“AI のゴットファーザー”と称される研究者が Google を退社して人工知能に関する懸念を表明
「私がやめたのは、Googleに与える影響を考慮せずに、AIの危険性について発言できるようにするためだった」

“AIのゴットファーザー”と称されるGeoffrey Hinton(ジェフリー・ヒントン)が、2023年4月に「Google(グーグル)」を退社していたことが明らかとなった。
Geoffrey Hintonは、人間の脳の神経回路の構造を数学的に表現するニュートラルネットワークのパイオニアとして知られ、2018年にはディープラーニングの先駆的研究と実用化に貢献したことで、“コンピューター科学のノーベル賞”とされるチューリング賞を受賞した経歴を持つ。そんな彼がつい先日、“AI技術のリスクについて自由に発言するため”、2013年から10年にわたってAIシステムの研究を行なってきた「Google」を退社した旨を公表した。
「The New York Times」のインタビューにおいて、Geoffrey Hintonは、「Microsoft(マイクロソフト)」が、2022年にOpenAIが開発したChatGPTをBingに導入し、「Google」が“コード・レッド(非常事態)”を宣言するまでは、「Google」の技術管理に関して「非常に責任を持って行動した」としており、「私がやめたのは、Googleに与える影響を考慮せずに、AIの危険性について発言できるようにするためだった」とコメント。自身が半生を捧げたライフワークを「もし自分がやらなければ誰か別の人がやっていただろうという、ありふれた言い訳で自分を慰めている」とした上で、「悪者がAIを悪事に利用するのを防ぐ方法は、なかなか見当たりません」と付け加えた。
In the NYT today, Cade Metz implies that I left Google so that I could criticize Google. Actually, I left so that I could talk about the dangers of AI without considering how this impacts Google. Google has acted very responsibly.
— Geoffrey Hinton (@geoffreyhinton) May 1, 2023
また、Geoffrey Hintonは、偽物の画像、ビデオ、テキストがネット上に溢れ、ユーザーたちが“何が真実か”を見分けることができなくなることも懸念。ChatGPTのようなチャットボットにより、パラリーガル、パーソナルアシスタント、翻訳者など、定型的な仕事をしている人にとって変わる可能性があると語った。さらに、個人や企業がAIシステムによってコードを生成させるだけでなく、実際にそのコードを独自に実行させるハードウェアを与えれば、いずれAIシステムは殺傷力を持つ自律型兵器となりうるとの考えも明らかにし、「少数の人々は、AIが実際に人間よりも賢くなるという考えを信じていました。しかし、ほとんどの人は、そんなことはあり得ないと思っていましたし、私もそう思っていました。30〜50年、あるいはもっと先の話だと思っていました。しかし、明らかに私はもうそのように考えていません」と述べた。