メルボルン発ストリートウェアブランド MERTRA の創設者 アーロン・ウィリアムズが語るブランドの現在地
ラッパー Nemzzzを起用した最新コレクションとともに、日本とのつながりやブランドの哲学を紐解く
オーストラリア発のストリートウェアブランド〈MERTRA(マートラ)〉が、イギリス・マンチェスター出身のラッパー Nemzzz(ネムズ)を起用した2026年秋冬コレクションを発表。今回のキャンペーンでは、クロコダイル柄をあしらったフード付きシェルジャケットをNemzzzが着用し、ロンドンで撮影されたビジュアルには全長約2.1mのクロコダイルも登場した。
今回コレクションの中心となるクロコダイル柄のジャケットは、ブランドのルーツであるオーストラリアへのオマージュ。プリントされたクロコダイルの1匹1匹にブランドロゴを配することで、ロゴを単に重ねるのではなく、グラフィックそのものにブランドのアイデンティティを組み込んでいる。
そのほかのラインアップは、アウターウェア、デニム、トラックスーツ、ニットウェア、Tシャツ、ヘッドウェアなど幅広く展開。光沢のある素材に格子状のステッチを施したダウンジャケット Grid Puffa、身体のラインに沿うコントラストパイピングが特徴のOrbit tracksuit、曲線的なパネル切り替えとフラップポケットを備えたオリーブカラーのデニムセット Hardline denim setなどが揃う。そのほか、ジップ付きチェストポケットを配したテクニカルなベスト Vertex giletや、ユーズド感のある表情に仕上げたカモフラージュ柄のボトムス、クロコダイル柄のバッグやセラミックボウルも登場する。
去る10月16日(金)から18日(日)まで東京・原宿で日本初のポップアップを開催し、世界に先駆けて最新コレクションを公開した〈MERTRA〉。今回『Hypebeast Japan』では、創設者のアーロン・ウィリアムズ(Aron Williams)にミニインタビューを敢行。ブランドの成長を支えてきた日本との関係や、独自のキャンペーン、機能性を追求するものづくりについて話を聞いた。
Hypebeast:東京では世界に先駆けて新作コレクションを公開しました。日本を重要な場所と考える理由と、これまでのつながりについて教えてください。
アーロン:日本は、オーストラリア以外で早い段階からブランドに興味を持ってくれた国のひとつです。過去18カ月にわたって、〈MERTRA〉にとって世界トップ10に入る市場であり、今年の日本での売上は130%増加しています。こうした成長を通じて、日本の人々がどれだけブランドを支持してくれているかを実感しました。だからこそ、その背景にいる人たちと直接会い、交流したいと思ったんです。
ブランドにとって重要な瞬間も日本で生まれています。昨年はタトゥーアーティストのTAPPEIを起用した大型キャンペーンを東京で撮影し、その際に新しいロゴを発表しました。2024年にも大きなキャンペーンを撮影しています。日本は以前から〈MERTRA〉のストーリーの一部なんです。
なので今回、東京で新作を先行公開するのは自然な選択でした。会場のために什器や彫刻作品を制作したほか、〈MERTRA〉のドッグタグに好きなメッセージを刻印できる体験も用意しました。ここでしかできない特別なものにしたかったんです。
メルボルンでブランドを立ち上げたことは、〈MERTRA〉の成長やブランドのあり方にどのような影響を与えましたか?
