ファッションデザイナーの相澤陽介が岡山拠点の物流企業の制服を手掛ける、そのワケとは? | Interviews

岡山土地倉庫と岡山通運のユニフォームをデザインした

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西日本屈指の物流拠点として知られる岡山。同地のあらゆる物流を最前線で支えるSUENAGA Groupの岡山土地倉庫岡山通運は、この度、リブランディングの一環としてユニフォームを刷新するため、〈White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)〉の相澤陽介氏を招聘したことを発表した。

パリコレに挑み続けている相澤氏だが、実は数多の企業の制服やユニフォームの陣頭指揮を執ってきたことでも知られる。「自分目線ではないモノを作れることがデザイナーの真の力量」と話す彼に、今回のプロジェクトを引き受けた理由から、制服の醍醐味や面白さまで、存分に語ってもらった。


Hypebeast:まずは、今回のプロジェクトの発足経緯からお伺いできればと思います。

2018年にトヨタ自動車のディーラーであるトヨペット店のメカニックが着用する制服をデザインしました。岡山県内のトヨペット店は岡山土地倉庫と岡山通運が所属しているSUENAGA Groupが運営していて、社長がトヨペットのメカニックの制服デザインや機能性を気に入ってくださったようで、ある日、今回のプロジェクトについてダイレクトにお話をいただきました。

ご自身は、岡山県にゆかりなどがあるのでしょうか?

埼玉県出身で現在は東京と軽井沢の2拠点生活なので、正直なところ岡山との接点はありません。ですが、指名理由を社長直々に説明してくださり、その熱意が非常に強く、僕の中でも良い見せ方をできるビジョンが視えたので引き受けることにしたんです。実際、地域性のゆかりの有無よりも内容が重要ですし、岡山土地倉庫、岡山通運、岡山トヨペットの3社のリンクが面白いかなと。

相澤さんといえば、NOT A HOTELやリーガロイヤルホテルグループ、ヤマトグループのセールスドライバーと窓口受付スタッフ用制服をはじめ、J1の北海道コンサドーレ札幌やプロ野球の埼玉西武ライオンズのユニフォームなど、これまで数多く手掛けてきましたね。

ファッションデザイナーの手掛ける制服やユニフォームというと、ライセンスのような取り組みが多かったこともあり、どこか副業感が出てしまうんですよね。僕は、肩書ではファッションデザイナーですが、根底にはフォトグラファーやミュージシャン、アーティストと同じく、何かをプロダクトとして形にしたい気持ちがある。洋服作りは、あくまで方法論。なのに、ファッションシーンは“コレクションだけに打ち込まなければストイックではない”という殻に閉じ込められている気がして苦手で。僕からしたら、White Mountaineeringも、制服も、大学の講義も、全部まとめて“相澤陽介の表現”なんですよ。表現活動をひとつに限定する意味は全く無い。1900年代前半に活躍したレイモンド・ローウィ(Raymond Loewy)というデザイナーがいるのですが、彼は機関車からラッキーストライクまで手掛けていて、「口紅から機関車まで」というキャッチフレーズが代名詞。何かを一つストイックに突き詰めることはとても難しいことですが、それと同様に誰かの為にデザインするということも別の意味で難しいことだと思っています。制服のデザインを含めてデザイナーとしての可能性を広げる事は重要であり、大学で教えている身として方法論は一つではないという考えを示していく事でこれからのファッションデザイナーの指針になってくれれば嬉しいとも思っています。

制服やユニフォームを手掛けるうえで心掛けていることはありますか?

