パリ・ダカ勝者を称えた伝説の Cartier 製ウォッチが9月の Sotheby’s オークションに登場
“Cartier Challenge”の賞品として贈られた僅か4本のうちの1本
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40年近く公の目に触れることがなかった幻の〈Cartier(カルティエ)〉製リストウォッチ“Cheich”が、9月30日(現地時間)にパリで開催される『Sotheby’s(サザビーズ)』のオークションに出品されることになった。
こちらの時計、まず目を奪われるのが文字盤を覆う金色のケース。〈Cartier〉の当時のクリエイティブ・ディレクター Jacques Diltoer(ジャック・ディルトエ)によって作り出されたもので、サハラ砂漠の遊牧民が日除けと砂嵐から頭を守るために巻いている布がモチーフになっている。ではなぜこのようなデザインが採用されたのか? それは1980年代、広大なアフリカを舞台に行われた伝説のラリーイベントに由来するもので、時計全体をそのロゴマークに見立てたのだ。
フランス・パリからアフリカ・セネガルの首都ダカールまでを走破する「Paris-Daker Rally(パリ・ダカール・ラリー)」の5周年記念に、当時の〈Cartier〉のCEOであったAlain Dominique Perrin(アラン・ドミニク・ペラン)と「Paris-Daker Rally」創設者 Thierry Sabine(ティエリー・サビーヌ)が考案した“Cartier Challenge(カルティエ チャレンジ)”の賞品として製作され、1985年に2連覇を達成したモト・レーサー Gaston Rahier(ガストン・レイエ)に贈られたもの。彼の手に渡ったこの時計は1983年製で、他にも3本存在し、そのうち2本は〈Cartier〉のコレクションに収蔵されているのが確認できているが、残りの1本はもう一人のパリダカの英雄 Hubert Auriol(ユベール・オリオール)に授与されたのではと伝えられているものの、現在では紛失したと考えられている。
その後の1986年の「Paris-Daker Rally」において、Sabineを含む4人が乗ったヘリコプターがマリ共和国内で墜落し、彼らの命が奪われたため、この“Cartier Challenge”は中止となった。このような歴史的経緯もあって、この時計が“Unicorn Watch(ユニコーンウオッチ)=幻の時計”とされているわけだ。
『Sotheby’s』の時計専門家であるBenoît Colson(ブノワ・コルソン)によると、「この時計が特別である理由は実にたくさんあり、真の傑作として、また伝説的なCartierの挑戦における勝利と悲劇との関連から、貴重なタイムピースとして存在したことが神話的な地位に達し、オークションでの最初の出現が待ち望まれていた」のだという。
“Cheich”は、オリジナルのプレゼンテーションケースに収められ、大変良好な状態であると説明されている。予想されるところでは20万〜40万ユーロ(約2,750万〜5,500万円)が落札価格とされているが、さらに高額になるとの声も出ている。また、“Cheich”はこのオークションに先立ち、7月17日(現地時間)までモナコの『Sotheby’s』で開催される展示会の一部として公開された後、再びパリで展示される予定となっている。