été 庄司夏子が手がけたポケモンカードの誕生秘話 | Interviews
宝石のようなフルーツタルト「フルール・ド・エテ」と、テラスタルしたイーブイが組み合わさった特別な1枚
été 庄司夏子が手がけたポケモンカードの誕生秘話 | Interviews
宝石のようなフルーツタルト「フルール・ド・エテ」と、テラスタルしたイーブイが組み合わさった特別な1枚
タイアップ企画が溢れる現代において、『Hypebeast』読者を熱狂させるそれは、決して多くないはずだ。だが、そんなあなたに朗報を伝えたい。あのポケモンカードゲームとété(エテ)の庄司夏子がタイアップするというのだ。ポケモンカードゲームは、累計製造枚数648億枚以上(2024年3月時点)、子どもから大人まで、誰もが知る世界的トレーディングカードゲーム。そして庄司夏子といえば、村上隆や〈Girls Don’t Cry(ガールズ ドント クライ)〉、〈Tomo Koizumi(トモコイズミ)〉など、世界的なアーティストやブランドと次々とタイアップしてきた。2022年版「アジアのベストレストラン50」で、日本人女性初の「最優秀女性シェフ賞」を受賞するなど、次世代の料理業界を担う稀代の料理人である。
庄司夏子は、12月6日に発売されるポケモンカードゲームの新作、ハイクラスパック「テラスタルフェスex」において、「テラスタイプ:ステラ」のイーブイexを手掛けた。“テラスタル”とは、ポケモンたちが宝石のようにキラキラと光輝き、特別な力を手に入れた状態(ポケモンカードゲームにおいて、テラスタルのポケモンexは、ベンチにいる限りワザのダメージを受けない)。カードには、庄司夏子が“テラスタル”をテーマに作ったタルトが美しく輝いている。全世界のファン待望のポケモンカードのアートを料理人が手がけるのは、もちろん初めて。『Hypebeast』は、この歴史的な瞬間に立ち会い、庄司夏子自身にインタビューを敢行した。タイアップの真相に迫る。
Hypebeast:ポケモンカードゲームとタイアップすることになった経緯を教えてください。
株式会社ポケモンの石原恒和社長がétéを気に入ってくださり、何度か大切な方々とお店に来てくださっていました。確か2022年だったと記憶していますが、ポケモンカードゲームを開発している株式会社クリーチャーズの方々と一緒に来てくださる機会があり、そのときに皆さんが料理にとても感動してくださったんです。それで、「この感動を何か一緒に形にしたい」とおっしゃってくださったのが、最初のきっかけだったと思います。
1000種類以上いるポケモンの中で、「テラスタルフェスex」のパッケージにも登場する、イーブイを選んだ理由は?
最初はétéの代表作である『フルール ド エテ』(マンゴーのバラのタルト)と色味のニュアンスが近いピカチュウがいいかなと思っていました。一番盛り上がるタイミングということで、当時開発が始まったハイクラスパック「テラスタルフェスex」に収録される、「テラスタイプ:ステラ」のイーブイexという、とてもスペシャルなカードをご提案いただき、これだ!となり決まりました。
“テラスタル”をテーマにしたタルトのこだわりについて教えてください。
イーブイの頭上にある”テラスタルジュエル”のようなキラキラと輝く石をイメージしました。フルーツをジュエリーのように思っている私にとって、ぴったりのテーマでした。テラスタルジュエルのイメージに近い7種類のフルーツをダイヤモンドカットし、“テラスタル”をオマージュしたタルトをこのタイアップのためだけのために作りました。フルーツは小さくしすぎると水分が出て、フルーツ本来の美味しさが損なわれてしまいます。それぞれ大きさや形の異なるフルーツの美味しさを残しながら、デザインを極めることが大切でした。「テラスタイプ:ステラ」のイーブイになったことで、結果的に私もまだ見たことがない全く新しいケーキが完成したんです。
クリーチャーズ側からのリクエストで印象に残っているものは?
