TANAKA タナカサヨリ & クボシタアキラ | On The Rise

100年後も残る“ニュークラシック”なものづくりを目指す〈TANAKA〉のクリエーションに迫る

ファッション 
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次代を切り拓くデザイナーやアーティスト、ミュージシャンといった若きクリエーターたちにスポットライトを当てる連載企画 “On The Rise”。第9回目となる今回は、アメリカ・ニューヨークを拠点とするユニセックスブランド〈TANAKA(タナカ)〉のデザイナー タナカサヨリと、クリエイティブ・ディレクターを務めるクボシタアキラをフィーチャーする。

〈TANAKA〉は、〈Yohji Yamamoto (ヨウジヤマモト)〉〈UNIQLO(ユニクロ)〉を経たタナカサヨリが、2017年に自身のブランドとしてニューヨークで設立。ブランドコンセプトに“これまでの100年とこれからの100年を紡ぐ服”を掲げ、デニムを中心にコレクションを発表している。2020年より、〈HUMAN MADE®️(ヒューマン メイド)〉を中心にブランドの企画に携わるクボシタアキラをクリエイティブパートナーに迎え、以降は2人体制で運営。2022年には『Bergdorf Goodman(バーグドルフ・グッドマン)』による“FW2022 Radar Designer”に選出され、さらに“TOKYO FASHION AWARD 2023”も受賞した。そして来る3月18日(土)には、「Rakuten Fashion Week TOKYO 2023 A/W」において初のランウェイショーを開催する。

先述した通り〈TANAKA〉を手掛ける両名ともに経験/実績を積んだ実力者であり、ヴィンテージに造詣の深い2人の手掛けるコレクションはジャーナリストや目利きのバイヤーから支持され、既に国内外の有名セレクトショップで展開されている。〈TANAKA〉のアイテムを手に取って感じたことは、まず服としての完成度が高いこと。ブランドコンセプトにもあるように、100年後も残る定番になりうる普遍的な強さを持っていながらも、今の時代精神を反映したデザインに昇華されている。今回『Hypebeast』では、そんな〈TANAKA〉のクリエーションの背景を探るべく、タナカ氏とクボシタ氏へのインタビューを敢行。本インタビューはランウェイ開催の公式発表前に行われたが、図らずもショーへのイントロダクションのような内容となった。


Hypebeast:まず、タナカさんが洋服に興味を持ったきっかけを教えていただけますか。

タナカサヨリ(以下、T):父親が絵を描く仕事をしていて、私の小さい頃は着物のテキスタイルのデザイナーをしていたんです。ファッションに通ずるような環境が幼い頃から身の回りにあったためか、物心ついた時から自然と服に興味を持つようになりましたね。中学生くらいになると、当時は1990年代で世の中的には古着ブームだったこともあって、古着屋に通うようになりました。

タナカさんの地元にはそういったファッションに対する感度の高いコミュニティーがあったんでしょうか?

T:特にコミュニティーと呼べるようなものは無かったですが、私の通っていた高校は私服通学だったので、好みの合いそうな子と情報を交換したりしてました。デザイナーブランドの洋服だけじゃなくて、その頃は裏原宿に代表されるストリートファッションの全盛期でしたので、男の子の方が話が合いましたね。ジーンズを履いてヒゲを擦ったりとか(笑)あとはスニーカーのほか、RED WING(レッドウィング)とかClarks(クラークス)のようなストリート寄りのアイテムが自然と学校の友達の中でも共有されてた気がします。

今のお話を聞いていると、タナカさんのルーツは、デザイナーズブランドが提案するような所謂モードファッションよりもメンズファッション、特にストリートファッションの比重が高いと感じたんですがいかがでしょう…?