海外では、制服が会社のコーポレートアイデンティティとして重要視されますが、日本では規模の大小関係なく、コストなどの面から大量生産の有り物に社名を入れるだけのケースが結構あるんですよね。だから、デザインの力でコーポレートアイデンティティとなるような制服を手掛けたい気持ちを常に持っているのですが、この考え方が岡山土地倉庫と岡山通運にもフィットしたので、今回のプロジェクトに前のめりになったんです。

コーポレートアイデンティティと近い話でいえば、ニューヨーク市警の活動服やロンドンの土木作業員のベストなど、制服は街の景観にも成り得ますよね。

まさに。今、私がデザインしたヤマト運輸グループの制服を見ない日はないと思いますが、ニューヨークを舞台としたヒップホップのMVでFedEXやDHLの配送車が一瞬映ったりするように、世の中の環境にフィットすることは長年の課題でしたね。同じく、コカ・コーラは赤、マクドナルドは赤に黄、スプライトは緑、ロサンゼルス・ドジャースは白に青といった具合に、会社と色の連動性も重要だと思っています。

その点、今回の岡山土地倉庫の制服は、社屋の赤い柱に着想したそうですね。

会社のイメージは働いている人が作り出しますが、社屋は新しくて綺麗なのに制服は昔ながらのデザインとカラーでした。色が薄い制服は夜間でも目立ちますが、昼間に汚れも目立つ。これは、働く側からすれば大きなデメリットですし、リクルーティングのうえでも大きなハンデ。仕事内容以前に、誰も汚れる制服を着る会社で働きたいとは思いませんよね。

「制服は、働く人にとって人生で最も着用する洋服」

2社ともツートンカラーにしていますが、この理由は?

きっかけにもなった岡山トヨペットがグリーン×ホワイトのツートンカラーなので、3社を何かしらでリンクさせたくてカラーリングでストーリーを作りました。岡山土地倉庫、岡山通運、岡山トヨペットが並んだ時、デザイナーが一緒だと分かる雰囲気になればなと。

それでは、今回の制服についての話を伺えればと思います。

どちらにも言えることで、当然、現状の倍以上の良いモノにしなくてはいけないとはいえ、あまりにもデザイン性が強すぎると着づらい人が、シルエットが特徴的だと合わない人が出てきてしまう。要は、シンプルにすれば誰でも着られるけど、今度はコーポレートアイデンティティにならなかったり、僕がやる意味がなかったり、このバランスチャートを自分の中で制作して進めましたね。ベースとなったのは、ファンクションを意識したハンティングウェアやミリタリーウェア。既存の日本の作業着はウエストベルト付きの丈短めが多いのですが、その意味があまり見出せず、ウエストベルト無しで丈が少し長めのボックスシルエットに仕上げています。パンツのバックポケットも大きめにすることで、年配の方々のお尻のシルエットを目立たせない狙いですね。

それぞれのこだわりやポイントを教えていただけますか?

では、岡山土地倉庫から。森の中でも目立つハンティングジャケットのデザインに着想し、暗い倉庫の中でも視認性を上げるため、パーツごとに色を変えています。あとは、現場で働く方々がボールペンやカッター、メジャーなど、思いの外モノを持つことが分かったので、ポケットを多めにあしらい中身が落ちないようフラップを設けたほか、ポロシャツでは収納力に限界があるので、ベストを用意しました。岡山通運も視認性をもちろん考えつつ、車の乗り降りや運転時のことを意識して伸縮性も踏まえてデザインし、ポケットは現場の声を反映した使い勝手の良い位置に配置しています。また、お客様から荷物を預かるので、傷が付かないようファスナーなどの突起物を表面から無くしました。

デザインだけでなく、素材も異なるようですね。

最初は、デザインも生地も同じでカラー違いでも良いかと思ったんですけど、2社でアイデンティティが違うため別々で考えました。生地を選ぶ際には、普通の洋服よりもおそらく何十倍もハードに洗うし、耐久性や引き裂き強度も必要なのですが、オーダー時に生地の在庫が無くて作れなくなることを避けるため、こだわりすぎてもいけないんです。継続的に生産できることも、ユニフォームとしての重要な部分。その点、僕はさまざまな生地屋やユニフォームメーカーと繋がりがあるので、実績があるところにお願いできるんです。

このようなプロジェクトが、White Mountaineeringをはじめとする他のお仕事に作用することはあるのでしょうか?

