Sole-Searching:Vans Old Skool 特集

ハードコアなスケーターやパンクスをはじめストリートの覇者からモードの帝王にまで愛された名作を深堀り

フットウエア 
10,288 Hypes

毎月1足、歴代の名作スニーカーの歴史を紐解く連載企画 “Sole-Searching”。第8回目は、今年創業55周年を迎えた〈Vans(ヴァンズ)〉が誇る永遠のクラシックモデル Old Skool(オールドスクール)を特集する。

Old Skoolについて説明する前に、まずは〈Vans〉の歴史を簡単に振り返りたい。1966年、Paul Van Doren(ポール・ヴァン・ドーレン)が弟のJim Van Doren(ジム・ヴァン・ドーレン)や投資家のSerge D’Elia(サージ・デリア)、旧友のGordy Lee(ゴーディ・リー)と共に、アメリカ・カリフォルニア州アナハイムの704 East Broadwayにブランドの前身となるオーダーメイドのシューズショップ『Van Doren Rubber Company(ヴァン ドーレン ラバー カンパニー)』をオープン。同ショップは当初、お客さんからオーダーを受けたスニーカーを敷地内で製造して販売するというスタイルで営業していた。1970年代前半になると、彼らが生み出すラバーソール(ワッフルソール)を備えた丈夫な作りのスニーカーがスケーターの間で評判となり、“スケートボードシューズブランド”として認知され始めることに。1976年には、現在も使用されている“Off The Wall(型破りな、風変わりな)”のロゴが誕生した。

本稿の主役であるOld Skoolは、耐久性を高めるためにレザーパネルを組み込んだブランド初のスケートシューズとして“Style 36”の名で1977年にデビュー。シューズのアッパーサイドに“ジャズストライプ”が初採用されたのもこのモデル。Paulが思いつきで描いた落書きから生まれたという“ジャズストライプ”は、44年を経た今もなお〈Vans〉を象徴するモチーフとしてさまざまなモデルに使用されている。そのルックスとタフな作りから、Old SkoolはスケーターだけでなくBMXのライダーたちにも支持された。また、〈Vans〉はもともとオーダーメイドのスニーカーから始まったということもあり、当時、購入者は追加料金を払えば自分の好みに合わせて既存のモデルの生地を変更したり、好みのカラーリングにカスタムすることが可能だった。このシステムはスケーターを中心に評判を呼び、1980年代にはスニーカーのカスタマイズが大流行。特にOld Skoolは他のモデルに比べてパーツが多く、素材やカラーの組み合わせ次第では他人と被らない自分独自の1足を作ることができた。フットウェアを通して自らの“個性を表現する”という概念は、〈Vans〉によって確立されたと言っても過言ではない。

過去にOld Skoolを着用したスケーターは数多く存在するが、最も象徴的なのはアメリカ西海岸を代表するスケートカンパニー〈ANTI HERO(アンタイヒーロー)〉を主宰するJulien Stranger(ジュリアン・ストレンジャー)だろう。ハードコアなスケーターにとってカリスマ的な存在である彼は長年Old Skoolを愛用しており、2012年には〈Vans Syndicate(ヴァンズ シンジケート)〉ラインから自身のシグニチャーモデルとしてネイビーカラーのヌバックとパンチングレザーを採用したOld Skool Pro Sをリリースした。また、プロスケーターのAnthony Van Engelen(アンソニー・ヴァン・エンゲレン)もOld Skoolの愛用者の1人。彼はその理由として「僕が初めて尊敬したプロライダーはHenry Sanchez(ヘンリー・サンチェス)とGuy Mariano(ガイ・マリアーノ)で、当時彼らがOld Skoolを履いていたのがクールだったからさ」と語っている。

スケーター以外でも、パンクスに〈Vans〉の愛用者が多いのも承知の事実。その大きなきっかけとなったのは、1980年代にアメリカのハードコアパンクバンド Black Flag(ブラック・フラッグ)で当時ボーカルを務めていたHenry Rollins(ヘンリー・ロリンズ)が、ステージ上でOld Skoolを着用したことだと言われている。彼を真似てOld Skoolや〈Vans〉のスニーカーを履いた多くのキッズたちがライブハウスに集い、モッシュやダイブする現象が全米に拡がっていった。また、SLAYER(スレイヤー)、DESCENDENTS(ディセンデンツ)、Bad Religion(バッド・レリジョン)といったバンドのメンバーやそのグルーピーたちもOld Skoolを着用するなど、1980年代から1990年代にかけて全米のパンクスたちの間で同モデルが大ヒットした。

