かご飯行ったりして仲良くなって、それからコラボの話をしたんですね。「ケーキにフリフリ付けたい」って。TOMOくんには明確にどういうものにしたいかは伝えて、PR周りとかは全部こっちでやっておくから、肝心な作品のチェックお願いねって感じでした。

TOMOさんも今めちゃくちゃ人気出てるから、こんなのあったんだって思うファンもいるかもですね。でも、これ全部ここ2年以内にやってるのか。STUDIO SEVEN(スタジオ セブン)もやってるよね。NAOTO(ナオト)さんはもともとお客さんだったんですか?

そうです。中目黒店のオープンで何か作って欲しいって言われて、ガトーショコラとステッカー作って。その後にVERDYくんとNAOTOさんのHONESTBOY®(オネストボーイ)がコラボして、「VERDYって知ってる?」って言われて、その時初めてVERDYくんを知ったんです。そのコラボのローンチイベントがあって、また何か作って欲しいって言われて、私自体はコラボに全然関係ないけど、なぜかキャンディとチョコ作ったんですよ。その場にVERDYくんや佐野玲於くんやメンディーくんもいて「夏子さんがこのチョコとあめ作ってくれたんだよ」って紹介してくれて。

それがVERDYさんとの出会いだったんですね。

最初、日本の方と思ってなくて、DMを全部英語で送ってて。で、彼は全部日本語で返してくるっていう(笑)。

VERDYさんからその話聞いたことある(笑)。

「よかったら食べに来てください」って話をしたら、結婚記念日とかに奥さんと食べに来てくれて、2人ともすごい喜んでくれたんですよ。その来たときに「一緒に何か作りましょうよ」って言いました。VERDYくんも快諾してくれて、夏子さんは女性シェフなので、Girls Don’t Cryのコンセプトにぴったりなので、是非やりたいですって言ってくれたんです。Girls Don’t Cryって奥さんにいつも笑顔でいてほしいっていうメッセージがあるじゃないですか。なので、私がGirls Don’t Cryを美味しく調理して、大事な人にかじられたことしようって言って、あのロゴができたんですよ。

すごい素敵な話ですね。

かじられたハートのキーホルダーとかはVERDYくんがやって、私はケーキの方でイチゴをハート型にくり抜いて。VERDYくんは新しいコラボ相手をどんどん作っていくというかは、同じ相手と何度もやっていきたいタイプなので、どんどん一緒に作っていこうよって2人で話して。マイペースに続けてます。

MADSAKI(マッドサキ)さんは?

MADSAKIさんはKaikai Kiki Galleryから打診を頂いて。なぜなら、私がGustav Klimt(グスタフ・クリムト)の“接吻”を落とし込んだケーキの箱を作ってたから(※MADSAKIは“接吻”をモチーフとした“The Kiss Ⅱ”という作品を2018年に発表している)。そのボックスを見たKaikai Kikiの方が「庄司さんがKlimtやってるのを見て、MADSAKIいいんじゃないかと思って」と。私はとても嬉しかったんですが、MADSAKIさんが私の料理を食べたことなかったので、まずはご家族と来てくださいとお伝えして。それで私の料理を気に入ってくれたらやりましょうよって感じで。そして、例のごとくデータを頂ければ、その先はこちらでやるので、提案しますと。あとはMADSAKIさんにétéのロゴを作ってほしいともお願いしました。今でも携帯の待ち受けにしてるんですけど。20個ぐらいパターンを作ってもらって、その中から好きな“é”、“t”、“é”を組み合わせたんです。この“été”のスプレーの飛沫が細かすぎて、印刷で再現するのが難しくて「飛沫が簡素になってるから、完璧に再現してください!」って印刷業者と戦って。

今はファッション業界にお友達が多いと思いますが、ファッションの情報はどうやって取り入れてます?

やっぱりSNSですかね、カンヌとかでセレブ着ているドレスのクレジットとか見て調べてる。で、FARFETCH(ファーフェッチ)とかで売ってたら買っちゃう。日本だとあんまり売ってないんですよね。

何かのインタビューで読んだけど、AMBUSH®(アンブッシュ®)のドレスも海外のオンラインで買ったんですよね?

