MINI の新しい電気自動車は新しいゴーカートフィーリング
いちばん“ミニらしい”ミニ3ドアと、SUVの要素が盛り込まれた5ドアのミニ・カントリーマンにEVが設定された。スペイン・バルセロナで行われたその試乗会に、モータージャーナリストの大谷達也が参加した
とびっきり洒脱なコンパクトカー「MINI(ミニ)」に電気自動車(EV)が加わった。でも、オシャレなミニは、EVだからといって「環境に優しい」とか「CO2削減に役立つ」なんてことを声高に主張したりはしない。もちろん、ミニのEVも走行中にCO2を排出しないから地球に優しいのは事実だけれど、誰もが環境問題について考えるのは当たり前で、いまさら偉そうにいうことじゃないとミニは考えているようだ。
「じゃあ、なんでEVを選ぶの?」と問われたら、「だって、そのほうが乗っていて楽しいし、なによりオシャレだから!」というのがミニからの答えなのだろう。
今回のモデルチェンジでは、シリーズのなかでいちばん“ミニらしい”ミニ3ドアと、SUVの要素が盛り込まれた5ドアのミニ・カントリーマンにEVが設定された。ただし、スペイン・バルセロナで試乗したのは、このうちの3ドアのほう。それもクーパーSEという高性能モデルだ。
なるほど、EVに生まれ変わったミニ3ドアは、これまでよりもさらにスタイリッシュで、「ミニ史上、もっともオシャレ!」に生まれ変わったように思う。その理由は、優れたデザイン性とていねいな作り込みにあるのだろう。なにより、ツルッとしていて丸っこいデザインはいかにもミニらしい。しかも、これといったデザイン上のアクセントがないのに、間延びすることなく、むしろ凝縮された“カタマリ感”が表現されているのだから、驚き以外のなにものでもない。これには、綿密に計算され尽くしたプロポーションが大きく貢献しているはず。さらにいえば、どのボディパネルも微妙な曲面が正確に再現されているうえ、パネルとパネルの間隔が狭く、どこをとってもすき間がピシッと揃っている。そういう様々な要素が完璧に仕上げられているからこそ、これほどシンプルなのに魅力的なデザインに仕上がったのだろう。そのデザインのことを、ミニは「カリスマティック・シンプリシティ」と呼んでいる。
インテリアもエクステリアに負けず劣らず洒脱
ダッシュボードの真ん中に丸い大型ディスプレイが置かれているのは、1959年に誕生したオリジナル・ミニのセンターメーターをモチーフにしたもの。そのディスプレイに表示されるグラフィックスにしても、冷たい感じがする機械的なものではなく、まるで生き物のように温かみがあって活気に溢れている。
でも、ミニのインテリアでなにより気に入ったのは、ダッシュボードに貼られたファブリックがとびきりオシャレなことにあった。ご覧のとおり、なんともザックリとした織りの布地には千鳥格子にも似たパターンが描かれているのだけれど、その質感や繊細な色合いは、古いイタリア車ではときどき見かけたものの、最近のクルマではほとんどお目にかかれなかったタイプ。しかも、ここに同じくザックリとした織りのベルトがアクセントとして添えられたりしているのも気が効いている。このインテリアも、個人的に「ミニ史上ベスト」といいたくなる仕上がりだ。
走りにも「ミニらしさ」が溢れていた
ご存じのとおり、モーターは低回転ほど力強いトルクを発揮してくれるので、動き出しの俊敏さはエンジン車のミニを大きく凌ぐ。その軽快感は、これまでミニが標榜してきた「ゴーカート・フィーリング」そのものといっていい。いっぽうで足回りはしなやかなので乗り心地は快適。それでもミニの名に恥じない正確なハンドリングが実現できたのは、重いバッテリーを床下に積んだ低重心設計のおかげだろう。
もちろんEVだから普段は無音に近い静けさだし、もしもその静寂が退屈というのなら、車速にあわせて音色と音量が変化する4種類のサウンドが用意されているので、好みに応じて設定を変えればいい。デザインやクォリティ感だけでなく、走りも大幅に洗練されたミニ3ドアのEV。ミニはEVになって「ミニらしさ」にさらに磨きがかかったようだ。