1990年代には既に多くの人々から支持を得ていたOld Skoolだったが、ファッションシーンからも注目を集めるきっかけになった2つのコラボレーションがある。1つ目は1996年に実現した〈Supreme(シュプリーム)〉とのコラボレーション。これは当時まだ設立から2年しか経っていない新興ブランドであった〈Supreme〉にとって初めてのメジャーブランドとのコラボレーションであり、その記念すべきファーストモデルのベースに選ばれたのがOld Skoolだった。シンプルなオフホワイト/グレーと、2種のカモフラ柄で展開されたコラボモデルのデザインを手掛けたのは、後に〈NOAH(ノア)〉を設立することになるBrendon Babenzien(ブレンドン・バベンジン)。〈Supreme〉の創設者であるJames Jebbia(ジェームス・ジェビア)は、本コラボレーションについて以下のように回想している。「Old Skoolはアイコニックでクラシックなスケートシューズです。1996年当時、Vansが提供していた最高のシューズの1つであり、時の試練に耐えうる魅力を持つ1足だと思います」。これ以降も両ブランドは現在に至るまで定期的にコラボレーションを行なっている。

2つ目は〈Marc Jacobs(マーク ジェイコブス)〉とのコラボレーション。1990年代後半から2000年代初頭にかけて、ランウェイでコレクションを発表するようなデザイナーズブランドがスタイリングにスニーカーを取り入れるようになっていった。自社のファクトリーで製作したオリジナルデザインのスニーカーを発表するブランドや、スポーツメーカーとのコラボレーションによって既存のモデルの素材やカラーをアレンジしたスニーカーをリリースするブランドが徐々に増えていき、モードとストリートの距離はこの時期に急速に縮まっていく。当時〈Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)〉のクリエイティブディレクターに就任したばかりのMarc Jacobsはこの流れをいち早く察知し、自身のブランドで〈Vans〉とのコラボスニーカーを発表。ベースモデルにはOld SkoolとSk8-Hiがチョイスされ、高級素材を使用して鮮やかなカラーリングを纏ったモードなスケートシューズが誕生した。これは以降に登場するラグジュアリースニーカーの先駆けの1つと言えるだろう。また、両ブランドはその後も断続的にコラボレーションを行うなど、良好な関係を続けている。

先述の2つをはじめ、これまで発売されたOld Skoolのコラボレーションモデルは星の数ほど存在するが、最後にその中でも特に印象的なモデルをいくつかご紹介したい。まず2017年にリリースされたモードの帝王 Karl Lagerfeld(カール・ラガーフェルド)とのコラボコレクション。当時は既にモードとストリートの融合は常識となっていたものの、この組み合わせには誰もが驚いたはず。Old Skoolをはじめ、SK8-Hi、CLASSIC Slip-Onをモノトーンにアレンジして高級感のあるモデルに仕上げたKarlの手腕には脱帽である。2021年に発売された〈COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)〉のサブライン〈CDG(シーディージー)〉とのコラボモデルも記憶に新しい。ミッドソールに“CDGCDGCDG”のロゴをプリントするというシンプルなアレンジながらも、存在感のある1足に仕上がっている。ストリートブランドでは、2020年にリリースされた〈NEIGHBORHOOD(ネイバーフッド)〉と西海岸のタトゥーアーティスト Mister Cartoon(ミスター・カートゥーン)とのトリプルコラボコレクションも忘れ難い。ブラックのヌバックをアッパーに使用し、トゥボックスにMister Cartoon独自の書体を刺繍することで、〈Vans〉の根底にあるスピリットを表現した完成度の高いモデルに。そのほかにも、同年に発売された〈N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)〉とのコラボモデルや、今夏リリースの〈BEDWIN & THE HEARTBREAKERS(ベドウィン アンド ザ ハートブレイカーズ)〉と〈Vault by Vans(ヴォルト・バイ・ヴァンズ)〉のコラボコレクションなど、数々の名作が生み出されている。

目まぐるしくトレンドが移り変わる現在だからこそ、時を経ても変わらない魅力を持つ〈Vans〉Old Skoolのようなクラシックモデルに、再び注目してみてはいかがだろうか。

Read Full Article

次の記事を読む

Vans が Revenge X Storm 的な Old Skool をリリース
フットウエア

Vans が Revenge X Storm 的な Old Skool をリリース

これが本当のリベンジ?

Awake NY と Vans の最新コラボ Old Skool がリリース
フットウエア

Awake NY と Vans の最新コラボ Old Skool がリリース

1990年代のニューヨークのダウンタウンにおけるスケートやパンクカルチャーをトリビュート

Supreme x Vans から Swarovski のクリスタルを散りばめた Old Skool が登場
フットウエア

Supreme x Vans から Swarovski のクリスタルを散りばめた Old Skool が登場

〈Vans〉を象徴するチェッカーフラッグ柄のアッパーに〈Swarovski〉のクリスタルを施したラグジュアリーな1足


野村訓市が偏愛する Vans Authentic のタイムレスな魅力と TRIPSTER コラボの裏側  | Sole Mates
フットウエア 

野村訓市が偏愛する Vans Authentic のタイムレスな魅力と TRIPSTER コラボの裏側 | Sole Mates

「初めて作るスニーカーだから、自分が普段履いているAuthenticじゃないとダメだと思って」

1954年製の Rolex Submariner のレアな初期モデルがオークションに出品中
ウォッチ

1954年製の Rolex Submariner のレアな初期モデルがオークションに出品中

300本しか製造されなかった激レアモデル Ref. 6200を手に入れる最後のチャンス?