そうそう。日本で売ってなくて、それも海外から取り寄せました。私が好きな洋服って日本では売ってないことが多くて。ショーピースとかアート作品みたいな服が好きで。なかなか着れる人がいないんですかね。

表彰式とか着れる機会があるし、ちょうどいいですね。

着る機会を自分で作ろうと思います。アワードを取れば着れるんだって。服のためにアワードを取るみたいな(笑)。それもちょっとありますね。

アワードもプロフィールが増えれば、自分の発言力も強まるっていうことを重視してるんだよね。

受賞をすることによって、インタビューを受ける機会も増えるじゃないですか。それによって私の考えを知ってもらえる。

次世代の女性シェフのためにって話ですよね?

女性シェフも増やしたいって思ってるし、今ってさまざまな業界で職人が減ってきてるじゃないですか。高齢化されて担い手がいない。料理業界も同じ問題があって。それを変えていきたい。料理の業界って同業が知ってるのは当たり前ですけど、なかなかファッションの人とかは知らないじゃないですか。もしそこで知ってもらえたら、発展に繋がるじゃないですか。だから私はアワードのグッズを小木“Poggy”基史さんとかファッション業界の人にあげて、持ってもらいたいな。

トロフィーもあげちゃうんですよね?

1個はPoggyさんのプロデュースするスナックにあげて、もう1個は年1度で特別講師をやっている高校にあげちゃいました。

アワードは個人賞だけど、それを自分のためじゃなくて、次の世代や周りのためにやっているのはすごいなって。

自分だったら変えられる可能性があるって。

エゴがない人って珍しいのかなとも思う。それぐらいの年齢だったら自分が自分がってなりそうな気もするし、次のことを考えるのってもう少し歳を重ねてからとかなのかなとか。

でも、次の世代と年齢が近い方が影響力はあるじゃないですか。年齢近い方が若い人たちは見てくれるじゃないですか。

確かに、距離感も大切。考えてるのか無意識にやっているのかはわからないけど、そこまでやれてる人ってなかなかいないんじゃないかな。

ファッションとアートが好きで、そのコネクションを使って、次世代にアプローチしてる人は料理業界にはいないかもしれませんね。

料理業界に関わらず、いないんじゃないかなと。

本当ですか、阿部くんに言われるならそうなのかな(笑)。

いやいや、いろんな方にお会いしてきたけど、この唯一無二感はトップクラスだと思います。メッセージ性が強いですよね。1個1個のプロジェクトを意志を持ってやってるのかなと。

コラボの時は、相手のアートをしっかりと理解してやらないと。ロゴを付ければいいって話じゃないですか。特にケーキとファッション、ストリート、アートとかって共通してる部分はあるかもしれないけど、ちゃんと相手を理解してやらないと。それはちゃんと向こうのアーティストを尊敬しているわけだし、だからこそできるのかなって。MADSAKIさんの時は、内装をステンドグラス風にしてアートを飾ったんですよ。なぜかというとお店に来られる方の中には、MADSAKIさんのアートをよく知らない人もいるだろうって思って。せっかくコラボしてるのにそれぞれのファン層をミックスできないと意味ないなって。なので、そこはいつも気をつけてます。TOMOくんとコラボした時は、彼のドレスを実際にお店に飾ったんですよ。TOMOくんのドレス見れる機会なんて、滅多にないですからね。(携帯の写真を見せて)ほらほらこれ。

あっこれétéだったのか、見たことある。

ケーキの受け渡しのときに、お客さんはドレスの実物を見てもらって。ドレスの切れ端を使って、アップサイクルでケーキのパッケージを作ったんです。

当時だとSDGsって何?みたいな感じでしたよね。

そうそう。でもそこはちゃんとやろうって。ただétéのケーキだから買うじゃなくて、どうしてコラボしてるのかとか、私のケーキを買ってくれた人が、コラボ相手のことを理解してくれるとか。それで実際にシェフのお友達で、ケーキをきっかけにMADSAKIさんのシルクスクリーン買った人もいました。そうやって繋がって嬉しいなって。

それが本当のコラボだよね。さっき言ってたように、ロゴを載っけて載っけてみたいなの多いから。お店で世界観が体験できるのは良いですね。

お店に箱庭があるので、一緒に作品使ったアーティストの世界観がケーキ以外でも見せれるから、それはすごいいいですね。

改めてお話聞くと、いろいろ向き合ってるんだなと思いました。

普段はお酒ばっかり飲んでるけど……。

遊びも全力投球だから、常に全力投球なんだと思う(笑)。ちなみにクリエイターとして尊敬できる人ってどんな人ですか?