T:うーん、というよりは両方が同時に盛り上がってた時代でしたので、1990年代のファッションのカルチャー全般に影響を受けてると思います。それこそ当時のCOMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)やYohji Yamamotoも好きでした。ただそういったブランドは高校生には高価でなかなか買えないので、ストリートブランドや古着の方が手に取りやすかったというのもあります。その後服飾の専門学校(東京モード学園)に進学してからは、アントワープ・シックスとかヨーロッパのデザイナーの服にもより目を向けるようになりました。でも、常に自分のファッションの軸として変わらないのは古着です。全身デザイナーズで揃えることはなくて、どこかに古着を必ず取り入れるのが自分のスタイルになってます。あらためて振り返ると、それがTANAKAの根底にあるような気がしますね。

専門学校時代には、自身の将来を決定付けるような出来事はありましたか?

T:特別な出来事は無かったですが、今お話ししたようなさまざまなスタイルの影響を踏まえて、これから自分はどんなものを作りたいのかと模索した時期ではありました。ただ学生時代は、精神面で色々と考えさせられましたね。田舎で生まれ育ったので、進学して東京に出てきてからは、なんと言いますか“competitive”な状況に身を置かれるじゃないですか(笑)。地元だとそんなに頑張らなくても納得のいくスタイルが自然とできていたと思うんですけど、東京ではたくさん実力と個性のある人がいる環境と膨大な情報に囲まれて、自分はどうあるべきかと自分自身と向き合ったことが一番大きかったかもしれないです。入学当初は1年間学んだらその後はパリに行くつもりでしたが、そういったこともあって決心が揺らいでしまって。結局海外への留学はせず、4年間東京で学校に通いました。自分のスタイルが確立しないまま海外へ行く、という決断が当時の私にはできませんでした。

当時はご自分で服は作られていたんでしょうか?

T:もちろんです。今考えると、学生時代に東京で自分なりに突き詰めて試行錯誤していたのは、悪くは無かったのかなと思っていますね。

卒業後はYohji Yamamotoに就職されてますね。このブランドへの入社を希望した理由は何でしょうか?また、Yohjiでの仕事についても教えてください。

T:当時就職活動をしていく中で、デザイナーズブランドへの入社を第一に希望していました。当時からYohji Yamamotoは狭き門で、簡単に入れるとは思っていませんでした。ですが、もちろん憧れのブランドだったので、思い切って記念のつもりで受けてみました。面接時は周りがみんな真っ黒な格好の中、私だけジーンズを履いて行ったら受かってしまって(笑)。面接だからといって特別に取り繕ったりせずに、自分の普段通りのスタイルで採用していただいたのが自信になりましたね。入社後は、パリコレや企画に携わらせてもらいました。Yohjiでは世界でも最高峰の生地を扱ったり、凄く綺麗に色を出してくれる染工所さんと取り組んでいたり、社内でパターン引く方の技術も高かったりと、色々と学ぶことが多かったです。そのような環境で働いていると、自然と服(のクオリティ)に関する基準値が高くなります。今の自分の服作りのベースを形成してくれたのが、Yohjiでの経験だったと思っています。

その後はUNIQLOですね。Yohjiとは方向性の全く異なるブランドだと思いますが、どうしてUNIQLOを選ばれたんでしょうか?

T:Yohji時代の先輩が先にUNIQLOで働いていて、その方に誘っていただいたのが転職のきっかけです。私が入社した当時はちょうどUNIQLOがデザイナーズコラボを始めるタイミングでしたので、その仕事から始めました。UNIQLOには10年以上在籍して、最後はウィメンズラインのリーダー的な立場で全体を纏める仕事をしていました。オフィスも東京だけではなく、上海やニューヨークも経験しました。先ほどお話しした通り、学生時代にはパリに行きたいと思っていたので、ある程度仕事のキャリアを積んだ上で海外に行けたことは、私にとって結果的に良かったと思っています。

アメリカのオフィスには自ら希望して赴任することになったんですが、それをきっかけにニューヨークという街が凄く好きになりました。現地で生活しているうちに、この街で会社などの組織に属さずデザイナーとして生きていくことができたらどんなに幸せだろう、という思いが芽生えたんです。私にとっては、そこで生活しているだけでインスピレーションの宝庫でしたから。ニューヨークを拠点にすることで、自分の中のクリエイティブな部分がより開花されたという感覚がありました。

