京都発 RAINMAKER が地元京都で初のフィジカルショーを開催──2026年秋冬は“陰翳礼讃 x カラヴァッジョ”
京都を拠点とするファッションブランド〈RAINMAKER〉が、2025年12月8日(月)、地元・京都にて初となるフィジカル形式のランウェイショーを開催
2013年に京都で設立され、伝統と現代のあわいにある美を探り続けてきた〈RAINMAKER(レインメーカー)〉。千年の都・京都に息づく精神性や美意識、その積層の中に漂う「時の深さ」は、同ブランドのものづくりにおける揺るぎない原点だ。そんな〈RAINMAKER〉が、この冬、ブランドの歩みを象徴する地・京都で初のフィジカルランウェイショーを実現した。
2026年秋冬コレクションのテーマは「陰翳礼讃xカラヴァッジョ」。谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』で描いたのは、障子越しに差し込む柔らかな光や、漆器に映るかすかな反射といった、抑制された光の美。一方、バロック期を代表する画家カラヴァッジョは、強い光と深い影をぶつけ合うような明暗表現によって、人間の内面や感情を生々しく描いてきた。東西、静と動という対照的なアプローチでありながら、両者が見つめていたのは、光そのものではなく、光と闇がせめぎ合う「あわい」の瞬間。その感覚が、〈RAINMAKER〉の2026年秋冬コレクションの核となっている。
カラーパレットは黒を基調に、白、深緑、茶、グレーを配色。和室の暗がり、障子から差し込む光、苔や木材、石の質感といった、自然と建築に宿る陰翳を想起させる色調だ。そこに、カラヴァッジョの絵画から着想した紫を、京都を象徴する色として差し込むことで、東西の感性が静かに交錯する。
素材使いにおいても、「光の反射」と「闇の吸収」という二項対立が明確に表現された。サテンやレザーといった光を反照する素材と、ウール、モールスキン、メルトンなどのマットな素材を対比的に配置。さらに、透過性のあるファブリックは、障子越しの光のような柔らかな陰翳を衣服に落とし込み、奥行きのある表情を生み出している。
造形面では、プリーツやタックによって深い影を刻み、布を重ねることで「奥行きの影」を構築。直線裁ちの静けさと、バロック衣装を思わせる豊かなドレープを対比させることで、「静」と「動」、「内」と「外」が共生する独自のシルエットが立ち上がった。ウレタンボンディングによる構築的なコートは、石や建築物の質量感を想起させ、衣服そのものに建築的な陰翳を刻み込む。
また、バロック期の洋装と和装の要素も随所で呼応。着物袖を思わせるボリュームスリーブ、羽織や道行に通じる直線的なオーバーコート、帯を想起させるベルトや袴の分量感など、日本的な簡潔さとバロック的装飾性をつなぐディテールが印象的だ。リボンは共布のストールとして再構築され、ラッフルはプリーツ加工によって現代的に解釈されている。
「伝統とは火を守ることであり、灰を崇拝することではない」。デザイナー 渡部宏一が掲げるこの言葉の通り、〈RAINMAKER〉は過去の遺産に敬意を払いながら、それを現在進行形の表現へと更新し続けてきた。京都という土地で積み重ねてきた営みを、あらためてこの地で可視化した今回のショーは、ブランドの現在地と、これから描かれる新たな輪郭を強く印象づけるものとなった。
ブランド:RAINMAKER
シーズン:2026年秋冬

















