Interviews:ASICS デザイナー 三ツ井滋之 & 国分大輔が語る、昔と今が交差する ASICS Tiger

先日の〈ASICS Tiger(アシックスタイガー)〉復刻のニュースが発表されて以来、懐かしさとモダンにアップデートされたデザインが融合する

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先日の〈ASICS Tiger(アシックスタイガー)〉復刻のニュースが発表されて以来、懐かしさとモダンにアップデートされたデザインが融合する “Gel”シリーズが、スニーカーをこよなく愛するファッショニスタをはじめ、さまざまなところで話題になっている。今回は、そんな90年代のスニーカーブームを牽引することになった「Gel-Lyte III(ゲルライトスリー)」や「GT-Quick(ジーティークイック)」など多数の“Gel”シリーズのデザインを手がけ、現在、近未来シューズのデザイン開発チームマネジャーを務める「三ツ井滋之(みつい しげゆき)」氏と、〈Onitsuka Tiger〉のシューズデザインを経て、〈Onitsuka Tiger〉と〈ASICS Tiger〉のデザインチームマネージャー「国分大輔(こくぶ だいすけ)」氏にインタビュー。 当時の様子や人気シリーズのデザインに関して、そして現代におけるスニーカーブームと〈ASICS Tiger〉のデザインに対する想いを語ってもらった。


— なぜ〈ASICS〉に入社し、デザインを手がけるようになったのですか?
三ツ井滋之(以下 三ツ井):美大生の時に音楽(サックス)をやっていまして、音楽、美術、アートに携われたら幸せだと思い、〈ASICS〉を志望して1984年に入社。戦後で未来への希望を失った子供たちに希望を与えるという創設者「鬼塚喜八郎」のその心で生まれた会社でしたので、そこにも惹かれました。元々は特にフットウエア部門にこだわっていたわけではないのですが、そこの海外向け商品を開発するチームに配属され、そのままデザインチームで働きました。

— 90年代のスニーカーブームを牽引したともいえる“Gel”シリーズですが、当時のことを教えてください。どのようにデザインを手がけ、製作を進めていたのでしょうか?
三ツ井:1984年、ちょうど私が入社した時に、“Gel”を開発しようと進められているところでした。“Gel”という高機能な素材への評価が素晴らしかったので、デザイナーと開発チームの中で採用する方向に動きました。ただ、〈ASICS〉には世界指折りの生産技術を持った生産部門もあり、フットウエアに採用した際のさまざまな慎重な意見も飛び交いました。ですが、最終的にデザイナーと開発チームの熱意が通り、それを進めることになったのです。

— 当時、他ブランドでは“ハイテク”スニーカーが多数登場していましたが、意識していましたか?
三ツ井:他ブランドと比較することはなかったです。単純にいいものを作りたいという思いなので、私たちは〈ASICS〉のやり方、考え方でやっていました。

— “Gel”シリーズのエピソードを教えてください。
三ツ井:ヴィジブル化が難しい“Gel”シリーズだったのですが、初めて“Gel”商品を出してからその後すぐ、ガムラバーに“Gel”の部分をくり抜いて、ヴィジブルな「Gel-Court」というヨーロッパ向けのインドアシューズを作りました。ただそれが「ヴィシブルではない」と周りから言われまして、傷つきましたが(笑)。

— 好きな“Gel”シリーズは?
三ツ井:2つあるのですが、まず1つ目がサイクリスト向けのシューズ「COMP ROYAL」ですね。自転車に乗るときにバックルに足の甲が当たって痛くないように、アッパーに“Gel”を使ったもの。もうひとつ、安定性とクッション性を重視した“IGS”を使ったものです。

— ちなみに、当時はどのシューズが世界的に人気でしたか?
三ツ井:ランニングシューズは、GTシリーズが一番売れたのではないでしょうか。そのほかでは「GT-Quick」が、とても人気があったと思います。クロストレーニングシューズとしてアメリカで爆発的ヒットとなったアイテムだった記憶がありますね。

— 90年代と現代のスニーカーブーム、違いとは?
三ツ井:「Gel-Lyte III」や「「GT-Quick」を私がデザインしていた頃は、私たちがお店に“卸す”という流れだったのですが、今は昔と違い、バイヤーや小売店のセンスが非常に高く、一緒にアイデアを出し合える環境にあると思います。それが今のスポーツスタイル、スニーカーブームを盛り上げている要因になっているのではないでしょうか? そして、お客様にも自身の靴をカスタマイズしてほしいですし、自分からの発信というものをしてほしい。ですので、私たちはそういう環境を提供できる製品を作り上げていければと思います。

— リローンチした〈ASICS Tiger〉では、どのような目線でデザインしているのでしょうか?
国分大輔(以下 国分):復刻といっても、全く同じものを売っているのではなく、今受け入れられるモダンなアレンジを加えてアップデートしています。昔を知らない世代の人たち、つまり若い人たちに〈ASICS〉の素晴らしさを伝えたい。どうやってファッション、リアルクローズに落としこめるかということを考えています。

— デザインの面で、シームレスなアイテムが気になりました。
国分:ここ数年の技術の進化によって、シームレスな製品が作れるようになったというのがリアルなところだと思います。昔は“シンプルに”作りたくても、なかなか機能面が伴わないことが多かったので。ですので、現代らしい表現の仕方の一つとしてだと捉えています。基本的に、昔作られたシューズは本当によくできているので、それらを最大限に素晴らしく、新しく見せられるかというのを考えた上でデザインします。シューズを作った人の思い入れというものを忘れずに、いかにリデザインできるのか……デザインとマッチするのであれば、どんどん新しい技術を入れていきたいと思いますが、デザインはもちろん犠牲にしません。

— 〈ASICS Tiger〉の新作で好きなモデルを教えてください。
国分:私も三ツ井も履いていますが、やはり「Gel-Lyte III」ですね。
三ツ井:今日、自分でヒール部分に黒い線(ブラッシング)を入れてアレンジしているんですよ。こうやってみなさんにも好きなようにスニーカーを楽しんでほしいです。

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