Dr. Martens x HAVEN から老舗タンナー CHARLES・F・STEAD のレザーを使用したコラボシューズ 1461 が登場
フットウエア

Dr. Martens x HAVEN から老舗タンナー CHARLES・F・STEAD のレザーを使用したコラボシューズ 1461 が登場

シンプルな佇まいながらこだわりが感じられる玄人好みの1足

食べログがユーザーから高い評価を得る“カフェ 百名店 2021”を発表
フード & ドリンク

食べログがユーザーから高い評価を得る“カフェ 百名店 2021”を発表

67店が東京から選出され、『DSMG』の最上階に店を構える『Rose Bakery Ginza』などが名を連ねる

2022年にリリース予定の iPhone 14 はデザインが“完全刷新”との噂
テック

2022年にリリース予定の iPhone 14 はデザインが“完全刷新”との噂

シリーズ史上最も高評価のiPhone 4を彷彿とさせる厚めのモデルになる模様

UPDATE:Moncler Genius が HYKE とのコラボラインを発表
ファッション 

UPDATE:Moncler Genius が HYKE とのコラボラインを発表

〈7 MONCLER FRGMT HIROSHI FUJIWARA〉〈1 MONCLER JW ANDERSON〉〈5 MONCLER CRAIG GREEN〉〈6 MONCLER 1017 ALYX 9SM〉などの最新コレクションもお披露目(UPDATE:公式オンラインストアにて先行販売を開始)


Drake 初のシグネチャーシューズ NOCTA x Nike Hot Step Air Terra の新たなカラーウェイが浮上
フットウエア

Drake 初のシグネチャーシューズ NOCTA x Nike Hot Step Air Terra の新たなカラーウェイが浮上

〈NOCTA〉が夜行性を意味する“Nocturnal”から名付けられたことにちなみ、アッパーの一部にリフレクター素材が採用

Travis Scott x Nike Air Max 1 Cactus Jack “Baroque Brown” のディテールをチェック
フットウエア

Travis Scott x Nike Air Max 1 Cactus Jack “Baroque Brown” のディテールをチェック

2022年の“Air Max Day”にリリースとの噂

R. Kelly が性犯罪などで有罪評決
ミュージック

R. Kelly が性犯罪などで有罪評決

最高で終身刑が言い渡される可能性も

Drake が『Certified Lover Boy』の内容を密かにアップデートした模様
ミュージック

Drake が『Certified Lover Boy』の内容を密かにアップデートした模様

複数の曲においてミックス面での微妙な変更がいくつも発見される

New Balance の “MADE in USA” モデル M1400 からオリジナルカラーのスティールブルーが登場
フットウエア

New Balance の “MADE in USA” モデル M1400 からオリジナルカラーのスティールブルーが登場

アッパーに「Wolverine」社のピッグスキンスエードを採用し凛々しさを感じさせる1足

More ▾
 
ニュースレターを購読する

インタビューや トレンド情報、その他限定コンテンツが満載。

購読ボタンをクリックすることにより本サイトの利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

広告ブロックツールを使用されているようです

読者に無料で提供する代わりに広告収入を得ています。このサイトをホワイトリストに追加していただけると幸いです

ホワイトリストに追加

ホワイトリストへの追加方法

screenshot
  1. 右上のブラウザー拡張エリアにあるAdBlockのアイコンをクリック
  2. Pause on this site”の下にある“Always”をクリック.
  3. ページを更新するか、下のボタンをクリックして継続
screenshot
  1. 右上のブラウザー拡張エリアにあるAdBlock Plusのアイコンをクリック
  2. Block ads on – This website”のスイッチをオフにするとブルーからグレーに切り替わります
  3. ページを更新するか、下のボタンをクリックして継続
screenshot
  1. 右上のブラウザー拡張エリアにあるAdBlocker Ultimateのアイコンをクリック
  2. スイッチをオフにして“Enabled on this site”から“Disabled on this site”に切り替える
  3. ページを更新するか、下のボタンをクリックして継続
screenshot
  1. 右上のブラウザー拡張エリアにあるGhosteryのアイコンをクリック
  2. 下の“Ad-Blocking”ボタンをクリックすると、色がグレーに変化して上のテキストが“ON”から“OFF”に変わります
  3. ページを更新するか、下のボタンをクリックして継続
screenshot
  1. 右上のブラウザー拡張エリアにあるUBlock Originのアイコンをクリック
  2. トップにあるブルーの電源アイコンをクリック
  3. 色がグレーに変わったら、横に出る更新アイコンをクリックするか下のボタンをクリックして継続
screenshot
  1. 右上のブラウザー拡張エリアにある広告ブロックツールのアイコンをクリック
  2. 閲覧中のサイトで広告ブロックツールを無効にするための手順に従ってください
  3. ページを更新するか、下のボタンをクリックして継続