Interviews: Larry Clark と Leo Fitzpatrick が語る『Tokyo 100』と東京

Larryから、日本のファンへのGive Back. “70年代から活躍している偉大な写真家の中で、ファンのためにこんなことをする作家はとても珍しいよ”

アート
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9月23日(金)から、東京・原宿の『Gallery Target』で開催されている『Tokyo 100』。「ファンへのお返し」として写真家、映画監督の「Larry Clark(ラリー・クラーク)」が、自身の写真(102x152mmのカラープリント)を大量に用意し、販売するというもの。価格は1枚15,000円だ。9月30日(金)までの期間中、売れた分だけ翌日新たな写真が継ぎ足されてゆく。このイベントをキュレーションしたのは彼の映画作品『KIDS/キッズ』への出演でも知られる俳優、ギャラリストの「Leo Fitzpatrick(レオ・フィッツパトリック)」だ。Leoは、「Larryみたいな70年代から活躍している偉大な写真家の中で、ファンのためにこんなことをする作家はとても珍しいと思うよ。普通だったら、誰かが選んだ10枚くらいが大きく引きのばされて、額に入って仰々しく壁に飾られてさ、“これが今回のベスト10だよ”って何万ドルもの値が付く。でもこれは、ファンたちが何百枚もあるプリントの中から自分の手でベストショットを見つけられるんだ。15,000円は、若い子にとっては1枚買うのがやっとかもしれない。でもこういうイベントをすることで、今のキッズたちとLarryの距離は縮まっているんだ。きっとお気に入りが見つけられるはずだよ」と話す。この展覧会イベントの経緯についてLarryはこう語ってくれた。「数年前に脊椎を痛めてね、腰を曲げて杖をつかないと歩けないくらいひどかったんだ。14本もの医療用金属をつける7時間の大手術を経験して、回復にも時間がかかったんだ。その頃にも日本に来たから覚えてる人もいるかもしれないね。今はもう余裕で歩けるし痛くもないから心配しないでいいよ。ただそうやって死を感じた時、これまで自宅に眠っていた、街角のドラッグストアでプリントした写真たちをストリートのキッズたちの手に残したいと思ったんだよ。」
“当時14歳くらいだった僕らの存在に初めて興味を持った大人がLarryだった”
美術館に飾られるほどの写真家であるLarryの作品を100ドルで売るというアイディアは、ニューヨークのLeoのギャラリーで実行された。「記録破りの人数が並んでくれたよ。今回と同じように会期は7日。ニューヨークのスケートキッズたちの口コミだけで始めたんだけど、最後の数日間は色々なギャラリーの人たちが買いあさりに来たんだ。でも彼らには購入枚数を10枚までって決めていたから、彼らは友達や家族、ホームレスを並ばせてまでプリントを買っていったよ。」とLarry。その後パリ、ロンドン、ロサンゼルスでも同様に開催された展覧会は、今回の東京で最後。このような形で巨匠の作品を手に入れられる機会はもうないという。「すごい仕事量なんだ」と話すLeoによると、「開催のたびに、僕がLarryの家に行って一緒にどのネガをプリントするか選ぶんだ。それを彼と一緒に店に持って行ってプリントしてもらう。街によってファンが欲しがる写真も違ったよ。ニューヨークはもちろんKIDSの舞台だから、その頃の写真にノスタルジーを感じる人が多かったし、パリはすべての種類のハダカの写真が人気だったね(笑)。ロンドンはわからないな(笑)。ロサンゼルスもLarryがたくさんの時間を過ごしたし、Wassup RockersやKen Parkもカリフォルニアが舞台だったから、そういうプリントが人気だったよ。東京には、できるだけいろんなバラエティの写真を持ってきたんだ」とのこと。

さらにLeoは、映画『KIDS/キッズ』の制作背景についても語ってくれた。「当時14歳くらいだった僕らの存在に初めて興味を持った大人がLarryだった。スケートキッズたちの映画を撮りたいんだって聞いて、“俺たちの映画ってなんだよ(笑)”って鼻で笑ってたし、とりあえず怪しんでたんだ。わかるだろ? スケートボーダーたちは常に知らない大人たちに警戒してるんだ(笑)。でもすぐに、Thrasherマガジンとかで写真を撮っているTobin Yelland(トビン・イェランド)の知り合いだって知って、“俺らが敬愛するTobinとこのオッサンがクールなら、俺らもクールだ”ってね。しかもLarryは僕らと近づくために47歳とかでスケートボーディングを始めたんだ。肩を壊したりしてたよ。そんなイケてる大人いないだろ?(笑)」
“「その時」を記録できるのって、「その時」なんだ”
日本、そして東京が大好きだと語る2人。以前青山の『Le Baron de Paris』でレジデントDJとして約6週間日本に滞在したこともあるLeoは、「渋谷で一番好きな店は東急ハンズなんだ(笑)。あそこにあるありとあらゆる変なモノが大好きだよ。ペットまで売ってるよね(笑)」と話し、「昔、東京に来たDash Snow(ダッシュ・スノウ)のエピソードを聞いたんだけど、彼はどこからか小鳥をたくさん買ってきて、滞在中にホテルの部屋で放し飼いにしてたんだって。それで自分がチェックアウトする時に、窓を開けて鳥たちを逃していたっていうんだ(笑)」と加えた。ニューヨーク以外は、この展覧会の開催地に訪れなかったLarry。今回の東京開催のために来日したことに関して、「80年代前半から、ことあるごとに日本に来ているんだ。エキシビジョンや新しい映画が公開になる度にね。初めてきたのはTaka Ishii Galleryだ。2004年頃の“Punk Picasso”の時は、彼女のTiffanyと一緒に、ワタリウム美術館の会場にどうやって作品を並べようか試行錯誤したよ。東京にはいい思い出が沢山あるし、日本の友人やファンたちはいつもナイスで素晴らしいよ。日本に来る度にインスパイアされるから、ここに来て訪れてくれるみんなに会うっていうのは僕にとって特別なことなんだ」と語った。

このイベントきっかけに、若い人たちがプリントや写真というものの意味合いを再確認してほしいとも話す2人。「デジタルで撮った写真を消すことに、みんなあまりためらいを感じないだろ? でもその写真の価値がわかるのって今じゃないんだ。時が経ったら街並みは変わってしまうし、人は死ぬ。“その時”を記録できるのって、“その時”なんだよ。」

 

Larry Clark 「TOKYO 100」@ GALLERY TARGET
住所:東京都渋谷区神宮前 2-32-10
会期:9月23日(金)〜30日(金)
時間:12:00〜19:00

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