東京を拠点とする注目のタコスクルー Hon’s Tacos に迫る | On The Rise
東京のストリートシーンを語るに欠かせない“クルー”に焦点を当て、異業種で働きながらタコスのケータリングを出店するHon’s Tacosをフィーチャー
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次代を切り拓くアーティスト、クリエイター、デザイナー、ミュージシャンらにスポットライトを当てる“On The Rise”。COIN PARKING DELIVERY、〈KOWGA〉デザイナーの甲賀加純に続く第3回目は、今の東京のストリートシーンを語るに欠かせない“クルー”にフォーカス。今回、インタビューに応じてくれたHon’s Tacos(ホンズタコス)は、東京を拠点に“タコス”を提供する5人組クルーだ。
メッセンジャーとしてのルーツを持つ調理担当のHONGMANGを中心に、メンバーそれぞれが料理人、会社員、フラワースタイリストという異業種をメインに活動するHon’s Tacos。2018年に仲間内で始動して以来、下北沢のサンドイッチ専門店『Sandwich Club』を間借りしたポップアップを毎週日曜日に開催する他、2021年11月に開催されたDJコレクティブ CYKの5周年記念イベントをはじめ、さまざまなイベントにもケータリングとして出店してきた。“仲間と一緒に仕事をする”ということを、彼らがいかに具現化し、象ってきたのか、飾らない空気感の中で率直に話してくれた。
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Masamori Takeda/Hypebeast
HYPEBEAST:Hon’s Tacosはいつ頃からスタートされたんですか?
シュウタ(以下S):本当の本当は4年前、2018年くらいから。僕が社会人になるタイミングで。HONGMANGとはそれまで一緒にメッセンジャーとして働きつつも、よく遊んでいる仲間だったから、「これからも何か一緒にやりたいよね」みたいな話があって始めた感じです。当時HONGMANGはメッセンジャーをやりながら麻布のメキシコ料理屋で働いていたって言うのもあって。かつ、彼は料理するのが好きで。
HONGMANG(以下H):そうだね。その頃、まだシュウタと出会って1年半くらいだったけど、メッセンジャーしててお互いめちゃめちゃ楽しかったし。俺とシュウタが初めて会ったのはフランスだよね。パリで。
S:そう、パリの街中で。それこそ俺らがメッセンジャーやっていた時に。1年に1回、CMWCっていうメッセンジャーの大会が世界各地で開催されていて、その年の開催地がパリでした。HONGMANGとは東京で同じメッセンジャーの会社に勤めていたから顔見知りではあったんだけど、2人共それぞれ別で行っていて。フライトも違うし、入り時間も違かったのに、僕が先にパリの街中にいたら偶然。
ぽんちょ(以下P):HONGMANGさんと俺は、自分が以前働いていた渋谷のバーで。HONGMANGさんが誕生日の時に来てくれて。
H:その時が初対面だったのに、飲みすぎてぶっ潰れて(笑)。でも、シュウタとぽんちょは昔からの友達だったんでしょ?
P:そう。2人とも上京組で、東京に友達があんまりいない時に、共通の友達と六本木で遊んでたら出会った(笑)。どういう流れでHon’s Tacosを一緒にやろうってなったのかはちょっとあんまり覚えてない。
S:覚えてないけど、どっかのタイミングで俺が誘ったんだと思う。ぽんちょも一緒にやろうよって。ヨウヘイは会社の同期で、グラフィックデザイナーをやっています。
ヨウヘイ(以下Y):今回来ていないユウスケは、フリーのフラワースタイリスト。
S:俺の家から歩いて10歩くらいのところに住んでるので。
H:10分じゃないからね。10歩。
S:ユウスケはHon’s Tacosでは妖精しています(笑)。いるだけで雰囲気良くなるみたいな。ポップアップとかケータリングとかは、来たい時に来てもらうスタンスで。
シュウタさんを中心に集まられたんですね。
S:そうだね。必要なものを周りの信頼している仲間でやりたいから、その不足部分を補っていくというか。
そこから皆さんでやろうと?
H:本当に友達から派生したみたいな感じだよね。はじめ、Hon’s Tacosとしてシュウタの知り合いの人のイベントとか、俺の周りの自転車界隈のイベントとかにみんなで一緒に行ったりとかして。そのあたりからヨウヘイも参加してくれたんだけど。お互いみんな、自分の仲間を紹介しあって、ちょっとずつちょっとずつ輪が広がって今にいたるみたいな感じです。
タコスを提供しようと決めたきっかけは?