良いものを作ることに対して糸目を付けない。例えば納得いくものができるまで納期を後ろ倒しにするとか。ミニマム100%で、その先を突き詰めてやる人が好き。

確かにミニマム100点は当たり前だと思う。

ミニマム100は当たり前だし、私が一緒にお仕事してきた方って、今までに見たことないものを作るじゃないですか。私もそれを料理でやりたいと思うし、それを続けていかないと、そういった方たちにも失礼だなと思うんです。今あるコミュニティってそれぞれがそれぞれのフィールドで新しい挑戦を続けてるから成り立ってると思うんですよ。阿部くんもそうだけど。

僕らのような仕事は、いわゆるクリエイターっていうわけではないので、並べてもらえるのは恐縮だけど。

いやいやそうですよ、他に代わりはいないじゃないですか。

ちょっとファッションの話に戻りますが、スニーカー。今はたくさんもらったり買ったりしてると思うけど、最近のお気に入りは?

今日履いているPORTER(ポーター)と村上さんのコラボと、1994年のヴィンテージのAir Jordan 1。メルカリの田面木(たものき)さんが、お店にご招待したお礼に買ってくれたんですよ。メルカリで探して(笑)。本物で状態いいからって。前は普通に『StockX(ストックエックス)』でAMBUSH®のNikeのスニーカーもよく買ってましたよ。

調理場でも履いてるんですか?

履いてるんですけど、こういった靴はもちろんそのようには作られてないので、調理には向いてないんですよ。

それ用のスニーカーっていうのはないんですか?

料理業界ではもちろんあるんですけど、ザ・調理靴みたいな。ツルッとしてて汚れが取れやすいみたいな。スニーカーが好きだったんで、昔はChristian Louboutin(クリスチャン ルブタン)のスニーカーを調理場で履いてて。Louboutinのメンズでエナメルのがあって「生クリームはねてもすぐ取れる!すごい」みたいな。それを知ったLouboutinの方がプレゼントしてくれて。履き潰して同じのをもう1足買いました。素敵な靴を履いて仕事をしたいので、ファッション性の高いスニーカーも履いてるんですけど、油染み付いたら終わりなので、悲しいですよね。それも変えていきたくて。小さい子がパイロットの制服に憧れて、パイロットになりたいみたいなのあるじゃないですか。料理人も同じような状況になるといいなって。だからNikeとコラボしたいんですよ。

Nikeでそういうのが出れば変わってくるよね。

レストランのユニフォームはISSEY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)なんですけど、若い子は買えないと思って。Nikeって部活動でも着たりするじゃないですか、だからこの価格帯で実現しないと意味ないって最近目覚めて。だから、シューズとシェフユニフォームを作りたいってNikeさんにはずっと言ってるんですけど……。

調理靴で重要な要素って他にはありますか?

すぐ汚れが取れる。滑らない。油が跳ねる可能性があるから、熱いものが落ちても溶けない。大火傷しちゃうので、身を守れるものが嬉しいですね。

今日はLevi’s®(リーバイス®)の大戦モデル、KITH(キス)、村上さんのシューズを着用してるけど、ファッションのポイントは?奇抜な格好で、Poggyさんも最初会った時びっくりしたって(笑)。

その時は、上下Off-White™️(オフホワイト)のピチピチの服を着てたから(笑)。強烈みたいだったですけど。

奇抜って意味では、Poggyさんには言われたくないね(笑)。

うん、言われたくない(笑)。トレンドも好きですけど、私はどっちかっていうと、アートピースのような服が大好きです。さっきの話じゃないですけど、日本に入荷が1点2点しかないランウェイのものとか、そういうのが好きですね。一目惚れして買う。だからヴィンテージもすごいです。

