On The Rise:COIN PARKING DELIVERY

次代を切り拓くアーティスト、クリエイター、デザイナー、ミュージシャンらにスポットライトを当てる新企画

アート 
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今この瞬間にもさまざまなシーンで誕生している新世代のクリエイション。独自の感性で次代を切り拓くホープたちは、一体何を考え、何を見つめているのだろう。今回スタートする『HYPEBEAST』の新企画 “On The Rise”では、まもなく世に時めくであろうアーティスト、クリエイター、デザイナー、ミュージシャンらを彼らのインタビューとともにご紹介する。

記念すべき第1弾の主人公となるのは、アート界に突如として現れた覆面アーティスト COIN PARKING DELIVERY(コイン・パーキング・デリバリー)。2018年、スマートフォンを片手に本格的な活動をスタートさせた彼は、そのわずかなキャリアの中で〈Montblanc(モンブラン)〉〈Calvin Klein(カルバン クライン)〉『セサミストリート』などといった著名ブランドや作品とのコラボレーションを果たしてきた。デジタルネイティブな“Z世代”を象徴する彼が、これから向かう先はどこなのか。現在、『DIESEL ART GALLERY(ディーゼル・アート・ギャラリー)』にて個展 “DIMENSION MEDIA(ディメンション メディア)”を開催中の彼にじっくりと話を聞いてみた。

HYPEBEAST:まず、COIN PARKING DELIVERYという名前の由来を教えてください。

COIN PARKING DELIVERY:もともとこの名前でやるつもりは全くなくて。学生の頃、アルバイトをする代わりにプリントTシャツを制作して販売していて、1番最初に作ったパーカーのフロントに入れていた文字が“COIN PARKING DELIVERY”だったんです。それが自分のアーティスト名になっちゃったってだけで、まさかこうなってしまうとは思ってもなくて。でも、ずっと自分が好きだったアーティストの名前が同じ“C”で始まる綴りだったっていうのもあって“C”から始まる綴りが好きなので、既存のものではない、新しいジャンルを作りたいっていう意味で、この長い名前にしましたね。

学生時代にTシャツ制作を始めようと思ったきっかけは?

今とは目的が全く違くて。自分のコミュニティツールを広げるために、たまたま“COIN PARKING DELIVERY”をやっていたんです。ただお金を稼ぐためにバイトするっていう行為を割く時間があったら、人と会ったり人としゃべったりした方が、人生の厚みになるなって思って、人としゃべれてなおかつお金を稼げるものってなんだろうと思って始めたのが最初でした。実際に始めたのは3年前くらいだったんですけど、当時Tシャツを作っている若い子がクルーとかやってる人たち以外にあんまりいなかったんですよ。始めようと思った時は、今ほど簡単にオリジナルのアパレルアイテムが作れる環境も整ってなかったので、会社探しから自分で全部やって。最初に作ったパーカーをInstagramで発売した時に、たまたま1週間くらいで7、80枚売れて。そしたら3店舗くらいショップから声がかかったんです。学生のアルバイトの代わりにやってたつもりだったんで、最初店舗の置き方とかわからなくて。掛け率とか、「販促7割でどうですか」って言われても何言われてるかわかんなくて。結構条件良くても全くわからないから、勉強して。「9割で!」とか言ったり(笑)。強気なガキでした。

覆面を被っている理由は?

自分がアートを本格的に製作するようになったのが、普通のアーティストたちとはちょっと違くて。僕は、数年前に勤めていた会社を辞めたんですよ。どうせ(会社を)辞めるって周りからずっと言われてたので、なんか悔しくて。だから、辞めた瞬間に「個展をやる」って言ったんです。まだ何も準備もしてなかったんですけど、その個展に合わせて初めて絵を描いて。その絵を最初の個展 “Move If Young”で発表した時に、なるべく自分の情報を削ろうって思って徐々に顔を出さなくなったんです。現代って、スマートフォンで簡単に物事が調べられるようになったり、勝手に目に入ってくるようになったり、情報が飽和しすぎてて誰もキャッチできなくなってきているんですよね。Instagramを見ていても、投稿の文字を読まないとか。そういう情報の飽和をずっと感じていたので、顔が見えるとさらに埋もれると思ったんです。だから、顔と名前を隠すことでできるだけ情報を削って、言いたいことを簡潔にまとめたかった。

なるほど。もともとアートに興味はあったんですか?