H:そんな改まって「仕事としてやろうよ」って感じじゃなくて、それぞれ自分ができることを結集してみたらたまたまタコスだった。言っちゃえば全然タコスじゃなくてもいいんだけど、週末みんなで自分ができるスキルを持ち寄ってなんか1つのことやってみようよってなった時に、それはたまたまそれだったみたいな感じでした。
なるほど。皆さんそれぞれ違うお仕事をされていて、エッセンスになっている部分はありますか?
S:それこそヨウヘイはグラフィックデザイナーなんだけど、デザイン周りをやってくれていて。料理担当のHONGMANGはもともとはメッセンジャーだし、ずっと飲食やっていたわけじゃないけど、ぽんちょは料理でずっと仕事してるから、料理人として「こうがいいんじゃない?」ってアドバイスをHONGMANGにすることもあります。それぞれが違う分野で働いているからこそ、活かせるものはあるかなっていうか。
ぽんちょさんは何のお仕事をメインとされているんですか?
P:イタリアンの厨房をメインでやっていて、その他に毎週土曜日は渋谷でスナックを任させてもらっています。メインはHONGMANGさんで俺はサブだけど、やってる料理のジャンルが違うから、HONGMANGさんが見てきていないようなものを提案できたらいいかなって思います。
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Masamori Takeda/Hypebeast
シュウタさん、ヨウヘイさんはHon’s Tacosのブレーンっていう感じなんですかね。
Y:そうですね、本当にみんなで考えながらっていう感じですけど。
H:ヨウヘイとかはこういうポップ作ってくれたり、イベントのフライヤー作ってくれたり。Tシャツもヨウヘイがデザインしてくれて。
Y:そうそう。Instagramとかの見せ方を考えたりとか、メニュー表を作ったり。グッズもそうだし。
H:ステッカーもそうだよね。Hon’s Tacosのイメージとかも彼が全部考えてくれてる。俺が酔っ払っている時とかに「こういう感じにしたいんだよね」っていうのを伝えたら形にしてくれて。
Y:飲食店としてっていうのもそうなんだけど、友達たちが集まれる場所とか、みんなで楽しめて遊べる場所を作りたいっていうのがあるから、そのために、デザインとかSNSで見せれることないかなってシュウタと一緒に考えたり。
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Masamori Takeda/Hypebeast
もともとはケータリングを中心とされていたんですか?
S:基本、初めはもちろんお店は持てないから、経験もないので。だからケータリングっていうか、呼んでもらったパーティで出店するっていう形を取っています。1番最初のケータリングは、下北沢に以前あったレインボー倉庫のフリマイベントでした。友達に呼んでもらって。
P:懐かしいレインボー倉庫。
Y:青山にあるバーのスタンド7でも2020年9月くらいから一時期やらせてもらってたよね。
ポップアップを行っているSandwich Clubもお知り合いの方からお借りして?
S:そう。それこそお客さんですね。イベントとかで知り合った人に、Sandwich Clubでできそうだよって紹介していただきました。
Y:Sandwich Clubでは2020年11月頃から。緊急事態宣言でオープンできない時期があったから。
S:コロナの自粛期間でポップアップが全く開けられなかった時期は、Instagramにレシピをアップして、お客さんや友達が自宅でもHon’s Tacosの料理を楽しめるように工夫して。
すごいです。HONGMANGさんが今メインのお仕事でやられているのもメキシコ料理なんですか?