1点物ですしね。

ヴィンテージデニムの世界ってすごいなって思ってましたけど、そのベースを作ったBerBerJin(ベルベルジン)の藤原裕さんにお会いして、今着ているジャケット勧めていただいて、これも縁だな〜と思って即決で買いました。

人と人の繋がりをすごい大事にしてるなって思う。仕事場でもプライベートでも。

そうですね。そういう関わりのあるものしか買ってないかな。それ以外は本当に好きで、人が着ていないような服。流行りも好きだけど。

そういえば、proleta re art(プロレタ リ アート)でなんか作ってもらってるって聞いたけど。どこで着る用ですか?

proleta re artに初の女性ものドレスを作ってもらってて。レッドカーペットで着たくて。7月にあるThe World’s 50 Best Restaurants(世界のベスト・レストラン50)の海外でのセレモニーか、9月にも大きなイベントあるからどっちかで着たいんです。proleta re artは、Poggyさんがお店に来た時に着てて「なんだこれ!」と思って、IG見たらオーダーはDMで書いてあったから、Poggyさんに言わずにDMしたんです(笑)。

えっそうなんだ(笑)。

Poggyさんに紹介してもらったわけじゃなくて。すごくないですか?「女性のものを上下セットアップで欲しいです」って。着てなかったDolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)のデニムジャケットあったから、それをお送りして。下のスカートはイメージをお伝えして、レッドカーペットだから引きずるやつじゃないとダメなんですよ。だから裾を長くしてほしいと。Poggyさんに誘われて、1度proleta re artのアトリエにも行きました。


それもさっきのアートピースの話に繋がりますね。

これは女性でレッドカーペットで着てる人はいないと思って。

絶対にいない(笑)。ファッション感度高い人でもAMBUSH®とかに辿り着いて満足しそう。AMBUSH®といえば、だるまが店内にも飾ってありますね。

AMBUSH®のだるまを2022年の年明けに頂いて、ベスト女性シェフもらったら目玉入れようと思ってたら、本当に決まったから、大急ぎでマジックで目玉入れて。

VERBAL(バーバル)さん来たとき「これちゃんと使ってる人初めて見た」って言ってたよね(笑)。AMBUSH®のダルマに目玉入ってる人なかなかいないですよ。あとは、夏子さんが尊敬しているYOON(ユン)さんのお話も聞こう。AMBUSH®公式サイトの企画で対談してましたよね。どういった点に惹かれるんですか?

YOONさんは昔から大好きです。女性だから苦労したこともあると思うんですけど、そういった中でご自身の世界観を作り上げて、DIOR(ディオール)のメンズジュエリーのディレクターとか、確固たる地位を築いてるじゃないですか。本当にすごいと思って。VOGUE(ヴォーグ)の企画で私がAMBUSH®の服を着る機会があって。それをYOONさんが見てくれてて。それでその後にPoggyさんがVERBALさんとYOONさんをお店に連れて来てくれたんです。

僕、PoggyさんがVERBALさんに説明してる時に横にいました。「étéって知ってますか?こういう人がシェフでYOONさんのことすごいリスペクトしてるので今度行きませんか」みたいな。

本当ですか、すごい嬉しい。食事を気に入ってくださって、その後何度か来てくださって。で、まさかの対談のオファーがあって。

YOONさんからも感じるものがあったんじゃないですかね。パイオニア感と唯一無二な感じはYOONさんと夏子さんはイメージが重なる。そうやって見てる人もいるんじゃないかと。

それは光栄です。本当に見たことないものを生み出す方ですよね。コロナで海外行けるか行けないかって時に、YOONさんが現地でミラノコレクションの準備してるのを見て、ここでクリエーションを止めちゃダメだと思って、リスク取って行きました。その時の授賞式ではAMBUSH®のドレス着させてもらいました。

自分が覚悟決まってるから、そういった方にインスパイアされたり共感を持ったりするのかもね。あとは有言実行。

有言実行を認知させるのも重要だなと思ってるんですよ。これを達成したいっていう事前の目標を知ってるもらうのも大事だけど、達成した後も知ってもらうのが重要だと思ってます。Before/Afterを周りに知ってもらいたい。知らない間に達成してても意味ないんですよ。目標そのものをプロモーションに使いたいというか。じゃないと次に繋がらないというか。

それも最初の村上さんとの馴れ初めにも通じる話ですね。

賞を取りたいっていう話もずっとインタビューとかでも言ってて。

確かに最初に会った時ぐらい聞いた気がする。こないだ行ってたニューヨークはどうでしたか?村上さんのRTFKT(アーティファクト)がメイン?