それで自身のブランド TANAKAを始めることになるんですね。

T:それまで日本と海外で仕事や生活をしてきて、どちらの良さも理解した上で、今のニューヨークという場所のボーダレスな雰囲気を、自分が好きな古着などのメンズスタイルに落とし込めたらと思いました。自身のキャリアを振り返って色々合点がいったというか、新しくブランドを創るにあたって、そのようなストーリーが組み立てられたんです。それで2017年にTANAKAをスタートしました。

ブランド設立当初から今までニューヨークを拠点にされてます。最初から日本に帰ってくるのではなく、そのまま現地で活動を続けたいと思っていたんでしょうか?

T:ブランドの拠点というよりかは、自分の身を置く環境としてニューヨークを選んだといいますか。幼少期は新潟で暮らして、その後東京に長く住んでいたので、日本が嫌いというわけではもちろんないです。でも、慣れ親しんだ環境と異なる場所に身を置くことで、自分のクリエーションの幅も拡がるように感じていますね。よくお客さんにはTANAKAは日本のブランドというよりは、インポートブランドの雰囲気があると言っていただけることがあります。確かにTANAKAはある意味ではインポートブランドと呼べるかもしれないですし、意識しているわけではないんですが、そこが海外をベースにしている利点でもあるかもしれないです。

なるほど。ここからは、TANAKAというブランドについて色々と質問していきたいです。アイテムの生産は主に日本で行っているんですよね?

T:生産については、今はほとんど日本がメインです。というのも、それは私のこれまでのバックグラウンドに起因していて、前職からお付き合いのあるメーカーさんに生産をお願いしたりしているからです。自分としても、その良さを深く理解していると自負しています。デザインを考えるのは、ニューヨークにいる時の方が多いですね。日本とニューヨークを行き来して、その間に色んな人を見たりしながら、デザインを考えるのがいつものスタイルです。

コロナ禍以降は日本に戻って来れない時期が1年半以上あって、その間はクボシタさんとは遠隔でやり取りしていたんですけど、最近は日本に頻繁に来ています。基本的には2人で打ち合わせをしながら、工場さんに行ったり、生地屋さんを廻ったりしていますね。

2020年からクボシタさんがクリエイティブ・ディレクターとしてブランドに参加されてますが、何かきっかけがあったんでしょうか?

クボシタアキラ(以下、K):正式には2020年から参加という形になってますが、それ以前にも彼女には色々とアドバイスはしていました。タナカは前職で僕の同僚だったんですよ。それで彼女がUNIQLOを退社する時も「これからどうするの?」といった話をしていて。ブランドを立ち上げると聞き、本当にやるんだったらやり切らなきゃいけないし、キャリア的にも失敗できないよ、と伝えました。それでどんなブランドにしたいのかと尋ねたら、Levi’s®(リーバイス®)とかHanes(ヘインズ)のような会社を作りたいと言っていて、面白いなと。Levi’s®はデニム、HanesはTシャツやスウェットといった定番アイテムを生み出したブランドですよね?ファッションブランドというよりは、特定のフォーマットを作って100年以上続いている会社です。そのようなブランドを目指したいと言っていたので、それだったらサポートしたいなと思っていました。

当時から彼女とはものづくりについての会話をよくしていたんです。その頃は自分もUNIQLOで長く勤めて、次のステップを考えていたタイミングだったので、TANAKAに力を入れるようになっていった感じですね。ですので、彼女が急にディレクターを入れようとか思いついた訳ではなく、長い間お互いに対話を重ねてきた上で、自然と参加する流れになりました。

ブランドが正式に2人体制になってから、より強化されたことはありますか?

