New Balance のこれからを牽引する 90/60 を徹底解剖
デザインチームとプロダクトマネージャーへのインタビューから、最新モデルに込められたコンセプトを解き明かす
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今では生活に欠かせないインターネットがこの世に誕生し、あの「Apple(アップル)」から初代Macintoshが発売され、さらにSF映画の金字塔『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開されるなど、科学技術とカルチャーが大いに盛り上がりを見せた1980年代。そんな時代に最高峰のランニングシューズとして登場し、その後90年代から現在に至るまで続く〈New Balance(ニューバランス)〉を代表する990シリーズは、現代においても名作として語り継がれ、数あるスニーカーの中でも他とは一線を画す存在である。そして、その900番台シリーズに、2000年代初頭のパフォーマンスランニングシューズ860のテクノロジーとシルエットを融合させて開発された最新モデル90/60が、同ブランドからリリースされた。本アイテムは独自の機能性とこれまでにない斬新なコンセプトをスニーカー全面に表現し、フューチャリスティックでありながらどこか懐かしさも感じるデザインに仕上げられている。まさに、ブランドの伝統に忠実でありながら、新しいスタイルへのモダンなアプローチを実装した、これからの〈New Balance〉を牽引する1足だ。
そこで今回『HYPEBEAST』では最新モデルの90/60リリースを記念し、デザインを手がけたJames、Wu、プロダクトマネージャーPaulの3者にインタビューを行い、最新モデル90/60が製作された経緯やデザイン、コンセプトなどについてを聞いた。
HYPEBEAST:まずは90/60が制作された経緯を教えてください。
Paul(以下、P):〈New Balance〉が培ってきた伝統に忠実でありつつも、シーンに新たな価値を提供したいという想いから、90/60プロジェクトは生まれました。そこで私たちは、ブランドの象徴である900番台シリーズと2000年代のランニングカタログに登場する特に860シリーズからインスピレーションを得て、デザインを考え始めたんですよ。
これまでにない斬新なデザインやシルエットが印象的ですね。
James(以下、J):フューチャリスティックなデザインに仕上がったソールは、ブランドの伝統技術を現代的な視点で表現していますね。ミッドソールの前足とかかと部分には衝撃吸収性に優れたABZORB SBSを搭載することで独特なシルエットを作り、虫眼鏡のような奥行きのある透明なCRデバイスで厚みをもたせました。また、アウトソールは860 v2のディテールを踏襲しながらスケールを400%ほど大きくし、全体的にも大胆なカラーブロッキングを施すことで、遠くからでも90/60だと分かるようなディテールにしています。
Wu(以下、W):アッパーにはメッシュやスエード、レザーを使用し、〈New Balance〉のクラシックなスタイルを受け継いでデザインしました。そして、外側と内側のブランドロゴはあえて左右非対称なデザインにし、ヘリテージから現代への移行をドラマチックに描いています。あとは、991のソールユニットからインスパイアされたゲルポッドを、90/60ではベロバッジとして使用していますね。
デザインに関して何か具体的なイメージはありましたか?
J:今回はベースモデルとして993を採用していますので、そのデザインヒントがたくさん盛り込まれていますよ。さらに、そこから私たちは“techxplosion(テクノロジーの爆発)”と呼んでいるコンセプトを模索し、900番台シリーズと2000年代のランニングシューズを彩った、ABZORBやENCAP、CRデバイスなどのあらゆるテクノロジーを、現代において大胆に見せることはできないかと考えるようになりました。
W:多くのモデルを参考にしていますが、ただアーカイブのシェイプを正確になぞって組み合わせているわけではありません。私たちはそれらを研究し、何が象徴的なデザインや機能性となっているのかを理解しようとしました。なので、いざデザインをする時は、自分が2000年代のデザイナーになったつもりで取り組みましたね。このように、昔のデザインを参考にする場合は、真似るのではなく意図を汲み取ることが重要だと私は考えています。
カラーリングのこだわりについてもお聞きしたいです。
W:カラーリングや素材は、あらゆる人に響くようなものにしたいと思っていたんですよ。シューズそのものはかなり先進的な作りですが、色をつけたことでニュートラルな雰囲気になりましたね。90/60が自分のスタイルや個性をアピールできるステートメントピースにもなり得ると思っています。
他にもこだわったポイントはありますか?
J:見慣れたデザインであると同時に意外性も持っているシューズにしたかったので、様々な要素を組み合わせて誇張や進化をさせています。例えば、アッパーミッドソールは993を彷彿とさせますが、ボトムミッドソールはアグレッシブに造形されているので現代的な印象を与えていますね。
W:見慣れたものでありながら意外性を持たせることがこのプロジェクトのキーポイントであることに間違いはありません。そういった意識で900番台シリーズや2000年代前半のシューズのアッパーデザインを見ると、他にはない時代の“Motion(動き)”が見えてきます。私たちが目指しているのは、その“Motion(動き)”を今の時代で再現し、独自の視点で表現することなんですよね。
ありがとうございました。最後に今後の展望を教えてもらえますか?
P:デビューしたばかりの90/60ですが、今後も様々なプロジェクトを企画しておりますので公式発表を楽しみにしていてください。皆さんがきっと驚くような内容なので。
1906年にボストンで、アーチサポートインソールや偏平足などを直す矯正靴の製造メーカーとして創業された〈New Balance〉。それから110年以上経った現在もアスリートはもちろん、ファッションやカルチャーシーンからも寵愛されるブランドである。そんな〈New Balance〉のこれからを牽引するであろう 90/60は、7月16日(土)より公式オンラインサイトおよび各店舗で販売される。価格は18,700円(税込)とのこと。まずは上のギャラリーから商品画像や製作時のムードボードを確認し、インタビューを読んで詳細が気になった人はリンクをチェックしてみてはいかがだろうか。