トレマイン・エモリーが東京で語る── Denim Tears のルーツとデザイン哲学 | Interviews
ファッションデザイナーでありながら、単なる服作りにとどまらず、文化や歴史に対する深い洞察を持つアーティストでもある
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2月1日と2日、東京・原宿の『PORTRATION(ポートレーション)』にて、〈Denim Tears(デニム ティアーズ)〉の国内初ポップアップイベントが開催された。店内にはブランド創設者兼クリエイティブディレクターであるトレマイン・エモリー(Tremaine Emory)も姿を見せ、訪れたファンとの交流を楽しんでいた。
トレマイン・エモリーといえば、ファッションのみならず、文化的要素や社会的メッセージを込めた服作りでも知られる人物だ。彼のブランド〈Denim Tears〉は、ブラックカルチャーや自身のアイデンティティを反映したデザインが特徴で、多くのファッションフリークから熱い支持を受けている。
そんな彼が久々に日本を訪れたこの貴重な機会に、『Hypebeast』は短いながらも濃密なインタビューを敢行。〈Denim Tears〉のブランド名の由来から、デザインのインスピレーション、日本での過ごし方まで、彼のリアルな言葉をお届けする。
僕のジーンズが破れていて、それが涙のように見えたことから“Denim Tears”と呼ばれるようになった
Hypebeast:今日のコーディネートを教えてください。
トレマイン・エモリー:Denim Tearsの春夏新作コレクション“THE SCORPION & THE FROG”のジーンズに、HOKAのスニーカーを合わせているよ。最近は足の調子があまり良くなくて、履き心地のいいHOKAばかり履いてるんだ。トップスのインナーは白いサーマル、ジャケットはPRADA。アクセサリーは、友人が作ったレザースカーフとBOTTEGAのサングラスだね。
日本にはよく来るんですか?
もちろん、日本は大好きだから何度も来ているよ。ただ、最近は東京ばかりで国内をあまり旅できていないんだ。
日本で必ず訪れる場所はありますか?
ちょっと秘密にしたい場所もあるけど(笑)、港区にある友人のワインバー『山ちゃん』や、アフリカ料理の『ロス・バルバドス』にはよく行くよ。日本での食の体験は、いつも楽しみのひとつだね。
服をデザインするときのインスピレーション源は?
ほとんど本から得ているよ。実はかなりの読書家なんだ。歴史や文化、哲学の本を読むことで、デザインのコンセプトが生まれることが多いね。
Denim Tearsは、単なるファッションブランドではなく、社会的なメッセージも込められていると感じます。それはデザインよりも重要な要素なのでしょうか?
どちらも大切だね。デザインが優れていなければ、メッセージを伝えることはできないし、逆にメッセージ性だけが強くても、人々の心には響かない。そのバランスを大事にしているよ。
改めて、Denim Tearsに込めた想いを教えてください。
Denim Tearsは、好きな服を作ることができるだけでなく、自分の考えや感情を表現できる場でもあるんだ。このブランド名はもともと、友人たちとの食事中につけられたあだ名が由来なんだよ。ヴァージル・アブローやサミュエル・ロス(A-Cold-Wall)らと一緒にいたときに、僕のジーンズが破れていて、それが涙のように見えたことから“Denim Tears”と呼ばれるようになった。
では、ブラックカルチャーや綿花栽培といったテーマは、ブランド設立時点では意識していなかったんですか?
そうだね。最初はあくまであだ名が由来だったんだけど、着続けるうちに服に味が出たり、破れたりする過程が、人間の人生と似ていると感じたんだ。そこからブランドのコンセプトが深まっていった。歴史的なメッセージが強くなったのは後からのことだね。
尊敬するデザイナーはいらっしゃいますか?
ブランドで言うなら、CACTUS PLANT FLEA MARKET、ERL、Wales Bonner、PRADAあたりが好きだね。デザイナーとして尊敬しているのは……やっぱりラフ・シモンズとキム・ジョーンズかな。
トレマイン・エモリー(Tremaine Emory)
アメリカ・ジョージア州出身のファッションデザイナー、クリエイティブディレクター、カルチャーキュレーター。自身のブランド〈Denim Tears(デニム ティアーズ)〉を手がけ、黒人の歴史や自身のアイデンティティを反映したデザインで高い評価を受けている。〈Denim Tears〉を立ち上げる以前は、〈Nike(ナイキ)〉、〈Stüssy(ステューシー)〉など、さまざまなブランドとコラボレーションを展開。2019年には〈Denim Tears〉を本格始動し、綿花をモチーフにしたデザインや、ブラックカルチャーを象徴するアイテムを通じて、ファッションを超えた社会的メッセージを発信している。彼の作品は、単なる衣服にとどまらず、歴史、文化、政治と密接に結びついたストーリーを持ち、現代のファッションシーンに大きな影響を与え続けている。