T:ブランドのスタート時から次第にアイテムのバリエーションが増えていく中で、私一人のテイストだけでなくクボシタさんの視点も加わりました。当初からTANAKAはユニセックスブランドとして展開していましたが、実際に両方のジェンダーの意見が入ることで、よりそのコンセプトに幅が生まれたと思います。今の方がオールジェンダーに届くようなものづくり、という理想に近づけているような気がしますね。あと、彼が入ってから男性のお客さんが増えたんですよ。それまでは女性の方が多かったんですけど、今の売り上げの割合は日本は女性と男性が半々くらいになりましたね。アメリカとヨーロッパはまだ女性の割合が多いんですが。

あとはクボシタさんが日本で支えてくれている分、私は海外で比較的自由に動ける、ということもあります。例えば、海外でのセールスパートナーをみつけたり。お陰で海外での販路を広げていくこともできました。

K:以前よりブランドに色がついてきたという印象ですね。ニューヨーク・ファッションウィーク・メンズの期間中にプレゼンテーションを始めたのも、ちょうど僕が本格的に参加した時期からでした。先ほどタナカも言いましたが、海外のショールームと契約したのも同時期かな。

ブランドのルックを写真家の小浪次郎さんに撮影していただいているんですが、それが始まったのもその頃からですね。2人の共通の部分であるアートやカルチャーへの興味やその要素をより強化していますね。

ブランドにおける2人の役割分担を教えていただけますか?服のデザインはタナカさんが主に担当されていると思うんですが、クボシタさんは具体的にどんなことをされているんでしょうか?

T:私は何かアイデアを思いつくと割とすぐ話したり、衝動的に行動に移したりしてしまうんですが(笑)、クボシタさんはそれをしっかりコンセプトとしてまとめるというか、わかりやすい言葉で表現してくれるんです。私が思いついたことを伝えると、それってこういうことでしょ?と返してくれたり。会話すると思考が整理されるので、実際に作業を進める上でもそういった役割を担ってくれています。

K:彼女は右脳的というか、まず手を動かすのが先に来るタイプで、僕は言葉でコンセプトを考えるんです。

T:デザインについても、これはちょっと意見を聞きたいから考えてみて、と彼にお願いすることもあります。それぞれ得意分野がやっぱりありますよね。私はデニムなんですが、クボシタさん曰く「デニムに関しては何も言うことはない」みたいです(笑)

K:デニムは完璧だと思っています。僕は他のアイテムのディテールや、テクニカルな面を詰めていく感じですかね。

T:私が思いつくままに進めると工場さん的には生産が難しいこともあるので(笑)、クボシタさんはその辺をうまく調整してくれます。逆にこれはちょっと無理かな…と思うようなアイデアも、彼が後押ししてくれて実現できたりすることもあります。

先ほども少し話題に出ましたが、ブランドの売り上げは海外の割合が高いんでしょうか?

T:約1年前までは売り上げの9割くらいが海外でしたが、今は日本の方が高くなりました。私がニューヨークに住んでいるせいか、以前は海外から売っていくことが当たり前だと思っていたんです。コロナ禍以降に日本のセールスを強化したこともあり、国内のショップに見ていただく機会が増えたことで、ポップアップなども行ったり、そうやって実際にお客さんに直接商品を説明する機会が増えていったので、そのことも影響しているのかなと思います。もっと早くからやっておけばよかったかもしれないですが。日本はもちろん大事なマーケットですが、拠点はニューヨークなので、海外も更に拡大・強化していきたいというのが、直近の目標です。

それではここで、各アイテムについて具体的に解説していただけますか?

T:THE JEAN TROUSERSは、設立当初からずっと作り続けている定番的なデニムです。ジーンズって元々はワークウェアなので、可動域を考慮して、両足のパターンがかなり開いているのですが、このジーンズは履いた時により綺麗に見えるように作成しました。ドレスパンツやトラウザーのように、両足を閉じ気味にパターンを作成してシルエットを作っていることが一番の特徴です。ディテールを説明すると、通常アメリカのジーンズのウエスト部分の縫い方は環縫い(チェーンステッチ)になっているものが多いのですが、そうすると生地が波打って表面にラフなアタリが出てしまうんです。それがデニムのかっこよさでもあるのですが。TANAKAのジーンズはもっとモダンに綺麗に仕上げたくて、敢えて本縫いに変更しています。さらに脇のポケットの袋布をおさえるステッチや、裾の本縫いも目立たないようにネイビーの糸を使用しています。デニムの生地は14.7ozのしっかりした厚めの生地で、日本の生地メーカー「カイハラ」さんのオリジナルのセルビッジデニムをメインに使用しています。こだわりの番手と打ち込み、そして可能な限りリサイクルコットンを含む生地に、混じり気のないピュアインディゴを使用して染色しているのが特徴で、洗うとヴィンテージのような表情になっていきますよ。綺麗な仕様と、所謂ジャパニーズ・デニムの雰囲気の組み合わせが他にはない、TANAKAを象徴する1本になっているのかなと思いますね。