そうですね、Kaikai Kikiからご連絡いただいて。もともと全く行く予定なかったんですけど「これは歴史が変わる瞬間だから是非来てください」って言われて。

行って正解のやつだったね。

NFTは全然わからなかったけど、あれをきっかけに勉強しないと思いました。

村上さんって本当にすごい方ですよね。スタジオにもよく行ってるんですか?

たくさんあります。(お店に飾っていた)桜の絵は、あそこに行き着く前にいろんなバージョンを作っていただいて、その中で選ばせてもらって。仕事への姿勢はアーティストとコラボする際に学ぶことが多いですね。村上さんとかVERDYくんもそうですけど、世界で活躍するアーティストの仕事のやり方を知れることなんてないじゃないですか、だからそれを料理の世界に活かしたいなと。そのコネクションは経験を活かして次世代にアプローチしたいですよね。

どうしてそこまで次世代のことを考えるようになったんですか?自分が大変だったから?

起業したときに、一般的にレストランを作るときに必要なお金が借りれなくて。若くて女性だったからだと思いますけど。日本ってアートとかファッションだとサポーターの方ってたくさんいるけど、料理業界ってあんまりいないんですよね。私たちでいうオリンピックがThe World’s 50 Best Restaurantsで。日本はあれの認知度が低いんですよまず。

確かに、言われてもピンとこない人多そう。

でしょ、わからないんですよ。日本はそれの重要性を理解してなくて、あとは言語の問題もある。だからプロモーションをしっかりしてなくて、遅れを取ってるんです。ただ日本を一歩出るとあれはすごい名誉なことで、リストに入ってるレストランは政府がサポートしてたりするんですよ。それが日本にはない。だから私は、認知度向上のためにトロフィーとかをあげちゃう。オリンピックだから私たちにとって。日本が国をあげて食の業界をサポートして欲しいの。海外のシェフとかは国がお金出してくれるけど、日本は持ち出しも多いから、そういうのも変えていきたい。

そういうのも知らないからね、今言われてそうなんだって感じだけど。

海外だとアワード取ってめちゃくちゃくド派手なパーティやるけど、日本だとスポンサーもいないから、すごい小さいパーティしかできなくて、それでメディアも集まらないから認知度も上がらないの。そういうのを変えるためにはアートとかファッションの力って大きいじゃないですか。だから私がこうやっていろいろな方とコラボしてなかったから、今日みたいな機会もなかったわけで。

本当に知るきっかけになってると思う。VERDYさんにせよ、村上さんにしても。

そこから何のアワードを私が取ってるんだろう?って知るきっかけになるじゃないですか。そしたらサポーターも増えるし、日本の食の業界が発展するんじゃないかなって。料理人同士やフードライターが私たちのことを知ってるのは当たり前だけど、それ以外の人たちに知ってもらいたいなって。授賞式でAMBUSH®のドレスを着てる人が料理人だったとかでもいいと思うんですよ。

あとは何か聞いてないことあるかな……。コラボの話もしたし、ファッションの話もしたし、真面目な話もしたし……Nikeの話もしたし。

阿部くんからNikeさんに言っておいてください。「夏子さんとのコラボいつ出るんですか、取材させて」って(笑)。

ちなみにétéって定休日はある?

定休日は決めてないんです。固定の休み作っちゃうと、例えば海外からすごい方が来た時に候補から外れちゃうじゃないですか、チャンスを逃しちゃうのは私はすごい嫌で。可能性を残しておきたい。

もう2時間半も喋ってる、最長のインタビューだ(笑)。

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テキスト
インタビュアー
Yuki Abe / Hypebeast
フォトグラファー
Aya Kawachi / Hypebeast
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