Sole-Searching:adidas Originals Campus 特集
1990年代に世界のストリートカルチャーへ多大な影響を与えた名作を深掘り
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毎月1足、歴代の名作スニーカーの歴史を紐解く連載企画 “Sole-Searching”。第11回目は、〈adidas Originals(アディダス オリジナルス)〉が誇るクラシックモデル Campus(キャンパス)を特集する。
Campusは1983年、当時〈adidas〉が展開していたバスケットボールシューズ Tournament(トーナメント)のデザインをもとに、“フランス製”のライフスタイルスニーカーとして誕生。オリジナルモデルはグレー、ネイビー、バーガンディの3色を展開し、柔らかなスエードのアッパーに、耐久性に優れたヘリンボーン柄のソール採用した。発売当初は話題になったものの、大ヒットするまでには至らず、ほどなくしてCampusの生産は中止に。このモデルがブレイクするまで、数年の時間を要することになる。
時代は1980年代から1990年代に変わり、世界中のユースカルチャーにおいてヒップホップが重要な位置を占めるようになる。1980年代に大きな成功を手にしていたBeastie Boys(ビースティ・ボーイズ)は、1992年にそれまで所属していた「Def Jam(デフ ジャム)」を脱退し、ニューヨークから西海岸に拠点を移して自らのレーベル「Grand Royal(グランドロイヤル)」を設立。彼らが同年に発表した3rdアルバム『Check Your Head』のジャケットにおいて、メンバーが〈adidas〉のCampusを着用していたことから、同モデルが再び注目されることに。しかし、既にCampusは生産中止となっていたため、全米中でデッドストックやユーズドのモデルを探し求めるキッズが続出した。また、その前年の1991年には、Beastie BoysのメンバーであるMike D(マイク・D)ことMichel Diamond(マイケル・ダイヤモンド)が、Eli Bonerz(イーライ・ボナーズ)とAdam Silverman(アダム・シルヴァーマン)と共同でストリートファッションレーベル〈XLARGE(エクストララージ)〉をローンチし、同年11月にロサンゼルスに第1号店をオープンしている。独自のストリートカルチャーを形成しつつあったロサンゼルスを象徴するこのショップには、オリジナルウェアのほか、Campusをはじめとするオールドスクールなローテクスニーカーが並んでいた。当時同店の店長を務めていた“Paul T.”ことポール高橋(*のちに〈SARCASTIC〉を設立)は、“フランス製”のCampusの在庫を全米中から買い集めたと言われている。
また、ここ日本においても同時期にCampusが注目を集めることに。1992年に〈XLARGE〉の日本第1号店が東京にオープンし、本国のコンセプトは踏襲され、オリジナルウェアに加えて、Campusをはじめとする〈adidas〉の“フランス製”のデッドストックモデルを店頭で展開した。さらに翌年の1993年には、原宿に伝説のショップ『NOWHERE(ノーウェア)』がオープン。同ショップでは、NIGO®️(ニゴー)がアメリカで買い付けたCampusのデッドストックが販売されていたという。このような状況も手伝い、当時NIGO®️をはじめ〈UNDERCOVER(アンダーカバー)〉の高橋盾、江川 “YOPPI” 芳文といった裏原宿のキーパーソンたちがこぞってCampusを着用したことから、同モデルは大きな人気を獲得することに。もちろん、藤原ヒロシが以前から着用していたことも人気の一因。また、Campusは汎用性の高いクラシックなデザインと豊富なカラーバリエーション、優れた耐久性から、スケーターやDJ、渋カジ系まで幅広い層から支持された。このような世界的な再評価を受けて、〈adidas〉はCampusの後継モデルとなるCampus 2を1995年に発表している。
その後Campusは安定的な人気を誇っており、近年〈adidas Originals〉からは、1980年代のディテールを再現したCampus 80sが展開されている。2017年には、カリスマ的な人気を誇るスケーター/モデルのBlondey McCoy(ブロンディー・マッコイ)らを起用した“No Time to Think”キャンペーンを発表。また、2018年には〈adidas Skateboarding(アディダス スケートボーディング)〉から、Campusをベースにしたスケートシューズ Campus ADVがリリースされた。
最後に、これまで発売されたコラボレーションモデルの名作をいくつかご紹介したい。まず2010年に〈adidas Originals〉からリリースされた倉石一樹とのコラボ Campus 80s Felicity。同モデルはネイビー/レッド、バーガンディ/ブラックという2つのカラーウェイが展開され、スエードのアッパーにクロコの型押しが施されたレザーのスリーストライプを配置したディテールが秀逸な1足に仕上がっている。2013年に発表された〈BAPE®️(ベイプ)〉こと〈A BATHING APE®️(ア・ベイシング・エイプ)〉x『UNDEFEATED(アンディフィーテッド)』x〈adidas Originals〉によるトリプルコラボ Campus 80sは、ネイビーのスエードアッパーに、シュータンやライニングにカモフラ柄を採用したアレンジが光る1足。2017年発売の西山徹手掛ける〈DESCENDANT(ディセンダント)〉とのコラボ Campus 80sは、ネイビーとグレーを基調とした上品なモデルがラインアップ。NIGO®️の手掛ける〈adidas Originals by HUMAN MADE®〉から2020年に登場したCampusは、グレー、ライトブルー、グリーンの3色を展開。そして直近ではフランス・パリ発の〈YOUTH OF PARIS(ユース オブ パリス)〉によるダメージ加工が印象的なコラボCampus 80sや、〈NEIGHBORHOOD(ネイバーフッド)〉x『INVINCIBLE(インヴィンシブル)』とのトリプルコラボ Campusが発表されている。
1990年代において世界のストリートカルチャーに大きな影響を与えたCampusは、時を経た現在も変わらず多くのクリエーターやアーティスト、アスリートたちから支持されている。タイムレスな魅力を持つ〈adidas Originals〉Campusに、再び注目してみてはいかがだろうか。