Aston Martin DBX707はどんどん上質になっている
ブリティッシュ・サラブレッドが送り出すSUVは、やはりただ者ではなかった! モータージャーナリストのサトータケシが解説する
世界で最も由緒正しい自動車ブランドはどこか? クルマ好きが集まってこのテーマで議論を始めたら、おそらく夜を徹した激論が続くだろう。だれもが納得するような結論は出ないにしても、「Aston Martin(アストンマーティン)」にはかなりの票が集まると予想できる。
故エリザベス女王(Queen Elizabeth II)が、当時は皇太子だったチャールズ国王(King Charles III)の21歳の誕生日にアストンマーティンDB6をプレゼントしたことは有名なエピソードだ。ポール・マッカートニー(Paul McCartney)が乗る緑のDB6に感銘を受けたミック・ジャガー(Mick Jagger)が、ミッドナイトブルーのDB6を購入したという逸話もある。映画『007/ゴールドフィンガー』と『007/サンダーボール作戦』にジェームズ・ボンド(James Bond)の愛車として登場したのは、アストンマーティンDB5だった。
つまりアストンマーティンは、セレブとは異なる本物の英国セレブリティたちから寵愛を受けたブランドということになる。だから、“ブリティッシュ・サラブレッド”と称されるこのブランドが、初めてのSUVとしてアストンマーティンDBXを発表した際には、大きな話題となった。「アストンが作るSUVってどうなのよ?」と、クルマに造詣が深い人ほど関心を持ったのだ。
結論として、DBXはいかにもアストンマーティンらしいSUVだった
まずこのブランドには、モータースポーツでの活躍で名声を獲得したという歴史がある。現在も、F1の活動で得たテクノロジーやノウハウを市販モデルに注ぎ込んでいるけれど、アストンマーティンDBX707は、爆発的な加速力、切れ味鋭いコーナリング性能など、サーキットで闘えるようなSUVに仕上がっている。普通のスポーツSUVは、SUVにパワフルなエンジンを積んで、それにあわせてサスペンションやブレーキを強化して開発する。けれどもDBXのアプローチは逆だ。スーパースポーツに悪路走破性能などのSUVの機能を加えて開発したのだ。
そして2024年、アストンマーティンDBX707のインテリアとインターフェイスが刷新され、ロイヤルファミリーも認めた上質さにさらに磨きがかかった。
標準装備されていた14基のスピーカーが備わる高性能オーディオに、Bowers&Wilkinsと共同開発したサラウンドサウンドシステムをオプションで選ぶこともできるようになる。プレミアムになっただけでなく、テクノロジーも最先端のものに移行。10.25インチと大きくなったセンターディスプレイは、ワイヤレスでApple CarPlayやAndroid Autoに接続することができ、ジェスチャーで操作する機能も備わる。ダッシュボードとセンターコンソールのボタン配置のデザインも一新されてよりラグジュアリーな印象となり、職人技とイノベーションの理想系を体現している。
サーキットで闘えるSUVと記したけれど、インテリアのテイストは3種類から選べるようになり、エレガントな雰囲気にすることもできれば、スポーティな装いにすることも可能。また、クルマのキャラクターを変えられるダイナミックドライブモードで「GT」を選べば、市街地や長距離ドライブでも快適なセッティングになる。「Sport」モードだとアスリート、「Sport+」モードだと野獣、そして「GT」モードだとジェントルマンと、3つの顔を持つクルマなのだ。
ASTON MARTIN DBX707
全長×全幅×全高:5040×1995×1680mm
ホイールベース:3060mm
エンジン:4ℓV型8気筒ツインターボ
最高出力:707ps
最大トルク:900Nm
トランスミッション:9段AT
駆動方式:フルタイム4輪駆動
車重:2245kg
¥34,900,000〜(税込)※リニューアル後モデル