コットンは耐光性や洗濯の堅牢度が悪いけど、ポリエステルにすれば堅牢度が保てるし何百回洗っても色が落ちにくいなど、ユニフォームメーカーとの話し合いで勉強になることは多いですよ。他にも、女性用制服の多くが号数表記だから、相当数の在庫を積まないといけない。でも、普段僕らはサイズ表記で選ぶじゃないですか。これを踏まえて、白い恋人で知られるISHIYAの店舗スタッフの制服を手掛けた時、ワンピースに変更したんです。肩で着るので必須だった採寸と体型申請が不必要になり、ウエストもストレッチ性のあるゴム仕様にすることで、サイズレンジが比較的自由になった。制服の中でもジャンルが変われば、得られる知識も変わる。得られた知識で、また別の仕事と向き合えるんです。

相澤さんが制服を手掛ける醍醐味や面白さとは、いったい?

制服は、働く人にとって人生で最も着用する洋服なんですよ。だから、ある意味で人生のハイライトにもなってくるので、トレンドや自己満足などとは全く別の意味合いになり、どこか自尊心に繋がってくる。あと、誰かのために作るモノなので、僕は着ないんですよ。一方でWhite Mountaineeringは、僕自身が一番着たいモノや僕目線の人たちに着せたいモノだから、真逆なんですよね。White Mountaineeringで10年間パリコレに挑み続けて、自分の内にあるモノを表現できている中で、「じゃあ、洋服って何だろう」と考えた時、自分目線ではないモノを作れることがデザイナーの真の力量だと思いましたね。

最後に、岡山土地倉庫と岡山通運に関する面白いエピソードをひとつ。出社時に制服を着て通勤する人もいれば、退勤後に制服のまま飲み屋に行ってしまう人もいるらしくて。だから、ある意味では大量生産の制服の方が目立たないから良いんですよ(笑)。でも、何者かが分かる制服にすることで、会社としては行動を律することができる。だから、僕はロゴを明確に入れたかったんです。着る人の意識を少しでも変えることができれば、会社のマネジメントにも繋がりますからね。

相澤陽介
1977年10月25日生まれ。多摩美術大学デザイン科染織デザイン専攻を卒業後、2006年に〈White Mountaineering〉をスタート。これまでに〈Moncler W〉、〈BURTON THIRTEEN〉、〈LARDINI BY YOSUKEAIZAWA〉など様々なブランドのデザインを手掛ける。現在では、イタリアブランドの〈COLMAR〉にてデザイナーを務めるほか、サッカーJリーグ北海道コンサドーレ札幌の取締役兼ディレクターにも就任。その他、多摩美術⼤学、東北芸術⼯科⼤学の客員教授も務める。

岡山土地倉庫ユニフォーム

岡山通運ユニフォーム

岡山土地倉庫
岡山県最大級の営業倉庫を誇る総合物流企業。貨物の保管にとどまらず、検品・仕分け、流通加工、さらには輸出入に対応した通関業務など、高付加価値の物流サービスを提供。2025年4月に創業90年を迎える中、新たな挑戦を続け、今後もさらなる事業拡大が期待されている。

岡山通運
陸上、鉄道、航空輸送など、多岐にわたる物流サービスを提供し、岡山土地倉庫とともに岡山の物流を牽引する存在。創業以来培ってきた信頼を基に、安心・安全な物流サービスを全国に展開。持続可能な社会の実現を目指し、環境負荷の低減にも積極的に取り組んでいる。

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提供 Okayama Estate Warehouse & Okayama Transport
フォトグラファー
Utsumi
Writer
Riku Ogawa
エディター
Noriaki Moriguchi / Hypebeast
Editor Assistant
Sachiko Tsutsumi / Hypebeast
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