ずっとありました。僕、小学生の時とかも、夏休みの宿題は必ず展覧会に提出してて。絵を描いていた方が勉強するよりも楽なんですよね。毎年、果物とかを描いた水彩画をそこに提出して、僕と兄ちゃんのどっちかが金賞か銀賞をもらってました。絵は兄ちゃんの方が上手いんですけど。 そういうのもあってもともと絵が好きだったっていうのはありますね。でも、今描いているポップアートみたいなのはそれまでに1度も描いたことがなくて。線画だったりとか、もう少し写実的な絵を書いたりするのが本当は好きだったので。

どうしてそこからポップアートに?

さっき、情報を削るって言ったじゃないですか。僕の作品って基本的にファーストエキシビジョンから今まで話がずっと繋がり続けてるんですよ。当たり前なんですけど、作品1つ1つに意味を持たせないといけないっていうルールが自分の中であって。僕はよく風刺的なことを描くんですけど、それって結構日本じゃウケないんですよね。「おもしろいね」で終わっちゃうんです。よく皆さんアートって綺麗なものでまとめがちですけど、僕はしっかりビジネスの塊だと思ってる。価値のないものに自らが価値をつけて、そっから販促して、そのものに教養をつけて、さらに売るっていう。アートってその流れに全てが詰まっていると思うんです。だから、より大衆に向けたものを作りたいと思ってて。ポップなものって絶対、誰でも幼少期の時に1度は触れているから、そういうものを作ることで窓口を広げて、個展とかに来てくれた人たちに対して“実はこういう意味だったんだよ”って作品の意味を伝えたくてポップアートにしたんです。

僕、最初は「これが芸術だ」って言って作品を買う人の気持ちが全くわからなくて。でも、海外の美術とか調べてたら、ちゃんといろんなルールがあって。やっぱり、意味のある作品に価値が付いているんですよね。作品が定義されてて、人がそれを見て議論して。その議論が生まれる時点でその作品って教養があるじゃないですか。そういう作品がやっぱり人の心に響くなって思うんです。だから、主観的というより客観的にものを作りたいって思っています。

アメリカのカートゥーンのようなタッチは、何かに影響を受けているんですか?

逆に何も影響がなすぎて……。海外の展覧会って日本では見れないような日本画のブースとかがあるんです。海外って、1度輸入したらしっかり自分の文化としてうまく使い続けてるけど、日本は馬鹿正直に海外から輸入したカルチャーはしっかり“輸入した”って言う。日本には、そういう下手くそさがあって。だから逆に輸入した作品を日本人の名前で描くことによって、それに対する反骨心を作りたかった。日本はまだ海外に吸われるだけの立場じゃないぞ、っていうことを伝えたいんです。“白井さん”っていうキャラクターも実は意味があって。そもそも白井っていうのがジャパニーズネームじゃないですか。絶妙に聞いたことあって絶妙に人を傷つけない名前が良くて“白井さん”にしたんですけど。あのキャラは、“過去”とか“古代”を象徴する恐竜と“未来”を象徴する宇宙人を合体させたキャラクターなんです。その2つが合体すると“現在”が出来上がると思ってて。

ファーストエキシビジョン “Move If Young”で「やりたいことに対して言い訳することが大人であったら、僕は一生大人じゃなくていい」っていう思いをテーマに掲げてたんですけど、僕たちの気持ちにより素直なキャラクターとして初めてこの“白井さん”を出したんです。例えば僕たちが「本を買いたい」って思ったとして、「今月使いすぎたな」とかいろんなことに言い訳して我慢したり諦めたりしてる間に、“白井さん”はそんなことを無視してもう本をレジに運んでる、みたいな。僕たちの本当の願望に直結した存在を作りたくて、恐竜と宇宙人を共存させて“現在”を生み出したんです。もともと学生時代から恐竜と宇宙人は描いていたんですよ、今みたいなテイストじゃなくて、ちゃんと写実的に。当時は彼らの戦争を描いてたんですけど、“未来”と“宇宙”の戦争っていわば“現在”の戦争を意味できるなって思って。そういう風に角度を変えたものが好きなんです。