H:僕はちょっと前まで会社で中華を担当していて、今はもつ焼き屋さんで働いています(笑)。メキシコ料理からは遠ざかってるけど、中華では火の入れ方とか、味の入れ方とかすごく勉強になってたし、もつ焼き屋では肉を解体する作業とかがHon’s Tacosでも応用できてるかな。メッセンジャーをやりながら週末にメキシカンで働いていた時に、初めてちゃんと店でメキシコ料理を作って、食べてみて、美味しいっていう体験をして。そこから1年間、カナダに住んでいたんだけど、向こうも結構ブリトーとかメキシカンが多くて。買うのもいいけど、自分で作った方がいいじゃんって思って、色々試行錯誤したみたいな感じ。それが実際の始まりというかルーツだと思います。
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Masamori Takeda/Hypebeast
それに、シュウタが声かけてくれたっていうのもでかかったけど、もともと料理作るのが単純に好きだった。メッセンジャーをやってると、やっぱりすごい身体使うし、お腹もめちゃめちゃ空く。でもそんなにお給料がいい仕事ではないから、美味しいものは外で食べるより自分で作るっていうのがベースであって。俺は実家が居酒屋で、常に料理に触れる環境にいたから、それが功を奏したというか。今の会社に勤める前はほぼ独学だったけど、おばあちゃんに色々教えてもらってたので、割と人よりは調理技術はあったし、その経験がHon’s Tacosのケータリングとかポップアップにも活きてるんじゃないかと思っています。
メッセンジャーをやりながらポップアップされていたんですね。
H:そう、メッセンジャーしながら。コロナの影響でメッセンジャーの仕事がすごく減っちゃった時期があって、俺の所属してた会社も縮小しちゃって。そのタイミングで1回メッセンジャーは辞めて、ちゃんと飲食店で務めてみようかなと思って、知り合い経由でかれこれ1年半くらい働かせてもらっています。だから、7、8年くらいはずっとメッセンジャーでした。
S:メッセンジャーであることがルーツとしてあるから、仕込んだ料理とかを運ぶ時も自転車を使うっていうのがこだわりで。HONGMANGはタイヤが太いBMXの自転車に、荷物が運びやすいように荷台をつけてカスタムしてます。
DJイベントで頻繁にケータリングを出店されているのは、どういう経緯なんですか?
S:基本的にそれぞれのメンバーの繋がりというか、知り合い経由で呼んでもらうことが多いです。なんとなく東京・渋谷のContactさんでやらせてもらうことが多くて、Hon’s Tacosはクラブイベントでも出せるんだなっていうのをわかってくれてる人も多いと思います。
Contact側のご紹介じゃないんですね。
S:そうですね。もはや知り合いになりましたけど、Contactさん側から声掛けられるっていうよりは、イベントを主催している人が多いですね。
その際はどのようにタコスを作っているのですか?
S:HONGMANGが基本自宅で全部仕込みをします。あとはライムを切るとか、その場でできることは当日やっていますね。
H:生地はやっぱりその場で焼いたほうが美味しいから、生地は家でこねてきて、その場でプレスして焼くっていうスタイルでやらせてもらっているんですよ。
鉄板はどうなっているんですか?
S:鉄板は本当の普通のカセットコンロ。特別変わったものとかじゃなくて。
毎週ポップアップを開催している意図があれば教えてください。
H:みんなに知ってもらいたいしね。やっぱりケータリングだけだと、ちゃんと食べにきてもらえる場所がなかなか提供できないから。週に1回みんなの休みが合う時に場所を借りて、定期的に提供できる場所を作りたいねって話してて。定期的にポップアップをやったらもっと色んな人に食べてもらえるし、知ってもらえるかなと。
S:将来お店するための準備でもありますね。
日曜日も働かれていて大変じゃないですか?
H:遊びって言ったら怒られちゃうかもしれないけど、人と話すの好きだし、メシつくんのも好きだし。あんまり仕事だとは思ってなかったりするかな。
おすすめメニューやこだわりはありますか?
H:おすすめメニューは豚のスパイス煮込みの“カルニータス”だよね。アメリカにずっと住んでいたやつとか、メキシコの友達も言っていたけど、カルニータスはすごい難しいらしくて。メキシコ人でも、西側の味が好きとか東側の味が好きとか色々好みがあったりとか。俺は正直、アメリカまでしか行ったことがなくてメキシコに行ったことがない。だから、答えがわからない状態で始めたメニューなんだけど、みんなで2、3年かけて試行錯誤して「こうした方がいい、ああした方がいい」って、少しずつ形にしてきた思い入れのあるメニューというか。みんなで作り上げてきたメニューだからこそ、自信を持って提供したいなって思います。
S:どれくらい煮込むんだっけ?
H:俺はスパイスに1日漬け込んだ肉を大体圧力鍋に入れて、オレンジジュースベースの汁で2時間くらい煮込んでるよね。もう本当に包丁必要なく手で握るだけでホロホロになるくらい柔らかくしてて。
普通はオレンジジュースで煮込まないんでしょうか?
