フランスを代表する現代アーティスト クリスチャン・ボルタンスキーが死去
香川県・豊島の恒久展示作品 “心臓音のアーカイブ”で知られる現代美術の巨人が、がんのため76歳で永眠
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フランスを代表する現代アーティスト Christian Boltanski(クリスチャン・ボルタンスキー)が、7月14日(現地時間)にがんのため76歳で死去した。
Christian Boltanskiは1944年フランス・パリ生まれ。彫刻家、写真家、画家、映画監督などの顔を持っていた彼は、多様な素材/媒体を組み合わせることで生と死、記憶、忘却といったヴァニタス(儚さ)を表現してきた。父親がユダヤ人だったために第二次世界大戦中および戦後に迫害を受けていたこと、そして強制収容所などの話を両親やその友人から聞いたことが生涯のトラウマとなり、作品に大きな影響を与えている。その最たる例が、1985年から不定期に発表していた子どもの肖像写真を使用するシリーズ作品 “Monument”の1つ “Altar to Chases High School(シャス高校の祭壇)”だろう。1931年にウィーンの高校に在籍していたユダヤ人学生たちの写真を遺影のように収め、それらを薄暗い電球の明かりと共に祭壇状に配置した作品で、彼らが迫害を逃れ生き延びることができたかは明らかになっておらず、誰にでも訪れる死や大量の死者の存在を表現した。
日本でも幾度となく個展を開催してきたが、香川県・豊島には『ベネッセアートサイト直島』の一環として2008年から“The Heart Archive(心臓音のアーカイブ)”を恒久展示している。同作品は、Boltanskiが世界中で収集した人々の心臓音を聴くことができる“心臓音だけの美術館”で、来訪者は登録された心臓音を聴くことができるほか、自身も録音して登録することが可能。これまでに北野武や松任谷由実ら数万人もの人々が訪れ、作品に生きた証を残している。
『HYPEBEAST』編集部一同、ご冥福を心よりお祈り申し上げます。