今回のエキシビジョンの見所を教えてください。

“DIMENSION MEDIA”っていう展覧会なんですけど、今年の頭に2Gさんで既に発表してて。でもいろんな角度からの作品が多すぎて、1回の展覧会じゃ説明しきれないと思って今回のDIESEL ART GALLERYでの展覧会に持ってきたんです。見所は、“僕たちの生活には輸入文化が溢れてるんだよ”“日本って輸入大国なんだよ”という描き方してるところ。作品を作るためにテーマが必要だってさっき言ったんですけど、その“テーマ”って勉強しないとなかなか手に入らない。だから週ごとにテーマを決めて毎朝8時とかから勉強してるんです。そこからインスパイアを受けるしかなくて。このメインビジュアルの着想源となっている“六根清浄”は、めちゃめちゃ山登ろうって時期に実際に山を登って見つけたテーマ。人間の六根から起こる欲望を断ち切って心身が清らかになることを意味する言葉なんですけど、まず「六根清浄ってなんなんだろう」っていう疑問から始まって調べていったら、実は、“どっこいしょ”の由来となった言葉だったっていう……。

いろんなことに興味を持っていて、すごいですね。

僕、最初の頃は“巨匠しかアートは売れない”“年齢がものを言う”って意味がわからなくて。「若手だって売れる時代だ」って思ってたんですけど、やっぱり人間的な深みが生まれない限り、いい作品って作れない。「やっぱ歳とらないと無理だな」って思います。僕が作ってる作品も、大御所からみたら大したことないかもしれないし、「薄っぺらいこと言ってるな」って思われてるかもしれない。だから、なおさらその作品の重さを作るためには、時間と知識と厚みが必要なんだなって理解したんです。歳をとることで作品がよくなる可能性があるって言う意味はすごくわかりましたね。

日本はまだ海外に吸われるだけの立場じゃないぞ、っていうことを伝えたい

なるほど。これまでにさまざまなブランドともコラボされてると思うんですが、具体的に今後どんなことをやっていきたいですか?

いつか遊園地を作って3カ月で潰したいんですよ。遊園地でディズニーランドとかに勝てる見込みがないし、人間って限りあるものにロマンを感じてる。だから、一瞬でも爆発的でも来客数をいくためには、3カ月って言うのが絶妙じゃないかっていう。3カ月間のチケットを開演前に売り切ってスタートした方が、より話題になるおもしろい遊園地になるんじゃないかなって。そこでは、普通の遊園地じゃやっちゃいけないことをやっていいようにしたくて。初日にめちゃくちゃ人を呼んで、フェスじゃないですけど酒飲みまくってみたいな。遊園地で大人が酒で戯れてるのってあんまりないじゃないですか。そんなことがあったらおもろいなと。常におもろいなってことしかやりたくないんです。遊園地を作るためにはやっぱり大衆的になる必要があるんですよ。だからパブリックアートとか、セサミストリートとか、Calvin Kleinとかっていうのは、COIN PARKING DELIVERYが大衆的になっていくためのルーツとしてやっています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)渦中となりますが。

僕、基本的にコロナの状況下でしかポップアップをやったことがないので、バズるとかそこらへんはちょっとよくわからない。人が来ないと萎えちゃうので、大変ですよ。ポップアップとか、個展に来てくれたお客さんにCOIN PARKING DELIVERYとして会ったことはないんですけど、受付の検温とかでしれっと立ったことがあって。クライアントとかにもバレないようにいい感じにやったんですけど、「アルコール消毒お願いします」が1番バレなかったですね。声かけられなかったら僕の勝ちなんですよ(笑)。

DIMENSION MEDIA
会場:DIESEL ART GALLERY
住所:東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F
Tel:03-6427-5955
会期:2021年9月11日(土)〜2022年1月13日(木)
時間:11:30 – 20:00 ※変更になる可能性あり

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