色々な仕事をして貯めたお金を元手に、投資家も業界内の人脈もない状態でスタートしました。メルボルンは素晴らしい街ですが、ファッション業界を支える工場やバイヤー、メディアの多くからは距離がありました。だからこそ、あらゆることを自分たちで考え、独自の方法を見つける必要があったんです。一方で、誰かに「こうあるべきだ」と決められることがなかったのは、利点でもありました。
初期の頃から地球の反対側にいる人たちが〈MERTRA〉を購入し、着てくれていることに気づきました。そのときからオーストラリアで生まれたブランドでも世界中で着てもらえるのだと実感し、世界に〈MERTRA〉の輪を広げることを実現したいと思うようになったんです。
なのでブランドの成長に合わせて、すでに支持してくれている人たちのいる場所へと事業を広げていきました。オーストラリアで基盤を整えた後、イギリスとヨーロッパでの事業を拡大し、僕自身もロンドンへ移りました。中国には自社のサンプリングオフィスを設け、今年9月にはアメリカでの事業も開始しました。これまでアメリカのお客さんは関税を負担し、商品が届くまで何週間も待たなければならなかったからです。
こうして世界に拡大した今でも、オーストラリアはブランドにとって非常に重要な場所です。最大のオフィスはメルボルンにありますし、故郷からの影響は自然とデザインにも表れます。今シーズンの主役となるジャケットにクロコダイル柄を採用したのも、その一例です。僕自身はロンドンを拠点にしていますが、〈MERTRA〉が世界へ広がっても、オーストラリアがルーツであることは変わりません。
モンブランや地下70メートルの洞窟など、キャンペーンの撮影場所にも強いこだわりを感じます。そこまでして服を見せる理由は何でしょうか?
多くのブランドはプロダクトそのものに力を注ぐ一方で、それを取り巻く部分は十分に考えられていないことがあります。でも、キャンペーンは多くの場合、誰かがそのアイテムを初めて目にする機会です。見せ方ひとつで、商品の印象は大きく変わります。
生地や金具、仕上げに何カ月もかけてジャケットを作ったのなら、最後に手を抜いたビジュアルで見せたくはありません。品質というと、普通は商品の品質を思い浮かべると思います。でも、品質へのこだわりはプロダクトだけに限る必要はないはずです。ひとつの写真のためにそこまで取り組むことは、ブランドの姿勢がすべての工程に行き渡っていることを示す方法でもあります。
モンブランはアウターウェアを撮影する場所として自然な選択でしたし、南イタリアや飛行機の翼、刑務所、地下70メートルの洞窟といった場所も、それぞれ違った文脈で服を見せてくれます。なかでも洞窟での撮影は最も大変でした。地下深くまで照明や電源を運ぶのは大きな課題でしたが、チームがやり遂げてくれました。
ただ、珍しい場所で撮影すること自体が目的ではありません。見た人の感情を動かしたいんです。キャンペーンを見てワクワクしたり、記憶に残ったりして、その結果、商品をもっと欲しいと思ってもらいたい。見た目がいいだけで、人の心に何も残らず、商品への興味にもつながらないのなら、キャンペーンとしての役割を果たせていないと思います。
ロンドンとメルボルンを行き来する生活は、デザインや機能性にどのような影響を与えていますか?
ロンドンが冬に向かう頃、メルボルンは夏を迎えます。数週間のうちに両方の都市にいることもあるので、ひとつのスーツケースで異なる季節に対応しなければなりません。だから、重ね着ができて、コンパクトに収納でき、ひとつで複数の役割を果たすアイテムが必要なんです。
例えば、スリングバッグからバックパックに切り替えられるバッグには、防水ジッパーの内側にパッド入りのノートPC用ポケットを設けています。空港での移動や仕事の日に、本当に必要な機能を考えた結果です。トラックスーツにはスマートフォンやパスポートを安全に収納できる隠しジッパーポケットを付け、ダウンジャケットにはフードを閉じてバラクラバのように使える仕様を採用しています。別のアイテムを持ち歩かなくてもいいようにするためです。
素材を選ぶ際は、まず機能性を重視し、そのうえで希少性にも注目します。さらに中国の自社拠点でサンプリングを行い、パネルが意図したとおりに動くかどうかを生産前にテストしています。完成してから問題に気づくのでは遅いですから。
今回のコレクションもそうした考え方を反映しています。Vertex Giletはレイヤリングを想定したテクニカルなアイテムで、Hardline Denim Setには曲線的なパネル構造を採用。Orbit Tracksuitは身体のラインに沿うコントラストパイピングが特徴です。
今は多くの人がさまざまな場所を移動しながら生活しています。自分自身の1週間を快適にしてくれるアイテムなら、きっとほかの人の日常にも役立つはずだと信じています。
〈MERTRA〉の最新コレクションは、日本時間10月23日(金)16:01より公式オンラインストアで発売予定。フルラインアップもこちらからチェックしよう。