あとはホワイトカラーのデニムも人気です。これはローホワイトと言って、無染色、無脱色のデニムを使用しています。敢えて綿カスを残していて、綿本来の生成りの風合いを楽しんでいただけますね。この生地を用いたTHE WORK JEAN TROUSERSは、フロントのダブルニーのパッチがポケットと一体になっているのが特徴で、見た目はベイカーパンツとワークパンツが融合したような1本です。同じ型で別素材のものもありますね。

K:これまでTANAKAではあまりデニムブランドっぽい直球のアイテムは作ってこなかったんですよね。というのも、ヴィンテージをそのまま再現したいわけではなかったので。本格的なデニムブランドにも使用されている日本の生地、縫製、そして洗いといった生産背景のもとで作り、所謂デザイナージーンズのような仕上がりになっているのが、最初に海外で評価された理由なのかなとは思います。

T:定番として継続しているNEW CLASSIC JEAN JACKETは、サイズの違いで着た時の見え方が変わってきます。例えば、最も小さいXXXSはコンパクトなつくりで、Lになるとかなりボクシーなシルエットになります。デザインはひとつなんですが、サイズによってパターンの感じが全く違います。実は規則的にグレーティングをしていないんです。こういったアイテムは他にもいくつか展開しています。

K:特にウィメンズとメンズのアイテムを区別しているわけではないので、サイズごとにグレーディングのピッチを変えることで、どんな体型の方にも対応できるように作っています。女性が多く着るサイズだったら、コンパクトに見えるように身幅とか着丈のバランスを調整するため、イレギュラーなピッチにしたり。かと言って、同じサイズを男性が着てももちろん変じゃない。

T:あとデニムアイテムに関しては、岡山の職人さんと話し合いながら、シーズン毎に新しい加工の開発に取り組んでいます。例えばこれは一見ペイントに見えるんですが、箔のシートを熱で部分的に貼り付けていくという特殊な加工をしています。一方で、このグレーのジャケットの加工はペイントです。これらは全て職人さんが1点1点手作業で行っていますね。

K:以前開催したTANAKAのポップアップに職人さんも参加して加工の実演をしてもらったんですが、1点仕上げるのに1時間くらいかかっていました(笑)。かなり手間がかかってると思います。

ボディの色や加工が変わると同じ型のアイテムでも全然印象が変わりますね。

T:私たちはTANAKAのデニムをキャンバスにように捉えているんです。白とかインディゴをベースにしながら、プリントなどのさまざまな加工を加えていくことができますし、色んな可能性があると考えています。

K:Levi’s®のデニムがMoMA(ニューヨーク近代美術館)にパーマネントコレクションとして収蔵されていますが、TANAKAのデニムも同様にMoMAのパーマネントコレクション入りを本気で目指しているんですよね。完成された単品という意味で、デニムとかTシャツは良いアイテムだとは思いますが、実用的なだけではなく、もっと枠を広げていきたいと思っています。

なるほど。ところで、デニム以外の定番アイテムってあるんでしょうか?