“今までにないもの”という言葉が一番印象的でした。生みの苦しみを味わいましたが、クリーチャーズさんのクオリティへの徹底的なこだわりに触発されて、私も負けられないと。
庄司さんが料理の中で、“テラスタル”のように輝く瞬間や閃きを感じるときはどんなときですか?
日本の食材そのものがジュエリーだと思っています。もちろん私が手を加えて形を作っていますが、日本の食材や生産者の方々をとても尊敬しているので、今回のタイアップを通じて、その輝きがさらに増したと感じています。
ポケモンとの個人的な思い出を教えてください。
初めて発売された『ポケットモンスター 赤・緑』のとき、面白さに夢中になって四六時中ずっとゲームをしていたのを覚えています。ポケモンは本当に全人類のDNAに組み込まれているもの。当時は4種類の色調だけで全ポケモンのニュアンスが表現されていたそうです。森、石、モンスターボールなど、すべてが4色だけで表現されていた。大人になってから気づいたことですが、それって相当すごい表現方法ですよね。それに気づいたとき、改めてポケモンのクリエーションに感動しました。
ポケモンカードも集めていましたか?
もちろん、ポケモンカードも集めていました。だけど、カードゲームとして遊ぶというよりアートとしてコレクションしていましたね。ポケモンカードには、その時代の最高峰の技術が組み込まれていて、本当に美しい。カードホルダーを眺めながら、ずっとニヤニヤしていました。子どもたちが最初に手にすることができるアートピースだと思っています。
そのポケモンカードとタイアップすることになった率直な感想を教えてください。
ポケモンの素晴らしいところは、子どもたちが物心ついたときから自然と好きになる存在であることです。一方で、料理人や生産者たちは後継者不足という課題に直面しています。このタイアップを通じて、シェフという職業の可能性を示せる希望を感じました。自分の名前がポケモンカードに載ることで、子どもたちや若い世代に、シェフという仕事の魅力を伝えられる。それこそがこのタイアップの大きな意味だと感じています。
étéはこれまでもファッションブランドやアーティストとタイアップしてきました。庄司さんが共通して大切にしていることは?
お互いの理解力です。相手のことを深く理解し、高いレベルで表現することを大事にしています。お客さんも非常にレベルが高いので、そういった方々の心に響くものを作るには、ただétéのロゴを載せればいいというわけではありません。自分の情熱と相手へのリスペクトを一つのアート作品として形にする──、それが私なりの勝負でもあるんです。だから自分の理解力が追いつかないものとの取り組みは、絶対にしません。ポケモンカードのチームの中には、ポケモンと一緒に歳を重ね、人生を歩んできた方々がいらっしゃいます。その中で新しいものが次々と生まれて、まるでポケモンそのもののように進化しているんです。だから私もその期待に応えられように、私自身もポケモンのことをより理解しようという気持ちが強くありました。
庄司さんも“進化”を意識されますか?
はい、意識しています。ただ、料理のクリエーションにおいては、自分の価値観を押し付けるのではなく、いろいろな国のお客さまにどうすれば心地よい空間を提供できるかを常に考えています。大切な日に来てくださる方々に、絶対に嫌な思いをさせたくないですから。そのためにお客さまに寄り添い続けることはとても大変ですが、それが自分を成長させてくれるのだと思います。自分自身も常に進化し続けなければいけない。いつかミュウツーみたいになりたいですね。私のイメージでは一番強いですから(笑)。
庄司夏子 料理人
1989年、東京生まれ。駒場学園高等学校 食物調理科を卒業後『ル・ジュー・ドゥ・ラシエット』、『フロリレージュ』を経てオーナーシェフとして独立。2014年、24歳のときにスイーツ専門店として『été』を開業。宝石箱のようなマンゴータルトが人気を呼び、翌年、一日ひと組4名限定のレストランに。2020年、アジアのベストレストラン50「ベストパティシエ賞」受賞、2022年、同「ベスト女性シェフ賞」受賞。
ポケモンカードゲーム スカーレット&バイオレット
ハイクラスパック「テラスタルフェスex」
希望小売価格:550円(税込)
内容物:カード10枚入り
※カードはランダムに封入
発売日:好評発売中
ハイクラスパック「テラスタルフェスex」特設サイト
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