H:人それぞれだと思う。パイナップルジュースで煮込むっていう人もいるし。別に特にルールはないというか、俺は色々試してオレンジジュースが1番相性がいいんじゃないかなって思ってる。豚肉も豚バラと肩ロースを今使っていて結構油が出るから、俺はオレンジジュースでさっぱりさせる感じでやってます。
今日のメニューを教えてください。
H:カルニータス、グリルドチキン、ガーリックシュリンプ、白身魚のフリッター、キノコのアヒージョ(写真1枚目左から)。白身魚のフリッターにだけサワークリームを上からちょっとかけてフレッシュサルサも乗っけて爽やかな感じにしちゃっております。
もともとこれくらいメニューの種類があったんですか?
H:ケータリングだと、スペースも限られているし、キッチンがあるわけでもないから、基本2種類くらいでやっていて。キノコのアヒージョとか、ベジタリアンの人が来ても大丈夫なメニューとカルニータスの2種類とか。でも、こういうポップアップでちょっとしたキッチンがあると、5種類くらいはできるかなって。
S:タコスのメニューはベジタリアンとかビーガンの人でも食べれるように気をつけていて。東京の人とか最近結構多んですよね。
H:そうだね、肉食べれないけど魚食べれるとか。はじめ、フィッシュタコスとか全然やってなかったけど、来る人が肉食べれないのは可哀想だなって思ってフィッシュやってみようって色々試行錯誤しました。割とメニューは日替わりでやっていて、ソーセージとジャガイモの炒め物的なやつとか、その時その時の気分でちょっとずつ変えて。
Y:季節とかでもね、変えたり。夏野菜とか。
この飲み物は?
H:これはミチェラーダって言って、ビールのトマトジュース割りみたいな感じ。ただのトマトジュースじゃなくて、シジミとかアサリとかを煮出した汁に香味野菜とジュースを入れて、味を調節したスペシャルなもの。それにビールを入れて、割って飲む。結構向こうの人は二日酔いの人とかにおすすめする飲み物らしくて(笑)。これだけですごい美味しい飲み物なんだけど、かつ二日酔いの人にも効くっていう。
S:日本人で言う味噌汁みたいな。
この縁についているのは何ですか?
H:これは色んなスパイスが入っているタヒンっていうもの。辛さはほとんどないんだけど、それに塩をブレンドしてます。あとはお好みでライムを絞って。
今後の展望を教えてください。
H:俺はメキシコに修行しに行きたい。ちゃんとやっぱ本物を知らないといけないなってずっと思ってるんだけど、コロナの影響もあってなかなか長期滞在難しいから。でもあんまり気にしててもしょうがないから、今年は行っちゃおうかなって。長くて半年、短くて3カ月くらいを1年に1回ずつ行こうかなって思ってる。タイミングを見計らって。それから、そんなに慌ててはないけど、ゆくゆくは店を出したいなと思ってる。こういうポップアップも然り、ケータリングで色んなところに行って、色んな人に食べてもらって、経験を積んでから、てな感じですね。
Y:最終的にお店を持ちたいっていうのがゴールというか、一旦の目標ではありつつ。
S:そうだね。めっちゃ焦っているわけではないけど。
H:各々やりたいこともあるしね。それをみんなでやりながらっていう感じじゃないですか?
今後もメンバーを増やしていく可能性はありますか?
S:まぁまぁ、あるんじゃないかな。それこそ改めてお店持った時にアルバイトというか、一緒に働いてくれる仲間が必要だと思うので。別にもとから「絶対俺ら2人でしかやりません」っていうスタンスではないです。2つ目の家族じゃないけど、それくらいの感じでやっていきたいですね。
喧嘩をすることは?
S:あんまないかな。
P:喧嘩はないね。意見の言い合いはあるけど、「テメェこの野郎」はない(笑)。
S:いい意味でも悪い意味でも環境が違うから、そこはいいバランスを保ててる。環境近かったら喧嘩しちゃうかもしれないけどね、お互い全然違う仕事で働いてて、それぞれのことリスペクトする気持ちがあるからだと思います。
お店ができた際には、料理担当のお2人以外もタコスを作るんでしょうか?
Y:作るのは基本HONGMANGさんとぽんちょの2人がメインで、俺やシュウタ、ユウスケは飲食店としてのHon’s Tacosの見せ方とかブランディングとかを引き続き考えながら、関わって行けたらいいなって思っています。
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Masamori Takeda/Hypebeast
Hon’s Tacos ポップアップ
会場:Sandwich Club
住所:東京都世田谷区北沢2-12-2
日程:毎週日曜日
時間:18:00〜22:00頃