T:Tシャツなどの定番はあるんですが、今後秋冬シーズンに出しているダウンジャケットを定番化したいと考えています。

K:2022年秋冬シーズンでは、宇宙飛行士の写真を見てシルバーのダウンを作りました。リバーシブル仕様で、裏面はブラックです。ストラップが付属していて、背負えるんです。しかもポケットに全体を収納できて、枕にもなります。先ほどのストラップを付けるとショルダーバッグとしても使えますね。

これ一着あれば冬のアウターとしては充分ですね(笑)。

K:アウトドアメーカーのダウンのようにスペックを追い求めるのではなく、冬の気候に耐えうる機能性は確保しつつ、独自のディテールと、普段着として着たくなるようなデザインに仕上げています。これからも改良を重ねていくとは思いますが、このダウンは今後も継続して展開していきたいです。

T:アイテムをデザインする際に、まずそのルーツやヴィンテージを研究して、何故それが長い間支持されて現在も残っているかという理由を考えます。ヴィンテージへのリスペクトを払いつつ、それをTANAKA流に解釈し、100年後も残るようなニュークラシック(新しい傑作)を生み出せるかという想いで製作したのが、先ほどご紹介したデニムや、今回のダウンジャケットになります。他のアイテムもそのように取り組んでいますが、デニムが今のところ一番目標に近づいていると言えるかもしれないです。

これまで多くのアイテムを手掛けてきたと思いますが、今後TANAKAで作ってみたいものはありますか?

K:洋服業界におけるiPhoneのようなものを作りたいなと思っています。

それはどういうことですか?(笑)

K:決して携帯電話が作りたいという意味ではないですよ(笑)。iPhoneって従来までの携帯電話と全く次元が違うプロダクトだったと思うんですよ。最初のiPhoneが登場する前は、コンセプトを説明されても殆どの人が具体的にどういうものなのか想像できなかったと思うんですが、実際の製品が目の前に現れたら、誰もがそれを欲しくなってしまうという。つまり、消費者の潜在的なニーズを先取りして、その一歩先を行くような価値観を提示してみせたわけですよね?それはデニムが生まれた背景と同じですが、そのようなものが生み出せたらいいなと考えています。

納得です。これまでのお話を伺って、現在それぞれのアイテムはプロダクト寄りのアプローチで作られていると思いますが、例えば今後はランウェイで映えるようなコレクションピースを作ることも視野に入れていますか?

K:過去に数回ニューヨークでプレゼンテーション形式で発表したことはあったんですが、昨年TOKYO FASHION AWARD 2023という賞をいただきました。今回その副賞として、3月のRakuten Fashion Week TOKYOでのサポートを活用して初のランウェイショーを行うことになりました。

ランウェイで発表するのは2023年秋冬コレクションですか?

T:基本的にはそうですね。TANAKAの服を展示会や店頭でお客さんに着ていただくのと、ランウェイでモデルの方が着用するのでは全く見え方が異なりますよね?ランウェイで見せるためのものづくりは、これまで特に意識してきませんでした。ショーをやるからといって元々の方向性を大きく変えることはありませんが、ブランドの世界観を伝えるという意味で、少し従来と異なるアプローチの仕方を考えています。

K:具体的には、TANAKAで普段作っているものはルーツがプロダクト寄りなんですが、その真逆のワンオフ(1点物)のアイテムも現在制作しています。両極にあるものを同時に見せられたらいいなと。

T:ワンオフといってもオートクチュールのようなものではなく、ヴィンテージを素材に使用してTANAKAのテイストに再構築したアイテムや、ニューヨークのアーティストデュオ FAILE(フェイル)の作品を取り入れたアートピースに近いものを追加で発表する予定です。

初のランウェイショー楽しみにしています。その他に、今後ブランドで計画されていることはありますか?

K:実は金沢にある古い日本家屋を少し前に購入して、内装をリノベーションしたんです。今は自分の所有しているヴィンテージの家具をそこに置いてるんですが、ゆくゆくはTANAKAの商品を販売したり、何かイベントをやりたいなと。

T:都内でもコンセプトストアのオープンを計画しています。TANAKAの商品をはじめ、私たちが買い付けた家具なども紹介したり、トータルでブランドの世界観を見せる空間を考えています。そこに並ぶ衣服や身の回りのモノなど、空間の全てでTANAKAのフィロソフィーを少しでも感じてもらえたらと思っています。

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